人間 - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1981年8月号
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1. SFマガジン 1981年8月号

ース・シャトルがある、というだろう。 、人体改造は、宇宙の無重力空間のほ体が存在するものかどうか。「みずから なにしろ、氏は、ヒトラー↓フォン・・フうがうまくいく 。遺伝子を改造しても、 の正体をけっして明かさないことこそ 。もし、 ラウン↓ Z<(-o< の連環で、ヒトラーのそれが安定できる環境を用意してやらな が、オカルト集団の結束力 : 夢が、スペ 1 ス・シャトルにのりうつつくてはならない。そのためには、人間の強引に私が、その秘密をあばこうとした・ た、とする位だから。 脳を中心とした生体内の環境を用意してなら、私の生命を、おそらくこの世から また、アメリカに亡命した元ナチ党員やらなくてはならない。化学薬品や電子抹殺する」かも、と氏は、追求を封じて しまっている。 のヘルマン・ラウシュニングの『ヒトラ装置、コンビュ 1 タが、情報理論をベー 1 との対話』から引用して、 スとして複雑に合体し、人体改造を行な 一方、宇宙への進出は、地球での破減 から逃げるためでもあるといわれるが、 「人間は超克されねばならぬものなのでう。そして、電子部品の製造、 = ンビ = ータの管理、化学薬品の精製など、実験ここでは論拠を一応、提出されている。 TQ. ある。人間が神となる。これこそごく明 快な。フログラムなのだ。人間とは生成途の性質が複雑になればなるほど、宇宙の ハレ 1 彗星の接近と惑星直列が同時 上の神である。人間は自己の限界をのり無重力空間のほうが、実験環境として、期に生じると、太陽黒点が異常増加す こえるべく、永遠に努力しなければならはるかに効果的だ。 る。それによって、電離層から 8 サイク ない。立ちどまり閉じこもれば、衰退し今こそ、われわれ自身が″神″としルの低周波が発生することが、理論的に て、人間の限界下に落ちてしまう。半獣て、生命をコントロールし、人間を進化確かめられている、とされているが、本 となる」 させるのだ。人間の進化の引き金は、す当だろうか。フィクションではなく、ノ なんだか、『鉄の夢』のことが思われでに現代科学の最前線に用意された。そンフィクションであるからには、その理 てならないが、とにかく、的意識にれが宇宙実験室で徐々に統合されてゆ論なり、情報の出所なりを明示すべきで 非常に近いものがあると感じさせられき、ついにスペ 1 ス・コロニーで生命科はなかろうか。 て、改めて、ギョッとしてしまう。性急学と宇宙科学がドッキングされるだろ に、人間の限界を越えようとすると、イう。スマイル計画の真の意味は、個々 ' ( カロスのごとく、失墜する。現にヒトラ ラ・ハラに進行しているさまざまな人間の " 第 1 自身が半獣となってしまった。科学 いとなみを、宇宙空間という壮大な舞台 が、人類の聖性獲得の道具 ( 道の具 ) にで再結合するということなのである ならないものか。 ' ハイオフィード・ハック と、有賀氏は高らかにうたう。 には、その萌芽があるような気がする。 スマイル計画とは、を陰で操 有賀氏は、スペース・コロニーが、超っているオカルト団体の計画で、人類の 人へのトレーニング・センターとして、 宇宙への進化を積極的に進めようとする 秘かに計画されている、という。つまもの。ほんとうに、そういうオカルト団 蓄のオがい′ツま 円 5

