カメロンは面白そうに云った。 「お、、ト僧、一体何が不服なんだ。ォルニウス号は、ヴァラキア のもっ船の中じゃ、いちばん大きい方だし設備も、乗組員もまずこ 「しゃ聞くがね。一体全体、おまえはどうしたら気がすむんだい。 どんな話なら、おまえにふさわしいというんだ。ヴァラキア公その れ以上は望めんそ。おまけにいずれおれの養子になってくれたら、 前からいってるように、、 しずれはトレヴァン公にひきあわせるつも人にでも、とってかわろうってのか、ええ ? 」 りだ。公とおれがじっこんなのは知ってるはずだそ。下ヴァラキア このちつぼけなヴァラキアにかい ? 」 の不良少年が、ヴァラキア公の館に出入りして、大きな船を動かせ イシュトヴァーンは軽い身ごなしで、通りのかたわらにつみあげ るようになる、こんないい話はねえだろうに」 てあった樽の上にとびあがり、上手にランスを保ちながら叫ん 」 0 「たしかにね」 イシュトヴァーンは不敵な笑いをうかべた。かれについてよく知「なるほど、あんたの想像力なら、そこまでしか考えっかないのも っているものでなければ、単に図々しく、身のほどを知らないとしムリはないね、カメロン。だが知ってるだろう。おれはね、生まれ か思えぬような笑い。 たとき、それはひどい嵐の夜だったが、おれをとりあげたとりあげ 「このヴァラキアじゅうから千人の十六のガキをさがして来て、そ婆の魔女が、おれの右手が何かしつかり握っているのをみて、手を の全員にきいたところで、それをおそろしくいい話だと思わないやひらかせて見、そこに美しい玉石をみつけたんだ。それをみて、こ つは、まず千人の中に一人といないだろうな。この、ヴェントのイれはただの赤ん坊じゃない、この子はいまにきっと一国の王座につ シュトヴァーンを除いてはね」 くようになるーーーだから大事に、大きく育てなされ、と云って、イ シュトヴァーンという、この大昔の偉大な王の名をおれにつけてく 「だがあいにくだったが、このおれにとっちゃ、たかだかヴァラキれたんだ。おれよ、 ーいまに、王になるんだぜ。それも、ヴァラキア ア港一の船ーーいや、たとえ、それが、トレヴァン公がじきじきにみたいな、ちつぼけな、自由都市に毛の生えたていどの小国しゃな おれを側小姓にとりたててやるといったところで、おれは断わる い。この中原にそれと知られた強大な大国の王だ。たとえばパロ、 ゴーラ、ケイロニアーーー東のキタイ、北のハイナムのような。 ね。たかが小国ヴァラキアの、そのまた公の側づきになって、どう しかしただそれだけでさえ、おれは満足しやしないぜ。ただ一国 しろというんだい。せい・せいよくて大臣、そうでなきや、一生ヴァ 小さの王位につくなら、さいわいおれはヴァラキアじゅうの女にきゃあ ラキア公のシーツをとりかえるばかりじゃないかるさし い。そんなちつぼけなエサで、このヴェントのイシュトヴァーンをきゃあ騒がれる二枚目だし、どんなあいてにも、必ず気に入られる 釣ろうってのは、そいつはとんだおかど違いってもんだ」 魅力ももってる。男も女も、おれに夢中になるからな。あんたみた いにね、カメロン だから、いつなりと、どこか目ぼしい国の若 「呆れたガキだな。もっとも、おれは、お前のそんなところが気に 入っているんだが」 いべっぴんの王女にさえ姿を見られるようしむければ、たちまち向 256
