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検索対象: SFマガジン 1982年6月号
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1. SFマガジン 1982年6月号

まざまのにがい経験や性の扉をへて、少しはおとなになりつつあっダをかりたてた だが、あの五人が、ファー・ ィーストの市民 たのかもしれない。 たちにとって何だというのだ ? ) ートヒア ・ほくはもう、ずいぶんまえから、シティはさいごのユ 同期生でも、そういうかたちでの愛情をひとに対して抱くことは - よ、 0 0 、 で、シティ・システムは完全である、といった幻想から自由になり ートナーでも、ひょっとしたら同じことだ。むろん、自分 はじめていたが、しかし、このときくらい、シティ・システムがっ にとってもっとも条件のいも / トナーが、失われたことに失望す くり出したこのゆがんだ、精神を病んだ人間たちの群れを、うす気ることはあるだろうが 味わるく、腹立たしく思ったことはなかった。たしかにレダのした ( 同じであるものか、それが。一見同じにみえても、このくらい ことが、いかに彼女がファンを愛していて、あのゴーカートのばか激しくちがうことはありやしない。 レダは、精神的には赤ん坊だけ どもが、そうすることを禁じられているコモン・エリアの中でカー れども、しかし人を愛することができるのだ。つよく、激しく。 トをのりまわしていたのだといったところで、やはりしてはいけな ーやつらには、自分をさえ、愛することはできないじゃないか ! ) いことであり、弁明の余地はない、 という - ことは、・ほ′、に、もわか それならなぜ、かれらはリンチに走ろうとするのだろう ? そん る。ぼくは、大の生命と人の生命とを、どちらが重いというつもり なに、あの五人を愛していたものがいるとでもいうのか ? 冗談じ はまったくないが、純粋にそれを等価として考えてさえ、レダの秤ゃない。 の皿にはファンひとりが、そしてもうひとつの皿には、三つの焼死 ( やつらは、自分のしてることの意味がまるでわかってないんじゃ 体と二つの怪我人がのっていた。かれらがばかものだから、という ないか ) 理由でファンの皿を重くする分銅を追加するのは、ファンがイヌだ ドアがノックされた。・ほくは、迎えにきた、無表情なセンター職 から、というのでそれをとってしまうのと、同じ卑劣さだった。 員とともに、互いにひとこともくちをきかぬまま、外に出、用意し てあった車にのった。 だが、それにしても、なぜそれがリンチに ・ほくはハッとした。 ( レダと同じだ ) ファンが殺されたから、あいても殺してやろうとし、それを実行 にうっしてしまうレダと、レダが三人を殺したから、レダをリンチ にしようという市民たち。 同じ短絡であり、幼児性であり、判断力の欠落ではないか ? ( いや、そうじゃない。少なくとも、レダの動機は、レダがファン を愛し、家族としていたからだった。愛するものを失った怒りがレ ディマーと・、それに数人の、 0 ・ 0 2 ハッジをつけた人々 が、すでに用意された一室でぼくを待っていた。»-a ・ << はぼくにゆ ったりとほほえみかけた。ディマーは、・ほくに会えてとてもうれし というようなふりをしようとしていた。 「またしても、われわれは、こういう機会をもっことになったがー フレンズ 242

