宇宙 - みる会図書館


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1. SFマガジン 1981年5月号

ではないはずだ。 ら、操作はいたって簡単なのだ。 矢印を追 0 て、竜介は船内の通路を走 0 た。駈け昇り、駈け降離脱ボタンを押すと、ポートは弾かれたように宇宙空間〈飛びだ恥 り、入り組んだ矢印の指示を呪いながら走り続けた。この宇宙船のした。 大きさはどのくらいのものだったろうという疑問が、初めて湧きは スクリーンに " ライジング・オニオン〃の緑色をした大地の全貌 じめた。その宇宙船の外見を竜介が確認していたわけではないのだ。 が広がっていた。 年齢のせいだろうかと自分の肉体を呪った。足がもつれはじめて ″ライジング・オニオン″着陸まで、宇宙ポートで七時間かかって いたのだ。吐息に甲高い笛のような音さえ混っていた。 「今、宇宙船が引返したら水の泡だ」 宇宙ポートの機能として、当面の危機的状況を回避するだけのも 精神力だけが竜介を走らせていたのだ。 のしか持ちあわせていない。だから、もよりの惑星に着陸するか、 身体が瞬間的に・ハランスを喪失し、倒れこんだ。 宇宙船からできるだけ遠ざかれるだけの燃料しかないわけだ。危機 「しまった」 を脱したら、宇宙空間か、着陸した惑星で救援信号を送り続けるこ 老人は右手に抱えた小箱をかばうように倒れこみながら身をすくと程度しかできない。 めていた。左足の激痛よりも、小箱が無事であったことに安堵しな 一時は「このまま、″べグ・ パードン″まで飛んでしまお がら、立上ったのだ。 うか」と考えた竜介だったが、操作マ = = アルを読みながら、一応 竜介はもう走れなかった。しかし、そこが終点だったのだ。矢印″ ライジング・オニオン″へ着陸するしかないと諦めたのだった。 がそう示していた。 さいわい、宙港の一つに目立たないように着陸できたのだ。小型の 「誰だ。そこで、何をしている」 宇宙ポートはそういうメリットがあったわけだ。しかし、いくら ″・ヘグ・ 野太い声が聞こえた。非番の航宙士の一人らしかった。竜介は宇 パードン″からの脱出船受入でハ ード・ワークにな 宙ポートへ乗組むための。ヒットに足をかけていたのだ。 っているとはいえ、管制塔の目をくぐることはできないはずだか 「やめろ、自殺行為だそ。宇宙船はいま動き出そうとしてるとこなら、状況を調査にすぐ人がや 0 てくるだろう。そう考えた竜介は宇 んだそ」 宙ポートから飛び降り、″べグ・ ハードン″からの避難民の 竜介は航宙士の言葉を無視してコクビットに座った。 雑踏の中へ駈けこんだ。これ以上、時間的余裕はないのだ。案の 航宙士は船長に連絡しているらしかった。 定、宇宙ポートの着陸した地点あたりへ、寄妙な形をした乗物が甲 「しばらく、機関始動を待 0 てください。きちがいが一人、宇宙ポ高い音を鳴らしながら走っていくのが見えた。 竜介はまず、宙港のインフォメーションへ行くことを考えた。 竜介はビットの開閉部を閉じた。緊急脱出用の宇宙ポートだか ″ペグ・ パードン″の状況を確認し、もし、まだプレ・ヘリ

