思う - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1982年4月号
206件見つかりました。

1. SFマガジン 1982年4月号

下、 戦術空軍・戦術戦闘航空軍団・特殊戦のジェイムズ・・フッ カー少佐は、空軍中でも最もニヒルな部隊と言われる・フーメ ラン戦隊の一員だったが、その所属と凄味のある顔つきとは 反対に、いたって穏健な心のもち主だった。 除雪作業にぶつぶつ文句を言う・フーメラン戦士たちを作業 から解放し、暖かい地下へもどった少佐は、曇ったサングラ スを外し、ロッカールームへ行き、作業中についた雪が融け てずぶ濡れになった防寒靴と服を脱いだ。足が冷たくてかな わない。そして、天田少尉の苦労を思った。 彼は毎日毎日、くる日もくる日も、この冷たさを味わって いるんだ。勲章をもらってもおかしくはない。少佐は思う。 しかし、それでもマース勲章となると、話は別だ。適切な章 じゃない。あれでは天田少尉の苦労を認めた上での授章とは いえない。 ロッカールームで足をタオルでふき、身じたくをととのえ て、少佐は戦隊区の自分のオフィスにもどった。 雪風の帰投まであと二時間ある。少佐の親友の深井零中尉 はそのあいだ、ジャムと戦う。地上からはなにもしてやれな い。ただ、生きて帰ってこい、かならず帰ってこいよ、と祈 るだけだ。少佐は深井中尉のいつもかわらぬ冷静沈着、裏が えせば何事に対しても無感動な表情を思い浮べた。 ート・コーヒ ー・メーカーからカツ。フこ ブッカー少佐はオ 熱いやつを注ぎ、すすり、カップを包んで手を暖める。 あの零に、勲章のことを言ったら彼はなんてこたえるだろ 〕う。説くまでもない。おれには関係ない、そう言うに決まっ 3 ている。仮に授章が決定し、どうしても受章しなくてはなら

2. SFマガジン 1982年4月号

王は子供を : あれは 見えないんだ ーノ 川盟Ⅷい間要 ド・』賊鼬腿川鼬變瞿 そ , っ思わないカ , 声も 出せない 何も 聞いては 考えてもいない 、・ ' 動こ , っともしないー・ 不幸な子だ ・ : 彼を殺しては いけません : わたしの 顔を見ろ ! 腕を ! 老いが手先で ふれてゆく いすれ必す 死は訪う あいつは 不死身だ なせだ : ・ 殺されてるのは わたしのほうたリ 4

3. SFマガジン 1982年4月号

に一歩先んじられてもいいというのか 2 ハリスンもしかしたら、向こうさんもそう考えてるかもしれない ボウマン君がなんでびくつくのか、わけがわからないよ、ハリ 。それにリチャ 1 ズもだ。ロシャ人がこっちの鼻をあかすたな んて。連中が、ちょうどこの瞬間、水素原子の周波数でしかも我 我と同じ琴座の方向に向けて、観測してる可能性なんて、現実に はゼロに決まってるじゃないか。・ハカ・ハ力しい。ししか、つい昨 夜までは、空つぼの雑音しか入ってなかったんだそ。こっちが一 歩先んじてることははっきりしてる。あとは、たつぶり時間をか けて、こいつをいっ発表するか、決めればいいんだ。 リチャーズしかし、どうして待たなきゃならん ? なあボウマ ン、我々が今世紀最大、いや人類の歴史始まって以来最大の発見 を、このちつ。ほけな手の中に握ってるってことがわからないの か。こんな発見を、我々が : : : その : : : 身勝手のために、自分た ちだけのものにしたりすれば、歴史に対してフェアじゃない。不 誠実だよ。 ディクスンああ皆さん、そろそろ私も議論に加えてもらっていし と思うんですがね。とにかく、そのためにここにいるわけですか らな。かりにこの : ・・ : 発見 : ・・ : が、本当にあなたの言う通りに重 大なものとすればですね、リチャーズ教授、これは、戦略的にも 同じたけの重要性を持っているわけです・ : できる情報を : : : その : : : 敵方と分かちあうなんてばかなことに なるわけです。 ハリスン何を言いたいんだね ? ディクスンっまり、この場合、抽象的な倫理の原則はもはや通用リチャーズ敵 ? 情報 ? しかし、ロシャ人が、いや他のだれだ って同じことだが、このメッセージから、何ができるというん しないということです。問題は、国家の現実的な利害でしてね。 だ。どうやって我々に害を及・ほせるんだ ? 琴座からの信号は、 この発見をもらしてしまえば、我々が有意義な目的のために利用 ゾラン・ジフコヴィッチ Zoran Zivkovié 一九四八年、ベオグラードで生れる。ベオグラード大学哲学科で世界 文学を修め、ここで英米と出合った。現在はザグレ・フで出ている隔 月刊誌「シリウス」の編集スタッフとして活躍している。七〇年代後半 からユーゴスラビア界が隆盛期を迎えるとともに、編集者ガヴリー ・ミクリーチチらととも ロ・ヴチコヴィッチ、作家で編集者のダミール に評論、翻訳、編集の分野で頭角を現し、ユ 1 ゴスラビア界のリー ダーとなった。ことに七六年に創刊された年刊アンソロジー『アンドロ メダ』では名編集長ヴチコ・ヴィッチの右腕となり、選択目の高さを買わ れて英米の作品選定を一任され、その能力を遺憾なく発揮した。 目下北米の各地の大学で教鞭をとっているユーゴの研究家ダルコ ・スーヴィンの著作「詩学としての』にたいする批評『ューゴスス ラビアにおける研究』や、高級な文化理論叢書『二〇世紀文庫』に 入った』に収録されている『とは何か』など水準の高い論文 が多い。他にクラークの「 2001 年宇宙の旅』はじめ多くの翻訳があ る。ここに紹介した作品はラジオ・テレビのためのシナリオ。 ( 深見弾 ) 8 0 6

