が本人は楽しんで仕事をしていた。若い読 者たちから生きいきとした反応を得られる というのが、とりわけ大きな理由だった。 おまけに、フ・リッシュ自身がつつましく語 ったところによると、それらは、、日々の 糧″だった。 1960 年代や 70 年代にも、ブリッシュの執 筆はかなり着実に続けられたが、全体的水 準は低下した。彼は健康を害し、 1960 年代 に喉頭ガンの手術に成功したが、 1975 年に 肺ガンのため死亡した。 彼はまたウィリアム・アセリング・ジュ ニアのペンネームで、草創期からの最も影 響をおよぼした批評家の一人でもある。彼 の ( 多くの場合その厳しさで著名だった ) 評論の大部分は二冊の本におさめられてい る。 The 4 れ d ( 團 1964 ) と 」イ 0 尾ぉ。〃 d ( 1970 ) がそれ だ。アンソロジストとしての彼は住 わ 4 襯 5 7 ' んな Io 切 g ( 乞 1966 ) 、訪な & 0 5 ( 乞 1970 ) それに C ・ M ・コーンフ・ルースの短篇を集めた T ん 0 〃 0 ' C あ ( 1972 ) を手がけている。また 1 号のみで終わった SF 雑誌ヴァンガード ・サイエンス・フィクション ( 1958 年 6 月 ) の編集もしている。 フ・リッシュは他の方面でも SF 界のため に精力的な仕事をした。若手作家の激励に 力を尽くし、ミルフォード S F 作家ワーク ショップの創設者の一人であり、アメリカ S F 作家協会の実際の創立委員でもある。 1970 年には英国の S F ファウンデーション の設立委員にも名をつらねた。 フ・リッシュは共作で 2 点の SF 長篇小説 をものしている。ロノく一ト・ A ・ W ・ラウ ンズと T ん D ″がな記ユ〃 ( 1953 ダイ ナミック S F 誌 ; 1959 ) 、それにノーマン ・ L ・ナイトとの A To " ビ E 0 ( 1967 ) である。 彼の作品中にしばしば見られる知的情熱 IV の対象はェズラ・パウンドやジェイムズ・ ジョイス ( 彼は 2 人についての論文を出版 している ) やジェイムズ・ブランチ・キャ ベル ( キャベル協会誌カルキの編集もして いる ) の諸作、あるいはリヒャルト・シュ トラウスの音楽、相対論物理学である。時 として、不公平にもフ・リッシュは冷たい作 家だと思われている。たしかに理性的では あるが、彼の人格にも作品にも、きわめて 神秘的でロマンチックな一面があり、それ は注意深く抑えられてはいるがしばしば表 面下にうかがえる。彼は学究肌で、 1968 年 にはオクスフォード近くに住むために、英 国に帰化し、その地に葬られている。彼の 原稿や論文類はオクスフォード大学のポド レアン図書館におさめられている。 〔 P N 〕 『宇宙の天使た その他の既訳作品 ち』 & “ Dw “ 5 ( 1961 ) 、『暗黒大陸の 怪異』 The なん S ん叱ぉ ( 1962 ) 、『宇宙 大作戦・謎の精神寄生体』 & 行 2 ( 1968 ) 、『宇宙大作戦・地球上陸命令』 & T た 3 ( 1969 ) 、『宇宙大作戦・暗闇 の悪魔』 & 。だ 7 ' 尾ん 4 ( 1971 ) 、『宇宙大作 戦・メトセラへの鎮魂歌』 Star Trek 5 ( 1972 ) 、『宇宙大作戦・禁断のパラダイ ス』 & の・ 7 元ん 6 ( 1972 ) 、『宇宙大作戦・ 小惑星回避作戦』 & “ 7 元た 7 ( 1972 ) 、 『宇宙大作戦・パイリスの魔術師』 & “ 7 元ん 8 ( 1972 ) 、『宇宙大作戦・明日への 帰還』 & “ T 尾た 9 ( 1973 ) 、『宇宙大作戦 ・最後の栄光』 & “ 7 元んノ 0 ( 1974 ) プロック、ロバート BLOCH, ROBERT ( 1917 ー アメリカの小説家。ファンタジイ、怪奇 小説、スリラーのほか、 S F も少量ながら 発表。シカゴに生まれ、 1935 年以来その得 意とするいくつかの分野において精力的な 活動を続けているが、アルフレッド・ヒッ 268