2. SFマガジン 1981年5月号

ウム・フラッシ、が始まっていなければ、何とか、宇宙船をチャー 「へえ。さようで。宇宙内の揉めごとから、自家用宇宙艇のメンテ ターしようと単純に考えていた。 ナンス、引越しサービスまで、頼まれれば何でもやっておりやす。 しかし、傭船は不可能たろうという恐れも常につきまと「ていた宇宙空間の御用でしたら何でも仰せつかりますぜ。例え、火の中、 のだ。定期宇宙船は少なくとも無理だった。インフォメーションにブラック・ホールの中」 尋ねるまでもなく全便欠航の掲示が各所に貼りだされていたからそうかと竜介は安堵した。やや饒舌気味のキャ〉チフレーズのよ 」 0 うだなと竜介は思ったが、確かに″宇宙よろずの男の話術は頼も 「はあとどのくらい持つのかしら」 しさを感じさせる種類のものだった。 「さあ、フレアの膨脹が活発化していると聞いたから : : : あと持っ 「ぜひ、お願いしたいことがある」 て三日だろうな」 竜介の声は何故か枯れたような音質だった。 竜介の横でしやがみこんた中年の男女が途方にくれたように話し「〈え、何でも承りやすよ」 ていた。″ペグ ハードン〃からの難民らしかった。 男は身を乗りだした。予想外の大男だった。 「あと三日」 「わたしを″べグ・ ード / まで連れて行って欲しいの スへスー・ジョブ・サービ入 とすると、命しらずの、″宇宙よろずに頼むしかないな。 そう竜介は思 0 た。 " 宇宙よろず。は金さえ積めば、宇宙空間にお男は椅子に再び腰をおろしていた。 けるサービス業務はどんな危険なことでもやってくれる。そして、 「宇宙旅行でしたら、旅行代理店に頼みなさいよ。そりゃあ、受持 辺境の宇宙空港には、必ずその出先カウンターがあるはずだった。 ちが違う」 ″宇宙よろずを探そう。 いくらかかってもかまわない。 ″ペグ・ 「それは、わかってる。しかし、″ペグ・ ードン行は現 ードンへ輸送してもらうだ。 在一本もでていない。だから、頼んでいる」 " 宇宙よろず″のカウンターはすぐに見つかった。筋肉を盛りあが 「しかし、 : あの貼紙を御覧になったでしよう。″・ヘグ・ らせ、満面を髭で装飾した精悍な頬杖をついて、所在なげに座って ( ードン″はルイテンのフレアをもろに受けようとしてるんです ぜ。ビッグ・ヘリウム・フラッシ、が今にもはじまるかも知れない 竜介は左足を引摺りながらカウンターに近寄った。カウンター迄んた」 の距離が異常に遠くに感じられたのだった。 これが″宇宙よろず″の料金交渉の際のかけひきであることを竜 「″宇宙よろず〃だね」 介は願っていた。 カウンターの男は分厚い唇を三日月のように裂いて笑「てみせ「今、例え火の中、・フラ ' ク・ホールの中と言「たばかりじゃない か。どんな危険作業もいとわないのではなかったのか。料金は、は こ。