4. SFマガジン 1982年4月号

る。三十年だ ' せ、三十年。おれ、野心なんてないんだよな、ガーフ ゃあ、家にもどれのなんのってどなり散らさないでくれたらなあ。 ティ。昔みたいにゴスター郡でさ、ち「ちゃな獲物を射「たり釣 0 ま「たく、冗談じゃないぜ、ガーフテ→、あんな家、おれもう金輪 たりしてさ、たまに現金が入り用にな「たときだけ罐詰工場で働い際住めやしないからな。あいつ、年と「たら急にきれい好きにな 0 たりしてりや、それでしあわせなんだ。あくせくなんかしなくた 0 ちま 0 てよ、なんか床に落としてでもみろ、もうサイレンみたいな てよ、ちきしよう、社会保険で暮らせるじゃねえか。なのに、あの声でわめきやがる。それによ、あいつ、魔女なんだ」 女のおかげでこれ 0 ぼ 0 ちも気の安まるときがねえ。これ「ぼ 0 ち「ああ」ガーフトは言 0 た。「女はみんなそうさ」 もだぜ。で、年金がついたとき、言 0 てや「たのさ。おれにはやす「ちがう。ほんものの魔女なんだよ。まじないだの呪文だの「て知 らぎ 0 てものが必要なんだ、ラーリーン。月々百ドルはおれがもら 0 てやがる。あいつはポイ = ' ク家の出でよ、あの一族の女はみん うよ。残りはおまえが使ってくれ、ってな。で、ここへやってく な魔女なんだ。代々ずっと、昔むかしからな」 る。ここは平和た。あいつがおれを救済とやらにお出ましくださる「そんなばかな話、信じてるのか、ビリイ」 とき以外はよ」 「全部が全部信じてるわけじゃないが、確かにそう思われる節はあ 「かみさんなんかほ「とけよ、ビリイ」ガーフトは言「た。「もうるんだ。あいつがいぼだのこぶだの取「てや「たのも見たし、牛の 一杯いこうぜ」 乳を干あがらせちまったのも見たし。まだ谷にいたころの話だけど 「ああ、 しいとも、ガーフティ」とビリイ。「席と「といてくれなさ。ポイ = ック一族 0 てのはなにしろかれこれ二百年てもの、自分 いか。も 0 てくるから」おかわりのグラスを持 0 て、彼は・ ( ーの方たちのお山に自分たち「きりでこも 0 て、おたがいどうし結婚した 〈立 0 た。ビリイはけ 0 してアル中ではなか「た。どや街に住みつり密造酒をつく 0 たりしてきたんだからな。いろんなことを知 0 て いているのは、ただここが気に入「ているからなのだ。この三十年いるんだ。た「たいまだ 0 て、ほら、おれにまじないをかけてやが というもの、ほんの一瞬たりと彼が自分の人生を憎まなかったことる。家にひきずりもどそうとしてな」 はない。品位なんてものは嫌いだったし、世間体をつくろうなんて 「うそっこけ、ビリイ」ガーフトが言った。 へどが出た。社会的責任なんざくそくらえ。ここ、、 ( スタブル通りに 「ほんとだって。おれが帰る気を起こさねえとこをみると、たいし やそんなものはありやしない。月々の百ドルで部屋も借りられる たまじないじゃない。しかし、ひつばる力は感じる・せ。そうら、お し、食費や酒手ぐらい、その都度臨時の仕事でもやればなんとかな出ましだ」 る。飲まずにいられなくて飲む酒ではなかった。うちとけた気分に ごみだらけの水面をかきわけかきわけ進むずんぐりむつくりのタ なりたくて飲んでいるのだ。彼はしあわせだ「た。いや、とにかグボートさながら、ラーリーンがこちらにむか「てや 0 て来るとこ く、みちたりてだけはいた。 ろだった。その航跡みたいに、おしのけられた酔客どもが次々ぶつ 「あの女さえなあ」と彼はこぼす。「六カ月ごとに押しかけてきちぶ 0 不平をぐちりたてるのもどこ吹く風だ。はあはあ言「て、彼女

