言う - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1982年2月号
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1. SFマガジン 1982年2月号

た。それとも、死なないとでも ? ぼくらは、ふたり一緒の十年っともひどかったけど。もっとも、あなたったらそんなことちっとも て時間を手に入れた。それを二十年にのばすことはできないだろう少なくともわたしから見ると気にしてるふうはなかったけどね、で 7 か、とうと、つダ ーリーンとはほんとうに結婚することはなかったんももう傷あとだって消えちゃった。いまじやほとんど、見分けなん ・こ。もしも、もしも : かっかないわよ」 だが、ロに出してはこう言っただけだ。 「それって、どのくらい 「きっとずいぶんいろんな話があるんだろうね」って。実際、聞き「五年になるわ」彼の顔色から、心中の疑問を読みとったのだろ たくてたまらなかったのだ。そんなひまができたときにだけど。 う。彼女はかぶりをふった。「ううん。わたしにだってわかりやし 「あるわ」彼女は顔を天井に向けた。頭部から首のあたりを、もそない。あなたにしろ、わたしにしろ、この先どれだけ生きるのか、 もそとしつかり枕のなかに沈めてしまってから、ほほえんだ。 なんてことは。わたし、こんなに年とったのってはじめてなのよ。 「いちど七四年にいたとき、ジュディのこと見かけたわ。弁護士ともっとも、これ以上年とったあなたにもお目にかかったことなんか 、よ、つないけど」 結婚してて、ふたごのママだった。飲んだくれてなんか、しオカ たわよ」 「ねえ、エレーン。ぼくたちいま、いくつくらいなんだろう」 「よかった」 エレーンはほほえんだ。ほほえむと、やわらかそうな、ふつくら 「ええ。あのときもあなたにそのことを話したら、やつばりそう言したくちびるになった。カ・ ( ーをおしやり、彼女がまともに正面か ってたもの」 ら顔を向けたのはそのときである。彼は見た。そうして、彼女が何 彼はわらい出した。 ひとっ失ってはいないことを知った。時がその貢物としてむしりと 「まったく、なんて人生を生きてんだろうね、エレーン。・ほくたちっていたものの以外には。彼女をなぐさめカづけようと待ちかまえ ときたらさ」 ていた心の一部が一瞬大きく息をついで緊張を解いた。 そのとき、突然思い出したことがある。 「いくつか、ですって ? 」彼女が言った。「いいじゃないの、そん 「でも、ぎみは。きみはいっこ、 」かさばったかけぶとんのせなこと。若がえるひまなら、たつぶりあるわ」 いで、からだの線は見えなかった。乳房は二つともあるのだろう ひとりが手をのばした。もうひとりがそれに応えた。 か。それとも片方だけ、それとも ? そんなことは、どうだってか まやしないんだ。 / 。 彼よ自分にそう言い聞かせた。とにかく、こうし て、彼女は生きているんじゃないか。 「あらわたし ? わたしなら、ほんとにびんびんしてるわ」彼女が 言った。「手術、うまくいったの。もちろん、はじめのうちは傷あ

