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検索対象: SFマガジン 1981年8月号
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1. SFマガジン 1981年8月号

5 おレヒッウ 旅 ( クエスト ) テーマのひとつの変形な 分は何者なのか、何が自分にできるの のだ。 か、すべきなのか。こう書いてしまう 従来のモダン・ファンタスイで、クエ と、たいていの文学はこれをテーマにし スト・テーマは飽きるほどに扱われてき ている、と嘲われそうだが、その問いか た。アーサー王の聖杯から『指輪物語』 ける姿勢の厳しさ ( あるいは、しつこさ ) までの伝統をふまえ、モダン・ファンタ は類を見ない。たとえば『繩の戦士』を ストの第一のテーマがこれだったと言っ 想い起こしてみると良い。主人公は冒頭 、が、。ヒアズ・アンソニイの手に で、自分の名前とともに、闘わねば生き かかると、この陳腐なテーマが新たな意 ていけない社会の中の闘うすべまでも失 味を持ち始める。空想上、伝説上の怪獣 ってしまうではないか。以後の物語は自 を散りばめて『カメレオンの呪文』は実 己発見の旅であり、主人公は己を見出す に新鮮なのだ。第一巻は一応の完結を見 と同時に世界をも再発見するのである。等とその生命哲学にまで至る。 前置きが長くなった。が、。ヒアズ・アたが、第二、三巻への期待はつのるばか これが第二テーマと言っても良い つまり、アイデンティティを喪失したンソ = イのこうした問題意識が、ひとつりである。 ( 『カメレオンの呪文』 / 著 人間にとって、世界は一寸先は闇の " 謎。に結晶したのが、『カメレオンの呪文』者Ⅱ。ヒアズ・アンソ = イ / 訳者Ⅱ山田順 である。アイデンティティという名の座に始まる " 魔法の国ザンス〃シリーズな子 / 四五八頁 / ¥五四〇 / 文庫判 / 早川 標系をなくした人間にとって、秩序あるのだ。世に、ありきたりの妄想ぶちまけ書房 ) 世界など望むべくもないからである。逆型ファンタスイは数多いし、とりわけ最 に言うなら、自分が何者なのかを知った近十年間、粗製乱造されてきた気味があ とたん、それまで見えなかった自分の周る。そうした作品群と、質の点で画然と わかたれるのが『カメレオンの呪文』で 囲の秩序が見えてくるわけだ。 第三に、これはテーマとは呼びにくいあろう。 のだが、異形の生命体に対する関心があ舞台は魔法が幅をきかせる世界ザン る。たとえば前記″ 0 シリーズでは、 ス。誰もがなにがしかの魔法を操る中 生物を草食、肉食、雑食に峻別する。食で、主人公ビンクは一切魔法の力を持た 性の生命に及ぼす影響を、異星生命体とない。悩んだ末に、魔法の力を見つける のコンタクトを通じて考察するのだ。さため、ビンクは旅に出る。ビンクが自分 らに″キルリア . ン″シリーズで、外插はという人間について自問自答を繰り返す 深化し、円球生物、三性生物、電磁生物のも当然だろう。つまりこれは、探求の 0 カれオンの呪文 円 7

