緒戦の、基地に係留してある地球軍の艦艇を、いきなり襲撃した要するに、我々のような幸運な艦なら何とかなるという希望的観 だけのアトランティック作戦の時は別にしても、その後の仮装巡洋測だけで、出撃を命じられたのだ。もう、この戦争は先が見えてい 3 2 艦作戦は、出撃したら最後、半数は母港に帰りつくことができなかゑ我々の誰もがそう感じていた。だが、家族を残して脱走するこ った。完全に制宙権を奪われた木星周辺から脱出し、敵のフリゲー ともできず、我々は最後の作戦についた。 ト艦がパトロールする小惑星帯の中で、あるいは遠く土星戦域や両我々の主力武器は、投射型のミサイルだ。これに充分な初速を与 トロヤ群にまで出撃し、地球側の補給船を攻撃しては離脱するとい えて船団の軌道上に放り出し、すぐに離脱する。放り出されたミサ う、およそ巡洋艦の名にふさわしくない作戦でだ。 イルは、目標近くまで慣性飛翔したのち、自からのモ 1 ターに点火 もっとも、我々の艦が幸運だったのかどうか、今となっては分かして乱数飛翔で目標に突入する。 らない。おそるべき消耗率のこの作戦の期間中、わずかな改装だけ命中率を上げるためには、目標にぎりぎりまで接近して軌道を横 で商船が仮装巡洋艦として続々と出撃していったが、初陣の艦の一一一切るか、あるいは予想軌道にこちらも乗ってしまう必要があるが、 分の二以上が帰らなかった。 そうすれば今度はこちらがあやうくなる。 つまり、私達のような古参の者だけが いかに私が厚顔でも、 だが、そんな方法をあれこれ考える必要はなくなった。投射位置 あのような作戦で自分達を歴戦の勇士と言うのは気がひけるーー何のはるか手前で、哨戒艇に出くわしたのだ。その艇の発する長距離 度も出撃し、そのたびにある程度の戦果をあげては帰還したのだ。 レーダー電波をとらえた時、私はすぐに離脱を決意した。敵のレー だが、その幸運も、十二回でつきた。十三回目に我々は地球軍の高ダー係が我々の艦影を見落としているのではないかといった、希望 加速哨戒艇に捕捉された。 的観測は行なうべきではない。 ことに、一瞬の判断の迷いが、重大 な結果をひき起こす宇宙空間の戦闘ではそうなのだ。初陣の艦がお 私の指揮官としての判断が誤まっていたのかもしれない。あるい は。我々は投降すべきだったのかもしれない。だが、私の部下は全ちいりやすい罠がここにある。中立勢力である、小惑星帯や内惑星 船籍の商船に化けるなどという方法は、小惑星帯あたりでならとも 員勇敢だった。彼らも、そして私も、投降は考えていなかった。 我々は、敵の前方トロヤ群の基地から、土星周回軌道上の基地かく、この宙域では通用しない。 へ、護衛艦のつかない船団が航行中との情報を得て、これに打撃をあるいは投降をよそおい、射程距離に敵が入ってから一撃必殺の 攻撃をかけることも、現実的ではない。そのようなそぶりを見せれ 与えるべく母港から出撃した。護衛がっかない船団の攻撃とはい え、これはきわめて危険な作戦だった。敵のロングレンジ・レーダば、射程距離外から逆に撃破されるだろう。敵艦の影を見たら、武 1 の死角をぬって航行できる小惑星帯戦域と違って、いわば裸で行器を捨てて一目散に逃げること。これが我々が十二回も出撃できた 動するに等しいのだから。もしも敵に発見されれば、まず助からな理由なのだ。 だからその時、我々はペイロード・ヤードに固定されていたミサ
