機械化 - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1982年3月号
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1. SFマガジン 1982年3月号

さらに付け加えると、〈機械化〉には小説のみならす (-nv-4 の すること ビジュアルな面での収穫がある。それは、小松崎茂のイラスト 四、応募原稿は一切返却せず 五、第一期締切期日昭和十九年十一月三十日 小松崎茂といえば、講談社の少年少女世界科学冒険全集の装 六、応募作品は夫々専門家に委嘱し審査の上採否を決定 幀・ロ絵や、「火星王国」「地球」「空中の魔人ー「二 し、逐次『機械化』誌上に発表、相当の稿料を呈す 七、送り先東京都神田区神保町一一丁目一〇山海堂内機械化十一世紀人」ほかの絵物語、さらには東宝映画「地球防衛軍」 「海底軍艦」のデザインなどで昭和二十 ~ 三十年代の少年 編集部 の胸を熱くした、日本で最初の本格的画家だ。 ( かくいう ☆封書の表面に『応募小説』と朱書すること ぼくも、かって彼の描く宇宙船の絵にシビレたクチなのだよね 残念ながらぼくはこの後の号を確認していないので、結果は D) まったく不明。だが、最高で七十二枚という制限枚数の狭隘さ〈機械化〉のカラー折込ロ絵に、ほ・ほ毎号のペ , ースで篳をふる う小松崎茂の未来兵器の図解の数々ーー・陸の航空母艦、水中潜 や「作品としての巧緻よりは機械化科学心云々」の条目から察 は、内部構造な すると、あまり期待できたものではないだろう。なによりも興行戦車、成層圏爆撃機、氷上巡洋艦 0 味深いのは、このコンテストの趣旨で、「敵英米の殲減日機械どディテ】ルもリアルで、メカ・マニアの人にはとくにおすす めできる。 化科学技術の飛躍」という概念がテーマになっていることだ。 なにはともあれ、図版で実物を見ていただこうか。昭和十六 現在ではとても考えられない異色の軍事コンテストだが、 それがいかにも戦時下の切迫した状況を思い浮かばせる。これ年十一月号から、雪上水雷艇の図。かっちいいだろう。説明を あだばな 読んでみよう。 も、時代の徒花というべきであろうか。 戦たけなはなる独ソ戦。その戦場では、極地であるため に、凍結と寒冷に悩されてゐる。そのために、戦闘と兵器 の活躍は不活となり、遂には華々しい戦果の進展も見ら れなくなってゐるのである。 これをソ連は冬将軍と云って、軍民こそって、この天の 恵みに頼ってゐるのだ。だが、しかし、近代科学兵器はい かなる自然の暴威をも征服して進撃しなければならない。 5 ここに出現した科学兵器は、従来の橇に機関銃をのせた 兵器などとは較べものでなく、全体を流線型で、あらゆる 装置も極地向に作ったものである。型は翼のない航空機と く機械化〉昭和十七年二月号 てん 2