ー特別企画・連載⑦ THE ENCYCLOPEDIA OF SCIENCE FICTION SF 工ンサイクロべティ ピーター・ニコルズ編 浅倉久志・伊藤典夫監修 鎌田三平訳 Copyright ◎ RoxbY Press Limited 1979 1 . 邦訳のある作品には邦題を添え、未訳作 品は原題 ( または英訳題名 ) のみ記した。 2 . 原題のうちイタリック体で表わされてい るのは単行本、引用符 ( “” ) でかこんで あるものは短篇。 3 . 邦題も 2 にならい、単行本は『』で、 短篇は「」でかこんだ。 4 . シリーズ名は、未訳のものも含めて日本 語で表記し、《》でかこんだ。 5 . 作家名の中には、あえて慣例に従わず、 原音に近い表記をとったものがある。 ( 例 : ヴァン・ヴォート ) 6 . 本文中のポールド書体は、本事典中に項 目の立てられている見出し語。またポール ド書体の年号は、初版発行年。 7 . 映画および TV ドラマについては、日本 で公開された作品には邦題を『』でかこ んで添え、原題をイタリック体で示した。 未公開作品は原題のみを示した。ポールド 書体の年号は、本国での製作年。 8 . コミックは《》でかこんだ。 筆者 P N : ヒ・一タ ー・ニコ / レス・ J C : ジョン・クルート J G : ジョン・ガスタフスン 2 刀 9 . 略語および記号 A S F : アスタウンディング・サ , ス・フィクション誌、およ 年の ) アナログ誌。 F& S F : ファンタジイ・アンド 工ンス・フィクション誌 TWS : スリリング・ワンダー リーズ誌 ・ワールズ誌 NW : ーユ : アンソロジー 医 : 版による題名の異同 匝 : 加筆 國 : 改訂版 : 短篇集、またはひとりの作家冫 長篇のオムニバス版 : 複数の短篇を加筆改訂し、長一 たちに統合したもの 前 : 戦前にしか邦訳のない書名 * : 訳註 : 参照 P R : ビータ MJ E : マルカム・ J ・エドワ M J : マクシム・ジャクボウスキ・ プリッシュ、シェイムズ BLISH, JAMES ( 1921 ー 75 ) アメリカの作家。最初は S F 作・ ェントのヴァージニア・キッドと は S F 作家となったイラストレー ュディス・アン・いレンスと結婚、
ンダーグラウンド・。フレスの物語さ。 ビ、ラジオ、映画といったものがよく出て 黒丸ヒトラーの小説を待ってるわけね。 伊藤 アメリカでの反響は ? スピンラッドうん。しかし、まじめなきますね。 スピンラッド黙殺。売り方もよくなかっ話、『鉄の夢』の続篇を書く気は全然ない スピンラッド現代社会で人びとの意識の よ。 大きな部分を占めるのが、やはりメディア たんだ。宣伝はしないし、ほかにもいろい ろあって。 だからじゃないかな。メディアと政治は今 いまアメリカでは、続篇とか、三部作、 ルイスそういえば、『デューン・砂の惑四部作を書くのが大流行なんた。本を一冊ではほとんど同じものだよ。 ー・リストに入る も書いたことのないような作家が、十部作黒丸それをテーマにしたのが『はざまの 星』みたいにベストセラ を売りこもうとしてたり、そんなのばかり ような本は、あなたにはありませんね。 世界』メミミ B ミ 86 ミ ~ ( 一九七九 ) です だ。なお悪いことに、出版社のほうがそのね。 スピンラッドなぜかな。ほかの国ではそ ういった例もあるのに。たとえばフランス風潮をあおってる。これはよくない傾向だスピンラッド『、、ハッグ・ジャック・ ン』もそうだ。ジャーナリストとして、メ では『・ハッグ・ジャック ・バロン』は、単と思うね。 ディアとはいつも接触してきたし。 行本で二万部売れた。これはアメリカでい ルイスジャーナリズムの世界を経験し メディアと政治は今ではほとんど えば、かなりの成績だよ。出版社が。ほくの て、作家としての考え方が変わってきたと 本の売り方を知らないせいもあるかもしれ 同じものだよ ころはありますか ? ない。もう一つ、・ほくに『デューン』みた こよメディア・ーーテレ スピンラッドこれは g-v 作家の相当数に 黒丸あなたの小説 ~ ー いなものがないのは、続篇とかシリーズと ついて言えるんだが、彼らの問題というの いったものを書く気がないせいもあると思 は「を書き、を読み、大会に う。