2. SFマガジン 1981年8月号

, 永製菓のソングが、エンゼル宏は意識と連動して見える仕かけに間の目は、一時点では一個所の焦 について「だアれもいないと思っロ天 なっている。いくら水品体にうつ点しかもたないために、いつまで っても、そこに意識の。ヒントが合たっても人間に妖精は見られない ていても、どこかでどこかでエン 荒 わなければ、〈見た〉ことにはなのである。 ゼルが : : : 」と歌うことに対応し ところが、ここにひとつのエピ ている℃いや、もっといえば、現 らない。だからわれわれは、すさ ー・ラ まじい速度で視野全体に意識の。ヒソードが生まれる。エルジ , 代の神話と同じように、妖 、 ( 精は〈不在〉であるがゆえにシン ・ントを合わせながら、まわりの情イトという人が人間の目では捉え ・ .. 景を見ている。したがって人間のきれなかった妖精を、″カメラ・ ・ホルとなり得た稀有な象徴体系な のである。つまり、なかなか目ド・・ ・目は〈マルチスクリーン〉のようアイ″を使って映しだすことに成 ′ ) 、 , 見えないから、よい . なものである。 功 ( ? ) したのだ。そしてその成果 を晩年に心霊学へと転出したコナ ・一しかし、妖精がなかなか人前に、を一 ン・ドイル卿が『妖精の到来』と 出てこない、あるいはすぐに隠れ・「 ・ " いう本にまとめたことがあった。 こむ、という特徴を、明確に指摘 している文献を探してみると、こ そこには、少女の目の前で妖精が 踊っている、あの有名な〃妖精写 れが以外に少ないものだ。ちなみ 真″が掲載されたのである。あれ 砥や小はひどく恥しがり屋に、いま手もとにある『シンポル、・ ほど人みしりした妖精が、カメラ で、なかなか人前にあらわれな事典』のが妖精の項をひもとい い。では 0 どうやってその姿を見ても、そこには、 には恥しげもなく姿をあらわし た ! 心霊学にしても O にし たらいいか。よい方法をお教えし①妖精は林や丘に住む よ、つ。 ても、〈不在〉なるものを撮影す ②女児相続による社会を形成して・ ). 「妖精でも、あるいは小鬼でもよ るためにカメラが最大の武器とし いる ( 妖精の国では多く、末娘 いから、かれらを大木のうしろま が王位を譲られる ) て使用される、その深遠な理由 が、ここにはあったのである。っ で追いつめる。するとかれらは、③鉄と鋼をおそれる 人間の目のとどかない後側に隠れ④塩を食べない まり、カメラ・アイは意識をもた こむにちがいない。 ここまで来た 」 ( ないために、レンズにうつった光 といったことは書かれて . 鶯景をそっくりプリントしてしま ら、あとは簡単だ。木のうしろへも、「姿を見せたがらない」ある 帽子を放る。妖精たちは驚いて、 う。焦点から外れた部分でさえ いは「人みしりをする」とは書い われわれが見ている方へ逃げてくていない。 この怠慢に対しては妖 % - というわけで、かれら妖精たちも、。ヒンポケなりに画面に定着さ る ( はずなのだ ) 」 精研究者たるもの、深く自己批判 ・様、人間の目がそこへ向き、焦点せる。したがって意識の険に隠れ と、これは最近ハヤカワ文しなければならないところであろ を合わせるまでの、おそらく一秒てぎた妖精も、意識をもたないカ の何百分の一の短時間に、スッとメラ・アイにはアッケなく捉まっ 庫にはいったロード・ダンセイニう。なぜなら、妖精は人間の目に 焦点の脇へ移動する。またそちらてしまうのである。 の『魔法使いの弟子』からの抜萃して映らない存在なのであるか である。ダンセイニが書いているら。 へ視線を向けると、今度もまたスもはや多言は要すまい。これが とおり、妖精や、そのたぐいと思 ッと身をかわす。こうしてかれら心霊写真や写真とカメラと なぜ、映らないのか ? 妖精た われる小鬼・小人たちは、どういちは人間の視線が向くところから回 " は、人間の前に出ているにもかかの妖精学じみた関係の秘密であ うわけか、なかなか人前に姿をあ巧みに身を退くのを特技としてい 1 わらず、視線の焦点部分からはい る。ちなみに、妖精は古代にあっ らわさない。それはちょうど、森るためである。そもそも人間の目第 つも巧みに遁れている。しかも人ては、〈無意識〉の別称であった。 亡 0 譿ー ( ネア 解剖してしま - フ このコラム 見えないという を田 / Anatomy

