0 0 0 抵抗を極力すくなくして高速を出すために は、断面積のきわめて小さな宇宙船を必要 8 長顔宇宙人はこうなる ! とするからである。 解決法として、『光世紀シリーズ』に登 基本図の変化をもとにして、応用を考え場させて、宮武さんに華麗にイラスト化し ていただいた″王冠構造″や″三角翼構 てみよう。 造″などをとりあげることができるが、ハ ①巨大なタタミ顔宇宙人の容貌変化 ーー 0 リガネ状にただやたら細長い宇宙船構造と これは図 4 のようになる。 ける いうのも、ひとつの基本的な解決だからで だえ②巨大な円板顔宇宙人の容貌変化 げ見 ある。 これは図 5 のようになる。 いずれにせよ、細長い直線状の宇宙船は O っ③極端に細長い宇宙船がナナメに浮かん に・か でいるそばをすれちがう場合の形状変曲線状にみえる。 直曲 垂に 逆に、運動しているとき直線状にみえる に、つ 面よ 宇宙船があったとしたら、それは、静止状 これは格子図形または円群のメッシュの 紙の , 図ひとつひとつの変化を、ナナメの直線状に態では曲がった形をした奇妙な宇宙船であ を ) たどってみればすぐにわかる。図 4 の容貌ろう。 前 このハリガネ型の宇宙船を恒星船の・フリ 眼 ( 変化における、顔のシワ一本のひずみだと ッジから観測したところを、宮武さんにむ 0 人し思ってもよい。 = 宙る りにお願いしてアート化していただい たどった結果の一例を図Ⅱ ( 前ページ ) の過にしめす。 顔通 ご賞味いただきたい。 長ていずれにせよ、細長い宇宙船はグ = ャリ れと曲がってみえるのである。 ④極端に長顔の宇宙人の容貌変化 -1 十ー こういうハリガネみたいに細長い宇宙船 これは③と同工異曲であるが、厚さのほ 図 とんどない超長顔の宇宙人が、恒星船のプ 構造は、相対論を考えるためにだけ想像さ リッジをのぞきこんだとすると、それは図 れる特殊な形状だと思われるかもしれない のように見えるであろう。 が、かならずしもそうとは言いきれない。 この場合も、逆に長顔が真っ直ぐに見え なぜなら、この連載の前半の部分で述べ たように、銀河空間というのは″星間物たとすると、その宇宙人は静止時には恐怖 質で充満しており、その″星間物質″のの曲がり長顔宇宙人ということになるだろ ( a ) 静止
「肉眼で宇宙船の形状が判別できるのか。秒速百キロメートルを越 す速度で交差したんだろう」 「航行記録装置を調べた結果はそうだった。それでも、数秒間、未 知の宇宙船の機影を見たという主張は変えなかった」 「それでどうなったんだ」 「発狂した訳さ」 どこで聞いた奪だったのだろう。地球の静止戦道上にある発着基また別の、太陽系外周に深宇宙観測基地を設営するために派遣さ れる技師は、中継基地で待機させられている理由を私に説明してく 地で、深宇宙の探査に出発する操縦士から聞かされた話だったか・ : ・ : それとも、小惑星帯の貨物基地で、貨物船の操縦士が集まるサロれた。 ンで耳にしたのが最初だったのか。場所はどこだったのか、私は正「 : : : 調査員の間で傷害事件が起きたらしい。調査員のひとりが、 確に覚えていない。太陽系内なら、どこでもありそうな話たったか同僚を異星人が変態したものと信じた結果のトラブルだという。青 白い不定形な流動体が調査員の外皮をまとって膨らむのを見たと言 らだ。 い張っているそうだ」 宇宙空間で生活する者なら誰でも一度は聞かされる話だ。 「それが傷害事件の原因か。やつばり赤い血が流れた訳だろう」 未知の知的生命がすでに太陽系内に入り込んでいるらし「いや、未確認の情報だが、そうではなかったらしい」 「青白い血が流れたというのか」 「それも不明だ。事件に関する一切の情報が隠蔽されている。だか 共通しているのはこれだけだ。それにつづく話にはさまざまなスら、こうして二週間も待機させられている訳だ」 タイルがある。 似たような話はまだまだある。