2. SFマガジン 1982年2月号

んな幸運にめぐまれたこともあったのだから。突然、記録をなくし彼は出口にむかって歩いていった。 てしまった理由がわかったような気がした。エレーンの最期なん て、知らない方がましだ。けれども、のちのちの彼がそうは思わな 舗道に出たとたん、その黒髪の娘が前を通りすぎた。思わず、考 かったことは明らかだった。さもなければ、こんな書類が目の前に えるまもなく、彼はよびかけてしまっていた。 あるはずがないのだ。後になってきっと何か他に、彼の決心をひる「 = レーン ! 」 がえすようなできごとがおこったにちがいなかった。 娘がふりむく。あたりさわりのない言い訳をひねり出さなけれ = レーンのことは、前に生きた二度の時分から知っていた。一度ば、と彼は必死だった。が、娘はみるみる目をまるくしたかと思う めは、ふたりの夫婦生活もすっかり成熟して、フランクとロンダの と両腕をひろげ、かけよってきて、彼にとびついた。身をひくひま 夫妻と完全な同居生活をおくるようになったとき。あのときは二カもあらばこそだった。 月だった。それから、そのあと、結婚後六カ月の頃からはじめて二 「ラリイ、ラリイじゃないの ! 」 年めの全部ともう一一、三カ月を生きたことがある。エレーンこそは 「ええっと失礼。人ちがいだったみたいだ」彼は言った。むばかり 彼が最も必要とし、愛し : : : そうして別離を悲しんだ人だった。 が空しくなみ立つ。「しかたありませんよ。・ほくに似てる人なんて それ以上は知りたくなかった。いまのところは。記録をしらべあ のはごまんといるでしようし」 げて頭に刻みこむ必要はある。ただ、いまここでという気にはなれ 娘は首をふった。まっ毛に宿った涙のしずくがとびちる。 ない。幸い、ジ二アイはせんさく好きな性質ではなかった。家に持「人ちがいなんかじゃないわよ、ラリイ ! 」娘の手がしつかり彼の ち帰ってもだいじようぶだろう。封筒をポケットに入れる。その他上腕部をつかんでいた。つめが食いこんでくる。 のものはみな金庫にもどした。金庫をもとどおりに押し入れる。カ 「ねえ、こんなことってある ? あなたもなのよ、ラリイ。あなた チリと、 いかにも安全を保障してくれそうな小さな音がした。これ もだったのよ」 でよし、と。もう、行かなくては。 冗談でなく、頭がくらくらしていた。目がまわりそうだ。深呼吸 カウンターで、ミセス・トラバ ースに礼を言う。 してみる。もういちど。もういちど。 「遺書はもうこのままずっといじらないことにしました。引退した「ああ、・ほくもだ」彼は言った。「いい力い、エレーン。どこか静 雄猫たちも、せいぜいがんばってくれたらいいんです」 かなところへいってコーヒーかなんか飲もう。・ほくらは話しあう必 、セス・トラ・ハースはわらった。彼が期待したとおりに。 要がある」 「ええそうよ ! 話しあう必要があるわーー・世界中の誰よりもね」 「ええ。どうそお好きなように。ガースさん」 「そうですとも」彼は言った。「結局はぼくの金ですからね。それ じゃ、また、ミセス・トラ・ ふたりは、静かでうす暗いバーをみつけて、すみのテー・フルに腰 ハース。どうもお世話さまでした」 9 5

3. SFマガジン 1982年2月号

何があったのか、いっかはきっとわかると思うんだ。ばくのせいじしがまだここにいればの話だけど。ここって現在につてことよ」 ゃないことを祈るばかりだけど。でも、どうも、その線がつよくて「いなくなっちゃだめだ。それだけさ」ほほえみかわし、手をふり 合う。やがて彼はきびすを返し、駐車場にむかって歩いていった。い 「そんなこと、いちいち考えてなんかいられないわよ。何も好きこ のんで、とびっとびに生きるように生まれてきたわけじゃないんで ア / ート の鍵をあけたとたん、もうちょっとでジュディを梯子か すもの。わたしもだけど。わたしたちに耐えられるんなら、他のひらぶっとばしそうになった。ジデイもあやうく、かけようとして とたちだって耐えられないわけがあって ? 」 いた絵をおっことすところだった。 「・ほくたち、耐えていけるかな、エレーン ? 」 「まあ、あなただったの」彼女が言った。「ちょっと、これお願 「耐えていこうとしてるんじゃないの ? 」彼女は腕時計に目をやっ い」・ハランスを崩してしまって、彼女は前かがみに絵をわたしてよ た。いけない、 もういかなくっちゃ。一時間もおくれちゃったわ。 こした。ロープの前がはだけている。梯子から降りてくると、その ジョーがーーー主人なんだけど いそがないと、また飲んだくれち前をかきあわせてから、彼の方を向いた。 ゃう」 「お昼めしあがった ? ラリイ。あたし、しばらく待ってたんだけ 「わかった、しかたないな。こんど、いっ会える」 ど、お腹すいてきちゃって、お先にいただいちゃったわ。食べたか 「まだわからないわ。でも、とにかくお会いしましよう。あなたとったら、つくったげるわよ。でも、こんなおくれて帰ってきたひと わたしには、片づけなきゃならない問題がいつばいあるんですもなんかに、そんなことしてあげちゃって、いいのかしらねえ」 と言いかけて、すいていることに気がつい の。あなた、電話帳にのってる ? 」彼はうなずいた。「わたしの方お腹はすいてない、 からかけるわ」 た。昼食をとりそびれていたのだ。 彼女は立ちあがり、彼も立ちあがった。歩き出そうとする彼女の「仕事をつづけなよ、ジュディ。おれ、サンドイッチでもっくる 腕を彼がひきとめた。「まって、エレ 1 ン。ずいぶん久しぶりなんよ。自業自得だもんな。ちょっと途中で手間くっちゃって」冷蔵庫 だもの」長いキスだった。それからふたりは身をはなし、店を出 から、。ハンとスライスする肉とビクルスとマスタードのびんを取り こ 0 出す。「ふたりともひと段落したら、ビールでものんで、ちょっと 「わたし、こっちなの」彼女が言った。「ほんの二、三プロック先話をしようや」 なの。ついてきちゃだめよ」 彼女は仕事にもどった。片手に絵を下げ、片手にハンマーを持っ 立ちつくしたまま彼は、その後姿を見送っていた。歩み去る彼女て、ロはびようでふさがっている。梯子をのぼってのはいいぞ、と の、 - 優雅な後姿を。一「三歩いって、彼女はふり返った。 彼は思った。まんまるお尻にとっては。 「今晩、電話するわね」彼女が言った。「あした、会えるわ。わた話したいことっていうのは、自分でもうちゃんとわかっていた。 5 6