5. SFマガジン 1982年4月号

歩。はーし ストツ。フそのまま両腕・を伸ばして、ゆっくり前かが「あ、そうか。じゃあ、体の動きがよく見えるように、 こうして机 みになるの : : : 」 の上に置いてと : : : 」 「うひょっ」 みのりから次元カッターを受け取った体は、光東を出したりひっ 自分の指先が自分の頭に触れ、サトルは妙な声を出した。二、 こめたりして遊びながら歓声をあげた。もっとも、実際に喋ったの 回、手さぐりした後で、しつかりとっかみ、持ちあげる。 は、机の上に鎮座した首の方だが。 「何か変な気分です」 ーい、おもしろいなあ。凄いじゃあないですか、みのりさん。 自分の首を、みぞおちのあたりで両手で支えたまま、サトルが言 天才ですよ ! 」 っこ 0 「ほんとにそう思う ? 」 「早くそれを元の所に戻せ ! 」 みのりは、ばっと顔を輝かせた。 山下がわめいた。 「もちろんですとも。こりゃあ素晴らしい発明だ。 「見てるだけで気持ちが悪くなってくる。自分が、どれくらい不気例えば、旅行する時なんか、頭を四つ割りにして、左目と右目に 味な格好をしているのか、自覚しとらんのか ! 」 別行動させるとか、あるいは、フランスに行く友人に、ロだけを連 「そんなに不気味ですかあ ? 」 れて行ってもらえば、日本に居ながら、、本物のフォアグラだって味 そう言いながらサトルは ) 自分の首を山下の方へつき出した。 わえる ! もちろん、。味覚だけじゃなくて、別の物を持って行って ぎやっと叫んで、山下は気を失った。 もらえば、これも本場のコールガレを 、あわわわ。いや、こ 「あっ、先輩。あっ、痙攣してる。気の毒なことしちゃったなあ。れはこっちの話ですけどね。ふーむ、しかし、すごいなあ ! 」 おどかすつもりはなかったんだけど : サトルは何度も感嘆の声をあげた。 もしもこれが大量生産さ しかし、おもしろいなあ。一体これはどういう仕掛けになってるれて、世の中に出まわったら、おもしろいことになるそ。サトルは んです ? 」 考えた。 「たから言らたでしよ。次元カッタ 1 なの。三次元的には切断され誰も体ひとまとめじや行動しなくなる。会議のある日は、、首だけ たように見えるけど、四次元的な連接はそのままだから、こうやつで会社へ来て、体はゴルフとか。いや、首だけじや動けないな。上 て血も出ないし神経も通じてるってわけ」 半身、それも片腕でいいや、袈裟がけに・ハッサリ切って : : : 。首す みのりは、紫色の光東を再び、ずみよっと伸ばしてみせた。 じのとこから斜めに切断された断面から、まっ赤な内臓をのそかせ 「おもしろいなあ。ちょっと・ほくにも見せて下さい」 た首の群れが、それぞれの片腕で、地下鉄の吊り革にすずなりにぶ 「その前に、その首をどうにかしなきや。両手がふさがってるじゃら下がってる風景ってのは、異様だろうなあ。あまり見たくないな ない」 あ。 サト サトル