彼は、一瞬うろたえたような顔で俺の方を見た。いつも他人に自分降伏したあとも、ガリレオ衛星群はしぶとく抵抗を続けたという。 の心をのぞかれたくないというように、しかめつ面で通している彼それから、タウルスっていうのは、航空宇宙軍のその当時では最 が、まるで教師にとつつかまったいたずら坊主みたいな顔で俺の方新鋭のゾディアック級フリゲート艦だ。つまり俺達が近づいている を見て、すぐに情報表示面に眼をおとした。それから少尉は、いつあの船は、その一五〇年前の戦争でタウルスに運悪く見つけられ もの低い声で言った。 た、外惑星側の武装商船だろう。フリゲート艦に武装商船が見つか 「船籍、・ カニメデ。船種、非合法武装商船。最終船名、・ハシリス ったら、結果は眼に見えている。航空宇宙軍の正式フリゲート艦相 ク。識別番号、〇〇ー六二八四ー << 。記録、標準時〇〇年四月七手じゃ、民間の商船を改装しただけの武装商船が一ダース集まった 日、船籍抹消。理由、減速不能のまま外宇宙へ飛翔。最終観測者、所で勝ち目はない。しよせんは地球側の後方兵站をかきまわすため フリゲート艦タウルス艦長シュミット大佐」 だけが目的の、武装商船だ。 「こいつはずいぶん古い船だな。五〇年も前に太陽系から飛び出し それじやどうするか ? 逃げるだけだ。回頭して追っかけてくる たってのか」 フリゲート艦の推進剤が充分でない方にかけて、武装も通信器も、一 航法員のダワ三曹があきれたような声でそう言った。なにを脳天重量物は一切捨ててずらかり、追っ手があきらめて帰るまでそうや 気なことを言ってやがる ! 俺はコクビットで馬鹿づらをさらしてって逃げるしかない。だが、中には運の悪い奴もいたろう。今のよ いる奴の顔をおもい出して、間違いを正してやる元気もなくなっ うに効率の、 しいエンジンを積んでいなかった時代だ。自分の船の残 た。だが、それは俺のかわりに機関員のゴータム二曹がやってくれ推進剤の読みを間違えたり、エンジンが制御不能になったりして、 こ 0 外宇宙めがけてすっ飛んでいった武装商船も、かなりあったって話 「いや : : : 記録にある〇〇年というのは、二二〇〇年のことじゃな ・ : 二一〇〇年のことだ。一五〇年前の、外惑星動乱の時に太陽 だが、俺があれをあまりそっとしない代物だと思った理由は他に 系から飛び出したんだ。あれは」 ある。 いいか、慣性速度が一、〇〇〇キロ / 秒の漂流宇宙船が、太 ゴータム二曹はダワ三曹よりはましなようだった。だが、航法員陽系からまっすぐこっちの方へすっ飛んで来たんだ。しかも、太陽 に言ってやることは、それで終わったわけじゃない。他の誰も、そ系を出たのは一五〇年前だっていうんだ。 れ以上は言わなかった。 冗談じゃないー あの速度じや太陽系からシリウスまで三千年も 俺も、そんな昔の戦争のくわしいことは知らない。なんでもそのかかるんだそ。あの船は・ハイキングかロ 1 マの兵隊どもが乗っかっ 当時、木星のガリレオ衛星群と、両トロヤ群、そして土星のタイタてるとでもいうのか ? だがあれはまちがいなく一五〇年前に太陽 3 ンの連合軍が、航空宇宙軍内宇宙艦隊相手に戦争をやらかしたって系をとび出した船だ。推進剤をふりし・ほったって、あれ以上の速度 ことだ。戦争は一年ほども続いたが、二つのトロヤ群とタイタンが が出せたはずもない。一体、どこをどう通ってあれはこんな所に、 ナビゲーダー ナピゲー々・ー
帳言ド その惑星は小さくて荒涼としていた。ヴ = ガーオリオン航路上にれたのだったが、彼はその後それを利用しなかったし、そればかり あるあのいくつかの小惑星の一つで、これらの小惑星についてはだか座標を求めたことすら忘れてしまっていたのだった。 れ一人として記憶している者はなかったし、また記憶するにも値し 「これもみなあんなばかげた偶然のため、座標の一件のせいだ ! 」 なかったためであった。亀裂の入った先の鋭い岩でできた、生命の ない宇宙の屑みたいなちつばけな惑星で、あの創造の第一日目同様とフ = ルンは腹立たしげに考え、目の前の計器盤を凝視した。