4. SFマガジン 1982年2月号

幾「か 0 都市の中 0 情報を集める 0 がや「とよ。 = 0 惑星 0 至ると「よく「て。ア」ク〉ド 0 人たちが、 = こにや「てきたと、私 ころに仲間がいて、互いに通信器で連絡しあわないかぎりは、ね」 たちが思っているのは、マイダスがそう言ってきたからにすぎない 3 「じゃあ、ヘダスは何者たと言いたいの ? 」 わ。でも、これまでのところで、アレクサンドロス人たちが、この 「決まってるわ、私たちと同じマイダスの人間よ」 惑星にや「てきているという証拠は、どこにもない」 メリンは、事もなげに言った。 ローダが口を開きかけるのを、手で制しながら、メリンは続け 「マイダスの人間なら、〈ダスの役割をすべてや「てくれても、お かしくないわ」 「言いたいことは、わか「てる。彼らを探し出すも何も、まだ本格 ロールが言った。 的には何もや「ていないも同じだと言いたいんでしょ ? 」 「そうだな、メリン、君の言うとおりかもしれない」 ローダの心の中にあったのは、ほとんどそのとおりだった。仕方 「ちょっと待って。そんなこと、私たちは一言も聞かされてない。 なくうなすく。メリンの顔に、何もかもわかっているのだと言いた 「イダスの人間が、第二段階の惑星にいるなんて、許されないことげな表情が浮かび、 0 ーダはそれを腹立たしく思「た。そして、 リンを感心したように見つめているロールにも微かな怒りを感し メリンは、また微笑みを浮かべた。 「たしかにね。でも、ありえないことじゃないと思う。マイダス 「どうして、私たちがまともに調査に取りかからなか「たか、考え が、この惑星に何も手を出さないでいることの方が、ありえない てみたことがある ? 」 わ」 メリンが尋ね、ロールが答えた。 「でも、もしもへダスがマイダスの人間なら、・ とうして、私たちが 「いや。わからない」 ここまでや「てくる必要があ「たのよ ? 〈ダスがア」クサンド黙「ていればいいものを、 0 ーダは思う。そして「リが、子供 スの奴らを告発する材料を集めることができるのなら、私たちなんに言いきかせるように言「た。 て必要なかった筈じゃないの」 「簡単なことよ。私たちは、最初からまちが「た方向に押し出され 「そこよ、私がわからなか 0 たのは。でも、たとえば、ア」クサ》ていただけのことだわ。本来なら、ア」クサド 0 人たちを探す ドロスの人間なんて、ここにはいないとしたら、どう ? 」 べきところを、〈ダスという人間を探すために全力を注いでしま「 「いないとしたら ? 」 たのよ」 0 ーダは、息をのんだ。それは、考えてもみなか「たことだ「「何が言いたいの。・ , リ。あなたが本当に言いたいことは、何 なの ? もしもアレクサンドロス人たちがいないとしたら、いった 「でもー・こ 何故、私たちがここまで来たって言うの ? 」