2. SFマガジン 1982年6月号

つの謎が解けかけるのを感した。だが、それはすぐにもっと大きな「アシ、ロンと他のガイの奴らの関係は、どんなものだった ? ・ 謎を造り出すことに気付いた。その教主は、この世界の都市をすべ 「そこまでは見てとれなかった。でも、アシュロンは、何人かのガ 4 て支配し、文明を造り出し、・秩序を保っていながら、同時に、それイの戦士を指揮しているようにも見えた」 を破壊して回っていることになるではないか。 キリイが、尋き返そうとしたとき、ウェイルが言った。 そして、この世界の住民たちは、ウェイルもモーネも含めて、自「キリイ、そいつはありうることさ。ガイの中には、ガイに亡・ほさ 分たちが、教主様に救いを求めながら、同時に亡ぼされることも、れた都市の人間もかなりいるということだからな」 当然のことと受け止めている。かといって、教主の意志が絶対とい 「ガイは、もともとどういう集団なんた ? 」 うことでもない。ガイを追い払うためには、どのような犠牲を払う その長い間気になっていた問いを発するには、今以上の好機はな ことも辞さないのた。 いと思えた。 そこに矛盾が生していることには、まるで気付いていない。 「私が答えるわ。ガイはガイよ。教主様が生み出した戦士たちょ。 「それと、キリイ、さっきのことたけれども、私が意識を失う寸前中には、ウ = イルが言ったように、本来、ガイではない者たちもい に、あの、何といったかしら、あなたの仲間の腕を失った人の姿をるかもしれないけれど、本当のガイは教主様のものだわ、その数は 見たわ」 昔からまったく変っていないことになっている。いつも同じだけの 「アシュロンか」 数のガイが、いるのよ。私たちと同じように」 「そうよ、彼よ。彼がいたわ」 「君たちと同じように ? 」 「どこにフ・」 「そうよ、私たちの数は変ってはいないわ。もちろん、若干のその 時その時の増減はある。でも、たとえばヴィトグの人間の数は、ほ 「ガイの中にいた。ガイの鎧を着て、レクサに向かっていたわ」 「アシュロンが、ガイにフ・」 とんど一定なのよ、そうじゃなければ、ヴィトグの街は、亡ぼされ 「見間違いじゃない。たしかにアシュロンだった。何人もの部下をるわ」 指揮しているように見えたわ」 「今度のガイの攻撃も、そういう原因があったのか ? 」 どういうことか ? キリイが考えついたのは、アシュロンが正体「なかったとは言わない。たしかに住民の数は増え気味だった。た を隠して、ガイの中に潜り込んでいるという程度のことた。たが、 が、教主様の怒りを買うほどじゃなかった」 はたして教主というほとんど全智全能の存在が、それを黙認してい 「でもウェイル、ことはそう単純じゃないのよ。一つの都市での人 るたろうか。 人の増加が、僅かなものでも、それと同しことが幾つもの都市で起 それよりも、教主が何らかの目的でアシ、ロンをガイの中に置いきていたら、教主様は、どこか一つの都市を選んでガイをさしなけ ているという方がありうるたろう。 るわ」