どの さ , 、 1 く にそれは索莫としていた。宇宙航行便覧の『メデア』の項を見てスクリーンにもおだやかな明るい線が浮かんでいたし、操縦室内は も、十にも足りないデータしか載っておらず、回転周期、黄色い二何もかもおだやかだった。おだやかでないのは彼自身だけであっ 「ところが基地の連中には、どうもあの一件が決定的な極め手 重星までの距離、それとかなり型の古くなった・ハイオ・オートマシ ンたちが操作している唯一の天体物理学管制ステーションの場所がとなったようだ ! おれがもうメデアと接触を保っているとか、あ 示されているだけであった。それつきりだった。基地の老練な隊長そこの状況がおれにわかっているとか何とかかんとかと言って : 連中さえも、たまたま人からメデアのことを質問されると肩をすく : ・」 彼は腕を伸ばし、補助舷窓のキーを押した。そんな考え方が正し めてみせる始末であった。 くないこと、ヘリアンの身に大事が起こったとなれば、やはりだれ フェルンの知っていることも他の人たちと似たり寄ったりだっ た。いや、もうちょ 0 とましだ 0 たかもしれない。というのも、一かがここまで来なくてはならないことはわか 0 ていたけれども 0 そ 度この惑星の近くを通 0 て、そこの天体物理学ステーシ ' ンから自れでも苛立たしい気持ちから逃れられないのだった。ましてやこの 分の座標の修正を求める必要が生じたことのためにすぎない。座標 = ースが大いに快適なものである見通しは一切なか「たからなおの ことであった。 は教えてもらえた。オートマシンたちがまことに良心的に教えてく こ 0
スを散布し、この疫病はたった数週間で、惑星上の人間を全減さ たしは車をとめた。 運搬プラットホームが天井から下降してくる。と、疲れを知らぬせました。パンスラックスの細菌は隔離しにくいことで定評があ アンドロイドたちがそこから品物を積みおろし、透明な被覆に包まり、 戦艦そのものも汚染されました。全乗員が死亡しました。偵察 れたままのそれを、もよりのロッカーに運びこむのだった。大きな艇も、母艦も、惑星も、何世紀ものあいだ、外部との連絡を遮断さ れていました。いうまでもなく、現在は感染の危険がありません。、 品物にはクレーンが使われていた。 「これはみんなスカンドラからきたのかね ? 」わたしはカタログにあらゆる予防処置がすでにとられています」 カタログから短い歴史を聞かされて、わたしは然想にふけった。 たずねた。 いまではすっかり重要性を失っているスカンドラ事件のことを、 「そうです。その惑星の歴史をお知りになりたいですか ? 」 わたしは考えた。大・せいの人びとが住んでいる世界・せんたいの抹殺 「たしか、農業惑星じゃなかったかな ? 」 、まではその欲 これも例の所有欲の一つの例証だ。さいわいし 「そうです。現在は完全な農業惑星で、完全に自動化されていま す。人間はだれひとり地表に下りません。むかしはソビエト・イン ドの領有だったので、移民も、ぜんぶというわけではありません マ囲碁・将棋図書まつり ⅱ月 1 日月ーⅱ月日火 / グランデ 1 階 が、おもにインド系でした。そこへ、汎スラ・フ連合に属するいくっ マブックフェアイラストとカットの世界 かの近隣惑星との戦争が起こりました。こうした国家主義的用語を ⅱ月 1 日ーⅱ月日〔 / グランデ地 よくご存じでしようか ? 」 読むだけが文庫ではない / 文庫による視覚の世界 とんなふうに終わったのかね ? 」 「その愚かな″戦争″は、・ ⅱ月 6 日出ーⅱ月日囘 / ・フックマート 1 階 グランデ 「連合側はスカンドラに一隻の戦艦を派遣しました。