2. SFマガジン 1981年8月号

当・科学日険時代」ー會津信吾 第九回 海野十三 STRIKES BACK 一 本誌連載中のビータ ー・ニコルズ編『エンサイクロペデに掲載されたもので、タイトルは「険奇小説世界的大混乱」。 イン・ヘイジョン ィア』で「侵略」の項を引くと、史上初の地球侵略テーマの原作者ウエルズの名前はなく、虎髯大尉の作のようになってい ート・ポーターのる。おまけに内容も舞台をロンドンから東京に移し変えた翻案 作品は、オーストラリアの作家兼牧師ロく 『細菌培養者たち』 The G ミ Growers ( 一八九一 l) とさもので、しかも雑誌で二回分載というかなりいい加減な扱いだ れている。しかし編者ニコルズは、『細菌培養者たち』を侵略った。 テーマの嚆矢としながらも、「現在では忘れ去られたこの小説その後、大正四年になって、今度は光用穆によるほ・ほ完訳が の影響力は評価しづらい」と述べ、そして「おそらく世間に広東京の秋田書院から刊行されている。この時の邦題名は『科学 く流布しなかったのではあるまいか」といぶかってみせてい 小説宇宙戦争』となっているが、すでに大正四年という時点 る。 で The e ョミミを『宇宙戦争』とした訳者の TJ したがって、異星人による地球侵略を本格的に扱った最初の感覚のスルドさには、脱帽させられる。また、この光用訳は としての名誉は、どうしてもウエルズ大先生の『宇宙戦文章もなかなか滑らかで読み易く、矢ロ達、木村信児、土屋光 争』 ( 一八九八 ) に譲らざるを得まい。 司らによる戦前 ~ 戦中の数種の訳本の中でも、屈指の良書と言 えるだろう。 わが国に『宇宙戦争』が初紹介されたのは、今を去ること六 十九年前の明治四十五年のこと。原作が出てから十四年ほど後海野十三ものテーマとしてしばしば地球侵略を扱ってお り、代表的な作品には『地球盗難』『火星兵団』の二長篇があ の翻訳だ。押川春浪が創刊した青少年向けの雑誌〈冒険世界〉 4

3. SFマガジン 1981年8月号

・ほくは叫んだ。ラウリは男らしい顔に、美しい徴笑をうかべ、辛 ハニオンで幸せでいたかったら ! 」 抱づよく答えた。 「イヴ」 「もちろん、ある。個々のケースがわれわれに興味ぶかいのは、む ラウリは呆れたように云った。 しろ精神病理学的観点からであることが多い。ところがね、イヴー 「そういうことはありえないんだよ」 ギルド アドレス・テーマ ーこれは社会生態学会で過去三十期、最も長つづぎのする提言命題「ーーーそうでしたね」 だったのだが、つまり、社会が一定以上の水準平均値を成員の知「市民は自由なのだ。ある人間が紊乱者だとしたら、それはその人 性、構造学的骨格、経済安定、平和状態、統治形態への支持、など ! 、 階カ自由意志によって選択したことだし、そうでないのならまった 二十。フラス夜の項目において示すとき、そこには必ず一定数の、水くそうでありつづける必要はない。われわれは自分の運命の主なん デイソー・ター 準指数に比例する予定悪の指数が見出されなくてはならない、とい だ。現代はかってあった、最も自由な時代なんだよ。紊乱者が予定 う学説があるのだ」 悪た、というのだってべつだん、必要とされる比率をみたすためじ 「予定悪ですって ! 」 ゃないのだ。それは資質の問題にすぎないんだよ、イヴ」 ・ほくは声をあげた。 「ええ、わかります」 「そうだ。つまり社会全体をひとつの群生生物の組織として見たと ・ほくは元気なく云った。 き、すべてにおいてその社会が理想とされる・ハランスを保っために 「わかります、ラウリ」 は、必ずその社会自体の中に、反社会性を許容する正しい比率が見「いや、きみにはまだわか 0 てはいないだろう」 出されなければならない」 ラウリは云った。 「どうして、理想社会であるためには理想社会であってはならす、 「これは大きな問題だ。いまのところ、他の・ほくの生徒は誰もこの 反社会的であることによって社会性が完うされる、なんていうディ テーマにはタッチしていない。これは、イヴ、きみの当分の主命題 レンマが可能なんです ! 」 にしよう。プレーンにいって必要な資料をそろえておきたまえ」 「それが、「自然だからだよ、イヴ。社会とは法則や平均値ではな「ええ、ラウリ」 ゲッドナイト 、生きて動いている総体なのだ。矛盾はカであるーーーこのテーマ 「きようは、これまでだ。お休み、イヴ」 はまだイヴには難しいかもしれないね。ディクタフォンで、あとで「グッドナイト、ブラザー・ラウリ」 ざっとでいいからまとめておくといい」 形式的にロにしてから ( というのもこの。ほくの時代に、夜も朝も ヴィジフォーン 「紊乱者は、予定悪として確実に存在する、というんですか ? で存在していなかったから ) ・ほくは映像機を切り、ルーム・ライトを もそれならーーーでもそれなら、そのひとが紊乱者になりたくなかっ 消した。もちろんぼくにはラウリにたちむかう根拠のひとつもある たならどうするんです ! もしそのひとがよい市民で、正しいコンわけではなく、つねにラウリが正しかったのだが、しかし・ほくは不 デイソー・ター デイソー・ター デイソー′ー プラザー 9 2