3. SFマガジン 1981年8月号

「保父になれそうね」 ったスイオ移植技術だとかを説明しはじめたが、恭子はうわの空だ 「父親たけで十分だ」 った。恭子にとっては自分にも子が生めるーーー生めないにしてもと 2 2 にかく自分の子がもてる、それさえはっきりすればよかった。不可 翌日、恭子は言われた時間に松屋美食生物工学研究所に行った。 入口で開発部の人間が恭子を待っていた。その案内で応用発生技術能ではないという室長の言葉に恭子はすっかり興奮してしまった。 「それで、いつ、 実験室の室長と会う。想像していたよりも若く、気さくな男だった。 いつできるのですか」 「は ? 」室長は唐突な恭子の質問に首をかしげ、それから納得した 「ここは病院ではありません。気楽に見学なさって下さい」 実験室と見学者用の廊下とは、産科の新生児室のようにガラスでようにうなすく。「人間に応用するには技術的な問題だけではない しきられている。室内の機械やそこで働く人人のを ( ーオール型ののです。おわかりいただけるでしよう、人間なのですから。牛では ない。一個の人格なのです。社会的な父母が必要だ」 無塵服を見ながら恭子は、なるほど病院ではないと思った。工場だ。 「どうしてそんなことを言われるのかわかりませんわ。わたしの子 「ほんとに人間のコビーは可能なのですか」 「体細胞レベルのクローニングは簡単なのですがね。たとえば筋肉なのでしよう ? 」 組織の一細胞を取り出して筋組織だけをクローン培養するというの 「そのとおりです。するとあとは子宮を貸してくれる女性をみつけ は。しかし人間個体そのものをそっくりコビーするとなるとなかなるだけですね」 か困難です。ただ、同じ赤ん坊を大量につくれ、というのなら、牛「わたしではいけませんの」 について現在実際に行なわれています。つまり、ある雌牛と雄牛の「難しいと思います。なにしろ奥さんはーーー」 「わかりました」 生殖細胞を結合させた受精卵を胚盤胞まで培養し、その胚の核を、 第三の牛の脱核した受精卵、受精卵といってもまだ雌雄前核が融合 「では問題はありません。すぐにもはじめられます。同意書に署名 していないやつですが、それに移植すると、同じ牛が何頭もできましていただければ。ですがもう一度よくお考えになったほうが。こ す。同じ仔牛を複数つくるわけです」 んなできの悪い子なんか欲しがるんじゃなかった、などといわれて 「大ぜいの子なんてたくさんですわ。 は当方としても困りますし、その子もかわいそうだ。奇形や先天異 わたし自身のコピーはで きますの」 常はチェックできても、奥さんの母性が人工受精児にどう反応する 「卵と卵以外の体細胞の融合ですね。牛では成功しました。脾臓のかまでは責任は負えません。言うことをきかない子供に対して、こ 細胞核を除核卵にウイルスをつかって移植しましたが、残念ながらの子は人工受精児だからこんな風なのだ、などと憎むようになる可 能性はないとはいえない。わたしが恐れているのはそういう面です」 成功の確率はあまり高くない。しかし不可能ではありません。人間 でも」 そう言われて、恭子はどきっとした。 室長はミク卩紫外線ビームによる除核の方法たとかウイルスを使みんながわたしに訊く、なぜ子が欲しいのか、ほんとうに子が欲