解析不能の信号を受信したという たとえば、私が最初に乗った貨物船の通信士は、私の前任の操縦通信士がいたし、異星人の死体らしい漂流物が発見されたという噂 士がある種の精神的障害のために地球に戻らざるを得なかったのを聞いたこともある。 は、地球のものとは思えぬ宇宙船を目撃した結果だといった。 地球を離れて生活する人間にとっては、 ) 」うしたは最初の数年 日のうちに聞き慣れたものになってしまうはずだ。それは、直径百 「 : : : 確かにレーダーが何かを捕捉したのは事実なんだ。おれがこ門 の眼で確認したんだから。宇宙塵か何かだと思った。だが、操縦士五十億キロの太陽系空間が、謎も驚異もともなわぬ既知の空間とし は展望窓から、肉眼ではっきりと機影を見たと主張するんだ。青白て実感されはじめる期間と一致しているように私には思えた。 太陽系内はすでに知り尽くされた空間だった。私は五年前の航行 く輝く、見たこともない形状の宇宙船たったそうだ」 見よ、青白き馬あり。これに乗る者の名を「死」とい 黄泉これに従う。 ヨハネ黙示録 よみ 5 3
「やあ、ひどい目にあったなあ」 になにより、彼の故郷に似ていた。 「ほんとうだ。最初からどうもあの星はムシが好かなかったよ。ど「この惑星はすごいよ」ヒーリはビヒビに通信を送った。「生き物 う見てもきれいじゃなかったしね」 、刀し つば、・こ。・ほくたちに似ているといえば、いえないこともない な。もっとも、手も足も二つずっしかないけどね」 「まったくた。おまけに匂いもひどいし : もう・ほくはクタクタ チチ人の手足は四本ずつあるのである。 「気をつけて。首尾よくゆくことを祈るよ」 「・ほくもだ」 ヒヒビとヒーリ ビヒビから通信がかえってきた。 の宇宙船は衛星を離れ、我々が木星と呼んでいる 惑星のまわりを回る軌道にのった。 ヒーリはひとつの島の中央付近へ降下していった。その島には雲 「次の惑星にとりかかる前に三十二日ぐらい休息をとったとしてもがかかり、地表には雨が降っていた。ヒーリは調査艇を水の流れに 沿って、ゆっくりと飛ばせた。流れは濁り、曲がりくねっている。 罰はあたらんのじゃないかね」 その流れの横を、この惑星の住人たちが移動していた。身体の上 「きみの考えは正しいと思うよ」 に、雨を防ぐための丸い布きれを広げている。 二人はそれぞれの宇宙船の中で、ニキ・ポールにしがみついた。 ほとんどの生き物は同じ方向に移動していたが、ひとりだけ、黄色 い布を広げた生き物が流れにさからって、逆向きに移動していた。 三十四日目、ヒーリはビヒビからの通信で正体をとりもどした。 ヒー丿の注意は比較的小さなその生き物に集中された。ニキによ 「きみのニキ好きにはあきれるね。際限がないものな」 く似た匂いがまわりに漂っていたからである。 ビヒビの口調はとがめるようであった。 彼は調査艇を黄色い布の上空で旋回させた。が、その匂いがどこ しいや : : : しかし、ニキあっての人生だからね」 から発しているのかを突きとめることはできなかった。しかたなし ヒーリは弁解した。 に彼はその生き物とともに移動して行った。 「まあ、それはそうだ。だが、もうそろそろ出かけなくては。ニキ やがて、その生き物は別の生き物の前で立ち止まった。こちらは のおかげで元気もとりもどしたことだし」 もう少し大きく、黒い布を頭の上に広げている。 「そうたね」 小さい方の生き物が片手を突きだした。 二隻の宇宙船は木星の軌道を離れて、次の惑星へと向かった。我 我の住む星、地球である。 その手の中に何があるか確かめようとして、ヒーリは調査艇を二 地球での最初の調査行はヒーリが行なうことになった。ヒーリは人に接近させた。発見されるおそれは、まずなかった。チチ人は地 調査艇に乗りこむと母船を離れた。彼が目指したのは、大陸の端に球人に比べると極端に小さく、調査艇でも大きさは地球のコガネ虫 細長く伸びている弧状列島たった。火山活動が活発だったし、それほどしかなかったからだ。それに、あたりは雨のため薄暗かった。