周回軌道には 5 占マイコンソフトを取り揃えて : ・ いると、戦艦はある種の譲歩を要求しましたが、それはインド人の 側が受け入れられない条件、もしくは受け入れたくない条件でし や尹築化職会庫童 た。戦艦は、和平交渉のために偵察艇を着陸させました。交渉は成 ロ 建理就社文児 舟フ 立したのですが、偵察艇がふたたび上昇して、まさに母艦へはいろ 学機生経教詩家 うとしたとき、爆発が起こりました。スカンドラの過激派が艇内に 誕。ンック噺グ 田 3 典気衛学術 爆弾を仕掛けておいたのです。あなたが昨日調べられた品物は、そ 、「文文泉」辞電医法哲文芸 店泉 " の偵察艇からの遣品ですし、今日あなたが横を通り過ぎられた巨大書 田町階階階階階階階 台皆皆階階皆 圭彎 船の一つが、その戦艦です。 千神 6 5 4 3 21 地 新 圭日 321 嚇 爆弾への報復として、汎スラブ連合はスカンドラに。ハンスラック 5 2
建造物の見つかる世界は、 非常に大きいものと、非常に小さいものーーー銀河系博物館と、埋ルがそれを物語っているだけではない。 つねに人間の住めない世界なのだ。 もれたロマンス。その二つがわたしの見まもる前で一つになった。 まだ不明なのは、その後のコルレヴァリュローの運命である。彼 その博物館は非常に大きい。地球から一千光年以内の範囲でも、 数かぎりない星に、とほうもなく古くて目的のうかがい知れない建らの君臨は長くつづいたにちがいない。彼らは無敵だったにちがい 造物が、おびただしく残されている。惑星 / ーマの博物館も、そんないーーー時という敵を除いては。 な建造物の一つである。 知識が進めないところにも、想像力はあえて踏みこむ。人類はこ んな臆測をした。コルレヴァリュローは一種の種族自殺をとげたの この博物館を作ったのは、かって銀河系に君臨したコルレヴァリ 、ローという種族ではないか、と推測されている。コルレヴァリではないか。それとも種族の中に分裂が起こり、銀河系の彼方、人 ローの亡霊は、人類が星系から星系へとひろがっていくにつれて、類の恒星船では行きつけないむこうで、徹底的な自己破壊の道を歩 人類の意識の一部となってきた。ときには、コルレヴァリュローがんだのではないか。 コルレヴァリュローの運命に関する哲学的推測は、まだまだ数多 悪魔として。・ーーっまり、無礼にも彼らの領域に侵入してきた人類に 。彼らは進化の必然の過程で、有機体を超越した段階に成長した 対する報復のため、暗黒星雲の中にひそみ、いっかそのうち舞い下 りていって最後の一人まで抹殺してやろうと、手ぐすね引いているのかもしれない。もしそうなら、人間には知られずに、古代建造物 種族としてー・ーー想像されることもあった。また、ときには神々としの中に生きている可能性もありうるというもの。それ以上に奇妙な てーーっまり神々であることの恐ろしさに耐えながら宇宙を馳せめ仮説もあって、これは〈宇宙〉と一体になった〈精神〉を重要視 ぐっていゑ想像もっかないほど強力で賢明な種族としてーー想像し、いったん種族が銀河系占有の思想にとりつかれれば、最後まで されることもある。 そうせずにはいられないだろうと仮定している。つまり、こうして この二つの相反するコルレヴァリュローのイメージが、人間精神人類は空想の中で、偉大な先行種族をほとんど消減させてしまった ーいうまでもない。悪魔のだ。 の深淵から生まれたイメージであることよ、 まあ、ほかにもいろいろの仮説はあるが、それよりもノーマの博 と神よ、、まなおわれわれとともにある。 しかし、コルレヴァリ、ローは実在したし、彼らについて判明し物館に話をもどすことにしよう。 ほかのあらゆるものとおなじように、ノーマにも固有の謎がいく た事実もある。その一つは、彼らが巨大建築の段階に達するまで に、文字を廃止してしまったことである。この種族の名称そのものつかある。 も、われわれが入手した彼らのアルフア・ヘットの唯一の例、あのラ博物館はノーマの赤道を一周している。この建造物は、惑星をと カージャの建造物の正面を大きく飾った標識からとったものだ。彼りまく巨大なベルトの形をとり、その長さは約一万六千キロ。ベル らが人間型の生物でなかったこともわかっている。建造物のスケー トの幅は、奇妙なことに場所によってちがい、十二キロから二十二 8
