ですと答えると、課長は、それは心配なことだとかなんとかいつるな、の一点張りだったよ」 て、慰めの言葉をかけてきた。それを聞いて私は、課長が珍しく昼彼の顔に深刻そうな表情が宿「た。額の皺が一層深さを増したよ 食を御馳走してくれたのは、部下の私的なトラ・フルを心配してくれうだった。 てなのかーーーそう考えて、思わず目頭を熱くしたほどさ」 「私の印象では どうも上のほうから、なんらかの圧力がかカ ているらしい。私のセクションの特殊な性格上、そうしたケースが 宇田川の口調に、急に自嘲的な調子が籠められた。 : しばらく間を置いてから、課よくあるんだよ。課長のロぶりからすると、今度も上のほうから、 「私もとんでもないお人良しさ。 ところで、きみは昨日、勤務時間中に 長はこう切り出してきた なにか指示があったということが、私にはわかるんだ」 娘さんの行方を追って原宿にいったらしいな。私は慌てて、その日の 一瞬、彼は途方に暮れた表情になった。 「しかし : : : 今回はそんな圧力がかかる理由もないんだが。いった 仕事が早くケリがついたもんで、と答えた。すると課長はーー・だっ いや、私ときみにだ たら早くデスクに帰って、集めた情報の整理をするべきだろう。事い私の娘が行方不明になったことと、私に 二人に向けられた妨害に、どんな結びつきがあるんだろう 情はわかるが、今後、公私混同は絶対に謹んでもらわなけりゃならな ん、と私に厳命した。反論のしようがないので、私はひたすら恐縮 ? 」 「でも」 して課長の話に頷いていた。すると、次に課長はこんなことをいっ てきた。おまけに、きみは公私混同の果てに、二件もトラ・フルを起気を取り直した表情で亜希子がいった。彼女らしい快恬さが蘇え こしたそうじゃないか。一人はいまも病院で寝たきりらしい。これろうとしていた。 をマスコミが嗅ぎつけでもしたらどうなる。きみの首が飛ぶだけじ「これから、また原宿へ繰り出すつもりなんでしよ、オジさんは ゃないんだよ。直属の上司である私も、なんらかの処分の対象にな るに決まっているんだーーーざっとこんな具合いに、ネチネチした嫌彼は黙って頷いた。しかし、その顔にはすこしのことでは揺らぎ 味が何十分かつづいた。あのとき食べた寿司の味も思いだせやしなそうもない決意が窺えた。 いよ」 なんていいかたは非難されるかもしれな 「仕事の上のことなら し、刀 いくらでも譲歩するよ。私たって宮仕えの身分だ。社会が 「私の場合と、まるきし同じじゃない」 どんなものかは知っている。しかし、これは娘のことなんだ。私の 亜希子が驚いて叫んだ。 「そうだ。私の場合もきみと同様に、誰かからのタレコミがあったような男でも、上役から威しをかけられたぐらいで娘の捜索を諦め らしい。例の神宮の入り口での機動隊と揉めた一件も、課長は知ったりはするもんか。また奴らも、ずいぶんと私を舐めてくれたもん ていた。私が彼らの横暴な振るまいを訴えても、一向に取り合おう とはしないんだ。他の部署とトラブルを起こして下手な借りをつく 宇田川が伝票をんで、立ち上がる気配を見せたとき、亜希子も
。そして、角の わってしまったの。そして、そのあとから、こういう若者向けの店が出入りしているのに初めて気がつくってわけ : がまわりにどんどんできはじめて、一層ひとの流れを引きつけたつお豆腐屋さんが、アウトドア・スポーツのお店になっていたことに 5 てわけ。 もっとも私だって、ときどきはこの辺にくるわけだかも突然気がつくの。その前から、なにか変だな , ー・、・通りで擦れ違う ら、大きなことはいえないけど」 ひとたちが、以前とは違うみたいだなってことには薄うす気がつい 亜希子も苦笑しながら、眼の前のフルーツ・ ハフェに手を伸ばしてはいたのよ。でも、それが意識にの・ほってくるのは、すいぶんと あとのことなのね」 : さっき、 「ひとの嗜好なんて、実にあやふやなもんなんだね。・ 宇田川も亜希子の言葉に同意を示した。 