「ダゴンの醜い三兄弟にかけて ! 」 れたのだからな。いわば海とこの船がおれの本当の親兄弟、ふるさ カメロンは叫んだ。 とだ。ヴァラキアに対する忠誠よりもさえ、それはつよい」 「冗談ごとでなくわれわれこそがヴァラキアのさいごの希望なんだ そ ! ォルシウス号を失ったいま、このオルニウス号より強力な船「この海にたとえクラーケンが棲もうがそれはかまわんさ。海はす はヴァラキアにはない。 建造中の新しいオルシウス号は急場の間に べてをうけ入れるからこそ、海だ。だがおれは、その妙なーー幽霊 はあわないし、第一船は間にあっても乗員の訓練は一回や二回の航船だ、テヴ = ールが死霊となってオルシウス号の亡霊をかってい 海ではどうにもならん。しかも、ライゴ 1 ルまわり、ルテチア、ラる、などという話がたまらんのだ。テヴェールはおれを弟のように ンダーギア、この航路、南航路を失ったらーーあるいは、十隻のうかわいがってくれた。 もし、やつが故国と海神のために戦い、 ち二隻、三隻しかぶじに帰ってくることを期待できんとなったら、 そして死んでいったというならば、おれはやつの屍をのんだ海に花 わがヴァラキアにとっては致命的な打撃だ ! 陸地といってはほと輪を投げ、船旗を半旗にし、そして甲板に立って剣を捧げーーそう んどがラトナ山に占められているこの小国が、何とかゆたかに富んしてやつに永遠の眠りについてほしい。ドライドンの神殿に、勇者 で、四方の大国の中でやってゆけるのも、すべては母なる海の幸なとしてむかえられ、安らかにいこってほしいのだ。亡霊として海を のだ。そして南方からの珍しい宝石、香料、毛皮、果実、飾り物、さすらい歩き、同胞の船にとりついて沈めるようなテヴェールは見 金などは、わがヴァラキアの貿易する品々の中でも、パロやケイロ たくない」 ニアやゴーラに最も珍重され、ほしがられるものなのだ」 「カメロン 「そんなこと、いまさらあんたに説明してもらうまでもないさ」 「なあ、イシュトヴァーン。おれが、お前をあとつぎにしたい、オ イシュトヴァーンは肩をすくめた。 ルニウス号をやる、そう云ってるのは、一時の気まぐれや、お前の 「それにしても、その黒いイシ、タルとかいう船ーー・」 そのきれいな顔だけのせいじゃないんだ。おれは天涯孤独な人間 「それがどこのものか、それさえも我々はわかってないのだ」 だ。それは、海の兄弟がいたからだし、また、陸に妻子をおいてお カメロンはひと息に酒をのみほすと、ゆらりと立ちあがった。イ くのが、まるで錨につながれたまま航海する船みたいにこつけいに シトヴァーンが、ちょっと警戒ぎみで、椅子をずらせる。 思えたからだ。しかしな、イシュトヴァーン、あれはおまえが十に だが、カメロンは、窓に寄り、プラインドをあけ放って、黒くな なるならずのときだったな。チチアのいかがわしい店で、大のおと だらかにひろがる夜の海を眺めた。 なをあいてに平然とホイをやって一人で勝ちまくってるお前をみた 「おれは海に生まれ、海で育って、船長と呼ばれるまでになった」 のはーーあのときからおれはお前をただものでないと思い、会うた 3 彼はつぶやくように云った。 びに、おれのその確信はますますつよまった。おまえは、そう、何 9 2 「おれはこの船の前の前の , ー・・二代目のオル = ウス号の船上で生まというのだろうな たしかに他のガキと違い、何かをなしとげる
だ一人前の若い男というにはどこか弱々しさがのこっている。 なか、それを気取っているような、天性の愛嬌をたたえた。 4 5 2 しかし、いずれそう長くは待たぬうちに、みるみるそのすらりと それもまた、ひと筋縄ではゆかぬものを感じさせる。どこからど した細身はたくましさをくわえ、子供つぼい頼りなさから青年の強こまで、何かしらひと目をひく少年なのだ。将来、ただものではな と云おうか、まだ毛皮がやわらかくても、オオカ さへ成長してゆくだろう。そう思わせる何かが、むき出しの長いくなりそうな ミの子はオオカミなのだ、とでも云うか。 脚、肩から腕、胸などにある。 