4. SFマガジン 1981年8月号

ー、 , Sc ト同 Set ーがこのを表紙に描いてあるすっかりメジャーになってしまったけれどどのようなものなのかまったく知らない。そ 「」マガジンを読んでいるとい も、エーリアン・モンスターと長々と書かれこで編集部に調べてもらった。 るより、のほうがビンと来るな。 ( 編集部註 ) 「 CREEPY 」は一九六四年に う趣向。 創刊されたを含む怪奇物の読み切りコ 中袋には、曲のタイトルが一冊ずつの実は不勉強で、「 CREEPY 」なる雜誌が ミック雑誌。発行はアメリカの WAR- ー・ハック風の絵にな R EN 社。 っていて、これも楽しい。 このアル・ハム、ジャケットの怪物の趣味悪 この中袋のクレジットによ ると Ⅱさとは裏腹に、大変しっとりとした出来。も ちろん基調はロックン・ロ 1 ルだが、スロー の ( Thanks v 。「 Much 表 日 0 WARREN PUB- ・メタル あり、ダ・フ ( 註 1 ) あり、ヘビ】 真 LISHING CO. 写 ( 註 2 ) あり、プログレ ( 註 3 ) 風ありで、 For The Use Of 大変・ハラエティに富んでいる。グルー・フとし CREEPY MAGAZINE ケてのクイーンのサウンドとはまったく異な lllustration And lts ジる、ロジャ ー・テイラーのワンマン・アル・ハ "ALIEN" lllustration ムだ。事実、ヴォ 1 カルとドラムは勿論、ペ ス 1 ス、ギター シンセサイザ 1 中心のキ 1 ・ホ B Jim Lavrier Alien 1 ド類まで、一人でコッコッと重ね録音をし ット】 0 ( e 「 Made By ス Alistair Bowtell / たもので、そのマルチ・プレイヤ 1 ぶりには イ驚かされる。 云々かんぬんとある。要 ン ( 註 1 ~ 3 ) すいませんね。業界が売るた するに、ジャケットの撮影 ア めにどんどん新語を作ったり、ミュージシ の為にわざわざあの化け物 , フ ャンの間から自然発生的に新語が出てきた の人形をつくったわけで、 ( 物当 り、それがいつのまにか音楽ジャンルやス こりや大会のコスチュ イ - 1 ム・シ , ー並みの根性 ~ タイルを明確に表わすようになってしまっ た。まあ、時間テーマ、異次元テーマ、宇 だ。それにしても、もう 3 テ 宙小説みたいな分け方だと思って下さい などという言い方は古 ャ ジ タイトル曲の「ファン・イン・スペース」 いのかね。″工 1 リアン〃 ロ のほうが、ナウいのかしら。 にはのつけから、 Strangers ln A Strange Land この単語も、映画のお陰で 目い冖 ズ 0 3 0 け 6