が指令室にあるのか。 入していく。いったいわれわれは何をしているのか。 「積荷と航路が変更になった」 任者の捨てぜりふでした」 私のとまどいを識別したように、側面の指令コンソールから聞き 話がとぎれ、私たちはしばらく沈黙した。 その時、サロンの天井で、アナウンスが私の名を呼んだ。指令部なれた声がした。 からの呼び出しだった。 「緊急の命令だ。ヒダルゴへの飛行は延期する。土星就道上の基地 私は立ち上がった。 に目的地を変更することになった。任務はその方を運ぶことだ」 「 : : : 出発かもしれません」 私はその声に指令室中央の物体を注視した。それはかすかに動い 私はその青年とはもう顔を合わせる機会はないように思え、別れた。たるんでいた衣類がすこし伸張した。その動きで、こちらに向 のあいさつを伝えた。 けられていたのが、小柄な人間の背中であることがわかった。そし 「あまり神経質に過ぎると宇宙塵を宇宙船の機影と錯覚することは て、首が緩慢に動かされ、顔が私の方に向けられた。 よくあることですよ」 ほとんど生気を失った老人だった。 「ええ」男はソフアに坐ったまま苦笑した。 頭髪はまったくない。顔は一面に皺がより、頬からロもとにかけ 「私も前任者のように青白い宇宙船を見たとロばしったりはしたく て艶のない皮膚がたるみを作っている。が、私には首筋から後頭部 ないものです」 にかけてしみのように浮かんだ老人斑の方が気味悪かった。 ( これは一体誰なんだーー・ ) 2 そう問いかけようとして、私は老人の眼の異様な輝きに気づい た。落ちくぼんだ眠窩の奥で両眼はあらゆる情報を吸収してしまい 指令室に体をすべり込ませた瞬間、およそ場違いなものが目につそうな輝きで私を見つめているのだった。 き、部屋を間違ったのかと周囲を確認した。間違いはない。基地中「あなたはどなたですか」 心部の無重力室特有の構造で、全周は何面かのスクリーンと計器盤私は指令コンソールに問うかわりに、直接その老人にたずねた。 で囲まれている。 無意識のうちにそうさせる何かがその視線にはあった。 発着のための指令は、中央部に投射される三次元映像と周囲のス「私の名はヘルナー。情報省から派遣されてきた情報管理官のひと クリーンによって行なわれる方式だった。 : 、 カ映像が出現するはず りだ」 の位置には、異様なものが浮んでいた。 張りのある声だった。 私は最初それを死体だと思ったのだ。たるんだ衣類にくるまれた 私は思わず体を強張らせた。知識としては熟知していながら、実 死体が宙に浮いているとしか見えなかった。だが、なぜこんなもの物に接するのは初めてだったからだ。 ナーヴァス これが前 3
ことになるし、何かが行方不明になって五十隻の宇宙艇が調査に向「 : : : 未知の異星生命がすでに太陽系内に侵入しているのではない っているのかもしれません。ただ、何かがあったことだけは確かで かという説はずいぶん前から流れているのです」 「そんな話は私も聞きました。正式な報告としては受けていません 黒い皮膚の青年は表情にこそ出さないが、その眼は奇妙な期待にが、私の前任者が教えてくれたのも、それに近い話です」 青年の口調は少し熱を帯びた。 輝いているように見えた。 「前任者 : : : 」 「土星軌道付近というのは根拠があるのですか」 私は問い返した。 私は慎重にたずねた。 「傍受した通信の発信源の方向をたどれば、登録されている基地は「私の赴任するのは太陽系最外軌道の観測基地ですが、例のくじら 捜し基地のひとつなんです」 土星軌道にしかないからです」 くじら捜しーー地球外文明との知的交信を目的として太陽系外の それほど無責任なではないようだと私は判断した。 事実、私が搭乗する予定のヒダルゴ基地へ向う貨物船も出発を延全天方向に電磁波、重力波、一 : ートリノなどあらゆる観測機器の 期されている。理由はまだ知らされていない。そして、こうしたプ眠を張り巡らせている基地の俗称だ。 