6. SFマガジン 1982年4月号

て、ほんとに効き目があると思ってやったわけしゃない。何かせず類をしてこの世に立ちむかっていこうという気にさせる資質にどこ にはいられなかったんだよ」 か欠けていたのだ。この人びとは自分から身を引いたのだ。もはや 7 「それにしても、こんな野郎にかける呪文なんてどこでめつけてき努力をしない道をえらび、その選択をすることによって、人間とし たんだよ。きかなくってあたりまえさ。 いったい何の呪文だったんての最も基本的な本性を自らふみにじっていたのである。数えきれ ぬほど何代も昔から、われわれの祖先たちは、生態学の鉄の必然に ラーリーンは困った顔になった。 よって容赦なくたたきあげられてきた。立ちむかいそこなうという 「さあてね」と彼女。「ほんとははつかねずみ用の呪文なんだ。い ことは死だ、ということ。たとえ、わたしたちの頭は知らずとも、 や、ラットかな。へ・ヒかな。たぶんマーモットぐらいの大きさのやわたしたちの遺伝子はそれを知っている。ドイルの店にたむろする つだと思う。穴に住んでるやつでさ。あたしにやそれしかわかんな人びとは、心の底の底では自らをさげすみきっていた。そうして、 そんな卑下のために彼らはほんとうに卑しむべき者になりはててい たのだ。 ロビンソンは大わらいした。 「そうとも。ばあさんにやはつかねずみぐらいがお手ごろさ。もっ それゆえ、ガーフトの行為もとうてい勇敢なものとは言えなかっ とも、さっきのじゃ、はつかねずみにだって効きはしなかったろう こ。窮鼠猫をかむ勇気ですらありはしない。むしろ、厚かましくも ぜ。名前がみんなまちがってら」それからまたこわい顔つきにもど彼の自己評価を額面どおりに受け取っているこの生き物に対する、 ると、ガーフトの方に向きなおって、「よし、そこののろま」と彼つのる悪意と憎悪とをおさえそこなったにすぎないというのが真相 は言った。「もう時間の無駄はたくさんだ。さあ、くそったれな願だった。おさえがたい憤怒につきあげられて、ほんのつかのま、誰 いごとを早くしろい」 かを、何かを、ぶちのめしてやらずにいられない気持が彼自身の無 彼のその言い方の無礼千万なことといったら、そのセリフの内容力さを圧倒したのだ。しかし、何と言おうと、とにかく彼はこのと そのものの比ではなかった。ロビンソンは弱い者いじめのごろっきき現に、紛う方なく強大な、いと厭わしき闇の手先に立ちむかい、 で、しかもかなりまぬけなごろっきにはちがいないのだが、この場これをうち負かしてのけたのであって、それだけでもじゅうぶん賞 の三人に対して大きな力をもっていることは、まぎれもない事実で賛と感謝には値する。 あ 0 たし、おどしの言葉の裏には、つめたい、人を食 0 たごうまん椅子をうしろにおしやり、立ちあがり、このダビデらしからぬダ さがひそんでいた。聖人ででもなければ、とても平気な顔などでき ビデは、重ね着のぼろセーターの下で冷や汗たらたら、半分は恐怖 なかっただろう。ドイルの店に聖人はいない。 に、半分は怒りにふるえながら、この相手を完膚なきまでにやりこ いや、ずばり言って、聖人どころか、まともな人間さえもいなかめてやれる言葉はないかと、とぼしい語彙を必死でさぐっていた。 った。たぶんビリイは別として、ドイルの店の常連たちはみな、人そんな言葉はとても見つからない。やさしく祈りの言葉でもとなえ