3. SFマガジン 1982年6月号

だがアン下 , レイ・↑はも、っそれ以上返事をしなかった。歩きなが岐点に立っていた。そして、その形のいい唇の線には、賢そうな微 らダイヤルを回すと、〈ドラ猫〉がたちまちわめきだした。气おれ笑がにがにがしげに凍りついていた。空間にむかってなにか悪態を わめき、こぶしを振りあげて ( これまた空間にむかって ) 脅かして たちは永遠の別れ、歳月なんて勝手にすぎればいし やりたいという子供つぼい衝動をあっさりと抑えつけて、腹の中で 広い入口の敷居を一歩またぐと、そこに鏡の床板を張りつめた広独り言をいった。 間が・ほんやりと明りに照らしだされた。中は異常なほど成分が複雑 ( 同じふざけるんなら、もう少し変わった手を考えたらどうなん だ ! 二度も同じ手を使うなんて、しゃれにもなりやしない。二番 な空気に満たされていたので、二十歩先が無色の煙のようなものに 隠れてしまっていて、なにも見分けることができなかった。だが敷煎じもいいところだ。また同じことをやらせて恥をかかせようって 居のきわから、鏡の床に一本の黒い木の道が伸びていた。だから用魂胆だろうが。謙虚さを忘れるか、ママのところへ帰るか、どっち かにしろというんだろう。そうは問屋がおろさないぞ ! 大学へ行 心さえすれば道に迷うようなことはなさそうだった。アンドレイ・ っている兄さんがいうように、うわべにだまされるやつは間抜け e は思いきって、黒光りしている床板の上に足を踏みだし、しだい だこっちは簡単にお見透しなんだ。素直でなくて悪いなあ、ごめ に薄らいでいく、。フールでの偉業や、ミルク入りのうまいお茶と白こ。 ・ハンの記憶を懸命に追い払いながら歩きはじめた。かんじんな試練んよ ) はまだこの先にあり、それに対して道徳的な心の準備をする必要が顔をゆがめてにやりと笑うと ( 以前に玄関口の鏡の前で二時間も わざ あるように思えた。たちまち意識がはっきりとした。銅のパイ。フ かかってあれこれ顔をぶざまにひんまげて習得した業だった ) 、ア ( それに、火のこともだが ) について〈雌馬〉おじさんがいったこ ンドレイ・ e は利ロ者のための道を歩きだした。だが、自分の謙虚 とを最初はてんから無視して忘れていたが、いまは念頭からどうしな気持ちを無理やり抑えつけてしまったことは、あまり苦にしてい ても離れなかった。 なかった。濁流が荒れ狂う。フールも、体に害になるような悪い作用 その不吉なことばがアンドレイの意識の中にしつかりと太い根をもここ当面まったく現われそうにないことのほうが重要だった。こ 張ってしまったまさにそのときだった、足許の黒い道が突然二本につちには頭があるんだ、頭が。・ほくをやつつけるんだったら、頭を 分れているのに気がついた。それまでの一本道よりやや細い、だが狙わなくっちゃ。ま、いずれそれも経験するだろうが。 まったく同じ黒い二本の道が、無色の煙のなかへ一〈の三分の一の角 利ロ者のための道は、驚くほど短かった。もちろん行き止まりに 度で左右に分れて伸びていた。しかも、右の道の路面には大きな文はごく普通のドアがあった。一分の時間も無駄にしないで、形のい 字で横に《利ロな者》と、左の路面には《それほどでもない者》とい唇の線にひんまけた笑みを作「たまま、アンドレイ・はノ・フを つかんで引っぱっこ。 書いてあった。 〈トラの子〉を持ったままうしろ手を組むと、アンドレイ・ e は分彼は茫然とした。ドアの奥は、やはりよく知っている部屋だった 3

4. SFマガジン 1982年6月号

「ぼくはたしかに、トラ・フル・メイカーかもしれないと、自分でもてくると思ったから、あなたのコールをつながせたのよ」 「私たち ? では、いま、あなたは公人、副市長、セクソロジスト 思えて来ましたよ、 y-ä・」 ・ギルド委員長の資格で話している、ということですね ? 」 ぼくは笑いをうかべようとしたが、顔を妙なぐあいにひきつらせ たたけだったにちがいない。 「コード 6 0 3 2 処理委員会の議長としてよ。ねえ、イヴ、これ は、あなたが思っている以上にシティにとって大問題なのよ。シテ 「できれば、・ほくを要注意人物に指定して、シテイから追放してほ しいくらいですよ。自分でももう、あいそがっきてるんだ」 イ・システムは長いこと、市民が他の市民に故意に危害を加える、 「シティは、市民を誰ひとり追放なんてしないわ。そんなことはしなどということとは無縁のままで来たわ。市民は。 ( ニックにおちい たためしがないわ」 りかけている。レダを市中に出したら、おそらくーー」 「じゃ移住勧告でも何でもいいですよ。とにかく、・ほくは、もうこ 「リンチ、がおこる ? それは、・ほくたちも予期していましたよ。 んなことはたくさんなんだ」 だからこそ、あなたに知恵をかしてほしいんです、・。たとえ デイソーダーであれ、殺人者であれ、いまのところは市民権を剥奪 「感情に走らないで、イヴ」 ・はそっと、頭がいたむとでもいうかのように指をこめかみされていないのだから、レダは他の市民と同じ権利をもっているは ずですね」 にあてた。中止の合図。 「私たちは、むしろ、予想されるリンチから彼女を守りーーむろ しかし、・ほくはもう、あなたがたのことばで、 「すみません。 あなたがたの気に入るようには話せないんですよ。あなたがただつん、リンチなどという非理性的な事態から市民自体をも守るため に、彼女を隔離しているのよ。医療センターの側からは、とにか て・ほくと同じ経験をしたらそう思ってもふしぎはないと思うように 、早く O ・ O で彼女の処理を決め、そしてびきとってくれ、とい なりますよ。失礼、また云いすぎましたか」 う要請があいついでいるわ」 「私はあなたの経験はもてないし、よし持ちえたとしたところで、 「 O ・ O が全幅の信頼をよせていた市民の理性というやつも、あん カンパセ】ションでやったで あなたと同じようには感じない。 まりあてにはできなかった、ということですね」 しよ。個人不同化の原則」 ・ほくはいやみを云った。・の顔がきびしくなった。 「ええ」 と思うわ。 「あなたはまだ、よく事態の重大さを把握してない、 「それに ここにディマーがいたとすれば、云ったでしようね。 ーセンテージでしか考えてな ンチの可能性について、かなり低いパ 『失礼たが、イヴ、君は交渉の仕方というものを知らないね』」 いようね・ーーイヴ・イエンセン」 「交渉 ? 何の交渉です ? 」 ・の語調がかわった。 「わからないふりをすることはないわ。あなたは、レダ・セイヤー 「ヴィジフォーンでは、もうひとつ、微妙な話ができないわ。 O ・ しいたいのでしよう。私たちは、あなたがそう云っ を釈放しろ、と、 239