シリーズというのはまったく退屈だ 出かけ、作家ばかりと付きあううち し、書いたこともないし書く気もない。 に、その作品がほかの作家たちの亜流 黒丸じゃ、先日聞いた、『鉄の夢』の続 になってしまうことなんだ。最初はそれで 篇を書くという話はジョークですか ? 氏 いいが、つぎには自分の小説の亜流を書き スピンラッドもちろんさ。イギリスでサ だし、最後は書くことがなくなってしま イン会に出たら、だれかが『鉄の夢』を持 ン う。コンビュータ言語のことわざがある 「この本、大好 ってやってきて聞くんだ。 よ。 "Garbage in, garbage out" ( 入るの ス きなんですけど、ほかの作品はいつごろ出 がゴミなら、出てくるのもゴミ ) るんですか ? 」「なんのこと ? 」「『意志の ン つまり、イン。フットが大したものでなけ 5 勝利』とか、そういうのです。読みたくて ノれば、アウト。フットも変わりばえしない。 待ってるんです」
5 切 g & の -5 ( 1952 ー 6 諸雑誌 ; 1957 ) 、 T ん Year ( 1957 F 記〃 & の・ 英 ) 、『悪魔の星』 Case C 。れⅵ e 〃化 ( 第 1 部「良心の問題」イフ誌掲載 1953 ; 1958 ) それに『宇宙の放浪怪物』 OR (TWS 誌にデーモン・ナイトとの共作に よる一部を掲載 1949 ; 1958 ) などの長篇 も出版されている。 c た Eagles はテ レバシーについて科学的説明を加えようと いう数少ない作品のひとつである ( ただし ブリッシュ自身は、実際には ESP 能力に関 して懐疑的であった ) 。 1959 年のヒューゴ ー賞を獲得した『悪魔の星』は、 S F にお いて宗教問題にまじめに取り組んだ初期の 作品群のひとつで、いまなお最も洗練され た作品のひとつである。一般に SF の古典 とみなされている。『宇宙播種計画』およ び同時期の他の作品中でフ・リッシュは生物 学テーマに手を染めている。科学のこの分 野はよりハードな″科学一一一物理学、天 文学、テクノロジーその他ーー指向のため に、それまではいささかなおざりにされて きたものだ。テクノロジーの進歩が持つ社 会学的意味についてのフ・リッシュの考え方 も、《宇宙都市》シリーズに見られるよう に、洗練されたものであった。 プリッシュは形而上学にも興味を持って おり、『悪魔の星』 ( 1958 ) 、 Do 0 ぉ M 耘〃な ( 1964 ) 、召 c ん Ea 立催 ( 1968 ) 、 The の イお五 dg の〃の比 ( 1970 ) から成る三部作 "After Such Knowledge ”を彼の最も重 要な作品だとみなす批評家もいる。フ・リッ シュは最後の 2 篇を 1 巻の長篇だとみなし ており、そのために、、 3 部作″と呼んでい た。 "After Such Knowledge" (T ・ S ・ ェリオットの「ゲロンチョン」 "Gerontion ” の一節からタイトルをとっている ) は、フ・ リッシュがかって以下のように表現した疑 問を提出している。「世俗的知識への渇望、 ましてやその獲得と利用は、精神の誤用で 269 あり、あるいは能動的な悪とさえいえるの ではないか ? 」これはつまるところ、 S F の基本的テーマのひとつであり、プリッシ ュ自身や一部の批評家の意見では彼の最高 傑作とされる Doctor 石 ra 房騰の中で も手を尽くして探究されている。この長篇 は 13 世紀の科学者であり神学者のロジャー ・べーコンの生活をあっかっている。 SF の根源的なテーマであるひとつの知的な宇 宙観から別のより洗練された宇宙観への認 識の変革を描いている。 作家としてのフ・リッシュは慎重で、後年 は書き惜しみと言えるほど節約もした。自 分の最上の小説を何度も改訂や加筆して経 済的に使い、時には長篇に仕立て直すこと もあった。今までに記した以外でも、初期 の短篇 "Sunken Universe" ( 1942 アーサ ー・マーリン名義 ) にも同様の処置をほど こし、別の短篇「表面張力」 ( 1952 ) と組 み合わせて、長篇『宇宙播種計画』 ( 第 1957 ) の一部にした。