4. SFマガジン 1981年8月号

襲いかかってくる。反応の鈍いハンがいること補充するために他の星を襲い、人間を拉致したたところを叩きつぶそうとしていたのである。 で不利を感じたリスゼンディルは、ハンを救命のだ。 ハンはハシンガーを説得し、異星人と闘おうと 4 艇で逃がす。そしてハンはラーの村人たちに助しかし、再度二人はハシンガーに捕えられする。 けられ、そこで初めてラーの文化と接触する。 る。それでも捕虜としての立場は決して悪いも 何週間かたってハンは荒野をさまよってきたリのではなかった。ハンにはクレシ = ( 奴隷の人別に目新しい物語ではない。しかし、フォス スゼンディルと再会する。彼女はハシンガーに間たちのこと ) の女、ウスティンがあてがわタ 1 の描こうとしているのは物語にではなく 手首を折られたまま何百マイルも再会を約したれ、かなり自由な行動も与えられた。そして見 ( こういう物語であれば、もっとはやい展開を 場所まで歩いてきたのだ。宇宙船はハシンガー 聞した事柄から、ハンは一つの結論を導き出とるべきだし、危機また危機と緊張感をもりた に奪われたと彼女は話す。こうして動けなくなす。ハシンガーらこのドーンのラーは、リスゼてる作りにしなければならない ) 、ラーという った二人は、救いの 超人種族と人類の対比、関わり合いにあるの 宇宙船がくるのを待 だ。もっと簡単にいえば、人間の男とラーの女 つはめになる。しか 』のラ・フ・ストーリー を描くことによって、両者 し、こんな辺境の星 の文化の違いを浮き彫りにすることにあるので ャ では宇宙船がくるこ イある。ラーという種族をもう少し説明しておく レ とはめったにない。 と、ラーの中心思想となるのは種族保存であ プ ふたたび何週間か ムり、生殖こそが生活における主要な関心事なの たち、二人のところ である。元来が突然変異体であるために遺伝的 に宇宙船が着陸して のに不安定なことと、受胎可能期間が生涯の一定 くる。それは奪われ 期間 ( かなり短い ) しかないことが、そうさせ た彼らの宇宙船だっ ているのだ。だから、彼らの人生は子供を作る た。乗り組んでいた まで社会に拘東され、子供が次代を担えるよう のはハシンガーと異 になると、完全に社会の制約から解放されて自 様な風体のラ 1 たちであった。二人は拉致さンディルが子想していたように、昔安住を嫌っ由の身になる、という・ハタ 1 ンに従う。そうい れ、彼らの本星である巨大惑星ドーンに連れてて分派したサンジルミルらの子孫だった。彼らう意味で、精悍なラ 1 の女として登場したリス いかれる。しかし着陸寸前に救命艇を奪い、二は流れ流れてこのドーンにやってきたのだ。しゼンディルが、一日の短いドーンで受胎可能期 人はドーンの峨々たる山地に逃げこむ。だがド かも彼らもクレシュ同様に退歩していた。そのが早められることにあせりを覚え、まったく生 1 ンは苛酷な世界だった。何千メートルにもお退歩したラーを再び宇宙に送り出したのは何だ理的な女に変わっていくのは、なかなかおもし よぶ高い山々、はやい自転、寒冷な支候。二人ったのか ? 旧式な宇宙船 ( 有視界飛行をしなろい。 この人間の男とラーの女のラ・フ・ストーリー は瀕死の状態で人間の集落にたどりつく。人ければならない ) を駆ってまでそうするメリッ 間 ! そう、特殊な環境により変化し退歩してトはあるのか ? ない、何もないのだ。彼らはというパターンは、そのまま第一一作、第三作に いたが、まさしく人間だった。彼らはラ 1 に奴異星人によって操られていたのだ。宇宙の征服も使われている。第二作の『ザンのゲーム・フレ 隷として扱われていた。ハシンガーらは奴隷をを企てる異星人は、人類とラーを争わせ、弱っイヤ 1 』 The GamePlayers ofZan ( 一九