氷の罠 マール & フォルツ / 松谷健二訳定価三四〇円 T2 〈宇宙英雄ローダン・シリーズ@〉恐るべき 敵プルー族の秘密を探るべく口ーダンは、特 殊コマンドをプルー族の惑星に送りこむか 文星ばしに架ける橋 O ・シェフィールド / 山高昭訳定価三八〇円 地上と字宙をつなぐ巨大な橋、字宙エレベー カ ターの建設にかける男たちの夢と野望を描く 長篇。 < ・・クラークの序文を収録。 ャ ハ剣の王 火星人の方法 ・アシモフ / 小尾芙佐・浅倉久志訳定価三八〇円 地球から水の供給を受けられなくなった火星 植民地の人々がとった火星ならではの方法と 表題作のはか傑作四中短篇を収録 十一月刊 シェール & プラント 星のジャングル アン・マキャフリイ 白い竜 ・セイバーへーゲン 西の反逆者 レイダース失われた《聖櫃》キャンベル・プラック マイクル・ムアコック / 斎藤伯好訳定価三四〇円 〈紅衣の公子コルム③〉仇敵グランディスが 剣の王の力を貸りて蔓延させた怪病に、敢然 と立ち向うコルム。だが : : : 三部作遂に完結 ハヤカワ文庫 FT 翕 好評発売中 イ イ 英がンが一、 / 創た処スー、耳ロ 作ンて支頃ま 造ビにを魔山 国魔ス全魔山 とタい配 幻法。て法田の のン ? 支法田 誉ジたす人こ羽 意ク配の順 想のだをの順 れス三る界の 外は再す国子 0 文力が支国子ロ兄 のト三魔は世子 な、びるザ 学が青配ザ 高の 8 ( ) 神闇が 訳 訳 秘や探魔ン 賞な年すン い旗年にと平 文 密が索法ス定 受かビるス定 連手代苦夜ら定 をてのの②価 賞つン別①価 作の女しのか価 作たク世、一五 知サ旅力、、一 中最流め世た 三だ界魔 るンにはサ 6 : けザ法円 ! ス出何ン円 ! 傑アれをた円
CO 池見照一一 サイエンス・トピック物 CO ハレー彗星探査機 カット佐一隆 壮大な尾を引いて現れる宇宙の放浪者、 ( レし、長いものでは ( ーシ = ル・リゴレット彗星は米国も立てており、 ( 工取り紙のようなもの CO ー彗星に人工衛星を飛ばす″観測オリンピッのように百五十六年もかかる。放物線や双曲線で彗星の尾の物質をくつつけて地球上へ回収す る「アース・リターン計画」や、八百メートル ク″が、日本、欧州、ソ連によって繰り広げらの軌道をたどる彗星は、いったん太陽に近づい 四方もあるアルミ被膜つきのプラスチックの帆 て尾を引いたあと、もう二度と戻ってこない。 れることになり、準備が急ビッチで進んでい る。 七十六年周期のハレー彗星は、周期としては中を広げ太陽光の圧力を受けてハレー彗星とラン デ・フーする「宇宙帆船計画」などがあった。し ハレー彗星は七十六年の周期で太陽を回って位である。 CO かし、いずれも緊縮財政のあおりで宇宙予算が Z おり、次に太陽に最接 付かず、せつかくの野心的な計画も実現の見通 近するのは一九八六年 CO しは立っていない 一一月九日である。ハレ 日本の計画は、宇宙科学研究所が担当してい ー彗星は、紀元前五世を 文 天部る。東京・駒場にある元東大宇宙航空研究所で CO 紀の古くから観測の記 マ頭 ある。 録があり、一一十九回も ロの バ星技術試験衛星「ー」と科学衛星「プ O 姿を現わしている。 , 彗ラネットー」の二つを準備。一九八五年一月 この前現われた一九 に「ー」を露払いとして、新開発の 一〇年 ( 明治四十三 ーⅡ型ロケットで打ち上げる。 年 ) 五月には、巨大な尾 5 た型ロケットによる初の打ち上げで、新型ロケッ [ を引き、昼間でも見え たほどだという。地球 0 影トの打ち上げ性能を確認する意味も込められて CO がその尾の中を通るぐ わが国の人工衛星としては、初めて地球を回 らいに近づき、″地球 CO 百五十六年周期では、人間の一生の間に一一回る軌道を離れ、太陽を回る軌道へ打ち上げられ 最後の日″の到来かと、大変なぎになった。 ハレー彗星は、その就道や周期を計算したイ見ることは不可能だが、ハレー彗星のように七ることになり、続く「。フラネットー」打ち上 O ギリスの天文学者、 ( レーにちなんで名前が付十六年なら、長生きすれば、二回見ることがでげに備えて、軌道計算の誤差修正システムなど きる。一九八六年の接近は今世紀最後で、そのをチ = ックし、必要となればシステムの改良を Lu けられた。 はかる。 これまでに彗星は約千八百個発見されてお次は一一〇六二年まで姿を見せない予定だ。 ハレー彗星へ向けて探査機を打ち上げる計画本番の「プラネット」の打ち上げは一九 り、周期は短いものでは三年余りで太陽を一周 4
だった。ここが《大崩れ》であった。メデアを最初に調査した連中とフェルンが訊ねた。 がこの場所にそういう名をつけたのであった 0 「当惑星調査の第一次全般的計画の一部です。地質調査オートマシ 9 スクリーンが岩の一つをぐるりと一巡すると、フ = ルンは喜びのンは主として《大崩れ》地帯へ派遣されます。あそこにはメデアの あまり ( あやうく歓声を上げるところだった。裂け目に影が一つ動地質学的過去に関するデータが一番たくさんあるからです。もっと いていたからだった。 詳しい情報をおのそみですか ? 」 「ヘリアン ! 」とフェルンが叫んだ。「聞こえるか、ヘリアン ? 」 「いや」フ = ルンは溜息をついた。「そんなものは今のところ全然 彼はスクリーンをそちらへ向け、影のほうへ近づけたが、歓声は必要ない」 唇で消えてしまった。〈リアンではなかった。影の輪郭がはっきり「地質調査オートマシン・ツイン号はステーションを離れてよろ し、スクリーンに浮き出してきたのは地質調査オートマシンだったしいですか ? あのオートマシンは任務を終えましたので、自分の のだ。圧搾空気の入った脚でオートマシンは岩にへばりつき、根気受け持ち区域に戻らなくてはならないからです」 よくその辺を掘っているのだった 9 そのちょっとわきに、また別の 「だれが ? 」とフェルンが言った。「どのツイン号が : : : あっ、 影が動いていた。おそらくこれも地質調査オートマシンにちがいなそうか ? 」 っこ 0 彼は青い目をしたクモのような恰好のオートマシンのことをすっ 「ハイオ・オートマシン一号」とフェルンはルビー色の目のほうへかり忘れていたのだった。 体を向けて言ったが、目の端ではスクリーンを追いつづけていた。 「ああいいとも、持ち場に戻らせろ ! 」フェルンは再びスクリーン 「どうそ」 のほうに向いた。黒い岩の頂上は、今、光に照らされていた。黄色 「もしへリアンがここの地質調査オートマシンたちのすぐ近くを通い恒星の一つが地平線上に姿をあらわしかけ、その照り返しが裂け り過ぎたら、あいつらがそれに気づいたという可能性はあるか ? 」目を這っているのだった。もう完全にお手上げだった。《大崩れ》 、え、彼らはそういうプログラムは持っていませんし、彼らのを調べ上げるには、フ = ルンは何百年という時間を自由に使えなく 行なえる行動は正確に限定されています」 てはならないからであった。 