3. SFマガジン 1981年5月号

るのは船内アナウンスと大差ない答ばかりだった。 亜空間航法を終えたらしかった。 ′ライジ それからの一時間、童介は拳を握りしめ、祈るような気持で過ご 竜介には時間の経過がはっきりと掴めなかった。ただ、 ング・オ = オン。の到着まで、あと三時間十五分というデジタル表した。ときには叫びだしたくなる衝動にかられ、歯をくいしば「て 永遠とも思える一時間を過ごしたのだった。 示で、そんなものかと思うだけだった。 しばらくは、偏頭痛のために放心状態を続けることができた。少唐突に船内アナウンスが響いた。 ドン 「″一フィジング・オニオン″の全宙港は、べグ・ なくとも、他のことを考えすにいられる。そう竜介は呟いた。 よりの避難船のため麻痺が続き、着陸不能です。宇宙省では、この 身体を寝台の壁にもたせかけて、頭をかかえこんでいる時だっ トンよりの脱出業務を緊急最 事態について、″・ヘグ・ 優先に指定しましたので、本船は″ライジング・オニオン″への着 「乗客の皆様にお知らせいたします」 船内アナウンスだ「た。亜空間を通過したことの連絡たろうとい陸が不可能となりました。つきましては、本船はただいまより地球 へ引返します。大変、御迷惑ではございますが、よろしく御協力の うくらいに竜介は考えていた。 ほど御願い致します」 「本船は、現在、亜空間航法を終え、くじら座星系にあり、 竜介が、その意味を悟るのに数分かかった。信じられなかった。 ″ライジング・オニオン″まで約三時間の地点を航行中です」 そうだろう、急いでやってくれ : : : 竜介は呟いた。や 0 と偏頭痛宇宙船は " ライジング・オ = オン。へ着陸しないのだ。 「嘘だ」 が治まりかけていたのだった。船内アナウンスが続いた。 竜介はそう叫んで、壁を拳で何度も殴り続けた。皮が破れ、血が 「今、″ライジング・オ = オンより入りました連絡によると、 1 ドン 壁にこびりついていた。自分が " ライジング・オニオン″から数時 ″ライジング・オニオン″の全宙港は、″ペグ・ の脱出船受入のため、一般及び定期航宙船の着陸が一時的に麻痺し間の距離にいるのに地球〈帰らねばならないという理不尽さと、も ている状況です。このため、本船は現地点で停船し、着陸可能時点どかしさで他にどんな行動をと「ていいのかわからなかったのだ。 竜介は個室を飛び出した。スチワードを探そうとしたのだ。だ このまま″ライジング・オ まで待機することになります。万が一、 = オン。に着陸できない場合、地球〈引返すこともありえますのでが、彼の目に、「非常脱出路」と書かれた矢印の。フレートを見たと き、その行動目的を変更した。 御了解をお願い申しあげます」 「短距離航宙用の宇宙ポートがあるはずだ」 一瞬、竜介は虚をつかれたように呆然とした 9 宇宙船事故発生時における緊急脱出用の小型宇宙ポートを搭載し 「一時間後に新らしい情報をお伝えします」事務的な口調だった。 ておくことが義務づけられていることを、竜介は思いだしたのだっ アナウンスは終了し、その後、何も告げようとしなかった。 た。これは亜空間航法をとるすべての遠距離宇宙船にとっても例外 竜介はスチ、ワードを呼びだし、詳細を問合わせたが、返ってく スペース ー 45

4. SFマガジン 1981年5月号

ワードの言葉から、竜介は妻を連想したのた。「ちょっと、このご宙航船は大型の輸送用機によって、大気圏外へ曳行され、亜空間 ろ血圧が高くなってるんじゃありませんか」美梨子が人間ドックの航法にうつることになる。 カルテ控を見ながらそう言っていたことを思いだしていた。 スチュワード が再び竜介の横に立った。 「その小箱は危険ですのでお預りしましようか」 「保険を、かけてもらえるかね。宙航保険だが」 希望の期間をどうそ。それから、お客様の住所と生年月 竜介は首を横に振った。「いや、その必要はない。脇でしつかり 日。あ : : : それから保険金の受取は法定の相続人ということになり持っておくから。 : : : 今の俺には命より大事な品なんだ」 ますがよろしいですか」 スチュワードは肩をすくめて立去っていった。 小箱を竜介が握りしめたとき、艇内に流れていた音楽のポリ = ー 「法定の相続人というと : : : 」 ムが下がりはじめていた。寝台の照明が消えた。 「奥さまがいらっしゃれば奥さま。子供さんがいらっしゃれば・ 背中で震動を感したとき、竜介は自分が高所恐怖症であったこと 「わかった。わかったよ。それでいし を思い出していた。 掛金は地上でのそれと違い法外なものだった。しかし、手続を終軽い圧迫感が続き、いま自分は地上を離れ上昇を続けているのだ え、再び寝台に横になったとき、竜介の胸にしこりとして残ってい と実感していた。 たものが、い くぶん軽くなったようだった。だが、それで安堵感が 壁の外には何もないのた。 得られたというわけでもなかった。 あの″べグ・ ードン″を離れ、地球へ美梨子を連れて帰 美梨子。すまない。この宙航は自分が人間としてやっておか ったときも、上昇中の宇宙船の中で何度も叫び出したい衝動に襲わ なければならない最小限の償いと思うんだ。 れたのではなかったか。もう二度と宇宙船なそ、乗りはしないそと 出発までの二時間は竜介にと 0 て永遠の時間のように思われた。考えたのではなかったか。何故、俺は再び宇宙船に乗っているの 自然と手のひらが汗ばんでくるのだ。″フローズン・。ヒクルス″ま で辿りつくのま、 。ししそこから、″べグ パードン″までど それから、竜介は何も考えないようにと思念を打ちはらった。考 うやって行けばいいのだ。″フロ 1 ズン・ビクレスま、つこ、・ ノ〃。しオしとえれば迷いが生成される。今までの人生がその繰り返しだったのた んな星たったのだろう。そこから連絡用の宇宙定期艇でも出ていれから。 ~ いいのだが・ ″フローズン・ビクルス″までの十五時間は他のことを考えるべき 船内に「螢の光」が流れはじめた。 ではない。達也のことだけを考えて、れ・よ、、。 「あと五分で、本船は地球を離れ、『フローズン・ ' ヒクルス』へ向達也。達也だ。 けて飛行を開始します」 竜介の身体中に再び、悪寒がまとわりつきはじめた。真綿で全身 ー 42