5. SFマガジン 1981年8月号

こでは運命の皮肉も読者の期待を裏切る ことはない。 19 世紀後半の大きな生物学的テーマはも ちろん進化であり、これが引き起こした思 想の対立は、 S F の発展に最大の刺激を与 えた。この論争に対する反応は、さまざま な形をとった。人類の進化論的未来に関す る種々の考察は、進化と遠未来の項で論じ られている。またヒトの進化論的歴史は、 ヒトの起源の項にまとめられている。進化 を適応の過程と見る考え方は、地球とは異 なる環境に適応した生命体という形でいく つかの試みを触発したが、これらは異星人 と宇宙生物の項で取り上げた。同じ発想が もうすこし控え目なスケールでなされた場 合には、風変わりな地球生物を描く数々の ファンタジイになる。中ではウィリアム・ ホーフ。・ホジスンの海洋小説と、ロノく一ト ・ W ・チェンバーズの S なん the U 加〃 ( 團 1904 ) に収められた諸短篇 が注目に値する。前世紀の奇怪な残存生物 ( 通例は恐竜 ) は、探検メロドラマに不可 欠な彩りとなった。その中では、ジュール ・ヴェルヌの『地底旅行』の , age のイ 化厩尾 / 4 な e ( 18 ) と A ・コナン・ ドイルの『ロスト・ワールド』 T んビん 0 立 べレズフォードがいる。 G ・ウェルズ、 J ・ H ・ロニー兄、 J リアム・ホープ・ホジスンのほかに 中に多用した初期 S F 作家としては、 生物学的思弁にとりわけ力を入れ、作品 Ⅳ or ( 1912 ) がとびぬけている。 H ・ ウィ るか後年になるまで進歩が見られなかった 要なテーマとして初期に登場しながら、は デアにおちいりがちだった ( 医学 ) 。重 疫病など、常套化のきわまりつつあるアイ た。医学方面の思弁は、万病の薬、新種の 験生物学をあっかう小説の影を薄くさせ わたって生物学 S F の中で優位を保ち、実 進化論的ファンタジイは、その後多年に のは、生物工学 - 一一生物の戦略的改造であ る ( 遺伝工学 ) 。現実世界では、研究に よって多くの可能性が開かれつつあった が、 S F 作家の想像力を刺激するまでには 至らなかったようだ。きわだった反応を引 き起こした唯一の事件は、放射線の突然変 異誘導特性の発見である。突然変異という 発想には、好奇心をかきたてずにはおかな いものがあり、進化論の中で決定的な役割 を果たすことにより、その重要性はまし た。 S F 作家たちはそれ以前にすでに、メ ロドラマ作法上のさまざまな理由から光線 のたぐいに魅せられており ( 動力資源、 武器 ) 、生物学的思弁に放射線を取り入れ た結果、、、突然変異ロマンス″が急速に開 花した ( ミュータント ) 。ジョン・ティ ンはこうしたロマンスの代表的作家であ る。 初期のパルフ。作家には生物学の知識をそ なえた者は稀で一一一例外はスタンリー・ G ・ワインポームぐらいだろうーー作家たち は奔放に、無雑作に生物学のアイデアを処 理した。ワインポームはおもに異世界の生 物系の想像にその専門知識を生かしたが、 生物学的実験を数多く取りあげた唯一の作 家としては、医師であり、後に精神科医に なったディヴィッド・ H ・ケラーがいる。 ( ただし生物学者ジュリアン・ハックスリ ーが、 19 年、アメージンク・・ストーリー ズ誌に "The Tissue-Culture King ”を発 表していることも、 ーに記しておいてよ いだろう ) 1940 年代に入ると、事態は多少改善され た。生物学の素養のある作家たちが、この 時期何人か S F 界に補充された。中では生 化学者のアイザック・アジモフ、そしてジ ェイムズ・プリッシュが有名である。フ・リ ッシュはカレッジで動物学をおさめ、医学 関係の技術者をしていた。 S F を精力的に 書きだすのは年代に入ってからだが、彼 262