7. SFマガジン 1982年4月号

フィリツ。フ・ホセ・ファーマーの「リ・ハーワー ら出していることから明らかだろう。特にヒ ・アメリカでドラマシリーズがスタルド」シリーズ第一作『果てしなき河よ我を = ーゴー賞受賞作家でもある 0 ングイヤーを 誘え』がでミニ・シリーズになって放育てたことは特筆に値する。 有名作家の短篇を原作にしたテレ映される予定。脚本はすでに完成している。 なお、シザースの後任は、元・ハンタム・・フ ビドラマのシリーズがアメリカで新たにスタ またこのシリーズの「外伝」ものの二冊もックスの編集者キャスリン・モロニーに決定 ートするもようである。これは、アメリカの ( まだ出版されていないが ) 化の予定。し、編集陣も一新される。しかし、編集方針 / / / 公共放送網であるで放映されるもの に大きな変化はないとのことである。 ・ジョージ・シザース、アシモフマガジンを で、制作はロサンゼルスのとニュー 一方シザースは、今後自分の出版社である 去る ヨークのが行ない、一時間もののド オウルスウィック・・フレスと、剣と魔法物の ラマを向こう三年間に十三本制作放映する予創刊当時からアイザック・アシモフズファンジンに力を注ぐそうである。 マガジンの編集長だったジョージ・・シザ 定である。はじめの四本は、八二年から八三 ・「サイエンス・フィクション・アンド・フ ースが、このほど辞任した。″円満退社だ 年にかけて「アメリカン・。フレイハウス」と アンタジイ・ブックレビュー」誌創刊 ったそうだが、そのウラにはいろいろな理由 呼ばれる時間帯に放映され、そのうち二本は があるようだ。 アメリカの研究協会 (The Science / だアーシ = ラ・・ル・グ→ンの短篇「帝国よ りも大きくゆるやかに」と、アルジス・・ハド まず一つには、アシモフズ・マガジンの部 Fiction Research Association) はこのほ リスの「無頼の月」を原作にすることが決定数が、定期購読と店頭売りの両方において最どその活動の一端として、書評誌「サイ しており、すでに原作者の手になる脚本の初近落ちこんできていることがある。八一年十エンス・フィクション・アンド・ファンタジ 稿は完成している。 月にはそれまでの平均部数十万部から八万部イ・ブックレビュー」を創刊することになっ へと落ちてしまっているのである。 他にはハインライン、クラーク、ヴァーリ た。同誌は七九年から八〇年にかけて、ポー イ、ゼラズニイといったところが候補にあげ また、会社側とシザースの対立があった。 ゴ・プレスという小出版社から発行されてい 会社側はシザースに対してニ = ーヨークに出た書評誌の後を引き継ぐという形をとり、編 このシリーズは、以前放映されたル・グイてきてフルタイムの編集者として仕事するこ集は前身の書評誌と同じくニール ンの「天のろくろ」の成功と、セイガンのテとを希望していたが、シザースは自宅のある ( 『驚異の探究』、ミ、。き of ミ。、 ~ 斗、・と フィラデルフィアにとどまってあくまでもコ レビ・シリーズ「コスモス」に刺激されて、 いう解説書の編者として有名 ) が行な / / その二作に関与した人も加わって作が開始ンサルタント的な立場として働くことを主張う。 された。いずれも高水準の出来であったし、 した。それにさし絵や表紙絵の決定権を会社また同誌は年に十回発行され、一年でおよ 制作者も「今度のシリーズでファンをび側に奪われたことも不満だったようだ。 そ四百冊のを書評して、アメリカで出版 つくりさせて喜ばせたい」と言って自信のほ こうしたことが重なって今回の辞任に至っされる書き下ろし小説のほ・ほすべてをカ どを見せているので期待が持てそうだ。 たと思われるが、これまでにシザースの果たヴァ 1 する予定だという。 また日本での放映の見込みだが、繝作者側した役割は大きいと言わねばならない。それなお、購読の問い合わせ先は次の通り。 は、過去シザースがアシモフズ・マガジンの SFRA. ミ 0 Elizabeth A. CogelI, が日本やヨーロッパでの放映権収入をあてに しているようなので、実現する可能性は大き編集長として二度ヒ = ーゴー賞を受け、・ハリ Dept, of Humanities. University of いと思われる。 ー・ロングイヤーやンムトウ・スチャリクル Missouri, Rolla MO 6540L U. S. A. 3 5 ここでテレビ関係のニュースをもう一つ。 といったキャンベル新人賞受賞作家を同誌か ( 島田武 ) 2