2. SFマガジン 1982年3月号

時・即物的な題材の場合、読者に「なるほど」と思わせるホン トつぼさが重要なエッセンスになるのではあるまいか。主観的 号 月な見方かもしれないけれど、一小松崎ファンとして感じた所 年似。 これは未確認情報だが、当時ナチス当局では小松崎茂のイラ や 和ストに目をつけて、日本から十冊ぐらいづっ送っていたとい う。ヒトラー以下ナチスのお偉方が、自慢のヒゲをひねりつつ 〈機械化〉をながめている姿など、空想するだけで何だか楽し 械 はくなってきてしまうではないか。やはり、〈機械化〉の小松崎 のイラストは、当時の日本の画のひとつの方向として評価 すべきだと、・ほくは思う。 思へば間違ひない。前から敵にうたれる弾丸は皆、金属の ・フロペラではね返すことが出来、こちらは。フロペラの隙間昭和十九年最後の話題は、おそらく日本で最初のプラス 科学解説のアンソロジーのおはなし。 から機関砲を打出すことが出来るのである。 その上、一千五百馬力の機関をつけ二〇〇キロの速度を この年九月に出た日本少国民文化協会編の少国民科学年刊 出すので、敵の重砲では照準も定まらない程である。そし』 ( 国民図書刊行会刊 ) は、昭和十七年中に発表された て、この怪物の最大の特長は陸上魚雷を持ってゐて、無電および科学解説の年鑑だ。この本は、最初、蘭郁二郎が中心に でどの方向にも走って行き、敵を撃破することが出来るこなって編集にあたっていたが、途中で蘭が殉職した ( 拙稿第十 とである。そのために、雪上水雷艇の異名があるのだ。 回を参照のこと ) ため、探偵作家仲間で創作にも熱心な林 髞日木々高太郎が主編となった。 なアるほどね工。 そもそも「 + 科学解説日科学読物」という考え方は現在 増淵健氏は、「ああ、軍団少年」 ( 〈映画宝庫〉第六号の中国における一般的な〈科学文芸〉のジャンル分けに類似し 少年の夢 ) というェッセイの中で、小松崎茂の〈機械化〉ており、特に一昨年北京で刊行されたと科学解説のアンン のイラストを「空想力はほどほどのもので、現実から大胆に飛ロジー『科学文芸選』上下巻は、この『少国民科学』と同様の 躍するタイプではなかった」「今思うと、日本の科学技術の限ポリシーで貫かれている。 界を絵解きしたようなもの」と評しておられる。たしかに増淵収録作品二十篇のうち、フィクションは次の四作。 氏のおっしやるとおりで、それが短所なのだが、逆に言うと発「攻撃兵器研究所」伊東福二郎 想の飛躍のなさが長所となって堅実な予測とリアルさを高める「快速飛行艇『大東亜号』」土岐雄治 効果を生んでおるのではあるまいか。ことに未来兵器という即「染料二千六百号」大下宇陀児 幻 6

3. SFマガジン 1982年3月号

う。 ( 用紙事情からいっても雑誌の性格からいっても、これ以 降の続刊はまず考えられない ) 号 月戦前・戦中そして現在のポビュラー・サイエンス誌の多くが この〈機械化〉もかなりに好意的で、 年そうであるように、 七 創刊号より北村小松のスパイ小説『亜成層圏』を連載して 十 和 いるほか、海野十三『未来の地下戦車長』、南洋一郎『海底機 昭 械化兵団』、蘭郁一一郎『姿なき新兵器』、山中峯太郎『神兵鬼 兵』など当時の著名少年小説作家によるないし的な軍 械 機事小説が、ほとんど毎号のように掲載されていた。 コンテストが催された昭和十九年八月号には、「機械化 科学小説募集い」と銘うって、左記のような募集要項がある。 年軍事科学小説を発表している。そのタイトルは『成層圏魔 機械化科学小説募集凵 城』。あいかわらず、オドロオドロしい題名である。〈戦時版 よみうり〉の昭和十九年四月六日 ~ 八月三十一日に連載された 戦争は科学の父にして、科学は戦争の母なり、といはれて ものだ。その後単行本にも収録されず、長らく埋没していた ゐます。現に大東亜戦争、今次欧洲戦争に於て現れた新兵 が、現在では桃源社からリ・ハイ・ハル版が出ている。 器はこの事実を雄弁に物語ってゐるではありませんか : 南支那海の上空に、必ずそこで飛行機が落ちるという″南海 大魔″の謎を追って、日本の快青年が探検にのりだす。結局そ 科学力と物量を恃みとして世界制覇の野望を逞しうする敵 と の正体は米軍が開発した戦闘用の大型成層圏気球だった 米英を圧倒殲減せんには、機械化科学技術の決戦的飛躍こ いうお話。ミステリとしての趣向はともかく、としてはあ そ目下の急務といへませう。当編集部はに『機械化科学 まりに話が理に落ちすぎていて、発想の飛躍がいま一つ。やは 小説』を募集し、以て決戦への飛躍を期する所以でありま り、人外魔境のスケールには及ばなかったようだ。 す。 一、『機械化科学』を主題とする創作たること、 ( 例・新 昭和十九年の八月には、戦争中唯一のコンテストが行な 案兵器未来戦・発明等 ) われている。主催誌は、国防科学雑誌と銘打たれた〈機械化〉。 ☆作品としての巧緻よりは機械化科学心横溢せるものを 〈機械化〉はその名のとおり小・中学生を対象とした軍事科学 の図解・解説専門誌で、発行は山海堂出版部。昭和十五年五月 二、四百字詰原稿用紙十二枚内外を一回分とし、六回以内 の創刊で、正確な廃刊の月号は不明だが、日本書籍出版協会編 たること。別に四百字詰一枚位の梗概を附すこと の『日本出版百年史年表』によると昭和二十年まで続いたとい 三、誌上匿名は自由なるも、住所・本名職業及年齢を明記 幻 4