すらりとした細身を、ヴァラキアではごく一般的な、膝上までの おそらく手入れなどはあまりしたことがなさそうな、長いつやっ やした黒髪を、かれは背中で無造作にたばねていた。前髪は、かき丸衿のチュニックにつつみ、腰に皮のベルトをぎゅっとしめ、その あげてもかきあげてもまたすぐ、目の上までおちてくる。 上から、皮の、ひもでしめるヴェストをつけている。その下は短い 浅黒い肌と、ほっそりした顔かたちは、典型的な下ヴァラキアの革の足通しに、編みあげサンダル、右腕の上のほうに、皮の型押し ものだったが、しかしふつう下ヴァラキアの人びとにはない、どこのドライドンの護符をはめ、のどもとからチ = ニックの中へ、何か かしら品のいいおもむきがあるのは、両親のどちらかに、上流の血つるしてあるらしい、ペンダントの鎖が消えていた。 ベルトには、短い剣と投げナイフが何本かさしてある。この海の でも少し入っていたかもしれない。 うるさそうに前髪をかきあげて、明るい街灯の下にあらわになっ町ヴァラキアでは、ことに下ヴァラキアではひと目をひくこともな いきわめてありふれた身なりだが、同時に、上ヴァラキアの令嬢や た顔も、からだっきと同様まだ少年のものだった。いかにもきかん 気らしい、きりつとつりあがった黒い目、一直線によせられた眉。貴婦人たちならそっと道をよけるであろう、だいぶ不良がかったな りーーーそれはサンダルの紐の結びかたや、ベルトのしめかた、ヴェ 細く高いかたちのいい鼻、いつも何かにつつかかろうとしているよ ストのひものだらしないまきつけかたではっきりわかるーーーでもあ うに、ぐいとひき結ばれたくちびる。 その、きつい顔立ちを、まだあどけなくふつくらした頬が、裏切る。 この、若い野生のオオカミの仔を呼びとめたカメロン船長のほう っていた。かれは、ナイフをひょいと投げあげ、上手にうけとめる は、やせてするどい目をした、ロひげの似あう四十がらみの船乗り と、くるくるまわしてベルトへさしこんで、あいてににやりと笑い かけたが、ロもとがほころびると、その戦闘的な顔はびつくりするで、これもチュニックに、長い足通しと船乗りの鋲うちサンダル : ほどかわった。 それにこれはきちんととめた、ししゅう入りの胴着をつけて、肩ま あまりたちのいい笑いとは云えない。にやり、というのにふさわでの黒い髪は、成人の風習で、銅の・ハンドでおさえられていた。 「オルニウス号が港へ入ったのは知らなかったよ」 しい、何かたくらんでいそうな笑いだ。くちびるの一方だけがきゅ っとつりあがる。 少年は、前髪をかきあげながら云った。 しかし、笑うと、きつい、餓えたオオカミの ような少年の顔が、急にどこかふてぶてしい、ひどく世馴れたおと「おおかた、どこかでわるさをしていたからだろう。 こんど
つをめがけて上空からまた鳥が舞いおりてきたが、これがまた一 んだ。 0 ちょっとした木立ちを抜けたところまで来ると、コンは立ち止ま羽、どこかにあるセンサーにひツかかり、再び凄まじい閃光と共に 吹ッとんだ。しかし、他の鳥は無事に降り立ち、たったいま・ハラバ ってあとからやってくるバムを待った。 ラになった仲間の肉をさっそくついばみはじめている。 「見な」 : こコンは冷汗をぬぐった。 ゃぶをへだてたすぐ向うには、バムも記憶のある鳥ノ木村へ通じ「ふうッ : 、いたるところにセンサー付きのレーザ 慎重にあたりをさぐると る間道が白く見えている。 ・ガンが無気味な銃口をのそかせている。 「あの道よ」バムが言った。「あれが鳥の木村に通じてるの」 どこかのセンサーにひツかかると、あたりのレーザー・ガンが一 「ちょいと待った」歩き出そうとしたバムをコンは押しとどめた。 斉に火を吹くらしい 「一丁や二丁ならなんとかなるが : : : 」コンは息を呑んだ。