5. SFマガジン 1981年8月号

当たらなかった。どれも 4 0 0 0 0 以上の、ハイ・パワーのマシン 同時に立ち上がった。 「そうよ、その意気。もし私がいなくなったとき、父親が仕事の都ばかりだった。 合で私の行方を探すことをやめにしたら、こんな悲しいことってな交差点はたちまち大混乱に陥った。 いわ」 一人がつまずくと、たちまち何人もの人間が折り重なるようにそ の上に倒れた。 少女は励ますように、中年男の背中を大袈裟に叩いてみせた。 宇田川はやっとのことで亜希子の腕を掴み、交差点の手前で踏み 「さ、元気だして、行きましよ。もちろん、私も一緒に手伝うわ とどまることに成功した。 よ」 宇田川がなにか言おうとしたが、亜希子は先に立って、店の外に爆音が急速に近づき、交差点のなかに立ち尽くしたびとや、折り 重なって倒れたひとたちが、死の予感に捕えられたとき、思いがけ 出ていってしまった。 ないことが起きた。 五十台ほどのオ 1 ト・ハイは絶妙のテクニックで、急・フレーキをか 4 けたのだ。その速度で急・フレーキをかけたら、普通ならばマシンは 亜希子と宇田川は公園通りの坂道を、原宿の方角に向かって昇っ転倒し、ライダーは道端に放り出される。 彼らは一台のミスもなく、交差点の中を逃げまどう群衆のその直 ていった。前方にオリンビック競技場が見えてきた。 渋谷公会堂の近くまできたとき、交差点の信号が赤に変わり、二前で急停車した。先頭のオート・ ( イの僅か数センチ前には、恐怖で 顔を引きつらせた通行人が立ち竦んでいた。 人は人混みのなかで次の信号に変わるまで待った。 信号はなかなか変わらなかった。人の流れは絶え間なく押し寄せ交差点の周囲の人垣から思わす賛嘆のどよめきが洩れたほどだっ た。当然、怒りの声も上がったが、彼らに向けて喝果のロ笛を吹く ていたから、たちまち道路からはみ出る人間が出た。 それでも信号は赤のままだった。機械が故障したとしか考えられものもいた。 しかし、ライダーたちは、通行人の反応に一切関心を示そうとし なかった。 なかった。 信号の下で待つ人びとのあいだに、不平の声が洩れた。苛々した 彼らは再びアクセルを吹かすと、轟音を撤き散らしながら、突然 気分は、周囲の人間にたちまちのうちに感染した。先頭の何十人か ターンを開始した。 が押し出されるようにして、交差点に足を踏み出した。 そのときだった。坂の下の渋谷方向から爆音が聞こえてきた。 彼らは二手に分かれた。半数は、低速で公園通りを渋谷方向に引 ト・ハイの排気音だった。数十台のオート・ハイが改造車特有のき返しはじめ、残りのオー ト・ ( イは人混みを押し分け、両側の歩道 唸りを上げて、交差点目がけて突進してきた。小型車はほとんど見に乗り入れ始めた。

6. SFマガジン 1981年8月号

界の動向から見放されているドウ・・フックスの士』をとりあげる。なんとなれば、これが″ラ両方が植民していたが、攻撃を受けたのは人類 という超人種族を扱ったシリーズの最初のの都市だった。そしてラーそっくりの侵入者が ことだから、あたりまえといえばあたりまえだ ・、 0 作品であり、またけっこう売れた作品でもある着陸し、人間を狩り集め、さらっていったの 、カ しかし、冒険活劇の未来を模索する者にからだ ( ちなみに書いておくと、私が読んだのだ。その報をもたらしたのは一人の交易商人 で、チャルセドンからほうほうの体で逃げ出し は三版目のものである ) 。 とっては、ドウをないがしろにするわけにはい てきたのだった。そして最寄りの星であるシー かない。冒険路線、新人作家の登用を主眼さて内容紹介に人ろう。 ・フライトに来たのである。 とするドウ・ブックスは、格好の漁場なのだ。 数の多いなかには変種が混ざっていることもよ西暦五〇〇〇年頃の未来、人類は宇宙に進出しかし、この報にはふにおちない点があっ し、様々な星に植民地を築いていた。ここはとた。ラーの文化では飛び道具というのは禁じら くある。いささか正攻法的すぎるけれども。 というわけで、今回とりあげるのは・・ある植民星、シー・フライト。交易船船長を志望れているのだ。強靱な肉体こそが彼らの武器で ー・トレック・するハン・キーリングは、ある日政府に呼び出あり、飛び道具のような卑怯なものは使わない フォスターという作家。〈スタ ログ〉シリーズを書いたアラン・ディーン・フされた。彼を待っていたのは、政府の高官と、のを主義としているのである。しかも彼らは人 オスターではない ( 昔、誤解したことがあるかラーだった ! 彼はその場の異質さに驚く。ラ間のように好戦的な種族ではなく、平和的な種 族なのだ。 ーがシー・フライトに来るとは ら、念のため ) 。この作家はドウからデビュー ラーというのは、人間から人工的に発生させかくして、この事件の真相を究明する使命が し、いまだにドウだけで書いている生粋のドウ られた種族である。はるか昔、原子力時代に人ハンに与えられる。彼の相棒となるのはリスゼ 作家である。 ドウ・ブックスは、略歴等の作家の情報を全類の進化をはやめるために、遺伝子操作によりンディルという名のラーの女性である。ラーの 然載せてくれないところが不親切なんだけど、生み出した一種の超人種族なのである。しか社会は専門別の家族単位 ( 氏族と称される ) か ー・ニコルズ編のし、人間の間で進化は環境の産物であるというら成っており、彼女は警察に相当する格闘術に 運よく本誌連載中の・ヒータ エンサイクロペディア』に簡単な記入が意見が強くなり、人間とラーの関係は次第に気たけた氏族の出だった ( 彼らの家族は複雑な構 あるので、それをひいてみると、フル・ネームまずくなった。少数民族であるラーは、着実に造をもっている ) 。 はマイクル・アンソ = イ・フォスター、一九三自分たち独自の文化を築きあげ、ついに超光速二人はチャルセドンに赴く前に、情報提供者 九年生まれのアメリカ作家で、元データ・シス船を造って地球を去った。そして銀河系の自転に会って詳しいことを聞くことにする。しか テムの解析家でありアメリカ空軍の発方向とは逆に植民していった。やがて、彼らはし、ホテルの男の部屋に行くと、男は何者かに 射要員の指揮官であった。セミ・プロの写真家銀河系の自転方向に沿って植民している人類と殺された後だった。そばには見慣れぬ銃が転が でもある。界へのデビ = 】は『ドーンの戦再び出会った。そして今、人類とラーは相互不っている。いよいよ事件の不審さが目立ってく 士』 The ミミ・ユ。こミ・ D ミ。ミ ( 一九七五千渉を旨に、薄氷のような状態で並存している。 年 ) からで、現在のところ四冊の著作がある。た。それを破るような事態が起こったのだろう二人は商人を装って辺境の星チャルセドンに 到着する。公然とした調査は人々に不安を与え いずれも長篇で、短篇は書いていない。 3 これが・・フォスターについてわかってその通りだった。人類とラーが遭遇した境界るから二人は秘密裡に行なわねばならないの いるす・ヘてである。 近くの植民星チャルセドンの都市が何者かに攻だ。攻撃を受けた都市に向かう途中、案内役を 今回は彼のデビー作である『ド】ンの戦撃されたのだ。チャルセドンには人類とラーのっとめていたラーの ( シンガーが、突如一一人に