ログラムの変更は、この一年間、急に増えているように感じられる「何かをキャッチしたのですか」 のだった。私に関しては、この一年間で三度目だ。二回は航路計算「0@+—計画は三十年以上続けられていますが、何の成果も上げ のプログラムのミス、一回は積荷の変更のためと伝えられたが、確ていません。前任者も五年目で雑音の中から幻聴を聞きはじめたと 証はなかった。私が宇宙空間で生活する十年間のうち、それ以外の いうのです。地球外文明の探索というのは、どれだけ雑音を聞き流 予定変更は一度しかなかった。 して退屈に耐えられるかが任務とまで言われはじめています。 何かが起こっているのではないか。今回の事故に限らず、太陽系こんな前任者が非公式に耳うちしてくれた話ですから、信頼性は乏 内のあちこちで、われわれに知らされぬまま、何かが頻発しているしいのですが」 のではないのだろうか。 男はちょっとロごもった。 基地は回転を感じさせぬまま火星上空で回転を続けている。凹曲「何を教えてくれたのです」 面の床さえ気にしなければ、地球の静かなサロンでソフアに沈み込「深宇宙の観測機器ではない、宇宙船の発着用のレーダーで未知の んでいるのと変ることはない。 宇宙船を見たというのです」 ( この男なら何か別の意見を持っているかもしれない ) よくある話だなと私は思った。 私は、まだ宇宙空間になじんでいるとは見えぬ青年に、宇宙飛行「 : : : 数万光年の彼方まで、神経過敏なまでに触手を張り巡らせて訂 いながら、未知の何かが易々と太陽系内へ基地の近傍をかすめて侵 士の間では天気のあいさつのように交される例の話を伝えてみた。 / イズ
私は老人の名を呼んだ。 「情報管理官といってもエリートでも超人でもない。生きた肉体を 老人は補助シートに体を横たえたまま眠っていた。その表情は、持って新陳代謝している存在なんだ」 おだやかな老年を迎えた、ありふれた人間にしか見えなかった。 私は気になっていたことをたずねた。 眠りは深かった。おそらく二度と目覚めることのない眠りに思え「彼は確かに最後に馬を見た : : : あれは何だったんだろう」 「私にもわからない」 青年は答えた。 1 っ 「私はくじらを見るのではないかと予想していたのだが、たいがい は宇宙船だった。複合体ではほとんど処理できぬまでに衰弱して いたんだろう。ヘルナー老人が見た映像は、おそらく彼の脳の右半 それを私は火星上空の発着基地で情報管理官に引き渡した。 受け取ったのは、私よりもはるかに若いと思える管理官だった。球に古くから残されていたイメージに反応するものがあったのだろ う。残念ながら私の知識にはない。 ・ : だが、私の場合も馬を見る 金髪の青年は、そうと知らなければありふれた技術者としか見えな ことになるかもしれないな」 いだろう。だが、青い、加工は施されていないと思える両眼はヘル ナーの眼に似た輝きを放っていた。 そういって、青年は基地のサロンから出て行こうとした。私はそ 「確かに受け取りました。 : 回収すべき時期には来ていたのでの背中に声をかけた。 「あなたの存在理由は何なのです」 金髪の青年は立ちどまり、ちょっとふり向いて私にいった。 私が両手で差し出したそれを青年は無雑作に受け取った。 フットボール程度の大きさの古めかしい発信機。ヘルナーが一切「私の任務は計画以降の、恒星系への進出プロジェクトで の反応を停止してから、私は微弱な電波を頼りに、レーダーで手探す。 : : : 停止命令は、重力と三つの相互作用が統一された時に出現 します。太陽系内で死亡することはないと信じています」 りするように船を動かし、二日間かけて捜し出したものだった。 ーそれは未知の宇宙船でも宇宙を翔ける馬でもなかった。 私はひとりサロンの閉ざされた空間に残された。 「O@E-+-* 計画の終了は決定していた。この計画に従事した情報管貨物船を操り太陽系内を航行する限り、もはや青白く輝く馬を見 理官の存在理由も、システムが完成した三十年前で消減していた。 ることはない。それは確信できた。 コードに相当する言語もすでに開発されていた。かれらの私は最後に残った仕事を思い出して、発着場へ向った。 ーー・主星 肉体・ーー、複合体が衰弱するまで期間をおく必要があっただけのこ軌道から運んできた老人の死体を地球まで届ける予定だったから とだ」 青年は無表情にいった。