この厚 「あれを御覧よ」 その手前に眼をおとしたとたんにバムは息を呑んだ。すぐそこのさでは、とても突破できるものではない。 茂みの中に灼け焦げた跡がいくつもあり、なかば白骨化した鹿とお 道はもうすぐそこに見えているのだが、到底たどりつけない。 ぼしき死体が何体か : そして、すこし離れたところにころがっ しかしそれから三時間 ているのは猪らしい。五、六羽の鳥がそんな死体の腐肉をついばん陽がそろそろ傾きはじめた頃になって、二人はあらためてこの警 でいる。 戒網の想像を絶する厳重さを思い知らされていた。 タンポポ村をぐるりと囲んで、一分のすきもなしにこのレーザー 「な、用心しね工と : : : 」言いながらコンは小石をひとっ拾いあげ ・ガンの火網がびッしりととり囲んでいるのだ。これにひツかかっ ると、その鳥をめがけて投げつけた。 たのは動物だけではなく、人間の白骨もいくつかまじっていた。 驚いたカラスは一斉にばツー とけたたましい羽音を立てて飛び 二人は看視カメラを避け、この火網すれすれを巡回する。ハトロー あがった。 ルをやりすごしながら、なんとか出口はないものかとさがし回っ そのとたんである。 た。しかし、駄目。蟻の這い出るすきまもないというのはまさにこ ビビビッ れだ・ : あたり一面が一瞬、物凄い閃光に包まれた。 ついにコンは肚をきめた。 一本や二本ではない。何十本というレ 1 ザー・ビームが縦横につ彼は地上を這いながら前進してレーザー・ガンの位置をたしかめ ッ走ったのだ。 ると、再びじりじりと後退してきた。それから彼は、あたりにころ がっている手頃なひと抱えほどの岩を捜し出すと、それを両手で持 それにひツかかった一羽が空中で四散して地上に墜落した。そい
「駄目だよオ、こっちには見えるんだもの。止めておくれよ、お 「かせいだ金も返して貰おうじゃね工か」 れ、こんなことしたくないんだから」と、再び薄暗がりの中にコン 「それは困るンです」コンが大真面目な声で答えた。 の迷惑そうな声がした。 「困る ? 」 「タッー タッ ! 助けてくれ工 ! 」最後の一人は、喉から絞り出 「どうしても十万クレジットいるんですから」 すようにやっとそうささやくと、狂ったように逃げていった。 「ほう、十万 : : : な」相手はちょっとおどろいた様子だった。「し しばらくその方を見送っていたコンは、再びトコトコと歩きはじ かし、お前が死にや、十万はいらなくなるだろう、な ? 」 めた。宿まであといくらもない。しかし、そこでコンは突然びたり 「いえ、あたしが死んでも仲間が困りますから : ・ : こ と立ち止まり、じっと耳を澄ませた。そしてそっと振りかえった。 「素ッ頓狂な野郎だなあ。え、もういっぺん聞かせて貰うそ。仕掛ばツー と閃光が走った。 けと十万クレジット、素直に出すのか、出さね工のか ? 」 しかし、今度のレーザー・ビストルはコンが射ったのではない 「あの、それは困りますから : : : 」 五〇メートルほど離れた家の屋根の上。どさり ! となにかがとび 「よし、それじゃ困らね工ようにしてやる・せ、恨むなよ」 おりる音がして、つかっかと足音がこちらへ近づいてきた。 言葉と共に、ポツー と闇の中を閃光が走った。 「用心しろよ、コン、こっちが後をつけててよかった」ピーターの 一瞬おくれて、ボコツー 鈍い音と共に頭がはじけ、一瞬で煮え声。「もう一人いたんだから」 あが 0 た脳漿をあたりにまき散らし、ドサリと倒れた首なしの死体「そ 0 ちが早か 0 たんだよ」 = ンはぼそりと言「た。 は、たった今までコンにレーザー・ガンをつきつけていた男の方・ : 「行こう ! 