6. SFマガジン 1981年8月号

「しなさい、 レダは白い膝を乱暴にひらき、どうみても第一《行為》もまたの レダの物云いにはいつでもこんな傲慢な感じがびそんでいること 少年のようだった。胸は扁平で、すける長衣からのそける乳首はふ を、もうぼくは吾りつつあった。たが、こんなふうにして、どうや たつのかわいい球飾りにすぎず、からたっきはしなやかにほっそり しているというよりは。ほき・ほきして無愛想だ「た。およそこのぐら「て何を話せるというのたろう ? い、なまめかしさや色「ばさから遠い人間は見たこともない。彼女「しないじゃないの」 レダがとがめた。 がどのギルドであったにせよ、それは最高の芸術であるところのセ わからないから」 クソロジイのギルドでたけはないだろう。それとも、それが持ちま「何を話していいか カ / ・ハセーション 「会話学を習わなかったの」 えのからだっきではないのだとしたら、彼女はたぶん性ホルモンの 「習ったよ ! でも O マイナーだった」 服用を長いことおこたっているのだ。 「そのわりに、あんた、いい声よ、イヴ」 美しくて男らしく、また女らしく、堂々とした神々のような市 民たちを見なれているので、・ほくには彼女のみにくさがほとんど奇彼女はまたぼくをからか「ていたのた。それがわか「たので、・ほ 彼女のようであるのは、どんなことなのだろくはむつつりしていた。 形のように思われた。・ , 「わかった、じゃ、わたしがはしめてあげる。あんたは指導員にす うと、・ほくは考えた。それは辛くないだろうか ? それは、直せな とるみたいに、わたしのあとをついてくるのよ、ポールをおとさす いのだろうか ? そんな筈はない、医学にはすべてが可能だ に。よくってフ・」 すれば、彼女は彼女自身の意志において、こんなみにくいととのつ でもどうして、そんなことしなければいけないの ? 」 ていない外形をもちつづけているのだ。どうしてそんなことができ「いし 「どうしてって、何が」 たのだろう ? 「話たよ。どうして話をしなければいけないの ? 」 「さあ」 「そうしなけりや、わたし、あんたのことがわからないからよ。わ 突然レダが云ったので、・ほくはまったくびつくりしてレダをみつ からなくていい、なんていうことは、云わないでしようね」 めた。ノ 彼女はいつもぼくをおどろかせる。 「あんたはもう、しゅうぶんにわたしを見たわよ、イヴ。見られて「市民はわかりあうべきだよ」 アドレス・テーマ お馴染の提言命題が自然にロにうかんだ。美は調和である。医学 るの、飽きたわ」 は前提である。知性は展開である。性は芸術である ごめんよ」 「もっと見たければ、またこんどにして。わたし、したくないこと「ストッゾ ! 」 するどい声でレダがさえぎった。 はしたくないの。わたしと話をするか、あっちへいくか、して」 「なるほど、 0 マイナーね。あんた、うまい展開をみんなっかみそ 「はーー話をするよ」 ウ・ コン・ハニオン 233

7. SFマガジン 1981年8月号

る。 先月で引用した『火星兵団』のあとがきからもうかがえるよ うに、どうやら海野は異星人による地球侵略を真面目に心配し ていたらしいフシがある。どうしてこんな考えを持つに到った のか、ウエルズに私淑していたと言われる海野のことだから 『宇宙戦争』がその源泉となっているであろうことは推察でき るが、それにしてもなにか原体験が , ー、・幼少時に宇宙人にいじ められたとか、あるいは先祖の仇が宇宙人だったとかいう経験 がーーーあったのではあるまいか ? ( あるわきゃねーずら、そげ なもン ) ま、冗談はともかく、海野の″地球侵略コンプレックス″を 示す一例として、面白い文章がある。これは桃源社版『地球盗 難』の瀬名堯彦氏の解説からの孫引きになってしまうのだが、 参考までにちょっと引用させていただこう。 ( 前略 ) 海野は、将来このような事態の発生を本気で信じ ていたらしく、終戦直後、「光」創刊号 ( 昭和二十年十 月 ) に「原子爆弾と地球防衛」と題する、興味深い一文を 書叢藝父民国小 警襲空 若三十簽 4 4 『空襲警報』 寄せている。その一節を引用して見よう。 「私はここで私の結論を先に掲げる。すなわち、原子爆弾 の実現したのを機会として、全世界はお互いの間に於ける 一切の戦争を永久に終局とせねばならぬ。そして、全世界 は一致団結して協力し、地球防衛の一目標に精進せねばな らぬ。地球防衛とは何か。それは地球の敵より地球人類を 護ることである。地球の敵とは何か。それは他の遊星に棲 息する生物で、われら地球を狙う者共のことである。 これはちょっと耳にすると、如何にも空想に過ぎるお伽 噺のようにも感するであろう。しかしよく考えてみると、 好むと好まざるとに拘らず必ずわれらはやがてかかる侵略 者を迎えねばならないだろう。この大宇宙には何億とも数 の知れない多数の恒星があり、それは大小とりどりの太陽 として輝いている。何億の太陽には、われら地球と同じ成 因で生れた遊星が附随している場合も多かるべく、その中 にはわれら地球と同様に、文明を持った生物も棲息してい ることだろう。 ( 中略 ) 宜しくわれら地球人類は、今から 直ちに一致協力して、やがて宇宙より侵入し来るであろう ところの恐るべき偉力を持った他星生物を迎える準備をし なければならないのだ。これが『地球防衛問題』である。 そしてこれは一日も急いで取掛らねばならぬ。私はこれま でに度々この問題を取上げ、『地球盗難』『火星兵団』等 の長篇科学小説として天下に警告して来たが、今日更にこ 。 ( 以下 の問題を提示し、全世界の輿論に訴えたいと思う いかにも海野らしい、科学小説家の面目躍如たるものが あるではないか。 ところで海野の地球侵略テーマのには前述『地球盗難』 5