「表面張力」は 特に有名で、アンソロジーに収録される こともとりわけ多い作品である。他には T / が 5 Da ″ g ん ( 1952 、 K ・ F ・クロ ッスン編の Fu 7 ' “に、ヴァー ジニア・キッドとの共作 "Beanstalk ”と して収録 ; 1961 ) や、 Q れれェ 石川 ( 19 ギャラクシー誌に「ビープ」 として掲載阨 1973 ) の例がある。 プリッシュの《宇宙大作戦》シリーズ ( 『宇宙大作戦・見えざる破壊者』 & 7 ' ん 1967 から『宇宙大作戦・惑星ゴト スの妨害者』 & だ T んププ 1975 まで ) は テレビのオリジナル脚本にもとづいて書か れているため、合作であるが、『宇宙大作 戦・二重人間スポック ! 』 0 M な立 D ( 1970 ) は彼のオリジナル長篇である。 SF 界の、、知性派″であり、テレビを嫌っ ている人間が《宇宙大作戦》シリーズを執 筆するのを奇異に感じるむきもあるだろう III
氏 だからどうってことはないけど。 そういえば、アナログ誌にのった読者か 5 らの手紙で、これをアンチ・ジャ。ハン小説 ピ だといってきたのがあったな。アンチ・ア ス メリカ小説だといわれたのなら、認めるに マやぶさかじゃないけれど、これはおかしな 一反応だった。アメリカ人の登場人物が、日 本人への差別的なスラングを使っていると いう、それだけが理由なんだ。あの小説の シチュエーションなら当然のことなのに。 黒丸あの投稿はたしか日系米人でした ね。 スピンラッドだったと思う。あれをアン チ・ジャ。ハン小説だと思う人間は、細かい 部分に目をやりすぎているんだ。少なくと も、・ほくはあれをアンチ・アメリカ小説と して書いたつもりだよ。 ルイスあなたの小説を読んでいると、普 通の作家よりも政治的にコミットした る。ところがイギリスから送られてきたの何かは出てくると思うね。ただし、どうい うものになるかはわからない。 - 直線的な。フ作品を書いているという印象を受けるんで は普通の石橋で、荷を解いて組みたてたと すが。 ロセスじゃないんた。 ころで、ちがう橋だということがわかっ ルイス日本を実際に見た今、この作品をスピンラッドそれは事実だね。という た。その橋は今でも砂漠のまん中に残って か、普通の作家は政治的な状況を無批 るよ。 ( 訳者註日船が通過するとき中央部が上書くとしたら、やはり同じようなものにな 判に受けいれてしまっているんだ。政治的 にひらく有名な橋がタワー・プリッジ。ロンド りそうですか ? 。もちろ ン・・フリッジはそれとは別の由緒ある橋で、一 スピンラッドまあね。ただ一個所、これ外挿というのをほとんどやらない 九七三年再建され、古い橋はアメリカ、アリゾ ん、やってる作家もいるよ。フィル・ディ は・ほくの勘違いなんだが、主人公のイトー ナ州に移された ) ックがそうだ。ただ、・ほくが意識して政治 氏が女性の着物を着てるんだ。これは指摘 されて、あとの版で直したよ。まあ、的な小説を書いていることは認める。 それと同じ意味で、日本滞在の経験から
ッ / サンディ・タイムズ SF 小説賞を受賞 した。『キャッチワールド』はスペース・ オペラと洗練された人脳ーコンヒ。ューター 理論 ( コンピューター ; サイボーグ ) と を組み合わせた、凝った、時としてこみい りすぎている長篇小説で、ずば抜けて壮麗 〔 J C 〕 なクライマックスは忘れがたい。 BOYD, JOHN ポイド、ジョン 以後のポイドの小説は、きわめて創意に さまよえるユダヤ人になる。 かるためである。そしてホールディンは、 し、未来を変えてディストピアの消減をは ストが 33 歳で確実に生涯を終えるのを確認 は時をさかのぼる。今度こそイエス・キリ 含蓄をこめて錯綜し、最後にホールディン であったことがわかる。プロットは哲学的 な優れた人びとを集めるため仕掛けた計略 星に住んでいる ) が、ホールディンのよう 会の創建者たち ( 実はきわめて快適なヘル 星ヘルに追放される。