5. SFマガジン 1981年5月号

「そうだ。実に、よくできてはおるがね。『宇宙戦争』の挿絵をも って、邪悪なおぞましいいやらしい目でわたしをねめつけた。 とに、わたしがツブラヤ・プロへ発注した。このシリンダー型宇宙 「わっ」 わたしは逃げ出そうとした。しかし、腰がぬけていて、できなか船は、石川島でつくらせたプラモデルだ」 「な、なんでそんな、またーー」 「こういうこともあろうかとーーー見たまえ」 ; 、ジョン・カーターをくっちまった」 「タコカ ジョン・カ 1 ターはタコ型宇宙人のうしろから、また何かをつま わたしは泣きわめいた。 みあげた。それは、意地のわるそうな顔をして、毛の一本もない、 「おれもくわれちまう。ああ、ああ。助けてくれ。ロザリン。エミ ー。ジ「ーダン。・ヒリー。誰でもい子どもくらいの大きさの、緑色のこびとの人形だ 0 た。 モンデール、キッシンジャ 助けてくれ。死ね、ロナルド・レイガン。わあっ、こわいよ「これはリモコンで動くようになっとる」 ジョン・カーターが説明して、背中のところを操作すると、こび う。ぼくはぬちょぬちよしたものがてんでダメなんだ。日本でサシ との手があがり、ペろりと舌を出し、鼻のところで手をヒラヒラさ ミをくわされて、こわかった。大統領ってなんてつらいんだろう。 。くわれるのはもっとイヤだ。わあ。タスケテせた。わたしも赤んべえをやり返してやった。 ヤキトリの方がいし 「クイムできるようになっとる。よくできておる」 クレ ! 」 「こ、これをいったいどうしようというんです ? 」 「なんという、軟弱な男だ ! 」 タ = のくちばしが動いたかと思うと、そこから、呆れかえ「たよ「わからんのかね。いずれ地球からこの・ ( スルーム、いや、もと 、、・ ( ルスームへ、有人宇宙船がやってくる。そうなったとき、こ うな声がとび出した。 タ = はわたしの方にや「て来ようとしていたが、それが急にクタれが出てくれば、みな『火星にはタ = 型宇宙人がいた』とさわぎた クタとなると、そこから、す「くとジョン・カーターが立ちあらわて、真相には永遠に気づくことがないであろう。あるいはフレドリ ック・・フラウンの火星人でもよい。これはとにかく、火星がじっさ れた。 いにはどのような世界であるかのカモフラージ = のためにつくられ 「わあ」 カーターくん、こ たものなのだ。わしが考えついたのは、ジミー・ わたしはすすり泣いた。 「よ、よか 0 た。生きてたんですね。タ = に消化される前に、腹をの人形とヌイグルミを総動員して、合衆国に擬装攻撃をかけてや る、ということなのだ。さすれば人はみな大恐慌におちいるだろ 切りさいて助かったんですね。心配しましたよ。ご先祖様 : : : 」 う。オーソン・ウエルズのニセ放送だけでパニックにおちいったほ 「えい、うるさい。これをよく見なさい。これはただのヌイグルミ ど、人を信じやすいアメリカ人のことだからな。そうしててんやわ んやの大さわぎになり、無能な新大統領を非難する声がたかまった 「ス、ヌイグル 3