8. SFマガジン 1981年8月号

立レヒ三ウ というのは、その 8 サイクルが重大問サイクルなのだ。だからたとえ、電離層長い物語が好きだ。 かねがね、そう標傍してきたし、実際 題で、「人間の脳波と同じ波長 : : : 。同から、 8 サイクルの電磁波が送りこまれ 、共振やるとしても、脳波のごく一部と共振するに読むものも圧倒的に長篇が多い。それ じ波長の低周波が重なれば : うなりが発生する。そうなると、微妙な程度で、わずかに落着きを失う位とも考も長目の長篇であるとか、長篇連作であ 構造をもっ脳そのものが危険にさらされえられる。しかし、事が事なので、専門る場合が少なくない。ただ、あまり「長 い物語」とばかり言い続けてきたので、 る : ・ : 四〇億人類の″総発狂″と家の見解をききたいものだ。 周囲に奇妙な誤解が生じてもいる。長け また、有賀氏は、七六年周期のハレー いう事態も : ・・ : 」そこで、スペ 1 ス・コ ロニーに逃げこむために、スペ 1 ス・シ彗星と、一七九年ごとの惑星直列は、複れば何でもいいのだろう、というのであ ャトルが急がれた、というのだ。いくら合して、約一六〇〇年周期で両者は近接る。 とんでもない話だ。作品の質が標準を なんでも、一九八二年の惑星直列、八六する。一六〇〇年前のゲルマン民族など 年の ( レ 1 彗星接近に間にあうのだろうの大移動は、〔皆狂って〕しまったからはるかに下回れば、当然のことながら読 だとされる。計算してみると、両者は約み続けることはできない。つまり、せめ それに、人間が目をひらき、ものを考五三〇年で、五年のずれの接近。約一〇て標準程度の質があることを前提とし える時の脳波である波は、Ⅱ ~ 新サイ六〇年で十年のずれ。約一六〇〇年で十て、「長い物語」と言っているのであ クル。うつらうつらしている時の〃波二年のずれなのだ。どうして一番ずれるる。 そうした「長い物語」遍歴の中で、ビ が、 4 ~ 7 サイクル。深い眠りのび波一六〇〇年の時だけ複合天体異変が生じ 矚サイクル。そして、目を閉じるのか、自然科学的根拠を一切示されなアズ・アンソニイの作品群にひっかかっ 、刀 ( 『ハレー彗星の大陰た時期がある。『繩の戦士』に始まる いのが解せない。 て、おちついている時の伐波が、 8 ~ 芻 ″・ハトル・サークル″三部作、″ 0 ″三 謀』 / 著者日有賀龍太 / 一一一一〇頁 / 七 部作 ( と仮に呼びたいもの ) 、″キルリア 三〇 / 新書判 / ゴマ書房 ) ン″三部作、その前史にあたる″タロ ″三部作、他に、一篇で並の長篇二、 ビアズ・アンソニイ著 三冊分に優に匹敵する『マクロスコー これだけ読んできた中 プ』等々 : 『カメレオンの呪文』 で、アンソニイ作品については、多少そ の本質をつかんでいるつもりである。 ビアズ・アンソニイが、処女長篇『ソン』 以来こだわり続けているテーマは、ひと つにアイデンティティの問題である。自 0 白 星 紀 円 6