だが、これは階層社 インはこの法に背いたため、やがて流刑惑 法に縛られた階層社会で、主人公ホールデ える。このディストピア文明は厳格な出生 意味で、、最後〃なのか、断定は不可能とい にどれが最後に地球を発ったのか、どんな もあるため、さまざまな宇宙船のうち実際 時間旅行をからませたスペース・オペラで 元宇宙 ( IF の世界 ) ものであり、また 小説である。ディストピアものであり、多 の活力をもって語られる、きわめて複雑な 現在もまだ残っている。同書はパロック風 批評家の絶賛を浴びて登場し、その余波ば ん 4 立 & ん / ぉ 0 Ea ん ( 1968 ) が、 彼の最初の長篇『最後の地球船』 The で、 1968 年以降活躍が始まった。その年、 ) のべンネーム。アメリカの S F 作家 ャーチ Boyd Bradfield Upchurch ( 1919 ポイド・フ・ラッドフィールド・アッフ。チ 259 富んだものもあるが、最初のカ作ほどの強 烈な印象は残さない。続く 3 冊、 The 2 ん / なれ ( 1969 ) 、『エデンの 授粉者』 The 盟 na 加 E 〃 ( 1969 ) 、 & のれれイに丑ん Co 川襯 2 れ d ( 1970 ) は どれも、性的なことがらをさまざまに、巧 みにあっかっており、しかもそこには、人 類が関わる可能性のある種々の文化形態に ついて意義ある仮説が展開されている。そ れ以降の作品の中には、たとえば昔の古い アメリカ西部に寄生宇宙人が現われるとい う、おざなりなユーモア S F 、みイ ro 血 Gun ( 1974 ) では、創造的活力の減退が感 じられる。召 4 だ〃 4 イ ' んれ ( 1975 ) では いくぶん復調し、処女作でとりあげた諸問 題のいくつかを、デビュー作に近い気魄で 扱っている。ポイドはこれまでの比較的短 い作家歴の中で見せた以上に大きな才能を 持っているように思えるが、作品の質に対 する無頓着さがその幅広い才気にかなりマ イナスの影響を与えていることは否定でき ない。 プラケッ杁リイ 〔 J C 〕 BRACKETT, LEIGH ( 1915 ー 78 ) アメリカの作家。 1946 年に SF 作家ェド モンド・ハミルトンと結婚したが、 S F でも 他の分野の作品でも、映画関係の仕事でも 同様にリイ・プラケットの名前をずっと使 った。彼女は映画の脚本家として名高く、 T んに Va 襯がな G ん 0 立 ( 1945 ) から『ロ ング・グッドバイ』 T んにん 0 g G00 イ , に ( 1973 ) まで手がけ ( 実際には「 , ターウ , ーズ / 国の逆襲』のシナリオ も手がけ ) ており、特に有名なのは、『三つ ている 数えろ』 The Big & ゆ ( 1946 ) や『リオ ・ブラボー』天 / 0 召て , 0 ( 1958 ) などハワ ード・ホークス監督の諸作品である。 フ・ラケットが SF を書きはじめたのは、 1940 年に A S F 誌に掲載した "Martian Quest" からたったが、最初の長篇小説 XIII
サム・ルノトヴァレ、 ' 、 スピンラッドこれもデカルト的二元論に ホーランドや東欧諸スピンラッドやめる人間もいるし、戻っ 関係があると思うよ。一方に科学と論理が国にもそんな話が出ている。日本も当然参てくるのもいる。いま会員じゃない作 あり、他方に心、感情、直観があるものだ 加していいだろうね。英語以外で書かれた家は少ないよ。 から、科学に通じている人間は、 - アメリカ作品も、受賞の対象にしようと考えている伊藤 1 ラン・エリスンは ? スピンラッドハ なんかでは道徳的・精神的白痴になりがちんだけれど、これは問題が多いだろうな。 ーランは自分は作家 なんた。その辺のどこかで、科学と右翼が伊藤には数年前、レム事件とい ではないと公言した手前、会員ではないん いっしょになってしまう。もちろん、そのうのがあって、これは日本でも話題になっ だ。しかし会員じゃない作家はひとにぎり いし例・カハリイ・・ノ 、リスンだ。