6. SFマガジン 1981年5月号

″ヒノシオ号″は、小さく鋭い母星のスペクトラムをきらきらと反 「それはもう。大助かりです」 その調書によると、シンジケートは地球の日本地区の神田付近の射させて遠ざかり、やがて、例の黒い雲の中に姿を消した。 〈予定どおり、『ジャン。フ』をしおったな。やはり、お前たち 某所にあり、密売の得意先は各種のクラブの類であるらしかっ が到着直前に眺めた″ヒノシオ号″は、たしかにこれだったわけし ハラドとックスはもちろんシンジケートの手先にすぎず、大物はや〉 ホールホール老人は、ニュース解説者の表情になって言った。 太陽系内部でのうのうとして甘い汁をすっていることがわかった。 イイイとヤャヤとヨョョは″べテルギウス人の例にもれす、お「もったいないなあ」 っちょこちょいで、だまされてミニミニ入りのウイスキーを「まあ、しかたがないさ」 ヒノとシオダは、複雑な気持ちで、黒い雲に消える″ヒ / シオ 呑まされているうちに中毒となり、宇宙の帝王となってスベオペる 夢が忘れられず、ミニミニの報酬ほしさに悪事のお先棒をか号″を見つめた。 ついでいたのだった。 二人が複雑な気持ちになるのもむりはなかった。なぜならそれ キャ。フテン・タイムはこの五人の悪漢を、例の岩棚の断崖からさは、冒頭で記したように、ジャン。フのあと、シンジケートが母 船としてやとった″ペテルギウス人″のもう一隻の宇宙船とドッキ かさに吊し、十分の懲らしめを与えていた。 しかも、崖のふちにミニミニをまいて、もし今度彼らが・フングし、そして、あいかわらずの彼らの悪人ぶりによって破壊され ラックホールを口にしたら、たちまち時空を移動してこの断崖に出てしまう運命にあったからだ。 現し、墜落するようなしかけをしていた。 いくら時間論理を破らないためとはいえ、やるせない気持ちで見 彼らはそれを見てふるえあがり、二度と・フラックホールに関係し送らざるをえないのである。 ないことを誓ったのだった。 そんなヒ / とシオダの気持ちを察したらしく、ホールホール老人 はアカンべ工の顔をしながら、親切な言葉をふたりに投げかけた。 調書を見て安心したり感心したりしているヒ / とシオダの眠に、 〈そうしょげることはなかろう、お若いの。わしはお前たちが気に やがて、紫の空を上昇してゆく″ヒノシオ号″の姿が映った。 いっとる。金銭的な誘惑には眼もくれずに、学問と宇宙の平和のた 「おれたち、悪人に対しても親切なんだなあ : : : 」 めに身も心もささげる若者というのは、近ごろこの宙域にも少なく ヒ / が、ナルシシズムで胸を熱くして言った。 「時間と空間の論理をまっとうさせるためには、これしかないのなったからのう。その点お前たちは希少価値があるのじゃよ、う む。で、わしは・フレゼントしようと思う〉 シオダも自分に言いきかせるように言った。 老人はアバラ骨をポリポリとかき、『プラックホール蚤』をつぶ こ 0 2 引