9. SFマガジン 1981年8月号

ルト探偵ジョン・サイレンスは擬似科学的 な技術を用いる。その冒険のいくつかは 『妖怪博士ジョン・サイレンス』んれ & ん ~ ゞな〃 E 囮 or 房ツ ( 集 1908 ) に収録されている。再生をテーマに した作品が多く、五 / / んビ舅 4 〃 0 れ . ・れ 刃第な 0 ( 1916 ) と The Ⅳ 4 怩 . ・月〃 Eg. ッ第れ・ス川ん ( 1916 ) が知られる。 〔 J C / P N 〕 その他の既訳作品 『ジンポー』 60 , 4 お 4 厩 4 ( 1909 ) 。『ケンタウロ ス』 The C 〃 r ( 1911 ) 。『幽霊島』 ( 1958 日、平井呈一編 ) 。『フ・ラックウッ ド傑作集』 ( 1972 日、紀田順一郎編 ) 。 プレイド、アレグザンダー BLADE, ALEXANDER ジフ = ディヴィス系の S F 誌でもっとも 長期間使われたハウスネームのひとつ。は じめはディヴィッド・ヴァーン ( ディヴィ ード ) 個人のペンネームだっ た。この名によるヴァーンの作品は特定で きないものの、 "The Strange Adventure of Victor MacLeigh ” ( 1941 、アメージン グ誌 ) は彼の手になるものといわれてい る。後には、次のような作家たちがこの名 ハワード・フ・ラウン、 前を使った。 ・クック、チェスター・ S ・ガイアー、ラ ンドル・ギャレット ( ロノく一ト・シルヴァ ーグとの共作。またシルヴァー / く一グ は単独でもこの名を使っている ) 、ロジャ ・ P ・グレアム ( ッグ・フィリップス ) 、 ェドモンド ・ / 、ミルトン、ノ、インリヒ・ / 、 ウザー、バークリー・リヴィングストン、 ープ・リヴィングストン、ウィリアム・ P ・マッギヴァーン、ディヴィッド・ライ ト・オフ・ライエン、ルイス・ H ・サンプラ イナー、リチャード・ S ・シェイヴァー、 ドン・ウイルコックス、ル戸イ・ヤーク サ。プレイド名義で発表された作品は約 50 篇にのぼり、大部分はアメージングとファ ンタスティック・アドヴェンチャー誌上だ が、イマジネイション誌、イマジナティヴ ・ティルズ誌、サイエンス・フィクション ・アドヴェンチャー誌にもこの名前が見え 〔 J C 〕 る。 プラスター BLASTER S F 用語。拳銃の一種であり、殺人光 線、レイガン、ディスインテク・レーター ( 分解銃 ) などとともに、早くから S F の 中で名誉ある地位を占めた。初期スペース ・オペラにあっては、六連銃をさげたカウ ポーイと似た感じでもてはやされ、コミッ ク・ストリップやテレビジョンではいまだ 〔 P N 〕 に人気がある。武器。 プライラー、エヴァレット・ BLEILER, EVERETT F. ( 1910 ー アメリカの編集者、書誌作成者。 The C ん / な t of 、お 4 4 立たん″ど ra 尾 ( 1948 ) を編纂。同書を出版するために、シャスタ 社が創設された。 508 点以上の書名をおさ めており、現代 SF 書誌の里程標である。 彼は T ・ E ・ディクティとともに、最初の 年刊 SF 傑作集を編集している。 T 召 & ル加ど c た・ 0 れ & 0 ぉノ 949 ( 1949 ) に始まるこのシリーズは、二人の共編では 5 巻まで続いた。また T んビ Year's 召ぉ要 & 加ビけ / 0 れ 0 て , どな 1952 ( 1952 ) に始まるショート・ノベルの年刊傑作集も あり、これもディクティとの共編で 3 巻出 している。 1955 年、ドーヴァー出版社に就 職、 1967 年には取締役副社長に昇進した。 〔 MJE 〕 〔次号につづく〕 XVI 256