5. SFマガジン 1982年2月号

ギュンターは、・と言葉を交した最初の人間となったわけだたら、プログラムを全面的に信用するしかない。 : 、彼はこの偉業に当惑した。 「わたしを撃とうというのか」 「グ・ン・タ・ア」 ヘッドセットから再び悪魔の声がした。 いまや、この声はギュンターにとって、恐怖の対象となった。フ・ 「きさまが本当に・ならば、その通りだ。その頭をぶち砕いて ワフワとした奇妙な声である。 やる」 「・、おまえが喋っているというのか」 「この声を借りている男も死ぬことになるそ」 数秒の間があった。ギンターは、宇宙に出てはじめて不安にな「そういう脅しは ( ンターには通用しない。きさまが生きている限 り、危険なのは同じことだ」 「おまえたちの船にいる人間の声を借りているーーー」 ギュンターは、そう言いながらミサイルと粒子・ハイル・ドライ・ハ セイフテ ( ー 「ジノの声帯を使っているというのか ? 」 1 の安全装置を解除した。スクリーンわきに、アタック・ポイント しばらく答えがなかった。ギンターの質問に答えようとする意までの数秒が三一一〇と表示される。 図はもともとないようだ。 「この男も、前に会ったことがある」 「おまえは前にも一度見た」 声はそう言った。 声があった。イントネーションは、あいかわらずおかしなものだ この男というのは、ジノのことだろう。ギュンターと同期の彼も ったが、心なしか次第に流暢になっていくようだ。 また、今回が初出撃である筈だ。ギュンターには一体何のことかわ 「ジノのからだはどうなっているんだ ? 船をどうした」 からなかった。 ギュンターが叫んだとたんに、ポートががくんと横に急旋回し「おまえたちの形質記憶機構には見覚えがある」 た。〈メイトリア〉がプログラムした攻撃パターンが発動したの「何のことだ、それは ? 」 ・こ。スクリーン上こ、・、 ホートの就跡、・、サプリナの位置や相「おまえたちがミクロのレベルで形質の連続性を維持してゆく機構 対速度がヴィジュアル表示された。ギュンターの乗ったポートは、 のことだ」 サ・フリナからまっすぐ前に射出され、今、後方の・の側面をえ ギュンターには、今それが何を意味しているのか判った。そして ぐるべく旋回を始めたのだ。 驚いた。 しまった。・の声に気をとられていて、オペの手順を呑・は、ギ = ンターとジノの遺伝子に見覚えがあると言ってい ダブルヘリックス みこみそこなった。 るのだ。 QZ< の二重らせんの中に、昔見た塩基の配列パターンを ギ、ンターは、ちょっとあわてたが、既にどうしようもなかつ見出したと言っているのだ。 コアスコープ た。どうせ核が照準に入れば、引き金を引けばよいのだ、こうなっ ギュンターには要素の符合が解けた。ジノも、父親がハンターだ っこ 0 378