そのとおりであった ~ 地質調査オートマシンは最下級のオートマ彼の背後を脚の長い地質調査オートマシンが通り過ぎた。一号の シンの一つで、半ば頭脳のない命令の忠実な遂行者、人工頭脳の階ルビー色の目が何か指示を与えると 、ハッチの内側のドアが開き、 級制度の中での物言わぬ奴隷なのであった。だれ一人、一号のようそれから地質調査オートマシンが出た後、また閉まった。フ = ルン な自意識を持ったオートマシンをあの荒涼たる岩山へ派遣するとい は外側のドアが開く音を聞いた。 った贅沢な真似はあえてするはずがないのだった。 スクリーンには裂け目が次から次へうつり、遠くのほうではレモ 「あいつらはどんなプログラムを組み込まれている ? 」 ンさながらに黄色い砂が輝いていた。本当にこの惑星はだれかが考
どれかが自分勝手に働きだすか、あるいはばたっととぎれてしま故障修理班を呼ばねばならぬ破目に陥ることはあるまい みちのり う。すると、航路上で何か言葉を交わし合ったり、基地での休養時困るのはメデアまでかなりの道程のあることで、そこまで行き着 く間にヘリアンの身に何が起こるかわからないのだった。なにしろ にしゃべり合ったり、愚にもっかないことで罵り合ったりした相手 やく の宇宙船操縦士はパイロットであることをやめ、メデアのような益彼はたった一人っきりで、何か事が起こったにしてもちゃんと自衛 体もない惑星から救出されなければならない不幸な仲間と変わっての能力を身につけたオートマシンたちとステーションにいるわけだ しまうのだ。 いや、いったい何事が起こったかなそフェルンは考えたく 「行くよ ! 」とあの時フェルンは言ったのだった。「いいか、セレもなかった。しかし、やはり何かよからぬことが起こったらしいの ナ、精神病の件は : : : そいつはそちらの連中がでっち上げたことじだ。メデアから応答してくるのはもつばらオートマシンたちだけだ ったから。 ゃないだろうな ! 」 フェルンは着陸コースの指示を求め、サプ・エンジンを始動させ 彼はあまりよく思っていないむこうの連中にあててもっと何か言 ってやろうとしたが、そこはぐっと堪えた。そんなことをしているた。天黄色の環が目の前に大きく迫り、宇宙船の上方におおいかぶ さるようになり、それからわきへ退いた。はっきりとしていなかっ 場合ではなかったからだった。 「わたしたちにはわからないけれどね、フ = ルン」とセレナは繰りた地表が識別できるようになった。そこには混沌とした奇怪な黒い クラウストロフォビア 返して言った。「どう見ても密室恐怖症にちがいないわ。〈リアン山脈がいくつか這っていた。淡黄色の箇所はいっそう明るくなり、 みたいな人が幻を相手にしていると無線連絡してくるはずはないも狭い砂の台地と変わった。実際は、台地は淡黄色に見えるだけのこ とだった。本当の色はきっとちがっているのだろうけれども、どこ の。あなたはどう思うの ? 」 フ = ルンは肩をすくめた。言わずと知れたことだ。意識の中に隠か宇宙船の背後に隠れてしまった黄色い恒星の鋭い光が台地をそん な色に見せているのだ。 れている、大事な大事なあのメカニズムのどれかが磨減してしまっ 着陸場は狭かった。明らかにステーションの本体が建設された際 たに相違ないのだ。 その先は何分と数え終わらぬ間に一切合財すんでしまった。宇宙つくられたに相違なく、その後だれ一人ここを広げる労をとろうと 小型救助艇の一つーーは準備 O* だった。この宇宙船は技術はしなかったのだった。着陸場の中央にもう一つ別の宇宙船が聳え が立 9 ており、フェルンは降下するため操船を上手にやらなくてはな の粋を集めたといった類のものではなかったが、しかしス。