10. SFマガジン 1981年8月号

識され、確認されていなければならない。だからイヴ、きみの疑問よう。次に紊乱者の登場する背景だ。かれらは、つねに、そのとき アダルト はきみがコミュニティとほんとうに成員としての交流をもっためのどきのモラルの反抗者としてあらわれてくる。たとえばいまなら、 モ / ガミー 第一歩なのだ。 契約拒否、単婚、性ホルモンの服用拒否、社会的有用性の放棄、交 アドレス・テーマ ソシアル・又コジー デ ( ソーダー きみの云ったことは、実は社会生態学のきわめて高度な根本命題際嫌い・ーーきみの場合の紊乱者的素質は主としてこの点にあらわれ エコ戸ヒストリカ のひとつなんだ。もちろん、いまのきみには、社会学、生態史学、 るようだね、イヴーー諶識票着用拒否。しかしそれは要するに本質 ネ′シャーズム 情報総合学、群衆心理学、などの前提が不足しているから、いちば的なものというよりは、それそれの時代における最も表面的な反社 エコロヒストロジスト ん新しい論争について話してあげるわけこよ ~ : いかない。しかし、お会性の形態をとる。たとえばずっと以前、生態史学者たちが《分権 よそのことなら話してあげられる」 前期》と呼ぶところの第二サイクルの中期ぐらいには、『兵役拒 ドラッグ ホモセクシャリズム 「ちょっと待ってください」 否』と呼ぶ反社会的行為及び、同性愛、それと薬物服用とが、最 ニリア ・ほくはディクタフォンのスイッチを入れ、待った。 も紊乱的な行動として処分に該当する地域が、それもかなり広範囲 まず、きみの提出した命題のためには、二つの前 「いいかね。 にわたって存在していたようだ。だがそれは現代のわれわれからは デイソー′ー ディノーダー 提的証明が必要だ。つまり、紊乱者の定義づけ、それと紊乱者の登まったく意味のないモラルに思われる。 ギ . イ・ソー 場してくる生態史学的背景を知ること。それは、わかるね」 大切なのは、紊乱行為がその時点で最も抵抗の多いと考えられる 「ええ」 。 ( ターンをえらんであらわれてくることなんだ。すべての時代を ヂイソーイー 「ではまず定義からはじめよう。紊乱者とは、ひとことで云って字通じて最も普遍的にインモラルとされているのは殺傷、及び自裁行 ファー・イースト 義どおり《乱す者》だ。社会秩序を乱し、社会の公共モラルを無視為だが、それも、《分権原始中期》の極東エリアの一部の地方で ア・タルト プライド してふるまい、社会の根本理念をかろんじる成員のこと。これは成は、『ハラキリズム』っまり原始的な名誉回復の手段としてむしろ デイソー・ター ャングマン 員に限っていう。なぜなら若者にとっては紊乱者であることは、あ社会的な正義と見做されていたことがあった。そのぐらいに、モラ る種の必須条件だからだ。もちろん、そうであることを必要とせぬルというものは通念的な前提にすぎないんだ。決して、絶対的な普 リトル・アダしト このことを覚えておきたま 彼まよじめから小成人と遍的なモラルというものは存在しない。 人間もいる。たとえばスティがそうだ。 / ー : デイソーダー しての自分に存在意義を見出している。しかしたとえばミラにとっ え、イヴーーー従って、紊乱者とは、むしろ次のような観点から扱わ アルト フレンズ コミュニティ ては、成人に対して懐疑的であり、同期生に対して嘲笑的であり、 れるべき存在だということになる。つまり、社会からみて、紊乱者 ・テイソーダー 時として暴力への志向を証明するのは。フロセス的に必然なのだ。わの必要とされる理由、及び、紊乱者自身がそうならねばならぬ必然 かるね」 性にかかわる個々のケースとしてだ」 「ええ、指導員」 「社会が反社会性を必要とする、なんていうことがあるんでしよう 「これについては論理の枝に入ってしまうことになるので今度にしか、ラウリ ! 」 デイソーー デイソーグー 239