5. SFマガジン 1982年6月号

が付着して頻繁にふさがり、設備の能率を低下させる。この障害物容を知った。口頭指示により、わたしはステーションのファイルに を、定期的に降りて行って取り除くのがわれわれの仕事である。通あるかぎりのどんな事柄にも目を通すことができるのだ。もっと 常、この作業は操作器官っ指しを要せずに行うことができる。残も、イルカごときが、職員の身上調査書を読みたがるとは、だれも 思ってもいなかったことだろうが。 念ながらわれわれは当該器官を備えていない。 ( あなたがたの中には、〈・サビエンス〉に失業者が出ている折彼女は二十七歳。したがって、彼女はわたしの遺伝上の先輩っ両 から、イルカを就労させるのはけしからんと異議を唱える人がいる親しと同世代である。といっても、わたしは、多くの〈・サビエ が、この件に対してうがった回答をさしあげると、第一に、われわンス〉の間に浸透している、年上の女性との熱い関係を文明上のタ れは進化の意図するところにより、特別な呼吸装置を装着せずに申プーとする傾向には関与しないし、それに種族間のちがいを差し引 し分なく水中で仕事ができるようにできているということ、第二きすれば、ミス・リザベスとわたしとは同じ年だということが明ら 。しまの年齢の に、われわれと同じ機能を果せるのは、高度な技術を有する人間の かになるだろう。彼女が性的に成熟期に達したのよ、、 みであり、そのような人間自体が労働力において不足していると いほ・ほ半分の頃にあたる。わたしもまた然り。 うことである ) ( 彼女が、人間の女性が生涯の伴侶を取得する最適齢期をわずかに この任務について二年と四カ月。この期間内に、わたしが保守を過ぎていると考えられていることは、わたしも認めなくてはならな している弁の吸水能力に重大な支障はなかった。 。彼女は行きずりの交尾に興味を持っ性質ではないとわたしは見 仕事に対する報酬っ俸給しとしては、充分な食糧の供給を受けている。というのは、身上調査には彼女が仔を産んだという記録は ている。むろん、このていどの手当てを出せば、なんの能もないサないからだ。人間は必ずしも毎年一回の交尾によって仔を産むとは メくらいは雇える。しかし、わたしは一日に・ハケッ何杯分かの魚に かぎらないようだし、また繁殖過程とはまったく無関係の、気まぐ 加えて同時に無形の報酬を受けているのだ。いわく、人間との交れで変則的な時期に行われる交尾によってさえ同じことが言えるら 流、参考スプールや語彙拡大器や種々の学習装置を利用してわたししい。これは、わたしには不可解で、いささか正道から外れている に潜在する知能を伸ばすこと。わたしが与えられた機会を最大限にように思えるが、かって見たデ 1 タによると、そういうことなのか もしれない。人間の交尾習性に関する情報は、わたしが入手できる 活用してきたことは明らかだろう。 資料にはほとんど見あたらない。これはさらにきわめる必要がある ) カテゴリー 2 ミス・リザベス・キャルキンズ リザ・ヘスーーわたしはひそかにこう呼ぶことにしているーーーは、 ここのファイルに彼女の身上調査書がある。イルカ訓練タンクの身長一・八メートル ( 人間の場合、″体長″とはいわない ) 、体重五 縁に取りつけられたス。フール・リー ダーを通して、わたしはその内十二キログラム。髪は金色 ( ″・フロンドしで、長く伸ばしている。 たも 6