「眠っておられたのではないのですか」 情報管理官なら高性能の調査艇が使用できゑというより 私は席に腰をおろし、老人の方に体を向けた。 も、任務の目的に応じた仕様の専用機を持っているといった方が正 4 「眠りがどんなものだったか、もう忘れてしまったような気がす確だ。だが、今回、まったく私独自の判断で、その使用を避けた。 る」 系内航行のプログラムから、この船を選び出して、私が指定した訳 ヘルナーは眼を開けていった。 だ。私は情報ネットワークの誘導から離れて飛行してみようと考え こ 0 「あなたは眠る必要がないのですか」 オート・パイ戸ット 私は驚いてたずねた。 「しかし、自動操縦装置は作動していますが : : : 」 ーー外部との交信は切っている。すべて、私の内蔵する演算機能 「無意識状態になることはない。例えば時分割処理で空白の時間を 作れないことはないのだが、これが昔の眠りに相当するものかどうだけで指令している。 「なぜです」 か、私にはわからない」 老人は奇妙な表現をした。 ーー専用の調査艇を使用した情報管理官がこの一年間で私の知る 「ただ、最近、眠りがどんなものだったかを考えることが多いのは限り十五名、行方を断っている。今この船が向っている土星軌道付 確かだ」 近の空域で、三日前にやはり通信が跡絶えた。調査に向っていたの 私には老人の内面が測りかねた。 は私が個人としても熟知している情報管理官だった。だが、一切の 「この船の操縦機能を代行しているために眠らないのですか」 情報が入らない。だから、私はこの眼で捜してみようと決心した訳 「操船はほとんど負担にならない むしろ情報処理能力が衰えるだ。 気配すらないことが私には苦痛になりはじめているのかもしれな「行方不明になった高性能調査艇をこの貨物船で独自に捜索すると いうのですか」 ヘルナーの声は初めて老人のような口調になった。 いや、私が捜そうとしているのは、今まで行方を断った何人 「それにしても、十億キロ以上も彼方まで飛行する目的は何なのでかが直前に伝えた報告に出てくる、青白く輝く宇宙船なんた。 私は思い切ってたずねてみた。 4 老人はしばらく黙っていた。やがて、ゆっくりと口を開いた。 はやはり本当だったのか : 「 : : : そこで眠りを取り戻せるかもしれないからだ」 ヘルナーは補助シートに体を横たえたまま、独得の輝きを持っ眼「異星からの宇宙船ですか」私は大声でたずねた。 を私に向けて語りはじめた。 が、ヘルナーはほとんど表情を変えなかった。かすかに眼を動か
まことにドラスチックな景観の変化であ ーヒー言いながら勉強している。 しかし、事実はちがっている。 2 恒星船の・フリッジから観測される、すれ 气マイコン撫でて夜は史ける : : : という毎る。 9 日である。 そして、恒星船から星空を眺める場合のちがう物体の外観上の変形は、けっして、 眺望の変化は、この二種類の現象によって というわけで、冒頭のここに私のプログ ″ローレンツ短縮″の式 ラムを記すのはあまりに恥かしいので、末すべて説明し表現できるーーと考えてさし ( ミ 02 ・ つかえない。 尾の付録として、先月号の計算をしたプロ だが、恒星船の・フリッジから眺めるもの のようにはおこらない。 グラムの一部をのせておいた。 コンビュータを苦手とする人だけお読みは、無限の天球ばかりではない。 もっとずっとファンタスティックな変形 いただけるとありがたいと思う。 恒星船の比較的ちかくをすれちがう異星をする。 マイコンに関しては、以上のほか、取り人の宇宙船がどのように見えるか ? その理由はつぎのようなことである。 