4. SFマガジン 1982年3月号

ため、 S F は、、思考する機械 / の小説的可 能性を見出すのに常に一歩遅れをとってき た。小説の世界では、機械脳のアイデア は、機械人間 ( ロポット ) のアイデアに 付随して発展し、早くも 1879 年には、ェ ドワード・ペイジ・ミッチェルの ctThe Ablest Man ⅲ the WorId" の中に機械 脳が登場している。初期の S F パルプ雑誌 には、人工頭脳がその創造者に反逆すると ェドモンド・ハミルトンの etThe Meta1 Giants ” ( 1928 ) があり、ジョン・ W ・キャンベル・ジュニアの初期作品に は、 etThe MetaI Horde" ( 193 のや«The Machine ” ( 1935 、ドン・ A ・スチュアー ト名義 ) のように、知性を持つ機械がたび たび重要な役を演じた。後者に登場する機 械は善意の存在だが、機械依存によって取 り返しのつかぬ人類の停滞が始まっている ことを知り、人類に別れをつげる。社会を ( 善意からであれ悪意からであれ ) 牛耳る 機械精神に対する反乱は、この種の S F 作 品の中では最も顕著なテーマであり、これ は依存による停滞の隠喩を通例ともなって いる ( 機械、ユートピア ) 。マイルズ・ J ・ブルーアーの etParadise and lron ” ( 193 の、フランシス・ G ・レイヤーの To 襯 0 " 03 So 襯 / 襯お CO 襯ぉ ( 1951 ) 、 フィリップ・ K ・ティックの ca が 5 〃 0 襯襯 ( 1960 ) 、アイラ・レヴィンの 『この完全なる時代』 T んなれ Day ( 197 のなどがその例である。 VI 対しては一貫して賛成の立場をとりつづけ ている。アジモフは、機械が統べる社会に かどうかについては、未回答のまま残され うな反乱が好ましい、あるいは必要である こではそのよ ( 1 5 ) がその作品だが、 Life and Times of MULTIVAC ” る。「マルチパックの生涯とその時代」 " The イザック・アジモフに依頼したことがあ ク・タイムズ派が、このテーマの解明をア てきた作家で、小説では初期の「災厄のと き」 CThe EvitabIe Conflict" ( 195 のに その証拠が見られる。マーク・クリフトン とフランク・ライリーの『ポシイの時代』 T ん ' んの・召に火なん ( 1957 ; 図 T ん お侃 , ac んツのもまた、 50 年代に書か れたコンビューター賛成派小説で、この時 代特有の議論と対立が横溢している。コン ヒ・ユーター反対派の作品で最もヒステリカ ルなものは、ビエール・ブールの諷刺的な ・イ ; : ↓、イいイツ要を 『月は無慈悲な夜の女王』 CThe Man Who Hated Machines ” ( 1957 ) である。 1960 年代に入ると、コンビューターは諷 刺的なユーモア作品の素材として馴染みの ものになった。ロ′く一ト・エスカービット の The Novel Co 襯第″ ( 1966 ) 、 マイ クル・フレインの T み 0 Tin イ ( 1965 ) などがその例だが、この時期にはコンヒ。ュ ーターの可能性はすでに無限に広がってい た。コンヒ。ューターこそ、地球における生 266