ヒード 比較的はやかったから、フェルンはこの型の宇宙船が大好きであつらなかった。それはヘリアンの宇宙船で、無傷のままここに立って いるのは吉兆であった。ステーションは見えなかった。岩の中深く た。奇をてらったような所がなく、頑丈なのだ。こういう宇宙船な ら気まぐれなど起こすまい。どこかで窮地にはまり込むことがあるつくられているからだった。 フェルンはハッチから出、あたりを見回した。醜悪な惑星はこれ かもしれないけれども、結局は何とかかんとかそこから抜け出し、 たいよう 5 8
CO O 八五年八月で、やはりーⅡ型ロケットが始物質のかたまりと考えられている。彗星その 用いられる。打ち上げ場は「」ももののサイズは一キロから十キロぐらいの小さ , 尾 「。フラネットー」も鹿児島県内之浦である。 なものだが、太陽に近づくと太陽からの熱線に 3 第 Z 「ー」も「プラネットー」も、一よって氷がとけて水蒸気になるとともに多量の , 次 正九八六年三月、 ( レー彗星近くに到達する予定塵が生ずる。この水蒸気は紫外線によって光解 日て である。サイズはともに直径一・四メートル、離され、水素や水酸基に分解、それらは炭素や 2 れ 高さ七十センチの円筒形で、重さ約百四十キ窒素を含む徴量成分と複雑な光化学反応を起こ 月っ CO ロ。上部にパラ・ホラアンテナが付いている。す。そして太陽の光圧や太陽風によって吹き流 をらく 円「ー」にはプラズマ測定用の五メートされ、ほうき星となるのである。 O ルのアンテナ二本が突き出し、磁カセンサーの核となるアイスポールのまわりには、ガス状 左近 ための二メートルのプームが一本出ているとこの頭ができ、その外側は水素ガスに包まれ「コ 星陽 ろが相違点だ。 マ」と呼ばれる。核から「コマ」までの半径は 彗太る 搭載機器は「・」は太陽風イオン測一千万キロにも達する巨大なものになるといを レどて 定器、・フラズマ波動観測器、磁場測定器で、 「プラネットー」は太陽風のエネルギー分析わが国の探査機は、この頭部の外側にできる の 5 な 「コマ」の変化を調べることをねらっており、。 装置、紫外線テレビカメラである。 ・《間日長 彗星は「汚れたアイスポール」ともいわれ、核から数十万キロに接近させる。これに対し、第 ( を、 、 9 CO 1 カ 宇宙の塵で汚れた氷でできている。太陽系の原欧州宇宙機関とソ連は核そのものの「・ 姿をキャッチしようと目指して おり、欧州宇宙機関は五百キロまでの距離である。このような遠距離通信のた から千キロ、ソ連も一万キロぐめ、長野県日田町に直径六十四メートルもある らいまで接近させる。核にぶつ大パラボラアンテナを建設する。が外 ネかりかねない「カミカゼ的」な惑星探査機「ポイジャー」の追跡に使っている アンテナと同規模のものだ。 ラ , 接近である。 プル CO ハレー彗星が太陽に最接近すすでに「」「プラネットー」両 「デ のモるのは二月九日だが、そのとき探査機とも、原型機 ( プロトモデル ) はでき CO 、中トは地球からみて太陽の裏側に彗て、各種テストが行われている。実際に飛ばす 星がいるため、太陽に邪魔され探査機 ( フライトモデル ) も、一九八一一年秋か スプ このため、探ら製作に着手しており、一九八四年春までには テ ( て観測できない。 で機査機が接近するのは、やや最接完成。その後、地上でテストを行い、一九八五 学原近時を過ぎた三月八日を計画し年の打ち上げを迎える。 またとない観測チャンスを活かすため、関係 、、科のている。 ハレー彗星に接近するとき各国で国際協力のための委員会が作られ、情報 は、地球から一億七千万キロもの交換などを行い、満を持している。 離れている。ほ・ほ地球から太陽