私がコーヒーといって注文したら、ウェイトレスが、・フレンドです「そういえば このあいだ、きみを家まで送ってから、私はまた かアメリカンですかって説いただろ。私にいわせれば、コーヒーとあのあたりをぶらぶらとしたんだよ。気がついたら、いつのまにか いったらコーヒーのことさ。あのアメリカン・コーヒ 1 なんて、お代々木公園に戻っていた。そのときーーー変な話で恐縮なんだが 湯割りの薄いやつが出廻りはじめたのも、考えてみるとこの十年間私は急に尿意を催したのさ。すこし先に、公衆便所らしい灯が見え のことだ。それを、いまでは誰も疑いもなしに美味そうにってい たんで、私は急いでなかに飛びこもうとした。そしたらーーこ るーーー・考えてみれば、不思議なもんさ。ひとの好みなんて、そんな彼はすこしおかしそうに笑った。 ふうにコロコロとすぐに変わってしまう。もっとも、さっきのきみ「いったいなんだったと思う ? そこは地下鉄の出人口だったの さ。 の台詞じゃないがーー私だって、コーヒーを飲みすぎた日なんか、 ・ : 私はあのあたりに関しては、けっこう土地勘があったつも 無意識のうちにアメリカン・コーヒー 、なんて注文してる始末たが りなんだけどね。何年か前に、新しい地下鉄の駅ができてたらしい ね」 んだね」 「そういえばーー・・・・」 彼はしばらく間を置いてからポツンといった。 「なんか、こう 亜希子が、彼の言葉に触発されたように語りだした。 世のなかの動きがただ急激っていうだけでな 「私の家ってーーーオジさんはこの前、送ってくれたから知ってるでく、 ひどく場当たり的なものに感じられてならないんだよ、私に しようけどーー・原宿の裏通りにあるでしよ。あの辺は、表通りと比は。そして、私たちの意識もーーそれに調子を合わせるように、場 べたら、まだ静かなもんだけど、それでも私が子供の頃と比べたら当たり的で、しかもずいぶんと脆いものになってきてるような気が いや、私のいっているのは、学者たちが喋る、現代社会 凄い変わりよう。ところがね、それに気がっかないの。ああ、なにする : か工事をしているんだなーー・家を改築しているのかな、ぐらいの興の危機がどうしたこうしたって話じゃないんだ。い ってみれば 味なのね。そして、ある日、父のお使いで、すこし離れたところにもっと肉体というか、本能に根ざした恐怖みたいなものかもしれな ある煙草屋さんにいくと、そこが・フティックになって、若いコたち
亜希子が微かにぶるっと背中を震わせたようだった。このとき、嘆かれることだろう、って暗に威しをかけてくるの」 宇田川は彼女の表情に翳のようなものが潜んでいることに、初めて彼女は悔しそうに唇を噛んでいたが、やがて冷静な口調でいっ こ。 気がついた。 いや、娘のことはいいんだ。それ「腹がたったことは確かだけれど、でも、どうにも腑に落ちないの 「それで : : : 私に話ってのは ? よ。私ーーー詰所から出てきた、あの機動隊員たちが、学校にいろい より、その様子だとなにか心配ごとがあるみたいだが : : : 」 ろと、あることないこと通報してきたんじゃないかと思うの : : : 」 亜希子は明るく笑おうと努めたようだったが、笑いの底に不安が 亜希子が宇田川の顔に問い質すような視線を向けた。こんなとき 横たわっているようだった。 の彼女は、年齢よりもずいぶん大人びて見えた。 「別にたいしたことじゃないんだけど : : : ちょっと気になることが あったの。あの次の日、学校で嫌なことっていうか、変なことがあ「実は、これはここだけの話なんだがーーー」 ったの。放課後、私、生活指導の先生に呼ばれてね、さんざん嫌味宇田川が、やや話し辛そうな口調で切りだした。このことはロに 出すまいと思っていたらしいのだが、いまの亜希子の告白を聞いて を並べたてられたの。こういってはなんだけど、私、学校ではいい 子で通ってるの。いわゆる優等生ってやっーーーイヤラシイ形容だけやっと話す気持ちになったらしい 「私もあの翌日、きみと似たような経験をしたんだよ。昼休み、課 ど」 宇田川が学校の名を訊くと、彼女は都内でも有数のあるお嬢さん長が珍しく私を昼食に誘った。