人が起き出してくると面倒だ」 コンは黙ってビーターにつづいた。 「ね = 、帰しておくれよ : ・・ : お願いだから : ・ : ・」 「全部、片付けたからもう大丈夫だねェ」コンが早足で歩きながら 血を凍らせて立ちすくむ二人に向か 0 て、 = ンの場違いな声がし言「た。「やりたくないのに。でも、あんな近い距離で射っと臭い た。「こっちは十万クレジットなけりや困るんであそこへ連れてつね = 、人間のはらわたって : : いやだなあ : : : 射ちたくないのに、 て貰っただけなンだから : : : 」 あんなことを言うんだもの : : : 」 だが、再びコンの手許から閃光が走り、ギ工ェッー と異様な声「襲われたとなると、十万はかせいだんだな ? 」 と共にレーザー・ガンを構えた男の腹がはじけ、蒸気と血煙をあげ「ああ、ビーちゃんに渡しておくよ、なくすと大変だから」早足で て切り離された上半身がどさりと路上にころが 0 た。灼け残りの腸歩きながら、「ンは内ポケ , トから札東をひきずり出した。 がチリチリと音を立てて闇の中に小さな炎をあげたがすぐに消え 「いいからしまっておけよ」。ヒーターはあわてて押しとどめた。 「しかし、一体どうやってかせいだんだ ? 」 こ 0 け 7
ちあげ、慎重に前進した。そして用心深く狙いをさだめると、その あの岩をすこしずらせば、また同じ時間だけビームの発射はつづ 岩をばんとレーザー・ガンの前に放り出した。 くのだが、岩を動かす手段がない。さきほどのビームのおよその位 置はわかるが、まかり間違ってでもひとつにひツかかればそれでお あたりは凄まじい閃光に包まれた。 しまいだ。五十メートルほど離れて二人は、目に見えぬ危険極まり しかし今度は一瞬ではない。あたりに据えられた十基以上のレー ないビームの網に包囲されてしまった : ザー・ガンは、眼のくらむような閃光を放ちつづける。 と、コンはぎよッとなった。 いま放り出した岩にぶつかる白熱のビ】ムが、眼のくらむようなすぐそこの樹上にとりつけられた看視カメラが、ゆッくりと首を 火花を散らしている。 振ってこちらへ回ってくるのだ。とっさにコンは、腰のレーザー 動物などの体と違い、ビームが岩を貫通するまで発射がつづくのガンをひッこ抜きざま、こちらに向きかけている看視カメラのレン ズ部めがけて引金をひいた。防弾ケーシングにおさめられてはいる が、近距離からレーザー・ビームの連射でやられればひとたまりも まぶしさに馴れると、一面が閃光に包まれているように見えてい ビシッー たあたりは、実は、十数本のレーザー・ビームが地上三十センチほ と音を立ててレンズにひびが人り、カメラはおか どのところを縦横に走っているのが見えてきた・ しな方向を向いたまま止まってしまった。 「走れ ! 」コソが叫んだ。「ひツかかるなよ、向うまで飛び越えて とりあえずなんとかみつかるのは食い止めたものの、警備兵はす 走れ ! 」 ぐにやってくるだろう : 一瞬で覚ったバムは身をひるがえして走りだした。無気味に走る「。ハム、樹に登れ ! 」 白熱のビームの上を彼女はばツー と跳び越えた。つづいてもうひ それしかない。五十メ 1 トルほど離れて二人は樹によじ登った。 とっ ! またひとっー コンも後を追って走り出した。ひとっー しかし、樹はまばらにしか生えていないから、枝伝いに危険地域を ふたっ ! ひっかかったらおしまいだ。あと半分ばかり 越えるわけこよ、 二人は閃光の只中を死に物狂いでつッ走った。 糞 ! 追いつめられてしまった・ : と、そのときである。だしぬけにビ 1 ムがすべて、びたりと止っ 間もなく、道の方から兵隊を五人ほど乗せたエア・カーが接近し た。