6. SFマガジン 1982年2月号

ら、きっといい事があると言っていたよ」 。ところで、あなたは」 いくべと言いながらオヨネの足は襲撃を受けて、 「そんなこと言ってたかね。そうだべ、そう 早かった。むりもない、オヨネに限らず誰も「私は銀河監視員の一人、この地球の歴史、 だべ、この村には悪い人は一人もいねえから が、行動の総てを二本の足にたよっているの自然、その他あらゆる物を監視している」 「助かった。僕に永住権を与えて下さい。僕なあ。あ、そうだばあ様に知らせねば、ばあ だから。 が生きてゆける条件をそろえた星はここだけ様、ばあ様あ」 「おい、おいオヨネさん。もうちょっとゆっ オヨネは、ばあ様の家「へ驤け込んでいっ なのです」 くりできないかね」 「それはいいけど、この星の歴史、文明に一た。山間の小さな村、夕日が空を真っ赤に染 「先生様あ、そんただこと言ったってこれで めていゑ西暦八〇〇年、延暦十九年平安、 もずいぶんおせえだよ。早くしねえと村にっ切タッチしないと約東できるかね」 いくつかの小竸合いはあったものの、私はこ 「ええしますとも。この時代にできるだけ対 くまでに日が暮れちまうだで」 の時代を受け持って本当によかったと思っ 「ああ、そうだよね」 応します。でも、この体では」 二人がオヨネの村に着いたとき、日は西に彼の心配ももっともだった。彼の体は三セた。 ンチにも満たないのだ。 傾いていたが、それでもタ暮れまでにはまだ だが、その日の五日後、 「うん、そうだ。君は京にの・ほりたまえ。京 間があった。 月沿いの草叢のまん中では、ばあ様が祈都と言う都にいる連絡員の女性が、うちでの「先生様あ、先生様あ、たいへんだあ、川へ をくりかえしている。 小槌というものを持っている。我々のいう拡洗濯にいってたばあ様が、でつけえ桃を拾っ 「先生様あ、ここだよ」 大機だ。それを使ってここの人間になればよてきただよ」 いだろう。彼女には私から伝えておく。だ ばあ様は、我々を見るとさけんだ。 が、京までの道のり、宇宙船を使うとまたも 「御神体に近よっちゃなんねえ」 ーーー応募規定 私はばあ様の言葉に背いた。そしてそれめ事が起きそうだ」 ■応募資格一切制限なし。ただし、作 は、まぎれもない宇宙船だった。 「その事なら心配はいりません。ポートを持 品は商業誌に未発表の創作に限りま っていますから、それを使って川を下り、京 「近よっちゃなんねえ。神様が怒るだで」 す。 草の焼け具合から見て、放射能は使ってな都へ行くつもりです」 ■枚数四百字詰原稿用紙八枚。必ずタ 「気をつけてな」 いようだった。 テ書きのこと。鉛筆書きは不可。 ■原稿に住所・電話番号・氏名・年齢・ 「はい、それでは」 「近よっちゃなんねえてゆうてるだに」 職業を明記し、封筒に「リーダーズ と、ふいに扉が開いて小さな男が出てき彼はポートを宇宙船の中から取り出すと、 ・ストーリイ応募」と朱筆の上、郵 それは御椀に似ていたーーー私から連絡員 た。それも人間にそっくりの。 送のこと ( 宛先は奥付参照 ) 。ペン への書状を持って、川を下っていった。 「ひやあ、でたあ」 ネームの場合も本名を併記してくだ 一一人は声をそろえてさけぶと、家へ飛び込 さい。なお、応募原稿は一切返却し それから少しして、 んでかんぬきをかけてしまった。 ません。 ■賞品金一封 「どこからきたのですか」 「先生様あ、神様はどうしたあ、何んか言っ ■掲載作品の版権および隣接権は早川書 てたかね」 私は話しかけた。 房に帰属いたします。 「ああ、この村の人達はいい人ばかりだか 「アンドロメダから。住んでいた星が隕石の メッセージ 3