8. SFマガジン 1982年4月号

たそうですけどね、選評を読むと、どうも 作品を読んでくれてないんじゃないかな あ、と思える人もいて、コノヤローと思っ たりして ( 笑 ) 、平均したら落っこっちゃ って。百四十枚くらいの作品でした」 それから「夏の旅人ーまでは書いてい なかったんですか ? 「同人誌の X ″がなんとなく続いて いたんです。それで、なんか頑張ろうと思 ってたら、潰れちゃってね、″宝石が。 それで結局、東宝に入っちゃったんです、 三十九年に。・ほくはだいたい映画とミステ リというのが好きだったんです。だから高 校も大学も、演劇クラ・フやってミステリク ラブやって、みたいなところがあって、両 方振子みたいに振れてて、で東宝に入った であるとか、怪奇がかった不可能趣味みたでした″と葉書をいたたけたわけ。実に喜んで映画に変わってきて、今度はミステリ に振れだした、ということだと思うんです んたりしたんだけれどね。あとでなんかの いなのが好きだったですね」 雑誌の記事で知ったんだけど、星さんはけど」 で、書き上げて旧″宝石″に載った作 会社へ入ってから、同人誌の方が休刊 ″たいたい褒めることにしている。その方 品の内容は ? になってしまって : が新人のためになる″ということで : 「『キチキチ』は完全にです、当時の。 「そうですねえ、映画やってましたね。 ( 笑 ) 『白い翼の郷』、これは本格です。 で、この頃、星新一さんに同人誌を送ると マガジン〃の〈三大コンテスト〉ま 思いがけなくも丁寧に″素晴しいナントカ審査員では佐野洋さんが一番におしてくれ SF NEW GENERATION くに

9. SFマガジン 1982年4月号

は腰をおろした。 た。「ちょっとひと息入れようじゃないか、な」三人は黙ったま 「なんてこったろ」彼女は言った。「見るたびにこきたなくなってま、ふしぎと心のかよいあう気分になって酒を飲みはじめた。 くね、この通りは。ビリイ、ビ 1 ルをおくれ」 酔客たちのあいだにちょっとしたどよめきをまきおこしながらロ 「こいつはおれの友だちで、ガーフトってんだ」ビリイが言った。 ビンソンが入ってきたのは、そのときである。どう見ても彼が、人 「そう。あたしやビールがいただきたいんたけどね、ビリイ」 間の姿や服装をまねるにあたって適切なお手本を選んだとは言い難 ビリイはスーの方へ立って行った。ガーフトにむかってラーリ】 かった。悪魔がどこかしらその知性や趣味に欠陥をもっことはよく ンが一一 = ロう。 知られているし、彼が二十世紀の地球の事情にひどくうといこと 「加勢してくれとでも泣きっかれて来たんだろ、え ? 」 は、まぎれもない事実だった。したがって、彼の失敗はまあわかっ ガーフトは議論だけはごめんだった。神経は凪ぎ静まりやすらかてやれないことはなかった。もっとも、人間どもの胸中に不信と猜 なしあわせ気分につつまれて、いまや彼は、酒びたりの一日のうち疑の念をかきたてるべく故意に計算しつくした結果がこれだという でも最高に甘美なひとときにひたっているのだ。邪魔さえ入らなけのなら、これほどの大成功もちょっとありえはしなかったろうが。 れば、数時間はこのままでいられる。それが、ひとたびいさかいだ彼はたいした小粋なめかしこみようだった。肩はあて物入り、ウェ の喧嘩たのにみちたりた忘我の境地を破られようものならたちまストはぎゅっとしめつけ、びっちりの・ヘストにノー・タイで、靴は ち、がらりと状況はちがってしまう。神経はけば立ち、いら立ってつま先が角ばり、かかとは高い。指には大粒の宝石をぎらっかせ、 きて、いっ騒々しくも無力な激怒に一変しないともかぎらない。そ手首には鎖をじゃらっかせ、けれども衣装のそんなけばけばしい粋 して、あとには深い抑鬱感がやって来る。つぶれるまで飲まなけれ好みも、ご本人の身だしなみとはてんでちぐはぐなのだった。パン ば忘れることのできない深い落ちこみが。こうした最終段階はけっチョ・ビラ風のロ髭と、ス。フレーでふつくらと固めたへャースタイ していいものではなかったし、彼は、そんな状態の到来をできるだ ルであるべきこの時代に、びげは上くちびるの上に細く一文字、髪 け先へのばしたいと思っていた。何が嫌だといって、議論だけはご はてかてかまっ黒にグリースでなでつけたときている。身のこなし めんだった。 は一種うさん臭げな快活さにみち、スポーツマンが汗のにおいを発 「いいや、ラーリーンさんーと彼は言った。「おれあ、あんたの味散させるように、欺瞞のにおいをぶんぶんさせていた。 方よ。あんたの言うとおりさ。ビリイにや、こんなとこは似合わな こういうタイ。フの人物は・ハスタ・フル通りではまんざらお目にかか い」ほんの二、三分前ビリイにむかって、何がなんでも連れ帰ろうれなくもなかったから、酔客たちは怖れとさげすみの入り混じった なんてそりやラーリーンが無茶だ、などと言っていたのがこれだ。 目で彼を見つめた。彼の目ざしているのがビリイのテー・フルで、自 ビールをもって、ビリイがもどって来た。 分たちには用のないことがわかると、あたりからいっせいにかすか 9 「ます一杯ゃんなよ、ラーリ】ン。話はそれからだ」と彼は言っな安堵のため息がもれた。みんなの視線はまた自分のグラスにもど