宇宙人の宇宙基地が、すれちがうときど 扱い説明書の不親切さへの怒りなど、書き 図 3 はふつうの相対論の解説書などによ たいことはまだまだあるが、相対論の続きのように見えるか ? くある、″ローレンツ短縮″の説明図であ に入る必要があるので、今月はここまでと というような、形のあるものの相対論的る。 な変形も、大いに興味のあるところであ して、また稿をあらためて論じることにし ロケットの中にモノサシがある。 る。 よう。 このモノサシを、ロケットに乗っている で、今回はこの、すれちがう物体の外観人が見ると、からまでの長さに見え ローレンツ短縮は の相対論的変形ーーについて論じることに る。その長さはである。 しよう。 しかしその同じモノサシを、地上にいる 見えないのです ! この問題を考えるとき、人々の頭にさい 人が見たとすると、それは、からまで コントラクション 恒星船の・フリッジからの眺望に関して、 しょにうかぶのは、″ロ 1 レンツ短縮の長さに見えるだろう。その長さはより 光行差現象とドップラー効果にもとづく星であろう。 もぐっとちぢんだである。 ( ついでに tL 空の変化がおこることを、先月号で円群の すくなくとも特殊相対論の初歩を、解説ケットもちちむ ) 書などで学んだことのある人ならば、そう 図形とともにご説明した。 からへの変化はロケットのスビード 光行差現象によって星界は前へ前へと移であるにちがいない。 つによってちがうが、いずれにせよ″ちち 動し集東する。 そしてかなり長いあいだ、学者を含めてむ甜方向にあり、式でいうと先のルートの ドップラー効果によって、移動する星々大勢の人たちが、宇宙船から見るすれちが形であらわされる。 の色彩が変化し、リング状の天球虹ーーー星う物体の外観上の変形はこの″ローレンツ これが″ローレンツ短縮″である。 虹ー。ーが出現する。それとともに、光線の短縮による前後方向でのちちみだーーと ふつうの解説書にあるこの説明は、半分 信じてきた。 エネルギーも増大する。 は正しいが、半分は正しくない。
万五千五百三十六年に及ぶ文明時代の間にそのほとんどを掘り尽く し、今後、新たに生成される見込みもなかった。チチの火山は六千 六百五十六年前に最後の噴煙を吹き上げて以来、活動が絶えてしま 惑星チチは、地球から見れば、銀河のわし座の方向、およそ六万 ったからである。 光年のかなたにある。「チチ」というのは、もちろん、便宜的な書 「それは一度去っていった仲間が、もう一度パーティーの席に顔を き表し方であって、そこに住む人々が〔 t 三〕とか〔 chichi 〕という 見せ、一同をよろこばせておきながら、いやなに、さよならを言う ような発音で自分たちの惑星を呼んでいるわけではない。もしも彼 のを忘れていたんでね、といってすぐに消えてしまった時のよう らの発する音をテー。フレコーダーにとって、回転数を五分の一ほど な、拍子ぬけすると同時に、やたらと寂しさのつのるものであっ に落として再生したとすると、それに似たような音に聞こえるとい ーティー好きのチチ人は、最後の火山活動の様子を書き た」と、パ うだけのことである。それも人によっては、「チチ」よりはむしろ 残している。彼らはニキを愛するがゆえに、それを造りだしてくれ 「キキ」と聞こえたり、あるいは「リリ」と聞こえたりするかもし る火山をも愛していたのである。 れない。あえて人間がその音をまねようとするなら、唇を横にひき このままではチチのニキ資源はあと二百五十六年ももたないとい し・ほった形で、舌を丸め、舌の先端で軽く上ロ蓋に触れて発する音 うことが判明すると、彼らは千二十四隻の宇宙船を建造し、二隻一 が、近いといえば近い 組で、銀河系内五百十二の方向にニキ資源を求めて発進させた。 「チチ」の主星は、同じ流儀でいえば、「リュイリュイ」という赤 ここでひとこと、チチ人の数字について言っておかなければなら い星である。