7. SFマガジン 1982年2月号

ーガン問題に入ろう。ホーガン作品は面白 ・フラウン、星新一ショ , ート・ショート路線をつているからなのである。自分の道を進めば これは確かだ。だが、何が面白いのか、 いいのだ。 すすめたりしてしまうのだ。 これが問題だ。ホーガンの作品は、五十年代 これが十年以上前なら、かなりキツ・ハリと と、界全体がトーフ状態にあったとこ 答えることができた。作品そのものの数もさろへ出現したのが、ジ = イムズ・・ホーガの現代回帰ではない。それ以前、ガーン ほど多くはなかった。黄金の五十年代とンの『星を継ぐもの』だったのだ。フアズ・ ( ックの、・・スミスの時代、サイエ ンス・ワンダー、テク / ロジー万歳時代なの いうものが、の核であり、日本にはこうンは喜んで受け入れ、内容からいって当然の だ。だから、その時代の長所も欠点も、全て いう作家がいて : : : と、現状の把握だってでこと、ミステリ・ファンにも評判になった。 レ きたし、ファンの人間と会えば、誰とでそして続篇の『ガ = メデの優しい巨人』、この持ちあわせている。『星を継ぐもの』は、ま も話が通じた。ノスタルジーで言うのでな『創世記機械』と、たて続けに出たホーガシだ、その謎解き仕立てで救われていた。ホー ガンという人は、シャローキアンではない 5 く、事実なのだ。善し悪しでもない。 の作品を読んでいくうちに、最近考えてい た、ある過激な思いが、固まっていった。そか、と思わせる論理の面白さで読ませる。御 そして、どこか知らない所で、ビッグ・ ンが起り、情況がファンなるものの意識れは、サイ = ンス・フィクションは、小説の都合主義的なところはあっても、論理で進ま せようとしている。それをサイエンス・フィ を追い越し、量的にも質的にも多様化、世に結構など、どうでもいいのではないか、とい クションで書こうとするから、登場人物全員 言う″拡散と浸透 4 をしていった。とい うものだ。サイエンス・アイデアを純粋にそ シャーロック・ホームズになってしま うものが、″センス・オ・フ・ワンダー〃と、 しのままの形で聞いてしまった方が面白いのでが、 う。ポケル、コミック・リリーフなど、ほと う錦の御旗を振りかざすだけのジャンルでは ーなしか、という考えだ。極論であるのは、 なく、 ' 自由。を求めるものの総称、つまわか 0 ている。五十年代のサイ = ンス・フィんど登場せず、全てが論理のために、結局 は、善良な人々、カキワリ人間が出来上が り、〃したいことができる領域久ま、永久クション・ライターには、ストーリイ・テリ 革命のようなものだ、という考え方からすれング、小説を読む面白さがあった。それが今 ば、望むべき状態になったのだ。だが、どこの作家には、いささか欠けているのではない かアトム化したような、解体された自己のよ か。別に人物を描きこめ、とか言っているの物、 うな感覚が 0 きまと「て」た。平たく言えではな人物描写なり、状況描写が、かえ一械 ば、 " 昔はよくわか「ていたが、いまはよく「て冗長になり、煩しくて仕方がないものが機 , 、 わからない。ただそれが自分にとっては、そ多いのだ。小説としての膨み、厚みを出そう うであるか、そうでないかぐらいの分別ぐら などと考えないで、そんな夾雑物など取り去 ってしまえま、 ~ しいのだ。 いはある第という、トーフ状態なのだ。しか こうしたこと全てが『創世記機械』に当て し、こうした状態というのは、要するに、自 己にとって、どうでもいいことにかかずらわはまる。一般論めいた物言いをやめ、個別ホ 323