眼がくらんであたりは真ッ暗 ! てきた。二人は樹上に身をひそめるだけ・ : 「止まれ ! 動くな ! 」凍りつくような思いでコンが叫んだ。「動ェア・カーが着地すると、警備兵は地上に降り立った。ひとりが くなよ ! 」 すこし離れた岩蔭に歩みより、なにか凹みに手をさし入れた。 レーザー・ビームが岩を貫通してしまったのだ : ・ そのとたん、今までまったく気づかずにいたのだが、肩にしがみ 面倒なことになった ついているインコのパロの立てていた低い唸りみたいな声がびたり 2 引
~ 三 カムリ岬′ / り海岸 が歹証のこ トサ ーなラキア半島 / 彡 羽ゝ / 三ア グン。デ 一ア一一マラ イプ明匣アーー - 一ルロ ・・ラサー チュルファン , 彡 , ラナ、 カンファン チュグル : ・獅・原 トルアシス、 ・・アムラシュ ャガ ト ) レース・・ : い テッサラ / アル巨 243
ちょうど、地中の井戸から一気に青空めがけてとび出しでもした全員が、ロを利く余裕もなしに座席へへたり込んだまま。只、頭 ような船体はそこで推力をなくし、徐々にスビードをおとしながらの中だけがめまぐるしく渦をまいている感じ : やがて一旦静止すると、今度は逆に降下しはじめた。 だしぬけにロケ松が叫んだ。 「ど、どこだ ? ここは ? 」ビーターがやっと叫んだ。 「コン ! 逃げろ ! 」 「糞 ! 」ロケ松はレ・ハーを一杯にぶち込み、なんとか沈下をおさえ 「へ工 ? 」コンはやせこけた骸骨みたいな顔に不思議そうな表情を るだけの推力を絞り出した。 浮かべた。 「あアッ ! 」息を呑んだのはバムである。幽霊を見て以来、放心状「今すぐバムを連れて逃げろ ! 」ロケ松は言った。「ここが星涯と 態だった彼女はいきなり大声をあげた。「タンポポ村 ! 」 なりや、。ハムはお説ね者だ。星系警察が追っかけまわしとる。なに 「ええッ ? 」ビーターが仰天した。「ソ、そんな、馬鹿な : ・ : ・」 かわからんが、星系政府はここでとンでもね工ことを企ててるらし バムはあまりのおどろきにそれ以上、声も出ない。 。俺達や、もろにその中心へとび込んじまった」 あがれ 「ありや白沙だ ! 」だしぬけにつぶやいたのはコンである。 「このまま離昇できね工か、とッつアン ? 」。ヒーターが言った。 なるほど、青い空に白々と浮かんでいるのは、まぎれもなく惑星「駄目だ」ロケ松はおちつき払っている。「どこかノズルをひっか ・星涯から見なれた白沙ーーである。 けたらしい。今のがやっとだ。コン ! 早く。ハムを連れて逃げろ。 すぐに警備の奴等がくるそ。ここは俺達がなんとか切り抜ける」 〈金米糖錨地〉から出港して〈冥土河原〉星系にたどりつくまで、 「みんな一緒に逃げよう ! 」とコン。 小刻みに跳躍をくりかえしたせいだとはいえ、一ヶ月近くの時間が「早く行け ! みんなで逃げれば会社がまずい。船籍ナン・ ( ーから 必要だった。 すぐ足がつく。ここは俺達がけりをつける」 ところが 「わかりました ! 」コンは。ハムを促して立ちあがった。 〈冥土河原〉星系の小惑星帯で幽霊と出会わしてから、一体、どれ「とッつあん ! とッつあんも逃げるんだ ! 」。ヒーターが吽んだ。 位の時間が経過しているだろうか : : ・。ほんの十分 : それも「ここは俺ひとりでやる。俺ひとりで〈冥土河原〉へ行ったことに 通常空間航行でのことである。コンソールへ眼をやる迄もなく、 すれま、 ししいだろ」 〈クロバン大王〉の消去エンジンもタイム・エーテル推進システム「駄目だ ! 」ロケ松はきつばりと言った。「この船を一人で飛ばし もスイッチは切られたまま。 と言ったって通りやしねェ」 「とにかく、バムを しかし、だとすれば、これは : : : 一体・ 「それじゃ」コンがバムの手をひいて言った。 その結論を出すよりも前に、やっとのことでロケ松は〈クロバン逃がしますから」 大王〉を接地させた。 「頼むそ ! 」ロケ松が言った。「いよいよ切ッ羽つまったら、仕方 228