ハ たのですが、の会長として真相は 理由の一つは、左翼が反科学・反テクノロ ジーとうかつに結びついてしまうところに いったいどうなんですか ? イは大声で脱会を宣言しながら、会費だけ もあるんだけれど。 スピンラッドまたか ! ( 笑 ) は払ってる。・ほくが会長になったとき、 あれは実際ばかげた話なんだ。あのころ リイに「再入会しないか ? 」といったら、 ・ほくは副会長、ポール・アンダースンが会 レム事件というのはばかげた話な 「何をいってるんだ、おれは会費を払って 長をしていてね。そうしたらジョージ・ゼるそ」ときた。それからフレッド・ポール んだ ・フロウスキーからポ 1 ルのところに手紙が の例がある。彼は脱会しておきながら、す ぐにまた再入会して会長におさまってしま 伊藤アメリカ作家協会 ) 来たんだ。あの高名なスタニスワフ・レム について聞きたいのですが、いま会員はどを名誉会員にしたらどうか、と。とにか く、あまり真剣に考えなかったことだけは ルイスのもっとも不思議な現象の一 れくらいいるのですか ? 覚えているよ。「いいじゃないか。ジョー スピンラッド 六百人ぐらいだね。 っとして、ファンがおりますね。作家たち ジがそういってるんだし。よし」というわに密着して、声高に自己主張する。これに 伊藤を国際化する案をお持ちだ けで名誉会員にしたところ、アメリカ ン」か ついてはどう思いますか ? スピンラッドそれは二つの面があると思 スピンラッドには前から、アメ界を批判した評論があとから発表された。 リカの三地域ーーっまり西部、中部、東部こういうときよくあることなんだが、有力う。作家というものは、読者との接触がほ 会員の中に不平をいう者が出てきてね、 とんどない。ただ小説を書いて、それが発 を代表する理事がいたんだけれど、そのほ 「レムをほうりださないなら、おれたちが行され、書評をいくつか読んでおしまい かに海外部門ができたということさ。 脱会する」という。で、しかたなくレムをだ。読者からの直接的なフィ 1 ド・ハックが 黒丸フランスでしたつけ ? ない。その意味でファンの存在は、、、 スピンラッドうん、最初の海外理事には除名した。要するに、ばかげた話なんだ。 ビエール・・ハルべが選ばれた。ほかにイギルイスには、脱会した作家もずとだと思うよ。 いぶんいるようですね。 リスはイアン・ワトスン、スウェーデンは 悪い点をあげれば、組織化されたファン 4
の暗い物語である。彼は主に SF とファン タジイをミックスさせた、それぞれ独立 した短篇を集めた短篇集 The 3 ノ計 F 訪翩 ( 1949 ) 、 0 T / 襯〃ど お 4 ″ ( 1954 ) 、 / g を襯 ar ぉ 4 れ d のみ加ゞ ( 墾 1968 ) を出版している。 おそらく発表舞台が幅広かったせいか、 S F およびファンタジイ界において、もっと 才能に欠ける作家にくらべてもポンドは確 固とした評価を与えられていない。幻想味 や機知の点で、ロ / く一 ト・プロックやフレ ドリック・フ。ラウンに似ていなくもない が、両者にくらべて知名度は格段に低い。 しかし、その作品は魅力的で、忘れがたい ものも多い。 ポーン、 J ・ F 〔 J C 〕 BONE, J (ESSE) F (RANKLIN) ( 1916 ー アメリカの作家で獣医学の教授。最初の S F 作品は 1957 年のギャラクシー誌に掲載 された "Survival Type" である。最初の S F 長篇 The ん 4 0 がど ( 1962 ) が最 も印象深く、のちの作品は型通りのものに なった。この作品は異星人をテーマにし、 人類の搾取による彼らの苦難が生きいきと 描かれている。 ポーンステル、チェズリー 〔 J C 〕 BONESTELL, CHESLEY ( 1888 ー アメリカの天体画家。生地サン・フラン シスコで建築技師の教育を受けるが、修了 せず。彼は数多くの建築会社で働き、金門 橋の設計にも加わった。マット画家として 14 本の映画の背景画や特殊効果を担当、そ の中には『市民ケーン』 C れビ , 『宇宙戦争』Ⅳ研どⅣ。『地球 最後の日』Ⅳん紐 Worlds Co , 『ノー トルダムの傴僂男』 The 〃 4 加ん研 可 Da 襯も『新ビンソン漂流記』 The VIII & こ , 4 ″ッ天。