5. SFマガジン 1982年3月号

冬眠。これがもしかしたら永遠に続くかもしれない。船員たちはだ しい。わたしの家内だけだと思っていたんだが」 「よかったらきかせてもらえませんか」 んだん老化してゆく。あげくのはて目的の星が見つけられないで死 5 「どう説明していいやら」男はグラスを干した。「なにしろわたしんでゆくのだとしたら彼の人生はいったいなんだったんだろう ? なにしろ眠ってばかりいたのだ。目覚める日を夢見ながら死んでゆ 自身がいまだに信しられないんだ」 くなんて悲劇だ。 子孫に頼ることなく、人工冬眠もしないで、となると、船員の生 わたしは ( と男は話しはじめた ) 航空宇宙医学研究所で宇宙環境体代謝の失調をできるだけ防いで寿命を不死近くまで延ばすしかな の生体におよ・ほす影響を研究していた。正確にいうとそのチームの 一・員だ。わたしの専門は航空宇宙病理学。宇宙で起こり得る宇宙病 的に考えればこんな方法もある。たとえば、自分の心をコン に関する仕事だ。 ビュータに移植し、目的地を見つけたら人工子宮にセットしてあっ 妻も同じ研究所で働いていたが、彼女のチームはもっと遠大なテ た自己細胞をクローン培養して人間を造り、そこに心を逆移植す ーマと取り組んでいた。生体の恒星間移送をやろうというのだ。 る、とかね。しかし現代科学が心と肉体の関係を解明していない以 何百年、何千年、何万年という時間を費やして宇宙空間を渡る覚上、これは非現実的だ。人体をサイボーグ化するにしても、脳の寿 悟があるのなら、人間をそのような旅に送り出すことは現代技術で命で制限されてしまう。 も可能だ。問題があるとすればもつばら経済面だろう。目的が地球 もともと妻はエージングの研究をしていたから、生体と機械との 型惑星への植民だとすると、宇宙船そのものをコロニー化するのは キメラを造るという方法には興味を示さず、もつばら生体自身の寿 いろいろな意味で大きすぎる。船内で何世代もが生きるうちに目的命を延ばすことを考えていた。彼女はずっと以前から、人間といえ を見失うという危険もある。ではどうすべきか、それを妻は考えてどももとはといえば無重力に近い海中から進化した生物であり、陸 いたんだ。 の重力はかなりのストレスを引きおこすだろう、このストレスのお まず考えられるのが人工冬眠だ。これは実際にかなりカを入れて かげで加齢を抑制する因子が正常に機能していないのだという説に 研究されていた。が妻はこの方法に反対だった。眠っているなんて関心をもっていた。だから無重力環境で長期生活が可能な宇宙は彼 死んでいるも同然というわけだ。たしかに、人工冬眠からさめたら女にとっては魅力だった。水中では長期の実験はできない。水棲で 地球型の星が眼前にあって、航行中の出来事はコン。ヒータしか知ない人間にとって水そのものがストレスとなる。宇宙のほうが現実 らないというのでは、いかにももったいない。第一、それをプレイ的な実験場になったというのはおもしろい現象じゃないか。妻もそ ・ハックして大宇宙を研究する暇なんかないだろう、新世界で生きのう言ったよ。 びられるかどうかをまず調査しなくてはならない。だめならばまた「もしかしたら人間というのは、大いなる意志によって宇宙へ出て