6. SFマガジン 1982年6月号

もかなりの時間である。 いるが、その理由として、 }--2 ()0 —の進歩くれるのだ。 ( ソコン用じつにもう、信しられないような便利栗本薫さんだったらグイン・サーガ による価格の低減とともに、 五、六冊書けてしまう時間である。 << — O という便利しごくなプログラさである。 しかし、すべてがそこまで便利になっ ( 栗本薫氏といえば、ばくは、もしも日 ム言語が準備されたということがあげら れるだろう。 たかというとそういうわけでもない。ほ本の文学界がこの人を高く評価できない としたら、永遠に世界の孤児のままでい ( ビル・ゲーツってまったくしやくな男とんど改善されていない部分もある。 なければならないだろうと考えている ) だ。複雑な現代社会は一人の天才では変それはデータの投入である。 さらに、このデータ投人のむずかしさ なんて言ったやつはいった 星の位置がどうの、名前がどうの : といったデータは、二〇年まえにやってというのは、キ 1 ポードにむかう時間が い誰だ ? ) だから、二〇年前のパラメトロン計算いたのとほとんど同じ方法で、こまかな長くなるということだけではなく、校正 機の機械語しか知らなかった私にとって活字の星表を横眼でにらみながらキーポが必要でそれにもたいへんな時間がかか るーー・ーというところにもある。 ードをたたいて投入しなければならない は、編集機能をもってを使え たとえば、を QZQ とまちがえ る現在のパソコンは、まるで夢のようにのだ。 キータッチのやわらかさは改善されたて打鍵したり、 0 と 0 をまちがえて打鍵 使いやすい道具である。 とくにパラメトロンのころというのが、それは腱鞘炎にかかるほどのプロでしたりしたら、もはや一巻のおわりであ はない・ほくらにとっては本質的な変化でる。 は、キーポードをひとっ打ちまちがえた そのデータファイルをもとに星図を描 らどうするかというと、巻きとられた鑽はない。 孔テープをほどいてそのまちがった部分まあそういうわけで、データの投入とくと、織女星と牽牛星が一年中同じ場所 にいて、しまいに、はアキがきて夫婦ゲン を探しだし、孔が足りなければ孔をあけいう基本作業には、ずいぶん時間がかか といった悲劇 力をはじめてしまう り、神経をつかった。 なおすし、孔をあけすぎていたらその孔 をテープ用紙で貼って直すーーーという、 ( むろん星のデータは漢字ではないから ( ! ) がおこってしまったりする。 というわけで、データの投入には″校 いまのマイコン少年にはとうてい信じら時間がかかるとはいえ可能であるという デ・ハッグ 正″は欠かせない。私の場合もそれに非 こと自体はすばらしい ) れないような方法で直していたのだ。 つまりノリと ( サミでデバッグをやっ約一〇〇〇の恒星のデータを入れたの常な時間がかかってしまったのである。 データが自動的に作成される場合はべ たのだ。 だが、期間にして二か月と一〇日ほどか つにして、この問題はまだ当分は解決さ かった。むろん勤めながらだし、その間 それが今は、虫のある場所をコン。ヒチ に図書目録づくりなどもやっているかれないだろう。昔ながらの″本づくり〃 ータ自身が教えてくれるだけではなく、 カーソルの移動ひとつでその虫をとってら、正味は一か月ないと思うが、それでとほとんど同じ作業が、ちゃんと残され ・ハッグ ・ハッグ ゼロ 2 8