7. SFマガジン 1981年8月号

七七年 ) は、二五五〇年のまだ人類とラーが地くったという声もあるが ) この四月に肺疾患ではテレポ 1 テーション能力、・七、八歳でいたず 球で共存している時代を描き、第三作の『クレ亡くなったジ = イムズ・・シ = ミツツの作品ら盛りのリーウィットは念力、とそれそれに超 シュの日』 The し 4 。 f 、 Klesh ( 一九七を紹介しておこう ( 本誌の「世界情報」欄能力をもっていたのだ。 三人を緑したたる星カレスに送り帰してやっ 九年 ) は、一〇〇〇〇年頃のクレシュが住む星を参照 ) 。 に不時着した人間の男とラ 1 の女の冒険を描い「悪鬼の種族』が昨年翻訳されているので、知たポーサートは、たちまち帝国警察から追われ ている。いずれも、人間の男とラーの女が一緒らない人はまずいないだろう。シ = ミツツにはることになった。禁断の星と接触したからだ。 この作品以外に忘れてはならない作品がある。しかし、密航していたゴスのおかげで警察の追 に行動しなければならないシチご一ーションに 『カレスの魔女』 T 、ミ VV; ご of Ka こご手からのがれられた。その方法はシーウォッシ おかれ、やがて両者間に交情が芽生えるまでに ュ・ドライヴ ! 一種の超能力的超空間飛行 ( 一九六七年 ) がそれだ。シュミツツの作品に なるが、結局はラーの社会のしきたりを破るこ とができない、という・ハタ 1 ンに落ちつくよう共通していえることだが、この作品も実に楽しだ。 今、銀河系にはカレスの人々しか知らない脅 だ。極言すれば、人 威があった。他の銀河系からきた無敵戦艦マナ 類とラーの文化とい レットの人工頭脳モーンダーである。それは銀 うのはちょうど都会 河系の征服をたくらみ、帝国の要人を自分の人 文化と田舎文化にな 形にしていた。カレスはその野望にさからい、 ぞらえられるのだ 魔そのために禁断の星の烙印を押されていたので が、そうなると都会 の ある。 の男と田舎の女の悲 ス レ 自分もカレスの人間であることを知らされた 11 一口、 『ポ 1 サ 1 トは、三人の少女たちとともにモーン 然としたものになっ ダーと戦うことを決意する。カレス人の超能力 てしまうので、そう というのは宀于宙のクラータ・ニネルギーを自由 いってしまっては身 に扱うカから派生しているのだが、モーンダ】 もふたもない。フォ を倒すにはそれだけでは弱い。クラ 1 タ・エネ スタ 1 はラーの文化 ルギーの生命体であるヴァッチの力を借りなけ を綿密につくりあげており、シングルスビーチいスペース・オペラに仕上がっている。 ればならないのだ。ポ 1 サートはヴァッチを手 とかマルチス・ヒーチのような魅力的な言語まで はるかな未来、宇宙に進出した人類は星々でなずけようと悪戦苦闘する。 創造しているのだから。ともかく、新人にして はすごい力業的なカ作なのである。最新作の独自の社会を築いていた。 十ーラマ星で奴隷まるで〈・ハ】サーカー〉を思わせるような設 『波』、をご ( 一九八〇年 ) はラーとは関係自由商人のポーサ 1 トは、 : のない物語らしい ( 残念ながらまだ手に入れてにされていた三人の姉妹を助けた。しかしその定で、しかも小悪魔みたいな少女たちが大活躍 いないのだ ) 。 三人は禁断の星、カレスの出身、つまりカレスという筋立ては、まことに楽しい。宇宙には成 5 の魔女たちだったのだ。十四、五歳の快活なマ熟した女よりも幼い少女の方が似合っているの リーンは予知能力、十歳ぐらいの無表情なゴスだ。実際。惜しい作家を亡くしたものだ。 まだ枚数に余裕があるので ( 無理に余裕をつ tH€ WITCHS OF 6