6. SFマガジン 1982年3月号

月船 ( 人船 ) 。 / ズル か六角形になうている。 宇、にはかりしれないほど大きな足跡 を残したフォ冫 ; プラウン、彼はまた多くの 一般向け著作をものしているが、今回は初 期に発表された月険計画を紹介しよ。Ⅳ フ宇 発啓家 ・プラウ . 私の子供の頃ーーーあえて何年頃とは言わ / 。し 宇宙船のイラストレーションとい いくつもの球や えば決まりきったように、 円筒を無愛想な骨組に取り付け、多数のロ ケット・ノズルを底面に並べ、足を突っ張 った奇怪な代物が描かれていたものだ。そ れは美学的にも、技術的にも、飛行機から も、船からも、自動車からもまったく隔絶 しており、誰の目にも宇宙という未知の次 元に乗り出す機械として感じられた。 第 7 回 オン・プラウンの 月着僅計画 江巌 イ、ストレーション・図角 損山宏中精美

7. SFマガジン 1982年3月号

う異星社会の文化的背景とからみあってい る一一一つまり彼の作品では、メッセージ は、仮面、音楽、匂い、色、身ぶりなどに よって伝えられるのだ。こうした傾向に属 する作品群は、人類学の項に一括した。ス ゼット・ヘイドン・エルジンもまた、文化 人類学をコミュニケーションの問題とから めて捉える作家である。彼女は言語学の博 士号を持っている。ネイオミ ミッチスン も、この方面で優れた長篇を書いている。 ユ左襯砿研 4 S ゑ化 20 襯 4 れ ( 1 2 ) が それで、主人公の研究員に与えられた仕事 は、異星種族を理解し、できるならば意志 を疎通することである。生物学の教養が豊 かなためだろうか、ミッチスンの描く異星 人たちは、通常の SF よりもずっと生々し く、説得力がある。そしてこれが S F の中 では人気のあるテーマであることはもちろ んで、ジョゼフ・グリーンの CO 鉑れ化 ゆ地 ( 1972 ) のように、もっと 肩のこらないレベルで扱った作品も少なく ない。 異星からのメッセージの解読を好んで取 りあげる作家には、フレッド・ホイルがい る。最も興味深いのは『暗黒星雲』 The お lac ん C / 0 ″イ ( 1957 ) だが、ほかにジョ ン・エリオットと合作の『アンドメダの A 』 A / 0 だスれイ ro ”花イ 4 ( 1 2 ) がある。 後者は、電波望遠鏡がとらえた二進法コ ドの解読と、そこから得た情報をもとに創 造される擬似人間の物語。しかし、最も純 粋なコミュニケーション小説は、ジェイム ズ・ガンの『宇宙生命接近計画』囲 The んな” ( 1972 ) であろう。この作品は、 星からのメッセージを捉えようとする試み の、その背後にある動機に焦点をすえ、あ わせて人間相互のコミュ ニケーションに関 する多くの問題を提起する。電波望遠鏡オ ペレーターたちの努力は、最後には報いら 269 れる。 もっと身近なところに目を向けると、地 ニケーションの試 球にすむ動物とのコミュ みが、ポビュラーなテーマとなる。ロペー ル・メルルの『イルカの日』 Un 襯記 元な 0 れ ( 1967 ) 、ウィリアム・ジ ョン・ワトキンズの C ″ん ( 1973 ) がその例だが、いずれも科学者ジョン・カ ニングハム・リリーの名高い研究に負うと ころが大きい。リリーは T ん 6 石れ d 研 the Do ん切 : Ⅳ 0 れん 4 襯 4 れ I 〃 g 化 ( 1968 ) の著者である。イアン・ワトスン の T んビ面 4 ん″ ( 1975 ) では、クジラ たちのコミュニケーションにやや異なる方 法がとられている。実際のところワトスン の長篇はすべて、言葉による意志疎通の限 界を乗りこえる、さまざまな手段のドラマ 化として読むことができる。 べつに異星人を登場させなくとも、われ われの社会はコミ ニケーションの問題を たくさん抱えている。レオン・スト t—ヴァ ーの etWhat 、 Have Here is t00 much Communication ” ( 1971 ) の題名の意味 も、そのあたりにありそうだ。 D ・ G ・コ ンプトンの Sy ん ( 1 % 8 ) は、あり ふれたアイデアをきわめて効果的に使った 作品の一例であり、情緒的経験を記録し他 の人間に転写できる機械のもたらす影響 が、シリアスに丹念に書きこまれている。 そしてもちろん、人間の真のコヾ ションを助ける ( あるいは阻む ) 幻覚剤を 扱った作品が、枚挙のいとまもないほど、 主流小説にも SF にも見られることは言う をまたない。 S F コミ ニケーション小説の中で最も 興味深い種類は、種族間コ 、ユニケーショ ンにともなう不可解さと曖味さを強調した ものである。このテーマにそった中で、と りわけ謎めいた長篇が 3 つある。アルジス くドリスの「無頼の月」囲。 g M 。。れ ( 1 の、スタニスワフ・レムの『ソラリ III