7. SFマガジン 1982年6月号

象に徹すればいいのしかし、《号》の人にとっては、事 内ゴ 実上存在していないのである。 ア 図 9 の光速 3 の変 ( この壁は半透明の壁である ) と , 系化の図にもどって、 さいごの図Ⅱは、《号》における フ陽 ラ太マイナス一光年のと時間経過 % と、自由落下するアルゴルや グる ころにある光速の壁太陽系の固有時との関係をしめしたもの 年離下の向こうがわはどうである。 距落 と由なっているのだ 説明は割愛するが、このグラフは、 門間自 という疑問をもたれ ″ウラシマ効果訂の謎解きや″一定減速 時時 : 過るⅣる読者も多いかもし度航行″のお話しのときに役立つだろう お測れない。 と考えてのせておいた。むろん物理的意 に観 これについては、 の明確な時間関係である。 行の 航で ブラックホールの内 ながながと述べてきましたが、以上が 度中時 速場有側と同じで、あまり ②の " 一定加速度航行。の時間と空間の 加カ固 定重のうまく説明する自信物語りであり、そこにあらわれる超光速 、刀 / し の。ハラドックスにたいする解答でありま しかしとにかく す。 図 太陽系の固有時間 , て ( 年 ) 《号》にとって ではなくて 3 であるーーーという一般相対はまったくの別世界であり、その向こう 論の観点でこれまでの超光速のパラドッ がわからの信号は、光であろうと電波で付録として、今回の諸グラフのもとと クス ( 図 4 、 5 、 6 など ) をみなおしてあろうと、ぜったいに《号》にはと なった計算式をのせておきます。また、 みると、それらはすべて、″操作的定どかない。 前にのせたことのある″ローレンツ変換 義″の問題にすぎなかったことがわかる そのことを、一般相対論的にではな式〃を双曲線関数であらわしたべんりな のだ。 、特殊相対論に理解しようとするとす式ものせておきます。おひまな方はため ( ホーガン先生の著作の難点は、こうい れば、それには、四月号の図 4 を思いだしてみてください。 う種類のことをひじようこ、 冫しいかげんにしていただくのが最適であろう。 次回は③の一定減速度のケースです したまま一見科学風議論をすすめている むろん、太陽系に住む人たちにとってが、 はたして無難にのりきれますかどう ところにあるのだ。超科学か幻想か奇現の世界はその向こうにも存在している。 0 アルゴルの固有時間て ( 年 ) ー 04