8. SFマガジン 1981年8月号

合図かと、群衆は緊張した。 んだものらしい というだった・。 両者のあいだに、久かたぶりの静寂が訪れた。 ある者は、彼らのタンクのところにライ・ハル・デ・ハートのステッ 息を呑んで見守る群衆の前で、整列を終えた機動隊員たちは、指カーが小さく目立たぬように貼ってあるのを見たと言い張った。 揮棒が振られると小走りに駆け出した。 またまたある者は声を潜めてーー俺の連れが、事件が起きるすこ ジュラルミンの盾が地面とぶつかり合う音が段々と遠のき、やがし前に、そこの路地でおかしな光景を見たんだ、と話しだした。 て紺色の乱闘服の一団は ZÄE の裏手の方角に消えた。 一人のサラリーマン風の男が、何人もの暴走族たちに手の切れる しばらくのあいだ、通りに溢れた人びとは呆然としていた。新たような一万円札の札東を渡していたというのだ。 な攻撃が仕掛けられるまでの時間稼ぎではないかと緊張を解かない ・「なんとなく様子がおかしいんで、俺の友達はそれをじっと眺めて 人間も多かった。 いたんだ。そしたらサラリーマン風の男がそれに気がついて、奴の 五分が経過した頃、サイレンを鳴らしながら救急車が到着した。 ところに飛んできてーーこれは絶対、誰にも話さないでくれってい 負傷者の人数は莫大な数字にのぼっていた。入れ代わり立ち代わって五万円を渡すんだってさ」 り、ひっきりなしに救急車が現れ、担架で傷ついたひとを収容して この話をする連中は、決まってここで声を落とした。 は、病院に運び去った。 「ところが、俺の友達は、その男の背広の襟についている社員・ハッ 残った人びとは、ロぐちに機動隊の暴虐ぶりを非難した。 ジをはっきり見てしまったんだ。いったい、どこの会社だと思う」 やがて放水車が到着し、アスファルトの上に流れた血と、あたり そして、公園通りに君臨する店とはライバル関係にあるデパート にたちこめる催涙ガスを洗い流しはじめた。 の名を、さも重大なことを打ち明けるようにして告げるのだった。 人びとの緊張がやっと緩んだ。 この噂を聞いたものは、他人のまだ知らない情報を伝えるという ただ奇妙なのは、こうした場合、真っ先に現場に到着するはずの歓びに頬を輝かせながら、隣にいる人間をまえては話しかけるの ・こっこ 0 カメラや、報道の腕章を巻いた人間がほとんど見受けられない 「さっき、私の友達の友達がねーーー」 ことだった。 宇田川と亜希子の隣でも、熱つばい口調で周囲にこの尊を披瀝し 人びとのあいだに、すこし片すかしを喰ったような気分が流れている男がいた。 宇田川はこの話を聞いて、すぐに臭いと睨んだ。仮りにライ・ハ 緊張を解いた通行人たちが、自分の左右にいる見知らぬ人間を相ルのデ。 ( ート 会社が暴走族を背後で操っていたとしても、社員バッ 手にして雑談を始めたころ奇妙な導が一斉に人びとの間を走った。 ジをつけたままで下工作に臨むわけがなかった。素人でもすこし冷 この騒動のそもそもの発端となったあの暴走族は、公園通りの中静になって考えればそれくらいのことはわかる。しかし、この通り ほどにある大きなデパートのライバル会社が嫌がらせのため送り込にいる人間の多くがこのを信用したらしかった。 8 5