8. SFマガジン 1982年3月号

ーターを扱う S F の中では、いまたに大き 物進化の最終成果であるとするアイデアを な影響力を持ちつづけている。操作不良を 提起したのは、オーロフ・ヨハネッソンの T ん Ta ん the お Co 〃 ( 1966 正攻法でとりあげたゴードン . ・ R ・ディク ß]The G C 。襯第″わであり、またコ スンの「コンビューターは問い返さない」 ンヒなーターが進化し、やがては神 ( ある eComputers Don't Argue" ( 1 5 ) か いは神に近いもの ) になるという発想は、 ールレアリ ら、 ハーラン・エリスンのシュ はじめフレドリック・フ・ラウンの「回答」 スティックな「おれにはロがない、それで もおれは叫ぶ」 Have NO Mouth, and I «Answer" ( 1954 ) に、つぎにはアイザッ ク・アジモフの「最後の質問」«The Last Must Scream ” ( 1 7 ) まで、こうした傾 Question" ( 19 ) に現われて、以後たび 向は広汎な小説タイフ。に見られる。フレデ たび使われるようになった。フランク・ トの D おれ〃 0 : 0 ( 1966 ) 、 ディーノ・ブツツアーティの『偉大なる 幻影』 G れ″″ 0 ( 1960 ) も、この カテゴリーに属する。コンビューターの新 しいイメージを提示した作品には、ほかに マーティン・ケイディンの『神の機械』 T ん God スイ ac ん切 e ( 1 8 ) 、 D ・ F ・ジ ョーンズの『コロサス』 COZ05 5 ( 1966 ) がある。より神秘的なアプローチをとった マン◆フラス のはアーサー・ C ・クラークで、その「九 十億の神の御名」 ctThe Nine Billion Names of G0d" ( 1953 ) では、神が人に 課した仕事をコンビューターが短時間のう ちに楽々とやりとげた結果、すべての終わ りがやってくる。 ーターの性格づけも近年多少は コンヒ。ュ 進歩してきたが、ディヴィッド・ジェロル ドの一移ん 6 れ丑 4 の 07 ( 1972 ) に ・ / 、インラ 登場するハ リーや、ロハート インの『月は無慈悲な夜の女王』 The 加 0 れな 4 4 ん石立 ( 1966 ) のマ イクなどを見るかぎり、相変わらず擬人化 の志向は強い。ロバー ト・シノレヴァーノ、一 グの、℃ oing Down Smooth ” ( 1 % 8 ) や、 R ・ A ・ラフアティのみ r ve 刃な切住 ( 1 1 ) に見るように、より 説得力のあるマシンは自伝的物をる ロロロロ 0 われわれはコンビューターに乗っ取られ この恐怖は、コンビュ るのではないか 265 ビュラ賞受賞作品 人亡を如に、アゞリ療は物かにサ イボープ・をすいた・・・・ S F の 大立孝淲・・・・ルがをして放っ会心作 ! 『マン・フ・ラス』 リック・ポールの『マン・プラス』」一 4 〃 刊 ( 1976 ) に描かれるコンビューターの 乗っ取りは両義的であり、必ずしも悪いも のではなく、それは ( おそらく ) 秘密裡に 進行するものである。ジョン・フ・ラナーの The S ん 0 じ / r ( 1975 ) と D ・ G ・ コンプトンの T ん Steel C co 市 ( 1970 圜 The E c た C co 市ん英 ) はともに 政治的テクノクラートの善意によって、コ ンピューターが高圧的に使われる近未来社 VII