8. SFマガジン 1982年6月号

( 時折、養魚場維持の一翼をわれわれに担わせることの道義性を的 式訪問する役人がしばしば口にすることである。 われわれの。フラントは、経済的見地から水生動物養殖産業っ養はずれにも云々する人間がいる。われわれを強制して、同じ仲間で 魚場しとの提携のもとに運営されており、プラントの廃棄物が利ある水生生物を人間の食用に生産させるのは恥ずべき行為だと彼ら をしったん凝縮装置内を通過してしまうと、廃棄は信じているのだ。率直に指摘させて頂くならば、第一に、われわ 用される。海水よ、、 されねばならないが、この海水は海底近くから汲み上げられるたれはだれもここで強制的に働かされてはおらず、第二に、わたしの め、海面よりも燐分及び窒素化合物の溶解度が千五百パ 1 セントも一族は水生生物を食糧とすることに、なんら非道義性を認めない。 高い。この栄養豊富な廃水は、凝縮装置からポン。フで隣接する天然われわれ自身、魚を食べているのだから ) ジェラード・ウォーゼル海水再生ステーションにおけるわたしの の円型礁 ( " サンゴの蛩し内に注入され、ここでは魚が飼育さ れている。このような充実した環境にあっては、魚の繁殖力は旺盛役割は重い。わたし ( ″イシ = メールしは、吸水装置保安班の班長 をつとめている。部下は同族の九頭。任務は、主海水。 ( イプの吸水 であり、魚を利用した食料の生産高は、。フラントを作動するコスト 弁をモニターすることだ。この弁は、ヒトデとか藻類など下等生物 を相殺するに充分である。 解説、人と作品 ロバートシルウアーバーグ Robert SiIverberg 作者紹介文に , 次のような“しまらない話”を書く のもどうかと思うが , シルヴァー / く一グの近況報告に はちがいないので , 軽い気持でお読みいただきたい。 アーメジング誌 82 年 3 月号の「オヒ。ニオン」欄に , 彼 が書いている文章の大意である。 《 SF は , その世界が一回かぎりのものであるからこ そ , インパクトもあり価値も保たれるのに , 近ごろは なぜ続篇とかシリーズものがもてはやされるのか。 S F が輝くばかりの不可思議さ , 異質さの文学とされて いるのは皮肉なことだ。そういう名作も , ノ昔はたしか にあった。『虎よ , 虎よ ! 』『幼年期の 終り』『人間以上』 「アルクトウールス への旅』などがそう である。ところが今 の読者は「同じもの をもっともっと」と 要求するらしい。 81 年のヒューゴ ー賞長 篇侯補作 5 点をながをこ めると , うち 3 点は 以前評判をとった作品の続篇であり , 残りの 2 点につ いても , このあとに続篇ないし姉妹篇が来る。後者の 中には , 自分のん or イ記ど厩切 e な Ca 立んが含ま れており , 続篇とはいえないが , 姉妹篇 M の。。だ C ん加れがまもなく出版される。 しかしシリーズものを疑問視する自分が , なぜ姉妹 篇を書くのか。第 1 作を書きおえて , 同じ世界に未踏 の領域がまだあることに気づいたせいもある。もうひ とっ , 自分もやはり職業作家ーー - 世の趨勢には逆らえ ない》 「恋するイシュメール」はシリーズものの 1 篇ではな い。 F & SF 誌 70 年 7 月号に発表されたユーモアたっ ぶりの作品で , ウォルハイム & カー編の年刊ベスト S F 集 71 年版に再録された。なお最新情報によれば , シ グがいま書いているのは , 前記長篇の明 ノレウ・アー / 、一 らかな続篇 4 ん厩わ。〃ェだそうである。 ( 伊原典夫 )

9. SFマガジン 1982年6月号

のネオン街の喧騒のなかで、そのことが 九七〇年代の現象を大づかみに表現しててみたのである。 いたと思う。 そうしたら読者諸君、おどろいたこと重く心にのしかかるのである。 しかし八〇年代に入ってからは、″浸に、ド ーナツツの直径よりも小松さんの ところが現実は、的空想力に乏し 透と拡散″よりもむしろ″侵略と吸収″ お尻の孔の直径のほうが大きかったのでいというか、的幻想にたいする理解 がないというか、まあそういう TJ ファ という被害妄想的言辞のほうがあたってすよⅡ いそうな気がする。 ( ということはつまり、現在のドーナッ ンには軽べっされる種類の人たちのほう がむしろ、技術者たちのそういう願望に ( そういう意味からも、前述の『総合的ツはの核の一部にすぎないというこ 応じている気配が濃厚なのである。 小松左京論』とそれを踏み台とした新人とです ) の出現はどうしても必要なのだ ) あきれてしまった。これがおどろかず これをどううけとるかは、人によってにいられようかい コンビュータ・テーマは可能か 2 まちまちであろうが、私としては、歴史 的必然であることを認めつつも、これ以最近感しることが多いのだが、明治以 ハソコンの特集に刺激されてここまで 上中央部が空白にならないように、逆後の日本の技術の歴史において、今ほ に、インデックス活動などを介して努力ど、第一線の良心的な技術者たちが「自書いてきたら、におけるコンビュー したいと考えている。 分たちの成果を文学者や芸術家たちに知タ・テーマの問題についても一言ふれた なぜそのように、ややドンキホーテ的ってほしいと考え、また自分たちの進むくなってきてしまった。 ( なにしろ二か月以上も夜に日をついで な努力をしようと考えているのかというべき方向について文学者や芸術家たちに と、これ以上インデックスが売れない建設的な議論をしてほしいと考えてい パソコンと格闘していたので、すっかり と、妻子が路頭に迷うことになるからでる」時代はないのではないだろうか ? コンビュ 1 タづいてきちゃったのです ) ある。 その理由として、むろん核兵器の恐怖 ・ほくは TJ とコンビュータの関係につ ( 足が地についた理由でしようつ・ や公害の悲惨もあるが、もうひとつ、ロ いて、この数年ひとつ大きなことに気づ ドーナツツ現象にかんする″量的″なポットやコンビュータの研究がすすむにき、とても気になっていた。 はあくとして、私はもうひとつの測定をつれて、技術研究者たちが、自分たちの それは、真の意味でのコンビュータ・ 試みた。 やっていることがじつは″人間そのものテーマの co がひじようにすくない それは、大きなモノサシをもってきの研究″に急速に近づきつつあることをというよりも皆無といっていし て、 トーナツツの直径を測り、そしてそ自覚するようになってきた というこう事実である。 の同じモノサシで、ちょっと失礼して小 とが大きい 私のの読書量というのは乏しいも 松左京氏の身体の各部分を測り、比較し残業で疲れて研究所から帰宅する途中のなので、それを言いきる自信はなかっ 6 8