8. SFマガジン 1982年2月号

っすらと図形様のものが見える。だが、ローダの目は、そちらを見「私よ、ロ】ダよ。メリン、よくって、大変なものを見つけたわー ていない。 アシュロンの通信器よ、今、それで通信しているのよ ! 」 シギイトとビナカルは、ほとんど同時にローダの異常な態度に気沈黙の後に、言葉が帰ってくる。 付いた。そして、ロ 1 ダの視線を追う。 「本当なの ? ローダ」 「ローダ、どうかしたのか ? 」 「本当よ、まちがいないわ」 。ヒナカルが、ローダの肩に手をかけた。ロ】ダは、一瞬、我に帰「それで、どうするつもり ? 」 メリンの声には、奇妙なほどの冷静さがあった。だが、ローダは 「あれ、あれは ? 」 それにも気付かない。 箱の中の金属を指さす。シギイトは、手にした地図を。ヒナカルに 「とにかく早く飛行艇を修理して、すぐにでも飛んで来て欲しいわ 手渡すと、ローダの指さしたものを箱の中から取り出した。ロ】ダ は、ゆっくりと一一一口った。 「もうすぐ終りそうだと、ロールは言っているわ。あと数時間ね」 「通信器だわ」 「助かるわ。早く来てよ ! 」 また沈黙が帰ってくる。その長さに、 ローダは何か異常なもの シギイトの手から、受け取る。まちがいはない。マイダスの通信 器だ。しかも、おそらくはアシロンの持っていたものだ。手が震を、初めて感じた。やがて、ロールの声が話しかけてきた。 えた。 「ローダ、メリンと二人で話したんだが、おれたちは、そちらには 「どうして、これをーーー」 行かない」 シギイトが、ローダの声の震えに僅かに眉を寄せながら、答え 「どうしてなの ! アシュロンの行方がわかるかもしれないのよ 「十日ほども前に、 カイの者たちが持ってきた」 「アシュロンとも会いたくないんだ」 その日数は、・ とう考えても、不合理なものだ。だが、ローダはそ 言葉の意味が、ゆっくりとロ 1 ダの頭の中に浸み込んでくる。 のことにすら気付かなかった。ただひたすらに、自分の見ているも「何を言ってるの ? どういうつもり ? 」 のに心を奪われていたのだ。そして、無意識の内に、通信器の発信 ローダは、咽喉の奥に詰まりかけている言葉を押し出した。 ・ホタンに手を触れた。通信器のラン。フに光が灯る。ほどなく、メリ 「ロールの言ったとおりよ。もうアレクサンドロスとかマイダスと ンの声が戻ってきた。 か、そんなものはごめんだわ。私たちは、私たちの道を探すのよ」 「誰 ? 誰なの ? 」 「それはーー」 ロ 1 ーダ . は、我に「衄る。 ローダは言い淀んた。言葉が見つからない。かわりにメリンが言 る。 9

9. SFマガジン 1982年2月号

けに発信音がきこえはじめた。そんな音にまでまるで何かの意味で 怒れ。 「きみにそんなことを言う権利はないぞ。彼女を知りもしないくせもあるかのように、彼はしばらく耳をすましていた。それから受話 器を置くと、ジュディのところへもどった。 に。それにどうしてーーこ ジュディは本を読んでいた。音声は消したまま、テレビがつけっ 電話線のなかのカチャカチャいう雑音にまぎれて、かすかに弱々 放しになっている。以前いっ彼女と一緒だったときにも、これだけ しく彼女の声がきこえてきた。 はどうにも彼に理解のできない習慣だった。こうしてると、あんま 「わかったわよ、》ラリイ。そうよ。ゃいてたのよ。悪かったわ。あ りひとり・ほっちって気がしないんだもの。いつだって、ジュディは んなこと言うんじなかった。ちょっと酔っぱらってるの。さっき まで 0 ケモ殿下と飲んでたんだけど、あいつったらつぶれちゃ 0 てそういうばかりだ。 さ。わたしのこと、触れてもくれないでさ。いつもと、おんなじ「ビールでも飲む ? 」彼は声をかけた。「一、二杯やって、ちょっ・ と新聞でも読んでと。早目にねるかな」 よ。つく・つくみじめな気分になるの。あいつったら、ひと晩じゅう 「あたしは ? 」 なんだかおこってるんですもん。何にもなりやしないのにね。いっ 「え ? 」 たい何がおもしろいんだか、知りたいもんだわよ」 「あたしよ」 「知りたいことなら、・ほくだってごまんとあるぜ」彼は言った。 「あ、ああ。もちろん一緒さ」 「気にするなよ。どうだい、エレーン、二、三どっかいっちまわな 「ならばよし。そうだ。あたしも一緒に飲みたいな、ラリイ」 いか。何もかもほっぽり出しちゃってさ。どう ? 」 彼女が予想外にあんまりだまっていたので、彼はちょっと気を悪そっちの役まわりなら、悪くはなかった。本はやめて、ふたりは おしゃべりをした。少ししてから、彼は″仕事の約東″のことを彼 くした。 「あなたの方さえ平気なら、こっちはなんとかうまくいきそうよ」女に話した。場所や内容については触れなかった。いっか、という ことだけ話した。 それから、また、だんまり。「お話、できるものね、何もかも」 「そんなに早くじゃなくていいんだけど、明日の朝発って、月曜日 「ほくもそのつもりでいくんだ」 にはもどるつもりだ。もしかしたら、月曜日の晩になるかも知れな 「いいわ、ラリイ。あした「あの・ハーで待ってる。お昼ごろ。か、 ちは . っとおくれるかな。時間まもるのって、苦手なの。でも、とに 「ふうん。でもま、幸いいそがしくって、ちゃんとさびしがってあ かく、あの・ハーね。・スーツケース、かかえてくわ」 げるひまなんか、なさそ」 「うん、そケそう。 ,. エレソ。それでは、おやすみ」・ 「用心ぶかいのねえ、・ラツィったら。ま、いいけど。つづきは後で彼はわらいかけていふと黙った。彼の方はいっこうにジ、ディの 7 しやべってくれるまで待ってたげるわー電話はそこで切れ、だしぬことなど恋しがりそうになかったからだ。