庁内にある賓客用の応接室で、特上 の寿司を何人前もとりながら、課長は最初は当たり障りのない仕事 学園の名を口にした。 ごめんなさいね、生活指のことをいろいろと話題にの・ほらしていた。そうそう、私の担当は 「あなたは昨日の夜、変な中年の男と 導の教師がそういうのよーー公園を歩いていたそうね、って教師が公安課というやつでね。政治警察なんていって嫌う連中も多いが いうのよ。私が怒って、いったい誰がそんなことをいったんですかね、要するに左翼や右翼の調査、取り締まりが仕事だ。私は右翼専 門なんだーー・街頭で宣伝カーに乗って、軍歌を流してるのがいるだ って訊いても、そういう通報が学校までありました、の一点張りな の。あげくの果てに、ずいぶんと親しそうに暗がりのなかにいたそろ ? 彼らの調査が私の仕事なんだ」 うだけどいったいなにをしてたのーーー・こんなことまでいいだす始末宇田川はカツ。フの底に残ったコーヒーを一気に飲み干した。 よ。私が、あのひとは刑事さんです、捜査の協力をしてただけで 「私が受け持っている右翼の連中に関しての情報交換ってやつがひ す、っていっても取り合わないの。あなたは警察に厄介になったことしきり終わったときだ。課長が、娘さんの行方は擱めたかね、つ とでもあるんですか、ともかく二度とそのひとに会っちゃいけませて説いてきた。課長には知らせてなかったが、少年課にいる同期の んーー教師はそれを繰り返すばかり。最後には、教頭先生までやつ人間に頼んで秘かに調査してもらったりしていたから、早晩「知れ てきて、あなたのような優秀な生徒に変な噂がたっちや親御さんもることにはなるだろうと覚悟はしていたんだ。私が、まだ行方不明 5
「どうしたのあなた。青い顔して、気分でも悪いの ? 」 私たち三人はかぶりを振る。 「なんでもない。そろそろ風呂を涌かす時間だろ」 「あら、もうそんな時間。すっかり忘れてたわ」 「そう。それならいいんだわ。いるはずないわよね。ホ 私はあわてて居間に戻った。 ホホホ」 しばらくすると風呂場から、妻の悲鳴が聞こえてき私たち三人は一度、互いに顔を見あわせ、また同時に 口を開こうとしたが、思いとどまり、それそれ自分の部 「どうしたー 屋へ戻った。 なにかいたか ! 」 「母さんどうしたんだい ! 」 「お母さん、どしたのつ ! 」 その晩、私たち一家は食卓に集まった。 私が駆けつけるのと同時に息子と娘もやってきた。み 妻がほほ笑みながら言う。 な風呂場の前で、はちあわせする。 妻はガラス戸を後ろ手に閉め、額の汗を手の甲でぬぐ「さあ、みんなタ飯よ。おなかすいたでしよ。今日は予 っていた。ハアハアと荒い息をしている。 定を変更して、お魚料理よ。たっぷりあるから、どんど 「風呂の中に、なにかいたのかい ? 」 ん食べてね」 私と息子と娘が同時に言った。 テ 1 ・フルでは大きな鍋が電熱器の上でグッグッ煮えた 三人で言ってから、なんとなく気まずくなり顔をそらぎっている。皿にものっている。 す。私は咳ばらいをひとっする。 「あ、そうそう。お風呂、涌かしすぎて、すごい熱湯に 「いえいえいえ。いませんよ。あれは幻覚だわ。いるわなっちゃったの。だから、冷めるまで入るの待ってね」 けないじゃないの。それとも、あなたたち、なにか見た私は鍋と皿の魚料理をじっと見つめた。 3
『火星兵団』のほかに、その名も『地球要塞』という子供向けのオルガ姫とともに巨大な島型潜水艦〈クロクロ島〉に乗って の長篇がある。これなどは仕掛けや小道具もにぎにぎしく、現諜報活動を行なっている。そして汎米・欧弗の緊張状態の続く 在でもけっこう楽しめる内容なので、詳しく紹介してみようかある日 クロクロ島操縦室の私の目前に、音もなく幻のよう と思う。雑誌〈譚海〉昭和十五年八月号 ~ 十六年二月号に連に現われたのは高圧潜水服のような鎧に身を包んだ謎の怪人。 載、単行本は昭和十六年三月偕成社より刊行の作品だ。 ( な自らを >< 大使と名乗るその怪人物は、私にこれから汎米連邦連 お、譚海については拙稿第七回をご参照下さい ) 合艦隊旗艦〈ユーダ号〉の司令長官室を訪れてみないかと切り 出してきたのだ。 せいれき きぼう 西暦一九七〇年の夏ーーー この突然の 「もとより、それは希望するところであるが」 よどむーー「これから、どうして敵の旗艦 折から私は、助手のオルガ姫をつれて、絶海の孤島クロ申し出に、私はいい そげき クロ島にゐた。 に近づけばい & か。私が甲板を踏む前に狙撃でもされ & ば、お しまひだ」 物語は、こんな書き出しから始まる。この小説の舞台となる しかし、私の力を信じろという X 大使の言葉に乗せられて、 一九七〇年の地球は、南北アメリカを合併した汎米連邦、ヨー結局は大使に承諾してしまう。 ロッパとアフリカを統合した欧弗同盟、そして大日本帝国を中 心とする大東亜共栄圏の三大勢力によって分割・支配されてい 『よろしい。向ふへいったら、君が説きたいと思ふことを 訊いてよろしい。しかし、わしの代りに、 一つ二つ訊いて る。おりしも汎米連邦と欧弗同盟とは資源問題をめぐって対立 しあい、今まさに第三次世界大戦は一触即発の状態にあった。 もらひたいことが出来るかもしれな。いそのときは、ぬか さと 主人公の「私」こと黒馬博士は、美人アンドロイド ( わワ ) りなく、やってくれたまへ。むろん相手には、悟みれぬや うにな。』 これは大使の科白。とーーー突然起こった激しい目まい。そし て私が再びあたりを見回した時には・ ・ : なんという不思議、 つの間にやら私は旗艦ューダの司令長官室に立っていたのだー 驚くューダ号の司令長官。ヒース提督に詰め寄った私は、彼の 口から驚くべき事実を聞かされる。提督の話によると、これか ら雌雄を決しようとする汎米・欧弗の両者は開戦まぎわの今に なって急に和解し、逆に提携して大東亜共栄圏を侵略する計画 なのだという。 提督の言葉に激怒する私の耳許へ、そっと >< 大使のささやき ひめ 『地球要塞』 かんばん ( ママ ) 6
息子はほほ笑みながら気楽にガラス戸を開けて中に入「うん。それが浴室に、人魚が : : : 」 「え ? なに ? 」 「あ、いや、その。そうだ。ちょっと風呂を見てくれな 静かだった。私は中の様子に聞き耳をたてた。 い力」 たっぷり二分ほどたってから、息子は真白な顔をして 出てきた。ガラス戸を後ろ手に閉める。 「どしたの ? もう入りたいの ? 涌かしてあげるわ 「どうだった ? なにか中にいたか ? え ? 」 よ」 私はあせって説く。 娘は鼻歌を歌いながらガラス戸を開けて中に入る。 息子は放心したように無表情だ。 「きゃああ ! 」 「あ、あの : : 。に、にんぎ : : : 」 とび出てきた。 「なんだなんだ」 そこまで言い、ぶるぶると顔を振った。 「いや。なにもいないよ。僕、ちょっと根をつめて勉強「よ、浴槽の中に : 「うん、浴槽の中に、なんだ ? 」 やりすぎたみたいだ」 彼女はごくりと唾を呑みこむ。 頬がひくひくつっている。 「なにもいなかったわ。ええそうよ。いるはずないわ」 「ちょっと眠るよ」 私はずつこけた。 息子はふらふらと二階へ行ってしまった。 彼は見たのだろうか ? なにも見ないとは言っていた「今日は朝から頭痛がしたのよね。やつばり風邪かしら」 ぶつぶつ呟きながら彼女も自分の部屋へ行ってしま 「あらお父さん、なにやってんの ? 」 気づくと娘の幸子が小首を傾げて私を見あげていた。 私も少し休んだほうがいいかな、と思ってその場を離 ミッキーマウスのトレーナーが、可愛いし れようとすると、買物から妻が帰ってきた。 2