房 , 『月世界征服』 のおたツ酣あれん。れなどがある。 1940 年 代のはじめから、大規模に天体画を描きだ し、 1949 年から 72 年までに、ウィリー・レ イ作による古典的な科学解説書『宇宙の征 服』 The C 。れど立研 S 第 4 “ ( 1949 ) をは じめ十点の単行本を完成させた。 1950 年か ら 51 年にかけて、ポストン科学博物館のた めに 10X40 フィートの壁画を描いた。これ は 1976 年にスミソニアン研究所の航空宇宙 博物館に移された。 1947 年以来、彼の宇宙 画は ASF 誌と F & SF 誌の表紙絵として 数多く使われている。彼はこの時期の SF ファンに大歓迎された。彼の画風はいわゆ る写真的リアリズムで、遠近法と縮尺の正 確さに非常な注意を払っている。彼は数多 くの賞を受け、 1974 年にはヒューゴー賞の 特別功労賞、 1976 年には英国宇宙旅行協会 から賞と大メダルを受けている。〔 J G 〕 プアマン、ジョン BOORMAN, JOHN ( 1933 ー イギリスの映画監督。映画『未来惑星ザ ルドス』 Zardoz ( 1973 ) 用の自作脚本を ビル・ステアと共同で小説化し、『未来惑 星ザルドス』 Z イ ( 1974 ) として出版 〔 J C 〕 ポルへス、ホルへ・ルイス 264 1952 ) は、彼のもっとも重要な短篇小説を フ』窺ス / ゆ方 ( 團 1949 アルゼンチン ; 國 ケリガンによる英訳 1962 ) と『エル・アレ 奇集』窺 cc あお ( 1944 アルゼンチン ; ファンタジイによって知名度が高い。『伝 をとっているが、英語圏では特にその短篇 なものでアルゼンチンの歴史や事件に題材 作品によって高名。小説の大部分は地方的 ッセイスト、大学教授。主に SF 領域外の アルゼンチンの短篇小説作家、詩人、 BORGES, JORGE LUIS ( 1899 ー
ャーは 2 巻からなる名高いアンソロジー み T の″ 0 工 G & 加ど窺・ 0 刀 ( 1959 ) も世に出している。オ能ある、 目の高い編集者として、 / くウチャーは 1950 年代の S F の文学的水準向上のために力を 尽くした。彼は推理小説も数点書いてい 〔 M J E 〕 る。 その他の既訳作品 『ゴルコタの七』 The Case of the Seven of Calvary ( 1937 ) プール、ピエール BOULLE, PIERRE ( 1912 ー フランスの作家。電気技師の教育を受け 開拓移民および兵士としてマレーシアで 8 年間暮らす。東洋での体験は彼の初期の作 品 ( おおむねノン S F ) に色濃く浸みこん でおり、そうした異国情緒のある作品では 『戦場にかける橋』んに第 0 sur / 4 r れ K , ( 1952 ; 英訳 T ん召イ 'g ど 0 れど 沢 Kw 1954 ) が今のところ彼のもっ とも有名な長篇である。プールは人間の愚 かしさを指摘するのに教訓的寓話を使い、 比較的多い S F 領域の作品はその手法の好 例となっている。『猿の惑星』ん 4 がれとど イお g ぉ ( 1963 ; ザン・フィールディン グによる英訳刊 4 こビゑぉ 1963 ; 図ユんれをッ刊 4 れ英 ) はヴォルテール風 の機知にあふれた哲学的物語で、皮肉と哀 れみに満ちている。のちに小説の冒頭の設 定だけを使った映画化作品とは、大きく異 〔 M J 〕 なっている。 『 E = c2 』 E = その他の既訳作品 川ド ( 1957 フランス ) 、『カナシマ博士 の月の庭園』 Le r 市れ Ka のん・川 4 ( 1964 ) 、『ジャングルの耳』ルゞの〃お れ g ル ( 1972 ) ポーヴァ、べン BOVA, BEN (JAMIN WILLIAM) ( 1932 ー アメリカの作家、編集者。 19 年、ジャ ーナリズムの学位をとって、フィラデルフ ィアのテンフ。ル大学を卒業。その後、ヴァ ンガード計画の技術主任、アヴコ・エヴァ レット研究所の営業部長をつとめる。 