7. SFマガジン 1981年5月号

・フリ』などの餌食になってしまうが、好運なものは生きのび、″・フ ールからミ = ・・フラックホールへの物質渦流によって発生するのじ ラックホール人。にひろわれ、育てられるのじゃ。しかし、なかやよ。で、ホワイトホールというのは、別の時空からいくらでも物 2 に、とくべっ元気のいい受精卵もあってな。それは反重力物質と通質を噴出させることができる。ちょうどビッグ・ ( ンによって宇宙全 常物質との相互作用による推力を得て、宇宙に飛びだすのじゃ〉 体ができたようにな。つまりその線エネルギーは無限につづくと 「宇宙に ! 」 いうわけなのじゃ。受精卵は、じやから、宇宙をとぶ間に、自分の内部 ヒノがびつくりした声をだした。 から涌出するエネルギーによってぐんぐん成長するのじゃよ : : : 〉 老人は嬉しそうに笑って、杖でヒノの頭をたたいた。 老人はとくいそうにふんそりかえった。痩せた脛がむき出しにな 〈そうじゃ、宇宙へじゃ。見なさい。霧のような流れる一部が、天った。 空高く舞いあがっとるじやろう。あれは宇宙へと飛翔する受精卵の ヒノは眼をまるくしながらも、つぎの質問にうつった。 一群なのじゃ。わしはな、タイムが混血なので、この愛の儀式がう「で、大きくな「た受精卵は、それからどうなるのですか ? 」 まくいくかどうか、内心は心配しておったのじゃ。じゃが、あの霧 をみると、それは杞憂じゃったの。タイムは立派な″・フラックホー イ・ ル人〃じゃ。わしと妻の結婚はさすがにああはゆかず、遺伝子工学 の力を借りたわけじゃが、息子のタイムはその必要はなかった。い ホールホール老人はわが意をえたり という表情になった。そ や、あつばれあつばれ : : : 〉 して右眼の下のプラックホールを指さした。わが意をえた表情がア 老人は杖をふりまわし、その反動でころびそうになり、またアー カンべ工の顔になった。 ルに支えられた。 〈よくそ訊いてくれた。それこそわしの最大の研究成果なのじゃ。 ヒノは老人のこの言葉にうんうん唸って感心しながらも、疑問に このわが妻の・フラックホールも喜んでくれるじやろう。わしは発見 思う点をたずねた。 したのじゃ。偉大な発見じゃ〉 「ご老師、いやおそれいりました。ただ、宇宙に飛び出す受精卵老人は頭をふりたてた。三千丈の白髪が桃源郷をわたる風にたな は、地表にもどるものとちがって栄養の補給ができませんから、ちびいた。 よっと育ちにくいんじゃありませんか ? 」 〈あの受精卵は成長しつつ孵化し、繭をつくる。その過程で、自分 〈想像力が貧困じゃのう 〉老人はアールに支えられながら杖をの = ネルギーの他に宇宙線や、線星に含まれている各種の宇宙情 ふりまわした。そうとうな昻奮ぶりである。〈ーーー思いだしてみな報を吸収し、その宇宙情報をもとに遺伝子メモリーを改良し、成長 され。昨夜わしが教えてやったあの『性の神秘』の顕微鏡写真を ! しつっその繭の形状を変化させてゆく。そしてその代表的な形状と 受精卵の遺伝子を作動させる x 線エネルギ 1 は、ミニ・ホワイトホは : : ↓