9. SFマガジン 1981年8月号

アンドイドの 0 0 0 科学の進歩が人間を怠惰にした、 というが本当だろう力も 目ード、アンドロイド ( 人間型ロボット ) 製造会社は、 注文に次ぐ注文てうれしい悲鳴をあげている。 単純な作業はもちろん、 コンピュータ内蔵てほとんどの用事は OK 。 主婦に大モテなのオこしかしこのところ、 アンドロイドの故障が相次いて、いる。 アンドロイド・クリニックには体の不調を訴える患者が殺到。 とうとう、国をあげての「全国一斉アンドロイド健康調査」が 実施され、結果が公表された。それによると、 アンドロイドの不調の原因は運動不足だという。そして、 治療法は「、、公共科金の支払い〃や、、年金の受取り〃 を自動にして、て、きるだけアンドロイドたちを 自由に外出させること」だそうてある。 みなさまのお役に立つ 三和銀行

10. SFマガジン 1981年8月号

「うん」 は、話しだした。「笑わないで聴いて欲しいんだが : おれは、だんだん減って行っているんだ」 ぼくは、そのあとを、目でうながした。自分の体験を 喋るより、それを聴くのが先だと考えたのだ。 「おれはね、小さいころから親に尻を叩かれて : : : 大学 「おれは人間というのは、何かやりたいことがあるうち に入ることだけが目的だったんだ」 は、求心力というか、凝集カみたいなものを持っている はいう。「だからさ、二浪して合格したときは、もんじゃないかと思うんだよ」 うこれでゴ 1 ルだと思った。目的を達成してしまったん はつづける。「それで : : : 満足してしまうと、カが だな。あとは、何をしようという気もなかった」 弱り、弱ると、自分の一部が分身となって、逃げ出すん 「それは : : : わかるよ」 じゃないかなあ。逃げて、それで消えるのは、エネルギ 「そんなある朝、おれが目をさますと、不思議なものが 1 が拡散してしまうからじゃないか ? 拡散してしまう 見えたんだ」 と、もうそれは本人には戻らない。そのぶんだけ、本人 と、「おれとそっくりの奴が、おれの身体から抜は、減って行くんだよ。きっと。おれは、随分減ってし け出て、歩いて行くんだ。笑わないでくれ。本当だ。歩まって : : : 自分でいうのも何だが、影が薄いんしゃない いて : : : そのうちに、見えなくなってしまった」 かな。ま、おれ自身、何とか意欲を持とうとはしている 「ーー - ・きみ」 んだが、もう無理じゃないのかという気がするんだ。可 ・ほくは、・ほく自身の経験を話そうとしたのだが、・、 ム月性カ : ・・ : というより、人間として : : : 減っちゃったん は、そうさせなかった。 だなあ」 「嘘じゃない」 は首を振った。「それでね。そのあと、おれはひど 「あんた、信じないだろうなあ」 く疲れて、これまで以上に、やる気がなくなった。そん は、細い声を出した。「こんなこと、信じられない なことが : : : 一回じゃなく・ : ・ : 何回もあったんだ。その よなあ」 たびに、おれは意欲のない、目的もない人間になって行 「信じるよ」 った」 4 2