10. SFマガジン 1982年2月号

せん。それはあなただって御存知よね、ラリイ。でも、あなたまわしかけてふとためらい、彼はそのまま受話器をおいてしまっ た。かわりに、エレーンにかけてみる。 の方はかわってしまった。銀行にいらしたあの日以来、かわっ てしまった。あなたのお気持、かわらずにいてくれるんじゃな 男の声が出た。 くっちゃ、あたし、とってもやっていけない。ほんとのほんと「あい。だれ ? 」この時間にケモ殿下はもうかなりきこしめてい に、やっていけない。だから、もう出ていきます。心配なさらた。 ないで。結婚祝いの贈り物なんかのことならみんな、あたしの どう演じてやったものだろう。 方で言って取り消してもらいます。あなたにごめいわくはおか「マーシャルさんですか。ガースと申します。先週のはじめに、 けしないわ。かわらなかったころのあなたのこと、いまでもこ セス・マーシャルからことずかった件で御報告したいのですが」 んなに大すきです。とっても、とっても、つらいわ。 「よっし。おれがきいてやるぜ。おい」 「申しわけありません。直接、とのミセス・マーシャルの御意向で したので : ・ 。おそれいります、ご本人を出していただけませんで なるほど。どこに行くとも書いてなかった。ってことは、行き先しようか」 は無限だってことだ。荷物をほどくなんて、ごめんだった。ビール 「おれさまがきいてやるつつってんだよ。いやならやめな。ふたっ を出してぎて、ひとまず腰をおろして、よく考えてみよう。 にひとつだ。わかったか」 二本ほど煙草をすったところで、思い出した。この事件につい 「ミセス・マーシャルの方からおかけなおしいただくというような て、ジュディ自ら、以前に話してくれたことがある。 ことは : わたくし、ガースと申しますが」 「あたしがあんたのことを捨てて出てっちゃったときのこと、お・ほ しまりのない声が、とたんにとんがった。「ははあん。てめえだ えてる、ラリイ ? おどろいたなんてもんじゃなかったわよ。いまな。この野郎。あいっと一緒だった男ってのは」 だにどうしてだかわかんないわ。あのときだってわかりやしなかっ 畜生、もうどうにでもなれ、だ。 たけど、あなたがどうやってあたしのこと探しあてたんだかってこ 「ああ、そいつだとも、ジョー。 正真正銘のそいつだ。みんな、あ ービスのことすら、あたしにいとこがいるってことんたがのそのそしてるから悪いんじゃないか、ジョー。″ 無駄がな すら知らなかったはずなのに」 ければ不足もなし″っていってさ。さあ、エレーンを出しなよ。そ 彼はわらいとともにその名を思い出した。誰かの過去のなかかられとも、こっちからおしかけてこいとでもいうのかい」 彼自身の将来にかかわることを、いつもそうやってひき出してきた がちゃんがちゃんすごい音をたててしくじったあげく、マーシャ ように。 ルは、三度めにやっとこ受話器をおいた。耳がつんざけたかなんて ービスの番号は電話帳にのっていた。最初の三数字をものじゃない。おれもばかなことをした・もんよ、とラリイは思っ 2 7