8. SFマガジン 1981年5月号

レーガンは気取ったようすで云った。 わたしは怒って云った。 「いや、実はだな、カーターくん。わたしは一介の俳優からはじ「だから役者などを大統領にしてはならんというのだ。くそ、愚民 め、カリフォーニア州知事をへて、ついにこの合衆国大統領の座にどもめ、見てくれにだまされおって」 までついてはみたが、しかし、なってみるとあれって大しておもし「でまあ、そろそろホワイトハウスにもあきてきたし、何か面白い ろくないのね」 ことないかなと思っていたところへ突然、サイコ ーーーええと」 「わかった。サイコ・トラ・フル・サイトシーイング・のやつだ」 「そうそれそれ、それにさそわれてこうついフラッと、アンドロメ 「第一、ちっとも、思うように戦争ゴッコもできないし、着るもの だって西部劇の方がずっとカッコいいんだもん。わたしはもっと何ダへ来てみれば、まわりは地球征服をめざす悪い宇宙人同盟本部の かこう、ドラマチックなものを求めていたのだよ。このみたされなまっただ中」 い気持がこう、このところむやみにつのって来てな。だってそうだ「う、ううむ、だからといってな・せきさまが」 ろう。イラン問題もとりあえず落着したし、あとは日米車戦争と「よく考えてみたまえ。わたしは現職のアメリカ大統領だよ。大統 か、およそ・ほくの見せ場ってないんだもの」 領としての立場からは、どうせまた米帝とかいわれて、どこへも侵 「えい、大統領とは、見せ場でするものではないわ」 略戦争なんかしかけられないし、ちょっと出兵すりや国連でやつつ 重版情報 ハヤカワ文庫 銀河大戦ハミルトン 320 クロの決死圏アシモフ 400 謎の宇宙船強奪団ハミルトン 320 鳥人の森ムアコック 340 銀河よ永遠なれアンダースン 320 荒獅子コナ / ディ・キャンプ 360 邪神と闘うゾンガーカーター 320 魔法つかいの船ポ ク 340 タイム・′くトローノレアンダースン 360 惑星タラスト救出せよ ! ハミルトン 340 星間運輸船強奪さるチャンドラー 340 ダーテイベアの大冒険高千穂遙 340 〔ローダン〕 銀河の時空を抜けて 340 超ミュータント出現 ! 340 地球死す 340 ロポット・スパイ 320 アトランの危機 320 秘密使命モルク 340 テスト宇宙艦事故発生 ! 320 プラズマの怪物 340 幽霊艦隊現わる 320 警戒 ! 銀河中枢星域 320 そして誰もいなくなったクリスティー 320 終りなき夜に生れつくクリスティー 360 蒼ざめた馬クリスティー 400 緋 字クイーン 360 文 クイーン警視自身の事件クイーン 380 ガラスの村クイーン 360 恐怖の研究クイーン 280 最後の 撃クイーン 440 クイーン犯罪実験室クイーン 380 東京神田多町 2 ー 2 振替東京 6 ー 47799 早川書房 43

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ジョン・カーターはくつくっと笑った。 でもしたら、わたしや、死んでも死にきれませんよ。それにやはり わたしは一介の観光客なんです。火星に骨を埋める気などない。そ「あつあっ、ばかにした。わたしを誹謗しましたね。『とにかく』 れに、レイガンはにくいですが、だからといってわたしが裏切者につとめたと云ったでしよう。それはわたしが無能な大統領だったと いうあてつけでしよう。そうなんでしよう」 なるなんて間尺にあわない話、ありますか。わたしはもともと平和 主義者なんですよ」 「やれやれ。 いいかね、そんなことより、われわれは、たびか さなる宇宙船の着陸や偵察が、どうもうるさくってたまらんのた。 「えい、何じゃらかんじゃらと、うるさい男だな」 この上火星に文明の痕跡でもあったら、たちまち地球人はすっかり 呆れかえったようにジョン・カーターは云った。 「では心配するな。わたしが、きみが英雄にもどれるお膳立てをし興奮しておしよせてくるだろう。どうせ、そうでなくてもおそかれ てあげよう。こっちに来なさい」 早かれやってくるとは思うが、それまでにはこちらもいろいろな自 わたしはジョン・カーターと、心配顔のタルス・マメカスにつれ衛の手もうてる。その時間かせぎの意味もあって、やってくるロケ られて、大広間を出、地下の奥まった一室へと案内された。 ットはすべて、あらかじめ用意した砂漠ーーうん、われわれは明治 「ま、ま、まさか、わ、わたしを地下牢にぶちこむというんじゃな村と呼んでいるが、そこへはこびこみ、むろんその間は機械をとめ いでしようね」 ておいて、それからまた動かして好きなだけかれらの想像するとお りの火星の光景をうっしてもらっているのさ。その地区は人間立入 「びびるなというのに、みつともない」 禁止で、運河のあとその他、すべて人工的につくり出されているの ジョン・カーターは、お守り袋のように首からさげていた、でか だ。おお、あいた。入りたまえ」 い布袋をとり出すと、しきりに中をごそごそやりはじめた。 「ええと。これはテジャ ジョン・カ 1 ターが話すあいだにも、しきりに、見つけ出した巨 ー・ソリスの寝室の鍵だな。これが孵化室 の鍵でこっちが大気製造工場と。や、これだこれだ」 大なカギであけようとしていた大きな重たそうなコクタンのドア は、バカッと大口をあいて、その向こうにおそろしげな闇が待ちか 「ちょっときかせて下さい」 まえていた。わたしは思わすあとずさりした。 わたしはいぶかしさにたえかねて云った。 「前からふしぎに思ってたんですが、無人宇宙船・ハイキングがとっ 「どうした。入りたまえ」 てきた火星の写真、風景をみるとまあ似ていますが、これだけでか「イヤです。中に入ると、拷間室があって、それから奇妙なまがま い宮殿や都市があって、ただひとっとしてそれらしいものがうつつ がしい、この世のいかなる生物にも似ても似つかないヌラヌラと這 たためしがないのは、そもそもどういうわけなんです」 いすりまわるおそましい邪悪な生き物が、そのうろこにおおいつく 9 「一国の元首までとにかくっとめたというのに、きみもうぶな男たされた生まれもっかぬすがたのなかで、ただ双の眸にむごたらしい っ宀 ・カーター君」 人間性のかけらをとどめながらねっとりとわたしに這いよってき