10. SFマガジン 1982年4月号

・・シラスの『アトムの子ら』であった。 造旨が深い作家にはごく必然的なもののよう せよ、ウエルズのタイム・テーマと同じく、 その理由を考えてみると、当時翻訳で読ん ごくごく日常的に共有し、使用していくべきに思われるのだ。特に「リヴィング・インサ イド・ユア・ラブ」 ( その設定はディックでいたのは、ほとんどが男性作家によるもの 言語にすぎないのである。 トーリイの面白さで読んではいるもの 『火星のメイム・スリップ』を想わせる ) ので、ス つぎに・ : 日本人作家には稀有な、キリ スト教的歴史観に立脚した未来史志向もみのように構成に凝り、ヴァリエーション豊かなの、長篇小説になると、味気ないものがけっ こうあった。そんな折に女性作家のものを読 作品など、本質的にワイド・スクリーン・ がしてはなるまい。概しての未来史に は、キリスト教的ではあっても、単に進化論ロックとして長篇化されるべきものなのではむと、細やかな心理描写があり、心なごむも レ におきかえてやみくもに上帝を信奉するもあるまいか。この手法を充分生かしきった時のを感じたのだ。その中で、一番印象深かっ のがままあったが、彼女の場合、進化論をふにこそ、彼女の「を使う」は、八〇たのが『アトムの子ら』であったわけだ。 ところが、そうした″みずみずしい情感〃 まえつつ常に聖書との弁証法的統合により一年代の一型式として確実に根をおろすこ 貫して「治療」のテーマを追求している点とだろう。「『一人で歩いていった猫』 / 著と賞賛されるものが、逆目に出ることがあ で、的救済史とでも言うべき方向が認め者Ⅱ大原まり子 / 二五五頁 / \ 三二〇 / 文庫る。一方的に心理描写がグチャグチャと続 き、その分、感情移入などできず、しかも自 られる。例えば「猫」「アムビヴァレンスの判 / 早川書房 ) 然描写などがないため、さつばりどこでなに 秋」にはさまよえるユダヤ人のモチーフが、 が起っているのか判らない、という例だ。一 「道端の溝の中で殺した」、「親殺し」にはカ フィリス・ゴットリープ著 般的に視覚型の作家が女性に少ない、ともい インとアベルのモチーフが ( 前者はポイス えるだろう。 ( ただし、ル・グイン、ウイル 『キャッチワールド』を彷彿とさせる超進化 ヘルムは別。『闇の左手』を読んだ時など、 へつながる点で、後者は崩壊因子のカで円環 『オー・マスター・キャリバ ただただ男には絶対書けない傑作、と感動し 的に閉じた時間を螺旋へ開こうとする点で ) た ) 罪と救済の概念を軸に、的に消化されて 高橋良平 最後に : : : 作家・大原まり子に最も期 待しているのは、おそらく日本初となるであ ・く口ック この作品を読み進めているうちに、ふと、 ろう本格的なワイド・スクリ】ン へスター、デストーリイを離れて、別のことを考えだして の可能性である。この型式は、・ イレーニイ、ポイスに明らかなように、スペ いた。それは、女性の書いた小説、とい ースオペラの基盤にさりげなく心理学的問題うことである。もちろん、翩訳された文章を ( 自我 ) 、哲学的問題 ( 運命 ) をもちこむと通してではあるけれど、これと似た手ざわ 、文章あるいは文体といってもいいが、そ ころにその特色があるから、彼女のように掛 け値なしの純少女で、心理学と歴史へのれを感じたのは、遙か昔に読んだウイルマー トーツ′スタ ・ま第ををおかあ気第