9. SFマガジン 1982年3月号

矢野紙の上に書かれたものを読むのが好 るんだが : : : 去年は十回を越えたな。わた きなんですね。本当の作家はそうであるべ しの日常はこんな具合だ。 、 ) きですよ。 矢野あなたは鉛筆と紙は使わないのです , ポールわたしには、それが本当の書き方 のように思えるね。・フラウン管や磁気テー ポール旅行中は使うよ。というのも、飛 。フでなく紙の上に文字を書いていくことが 行機のスチュワーデスともめるようになっ たからた。わたしのタイプの音が他の客の わたしたちにブラウン管を使わせようと 迷惑になるというんだ。わたしのサインを いうのが神の御意志なら、神はタイ。フライ 見ればわかるだろうが、わたしの手書きは ターを授けたりはしなかったよ。 ひどいものだよ。だが、タイ。フならきれい 矢野本気ですかー なもんた。 ポールしし 、や。実のところ、文鮮明牧師 冫「い合わせてみたらどうで 矢野ソニ 1 ー とわたしと意見の異なる点のひとつはそこ すか。文字を打つのでなく、すべてを記億イターみたいなものですか ? ポールいや、コンビュ 1 タそのものさ。 なんだ。わたしは、かれを含め、宗教的指 しておくというタイ。フライタ . ーを造ってい て : わたしはのセレクトリックスを持っ導者にはあまり関心がない。 矢野日本の神道を信じたらどうですか ? ているが、それはたたのタイ。フライター ポール わたしは自分の目で見られなくて とても単純で、どんなことでも信じていし はだめなんだ。その機械は見たことがあさ。ジャックの持っているものにはディス んです。ただし、八百万の神様がいますけ る。とても興味深いし、一年前だったら慣ゾレイ・スクリーンやフロツ。ヒイ・ディス どね。ネコの神様、イヌの神様、イワシの れることができたろうな。だが、わたしは クのメモリイやその他すべてがそろってい 自分がなんと書いたか、この目で見られな る。わたしの知っている作家で他にも数人神様 : : : とても楽な宗教でしよう ? ポール よさそうだね。きみはわたしを改 くては駄目なんだよ。ワード・プロセッサ が持っているが、わたしは使い方を憶えた いとは思わないな。・フラウン管を見ていた宗させちまったよ。どこに署名すればいし ーを使う決心がっかない理由はそれなん んた ? だ。タイプしながら・フラウン管を見あげてくはないよ。紙を見ていたいよ。 。フ 矢野あなたはアイディアを紙の上に記し いたいなんて思えないんだよ。ワード・ ロセッサーを使ってみようとしたことはあていくタイ・フなんですね。 にはあらゆる型式と大きさが ポール それも理由のひとつだ。もうひと る。ジャック・ウィリアムスンが持ってい あるがあっかうべき唯一の るんで、ちょっといじってみたよ。 つの理由は、わたしがそれを望まないとい 事項は変化だよ うだけのことさ。 矢野式のコンビュータ・タイ。フラ 4 8