覗きこむ。やはりいる。 浴槽を真上から覗いてみた。 私は気が狂ったのだろうか ? 「おや ? おやや ? わっ , よく見ると、その小さな人魚は、さきほどまで、・ほん 仰天した。 やり見ていた外国雑誌のグラビアにのっていたグラマ 1 水の中に人魚がいたのである。 頭から尻尾の先まで一メートルほどであろうか。おとな女性に似ていなくもない。 ぎ話に出てくる。あの人魚の小さいのが中にいるのであ「幻覚だろうか ? そうに違いない。私は疲れているん る。 人魚は・フロンドの長い髪を揺らめかせ、あおむけにな頭を抱えて浴室を出た。後ろ手にガラス戸を閉める。 そのまま浴室の前で、・ほけっと突っ立っていると、息 って水中から私をきよとんと見あげていたのである。 人形かなと思ったが両手と尾を小刻みに水中で動かし子の信吾郎が二階から降りてきた。 ている。そして、なによりも私の視線にポッと顔を赤ら「どうしたんたい父さん。そんな所にバカみたいに突っ め、形よくふくらんだ小さな胸を両手で被い隠したでは立って : : : 」 、、 0 日曜だというのに、ずっと二階の自室で受験勉強をし こ / し、刀 ていたらしい 体こそ人形のように小さいが、みごとな ' フロポーショ ンの美人である。 いや、なんでもない。えと、そうだ。信吾郎、お 私はわけが判らす眩暈をお・ほえた。 まえ、ちょっと風呂の中を見てくれないか」 ・ハ力な。人魚がいるなんて。しかも風呂の中にだ。こ「風呂の中 ? 」 「ああ」 んな気違いしみた話は聞いたことがない。 眼をこすり、大きく深呼吸をしてから、中をもう一度「いいよ。 0 な、なんだこれは ! 」 しったい、なにがあるんだい ? 」 ↑ミ代 00
4 よ、よろこんで下さい。なんと、あの「コナにしていますが、なぜかいつもがっかりさせら 投稿歓迎 ン」が映画化されとるのですよ。 ( なんて、れます。 それは・・ハインラインのファンだと名 宛先は本誌てれぽーと係 ( 奥付参照 ) ;-v ファンならもう知ってるかな ? ) 「コナン」 といっても「未来少年コナン」じゃなくて、 c< のりをあげる方がいらっしやらないからです。 掲載分には文庫最新刊一冊進呈 ・・ハワードさんの「コナン」なのです。な ( もちろんたくさんいらっしやるのでしよら洋・ んでもジョン・ミリアス監督が超大作として撮れど ) きや 1 感激です。やっとマガジン″な影中だそうで、主演はアーノルド・シュウ 1 ッ ハインラインの作品 ( 日本語に訳されている るものを手に入れることができました。大阪の 工 ( 知らんなあ ) なんだって、ワクワクしますもの ) はほとんど読んだのですが、古くて手に 大学時代の友人から、この本の事を聞いてはい ね。 ( 以上、ちょっと前に知った情報なのです入らないものが数冊あるのです。もちろん神田 たのですが、なにせ・ : いなかなものですかがここに記しておきます ) あたりの古本屋さん等探してみましたけれど見 ところで、ハワ 1 ドさんで思い出したけど、 ら。この本を入手するに際し、とんでもないハ つかりません。「自由未来』『地球の緑の丘』 ジをかいてしまいました。聞いて下さい。今日栗本薫さんて中島梓さんでもあるのですね。っ等古い作品をお持ちの方譲っていただければ幸 い最近高千穂遙さんの『ダ 1 ティベアの大冒 こそと意気込み、隣町の本屋さんに行き「すい いなのですが、ご無理でしたらお貸し下さいま ませんマガジン』ってありますか ? 」と険』の解説を読んで知ったのですよ。 ( うー せ。 ( どなたでも ) 私が尋ねると、店員さんはハッとして、こっちなんと無知な私なのじゃ。なさけなかあ ) なに また、・ << ・ハインラインのファンの方お を向きジィーツと私の顔をながめるのです。そしろ、そこはを買うようになってからま たより下さいませ。二十歳以上の女性に限りま して「あんたが読むの ? 」とその人が言ったのだ半年たたぬという未熟者故かんべんしてやっす。 で私は大きくうなずき「ハイ ! 」と言いまして下さい ちなみに私は二十五歳の独身です。 それでも、光瀬龍さんや高千穂遙さんなどの た。店員さんは考え深げに「ふう ~ ん」と言っ ( Ⅷ品川区南品川六 ー一二ー一五田中荘 て場所を教えてくれました。が、ないんです。作品は文庫本でかなり前から読んでましたよ。