10. SFマガジン 1981年5月号

0 読者のつくるべーラ 0 リータース・ストーリイ 「お前は人間失格だ」 今月は、選評が一頁になりましたが、べっ に「リーダ 1 ズ・ストーリイ」の扱いが軽く次の日、目をさますとカエルになってい なったというわけではありません。もっとこた。なれないカエルの体で外に遊びに出ると の欄をにぎやかにする。フランも考えていま車がきて俺をひき殺した。 す。とりあえず、といってはおかしいです今、俺は人間の赤ちゃんに生まれ変ってい が、今年の二月号から半年間、つまり二月号る。神様は何のために俺に人間失格と言った のだろう。アホとちがうか。 から七月号までに発表された作品について、 読者による人気投票をおこないます。そし と、こういう作品なのですが、ただ、 て、最高得点を得られた方には、掲載を前提 として本誌から原稿を依頼いたします。なこれを紹介すると、またオマケつきの作品が お、それに投票してくたさったかたにも、急増しそうな気がしますが、柳の下には、二 文庫の最新刊を抽選の上五名の方にさしあ匹目のどしようはだいたいいないことになっ げます。投票の締切は六月二十日、よろしくています。念のため。 このほか、東大阪市の好川紘処さんの「星 お願いします。 間チュープでひとっとび」がなかなかプラッ クな味わいがあるオチで、迫力がありまし さて、今月の入選作は東京の鈴木秀明さん の「ドカーン ! 」。アイデア的にいま一歩とた。 いう感じがしないでもないですが、おもしろ新屋ケンさんの「宇宙船の四人男」は、宇 宙船の退屈な日々を麻雀をやって過すという く読ませる力はなかなかのものです。 ところで、今月の応募作の中で、オマケつアイデアです。宇宙救助船の四人組が救助に き、というのがありました。広島県の大前危向かった相手から、面子をひとりよこせとい 一さんです。はっきりいって、応募作品はあわれるオチで、多少安直という感しもします が、とにかく読んでおもしろい作品で楽しま まり良くなかったのですが、オマケのほう は、なんとも妙な雰囲気があったので、ここせてもらいました。 で御紹介したいと思います。 「人間人格」 大前竜一 俺はある晩、夢を見た。神様がその夢には 出てきた。そして、俺に言った。 ◇ 9-