10. SFマガジン 1982年3月号

る。ファウスト神話のあらゆる著名な文学 作品への言及を、陰に陽にちりばめた長篇 「キャンプ収容」 Ca 襯ゑ Co れ化 0 れ ( 1968 ) で、トマス・ M ・ディッシュが主 人公に付与するとびぬけて高い知能も、 のたぐいである。アルジス・パドリスの卓 抜な長篇「無頼の月」扨。 g Moon ( 1 % 0 ) では、認識の変革 ( 月面にある迷 宮めいた人工物を理解しようとする試み ) は死と背中あわせのもので、これもまた、 超絶は死につながるというファウスト・テ ーマを想起させる。同様な死は、フレッド ・ホイルの『暗黒星雲』 T ん召 / ac ん C ん″ ( 1957 ) にも見られる。 ときには認識の変革は両義的である。 のジョーク版ともいえるものは、ログ・フ ィリッフ。スの「黄色い錠剤」 etThe Yellow Pill ” ( 1958 ) で、ひとりの人物は自分が部 屋の中にいると信じ、もうひとりは宇宙船 の中にいると信じて、それぞれ相手方の現 実に入りたい誘惑にかられる。そして、び とりはドアと信じるものを通りぬけ、命を 落とす。この種のパラドックスを好んで使 うのはフィリップ・ K ・ディックで、「に せ者」«lmpostor ” ( 1953 ) では、機械と 見なされ不当な迫害を受けていると信じる 男が、そのとおり、腹の中に爆弾を抱えた ロポットであったことを知る。『宇宙の 眼』 Eye 切ど Sky ( 1957 ) 、『ュービッ ク』 U 房ん ( 1969 ) 、『死の迷宮』 A Ma 研 Deat ん ( 1970 ) 、『火星のタイム , スリ ッフ・』ユ 4 れ T / 襯←ツ ( 1 % 4 ) といっ た長篇にも、この傾向は見られる。 穏やかならぬ主観的な形でなされる認識 の変革は、 J ・ G ・バラードの短篇にこと に多い。ー「マンホール 69 」 "«Manh01e 69 ” ( 195 の、「大建設」 "Build-Up ” ( 1957 ; «The Concentration City ” ) 、「アル フア・ケンタウリへの 13 人」«Thirteen t0 Centaurus ” ( 1 2 ) などがそのたぐいで、 23 「溺れた巨人」 etThe Drowned Giant" ( 1 4 ; 図«Souvenir") もこれに含めて よいだろう。スタニスワフ・レムの『ソラ リスの陽のもとに』 SO r な ( 1961 ポーラ ンド ; 英訳 197 のは、惑星ソラリスの生 きている海の謎を解くため、擬人的な世界 から脱しようとする宇宙ステーション乗員 たちの数々の試みー一一それだけから成って いる小説である。認識の変革もので近年現 われた最もめざましい小説のひとつであ り、作者クリストファー・フ。リーストが、 オールディスの 0 ル & へのオマージュ としてその一部を書いたという記 World ( 1974 ) は、人びとの大変な労力に よってレールの上を絶えず動きつづける都 市の物語である。その住民が見る世界は双 曲面であり、絶えず移動する最適線の南北 方向では、時空の歪みはしだいにひどくな ってゆく。やがて明らかになる真相らしい ものは、それとはまた非常に異なるもので こうした作品ではしばしばそうだ ある。 が、変革は外界ばかりでなく精神にも起こ る。この作品でとられているのは哲学者 , く ークリー風の視点であり、世界はわれわれ が見るかぎりのものである。客観的真実が 変われば、知覚も変わる。純粋に科学的な 真実というものは存在しないのである。 SF の中で認識の変苹ものがとる形はさ まざまであり、並べたてていけばキリがな い。ディヴィッド・リンゼイの『アルクト ゥールスへの方役』 A 0 ツ ge tO みな翔 s ( 1920 ) は、構成からいえばアイロニック な変革の連続であり、新しい真実はつぎっ ぎと妥当性を失って、最後にはそっとする ような、やや虚無的な究極の真実が明かさ れる。 C ・ S ・ルイスの『金星への旅』 れれ d ( 1944 ; 図 age ね V ' ) では、主人公がおのれの知覚を金星の異質 の風物に適応させるにつれ、はっとするよ うな美の世界がいくたびかひらける。ウィ XI