1971 年にジョン・ W ・キャンベル・ジュニアが 死んだ後、アナログ誌の編集者に指名され た。ポーヴァの最初に出版された SF は児 童向ぎの長篇『星の征服者』 The “ CO 刀 4 0 ( 1959 ) である。 ペン・ポーヴァ ポーヴァは短篇小説は比較的少ないかわ り、長篇小説に専念した。彼の最も有名な 短篇は、 20 世紀後半の 1 人の宇宙飛行士の 生活を描いた一連の《チェット・キンズマ ン》シリーズである。 "Test in Orbit ” ( 196 の、 "Fifteen MiIes ” ( 1967 ) 、 "Zero Gee ” ( 1972 ) 、 "Build Me A Mountain ” ( 1974 ) なども同シリーズの作品である * 。 キンズマンはまた、彼の現在までの代表作 / ル襯 ( 1976 ) にも登場する。これ XI 23
0 G00 イエ 0 だれ Corpse ( 1943 ) は推理小 説である。 1940 年代は、他の分野での活動 のほかに、彼女が S F 誌上で一番活躍した 時期である。プラネット・ストーリーズ誌 と TWS 誌に主に登場したが、ほかにも彼 女の作風を受けいれてくれるさまざまな雑 誌に寄稿した。彼女が短期間でお家芸にし たのは、波乱万丈の知的な冒険小説で、通 例火星を舞台としているが、各作品のあい だにシリーズ的な関連はない。この時期の 影響を与えたのは当然のことだろう。中 篇小説のひとつ「赤い霧のローレライ」 "Lorelei 0f the Red Mist ” ( プラネット ・ストーリーズ誌 1946 ) はレイ・プラッド べリとの共作である。 1946 年、プラケットはエドモンド・ハミ - ルトンと結婚する。、この結婚がハミルトン の作風に強い影響を与えたことは大いにあ りうることで、彼の作品の質は戦後飛躍的 に向上した。フ・ラケット自身は、この時期 からやや長めの小説に力を注ぐようにな る。お気に入りのネオ・バローズ風火星を 舞台にした《ェリック・ジョン・スター ク》シリーズの前半部がそれであり、以下 の作品から成っている。 The Secret of Sinharat(1949 、プラネット・ストーリーズ 誌に "Queen Of the Martian Catacombs ” の題名で ; 1964 ) 、 ~ 第ん the 記な襯〃 ( 1951 プラネット・ストーリーズ誌に "Black Amazon of Mars ”の題名で ; 國 1964 ) そして "Enchantress of Venus ” ( 1949 ; "City of the Lost Ones") これは The 〃 4 g におさめられ ている。スタークは剣と魔法ものの主人公 の長所をすべて、その細身の肉体に集め ト・ E ・ハワードのコナンとな らび、闘争心に富む、たくましい不屈のヒ ーローを何十人と生みだす一助となった。 ただし、スタークの女性に対する態度は、 ほとんどの後輩にくらべて、いささか功利 性には欠ける。火星と金星がもはや冒険 S F の作家にとってたやすくは使えなくなっ た近年、《スターク》シリーズはうまく太 陽系外に舞台を移して、最近まで続けられ ていた。 T ん Ginger & ( 1974 ) 、 The 〃 0 〃れ & 4 ″ん ( 1974 ) 、 The 火 ea 怩な & 4 ″ん ( 1976 ) の 3 点がそれで、これ らは The お 0 & ″ん ( 1 6 ) として 1 巻にまとめられている。スタークは旧友 であり、恩人でもあるサイモン・アシュトン リイ・ブラケット 作品のいくつかは T' ん Co g に 7 ra ぉ ( 同系列の作品をおさめる、集 1 7 ) および The 4 切 g 4 れ 0 / ん & 0 お ( 1973 ) に収録されている。彼女は、 抑制のきいた、迫力のある文体でこの種の 作品を書いた。その色彩、スヒ。ード感のあ る語り口、 ( 彼女の最も有名な主人公ェリ ック・ジョン・スタークを含む ) 主人公た ちの陰にこもった直情性、 そうしたす べてが、のちの剣と魔法小説の作家たちに XIV 258