原案・栗本薫イラスト・高倉ゆき 区プ国区 ス 2 工 タフォロ サイロン / アリナ ケイロ目ア第月デ アルバタナ・丞なをノ 、アルセイス 、 \ 領ノ の・テレインスな宀 . ン : : イ愛を ( ス初トキア = 第な 、ぐィ′ ランキン 、イ三一 / ス街南 工丿レフア、 : = ラ月。 " 、グリ・タル 、の回一。 , ィをう . , ーマール公爵 ーラヴィア 気、公爵領 カラウィア サルジナ、公 チュルファン ル毒「ト - 吟、 の弖回ス = ラ力、ド ヴァーース湖沼地 の第一を ・を 2 レ イプ団ア、 ト \ 乂旁メ生 ラトナレン 山脈乞 ス ) ロ アル・ト \ ラ チ 0 グ丿レぐ。、、 : に、、、ご、
ビーターが手動で制動噴射をかけた。高度の変化がめだっておそ イの中心へ中心へと持っていく : ・ くなった。 「沈下速度はやくね工か、おッさん ? 」ビーターはディス。フレイか そのとき、とっ・せんコンがおかしな声をたてた。 ら眼を離さぬまま言った。 そのまんまいけ」ロケ松がコンソールのボタンを押「おかしいよ、おかしいよ、おッさん ! 」 すと、。ヒーターのにらむディス。フレイのなかに、めまぐるしく変化「なに ? 」噛みつきそうな表情でロケ松が聞きかえした。 「おかしいよ、これは」スコー。フをのぞき込んだままコンがくりか する沈下速度と高度の数値があらわれた。 えした。「へんだよ、これはーーー」 「風は ? 」 「進入標識がおかしいのか」 「いま聞く」コンが背後の通信卓から答えてスイッチを入れた。 「いや、信号はびったり上ってきてるけど、地形がーーー」 「冥土河原宇宙港管制所、地上の気象状況願います」 とたんに、スビーカーからガーツ ! と妻まじいノイズがとび出「進入標識に狂いはねエンだな」 「狂いはね工。だからおかしいんだ」 してきた。 五千・ : : ・四千 : ・ 「どうなっとるんだ、この惑星は ! 」ロケ松がディス。フレイを見つ 「進入標識は大丈夫なんだな ? 」ロケ松はくりかえした。 めたまま叫んだ。 「進入標識は大丈夫だけど、ほらーー」 「どういうことだろ、これは」耳の破れそうなノイズのなかで、コ 「それなら黙れ ! 」ロケ松が一喝した。進入標識に狂いがないンな ンはそう叫ぶなりスイッチを切った。 「よし、そのまま、いけ」ロケ松が叫んだ。「替るか、。ヒーター」ら、四の五のと騒ぐときか : 両手でレ・ハーを握りしめたまま、。ヒーターはむッとしたように首三千 : : : 二千 : : : 一千 : ビーターが再び減速噴射をかけた。ぐーっと体が緩衝座席へめり を振った。ロケ松がニャリと笑う。 高度が下っていくにつれて、標識のレンジは次々と大きく変化し込む。 ディスプレイの数値の変化がめつきりとおそくなった。 ていく。「よし、そのままいけ」ロケ松はビーターに向かってアド ・ハイスをつづけている。 「おかしいよ : : : おかしいよ : : : 」オウムを肩に止まらせたまま、 コンはつぶやきつづけている。 「よし、一万メートル」 船尾方向看視スクリーンの中心に、離着床で点減しているラン。フ その声と同時に、ディス。フレイ面の高度表示はキロからメートル が三つ。三角形に見えはじめ、見る見る大きくなっていく。 に切り替る。 進入標識の同む円は、びしやりとディスプレイの中心におさまっ ている。 7