大葉成子 ) それで、今度はハワ 1 ドさんや、栗本さんの 一生懸命探すのですが、見つからないんです、 ヒロイック・ファンタジイを読もうと思ってい どうしようかと思い、ふと横を見ると : : : そう 0 なんです、店員さんはととを聞き違えるところです。 ( そんな時映画化の話を知りま した ) たのです。 これからもいろいろなを読んでいこうと さて、話は変わるのですが、私がにのめ 星群祭開催のお知らせ 思っています。 り込んでまだ一年たらずです。作品としては、 第八回星群祭を左記のとおり、開催します。 ヴォークトさんや、ハインライン ( 実は「夏へ ・これは絶対に読んでおくべきじ日時七月一一十六日 ( 日 ) 午前十時 ~ 午後五時 の扉』で目ざめたのです ) 、・ハロウズ、エイヴや、という本がありましたら、ハガキでよいで場所京大会館 ( 京都市左京区吉田 ) アリーさんのファンなのですが、まだまだすばすから感想などざっと書いて未熟な私にお知らテーマ「作法パ 1 ト 2 」 ゲスト荒巻義雄、柴野拓美、堀晃、風見潤、 らしい本は、たくさんあると思うのです。ですせ下さい 新井素子 ( 敬称略 ) 他各氏交渉中 ので、このマガジンの読者殿の中で「こん ( 昭群馬県太田市天良一三三ー な本が良かったヨ」という作品があれば、教え 直井睦子 ) 参加費二五〇〇円 ( テキスト代含む ) ていただきたいのです。いなかっ子の私に、愛 委員長藤田敏幸 はじめておたよりします。 の手を ! 待っています。 参加御希望の方には詳しい案内書をお送りし ( 市滋賀県蒲生郡蒲生町稲垂一一四七 の愛読者としてはまだまだ新参の私でますので、六十円切手同封の上、左記事務局ま 東野明美 ) すが、は私にとってとても大切な宝物のよでお問い合わせ下さい うなものです。「てれ・ほーと」をいつも楽しみ事務局〒観京都市上京区相国寺北門前中之町 8
「魅羅呪 ? 」 誰に向かって言うともない口調で、男は喋りだした。 男は鸚鵡返しにいった。 「この頃までは , ーー親馬鹿といわれるかもしれないが、ほかの家の 「きよう、あそこで踊っていた連中のグルー・フ名は、ひとっ残さず同じ年頃の娘たちと比べても、ずっと良くできた娘たったんたが。 頭に留めておいたはずなんだが : : : 」 それが八月に入ってすぐの頃、同級生とこの街に遊びに行ってから 「一週間ぐらい前に解散しちゃったらしいのよ。全部で二、三十人急に変わりはじめた。毎日、夜遅くまで出歩くようになってね。そ ぐらいだけど、一番派手に騒いでいたグルー。フ。通行人や警察として、何日目かに、とうとう朝帰りした」 も、いろいろとトラ・フルを起こしてたらしいわ。それがある日、急 男の顔にふっと自嘲の翳がさした。 にこの街に現われなくなったの。警察に捕導されて、鑑別所送りに 「まったくみつともない話さ。娘の非行に気がっかない刑事なんて なったんじゃないかって、もつばらのだけどーーー」 ね。でも、さすがに私も、真樹子がーーー娘の名前なんだよ、これが 朝帰りした日には、こっぴどく叱ったもんさ。娘は言い訳をは 「いや、そんなことはない。絶対にないはすだ」 じめた。毎日出かけて遅くなるのは、夏休みの宿題のレポートを作 男が急に断定的な口調で呟いた。 るために、図書館に行かなくちゃならないからだとか、朝帰りした 「そんな記録は、・ とこを探しても見つからなかったー・ーー」 のも、友達と話しこんでいるうちに終電を逃したんで、深夜喫茶で 「オジさん、ひょっとして警察の人 ? 」 時間を潰していたんだとかねーー。私の職業的な勘は当然、娘のい 男がきまり悪そうに頷いた。 っていることが嘘だと告げていた。しかしねーーー親としての私は、 「家出人の捜索かなんか ? 」 娘のいうことを信用しちまったのさ。まったく、親ってのはどうし 写真を返しながら、少女が訊いた。 ようもないもんだよ。心の底では、娘になにか変わったことが起こ 「ああ。しかし、仕事じゃないんだ : : : 」 りかけているのに気がついているんた。なのに、事実を直視するこ 男はそこで一度、言葉を切った。 