地球での呼び名はまだない。星くずのかなたにまぎれ ない。彼らは八進法を使っているのである。五百十二は十進法でい て見きわめることができないからである。 うときりの悪い数になるが、八進法だと、八の三乗、つまり 100 惑星チチの住人が最も愛好するのは、香料の一種で、これも同じ 0 ということできりのいい数となる。同様に、彼らの歴史年数六万 流儀でいくと、「ニキ」と呼ばれるものである。 五千五百三十六は 200000 である。ここではすべての数字を十 彼らは精製したニキを油で練って固め、丸いポールのようにして進法に置きかえて語ることにする。 各自の部屋の中央に置く。そして、暇さえあればそれにしがみつい ている。ポールの発する匂いは彼らにとって麻薬的なはたらきをも っしょに飛んでいるビ 計器盤の隅の黄色いラン。フが点減した。い っており、これさえあればチチ人たちは幸福な気分でいられるのでヒビの宇宙船からの通信連絡である。 ある。 ヒーリはしぶしぶニキ”ポールから身体をひきはがした。今はニ チチ人たちを宇宙へとかりたてたのはニキ資源の枯渇であった。 キを味わっている時間だとわかっているはずなのに、・・そ、プいうこと、 ニキの原料となる鉱物はチチの火山地帯に広く分布していたが、六 にはおかまいなしに連絡をとろうとするところが、・ヒヒビにはあっ 9
近くに水たまりがあったんだけど、その中に入ってしまえば、もし ヒーリはまだ興奮さめやらぬ声で言った。 かして粘着力がなくなるんじゃないかと思「て、や「てみたら、そ 「なんだってんだい ? 」 「いやね、・ほくたちがこの星に到着して「まだ間がないだろう ? 」れが見事に成功したってわけさ」 「そうだね」 「それに体格の差があまりに大きいものだから、・ほくたちが見つか「あぶなかったよ。危機一髪ってところだったね」 「でも、なんだってきみはそのワナに触るようなことをしたんだ ることなんてありえないとタカをくくっていたじゃないか」 何か手がかりがあった時は、まず連絡をとることになってた 「そうじゃなかったってのかい ? 」 「そうなんだよ。やつらは・ほくたちがやって来たことをちゃんと知だろう ? 」 「いや、それは : : : 」 っていたんだ」 「まあいいや、で、ワナを作るってことは、ここにはニキがあるつ 「まさか」 てことなんだね」 「しかも信じられないことに、・ほくたちの目的までも探り当ててい 「いやいや、それはわからないよ。なにしろとんでもなくズルがし るんだ ! 」 こいやつらだからね。現に、そのニキ・ポールってのは、匂いだけ スクリーンに映ったビヒビの顔は驚きのあまりひきつっている。 「とても信じられないだろうけど、本当なんだよ。ばくはあやうくはやたら強烈なくせに、効き目ときたらまるでゼロなんだからね え」 やつらにつかまるところだったんだぜ」 「ふうん。しかしまあ、調査をしてみる価値はありそうだな」 ヒ】リは自分が体験したことを思い出すと、身体のふるえが止ま「と、とんでもない。ばくがこんな危険な目にあったってのに。今 度はどんな怖ろしい仕掛けを作って、ぼくたちを待ち構えているか らなかった。 「やつらの手口はこうなんだ。でつかい = キ・ポールの偽物を作っわからないよ」 て、その表面におそるべき粘着力を有する物質を塗りつけていたん「しかしーー」 だ。ぼくはそのワナにはまって、あやうく命を落とすとこだったん「絶対にダメだよ。こんな危険なところは一刻も早く立ち去るべき だよ。出発する時に、身の危険をおかしての調査は必要ないって言 だけどーー・・・」 われてるじゃないか」 「よくまあ、無事逃げられたねえ」 「うん、それはそうだけど : : : 」 ビヒビは少し落ち着きをとりもどしたようである。 「ダメだったら ! 」 「ま、そこが・ほくのぼくたるところでね。沈着冷静に脱出の方法に こうして二隻の小さな宇宙船は地球を離れていった。 ついて思いをめぐらしたんだよ。そのうち、ふっとひらめいてね。