とができない。ありのままの娘を見るのが、怖いんだな」 「この子はーーー私の娘なんだ」 少女は黙って男の話を聞いていた。それに気がついた男はすこし 男は手元の写真に眼をやった。一枚はセーラー服を着たもので、 隣にいる母親の服装からして、高校の入学式の日に撮ったものらし慌てた表情になった。 かった。もう一枚は庭の大小舎の前で、小大を抱いている写真たつ「娘の話となると、つい夢中になってしまう。 : : : 私の名前は宇田 川伸雄というんだが : : : 」 た。最後の一枚は、海岸で日に焼けた水着姿を撮したものたった。 どの写真にも、屈託のない笑顔が写っていた。 「私は、倉田亜希子。たぶん、オジさんのお嬢さんと同じぐらいじ 「この海水浴の写真が、ほんのひと月とちょっと前ーー・・夏休みに入やよ オいかなーーー高校二年よ」 ってすぐに撮ったやつなんだ」 「ああ、うちのと同じだな。それで、あんたも : : : あそこで踊って 5 4
たら、ゲイルとアシ、ロンは、殺されることになるだろう。そのと通信機を見つめて、その時間を過ごした。 き、おれたち・は、どうすべきなのか、ローダの言っていることは、 待っているのは、ゲイルも同じだった。戦いの音は、ますます激 9 そういうことなんだぜ」 しくなっていった。アシュロンは、眠り続け、ゲイルは壁の模様を 見つめ続けた。戦いの音の様子や、この宮殿の中の雰囲気からすれ ロールは、ステンの顔を見つめた。 ば、情勢はレンケにとって不利であるのは確実のように思えた。 「おれたちは、アシュンとゲイルを見殺しにするより、ないんだ ろうな、そのとさは」 時々、廊下を駆けていく兵士たちの足音が響いた。そのたびに、 ゲイルは、身を固くした。自分の目で、戦況を確かめることができ メリンがうなずいた。ローダは、それをじっと見つめた。 ないのは、いらだたしいことだった。何度か、様子を見に出てみよ 「そのとおりね。私たちは、彼らを見殺しにするよりない。でも、 それはつらいことよ。そのときになって、私たちの中から、そのつうかと思ったが、アシ、ロンが目覚めてからにすべきだと、考え直 らさに悲鳴をあげる人が出ないことを祈るわ。そうなったら、ます。 た、私の決心もゆるぎ出すに決まってるんだから」 また、足音が響いた。ゲイルは、身を固くして、部屋の扉を見つ 「キリイを見ならうんだな」 めた。その足音は、これまでのもののように、廊下を通り過ぎてい ロールが言う。それは、明らかに、ゲイルとアシュロンを置いかず、外の扉の中に入ってきた。ゲイルは、唇を噛みしめた。立ち て、レンケの外に出ていったキリイの行為を、彼が快く思っていな上がって、身構える。無造作に、部屋の扉が開けられた。白い長衣 をまとった老人が、兵士たちに囲まれて、部屋の中に人ってきた。 いことを示していた。 「ラダ・ガルイ ! 」 それに関しては、残りの三人も、ほぼ同様の感情を抱いていた。 そうするようにキリイを説得したローダでさえ、キリイは、あの場ゲイルは、吐き出すように、その老人の名を口にした。 レンケの王たちの一人であるラダ・ガルイの顔には、うっすらと にとどまると強く主張す・ヘきだったと考えていた。結局は、同じ行 動を取るにしろ、そこにはもう少しためらいがあって当然だ。それ汗が浮かんでいた。 に気付かないのが、キリイの欠点た。ローダは思う。そして不必要「私の名をお・ほえていたのかね ? 」 な敵を造ってしまうのだ。 「忘れるわけがないわ ! 」 「どちらにしろ、おれたちは、ここで待っているよりない」 ゲイルは、憎しみを隠そうともしなかった。 ロールが言って、メリンの肩を軽く抱いた。マイダスの若者たち「だが、間もなく、忘れざるを得なくなるかも知れぬな」 は、自分たちが何もできぬことを知っていた。できるのは待っこと ラダ・ガルイは、笑みを浮かべて言った。 こけだ。 「どういうこと ? ・」 時間は、這うようにして過ぎていった。マイダスの若者たちは、 「ガイが、我々の防壁を破った。ワイドルからの旅人たちょ、私