10. SFマガジン 1982年6月号

言葉は一つだけしかない。どのようなも、このようなも、ないでは 「東の土地というのは、教主様と敵対関係にあるわけか ? / し、刀 キリイは思いがけぬ情報に、問い返した。 「どういう意味だ ? 」 「そうだ、おれたちがこの土地に生まれてくる遙か昔からの敵が、 ウェイルもまたとまどった。どういう意味も、こういう意味もな あの土地を支配していると聞いている」 。彼らはアシアムを知らないのか。 ウェイルが答えた。それでは、教主という存在は、この惑星をす 「それはだな、つまり、おれたちと同じ言葉を使うのか、それとも べて支配しているわけではないのだ。 「こんなに幾つもの力が、今、この土地で出会うということに、何別の言葉かということだ」 か意味を感じてもいいのじゃないかと、私は思う。そして、キリ 我ながら、うまい言い回しだと、ウェイルは思った。 イ、あなたのことも、その中で考えるべきだわ。それはあなたと私「おれたちとは別の言葉 ? 」 キリイは言った。それは彼の頭の中にはない概念だった。 たちのことだけではなく、あなたと私たちを含むもっと大きなもの に関わることが、今、起きているような気がする。キリイ、あなた「どういう意味だかわからないが、アレクサンドロスの奴らは、お と教主様のことは、その中で考えることの筈よ」 れたちと同じ言葉をしゃべる。当り前じゃないか」 キリイは、ほとんど呆然としながら、モーネの言葉を聞いてい 「わかった。だが、モーネ、そうなると妙だな。言葉の戦いはなか た。それは、このちつぼけな惑星の一つの都市で老人たちに育てらったのだろうか ? 」 れた未開人の娘がロにできることではなかった。そこには広がりが「なかったことになるわね。そのアレクサンドロスの男は、アシア あった。分析があった。全体を全体としてとらえる閃きがあった。 ムをしゃべっていたことになる」 そして、それこそ、現在のキリイが失いつつあったものだったの 「男がシタルになれるとは、考えられないしな、妙なことだ」 二人の会話は、キリイには、意味をなさないことばかりだった。 別の言葉 ? アシアム ? そして、キリイの心は、二人の会話から けれども、シタルというものを知るウェイルにしてみれば、モー ネのその程度の言葉では驚きには値しなかった。それは当然のこと離れ、これからどうすべきかを考えはじめた。モ 1 ネの言葉が、起 なのだ。そして、ウ = イルは、それ以上に気にかかっていることを爆剤となったのはたしかだった。自分の考えが狭い範囲に押し込め られていたことがわかったのだ。 口にした。 どうすべきか ? レクサに向かおう。キリイは心を決めた。そこ 「キリイ、おまえの敵である外の世界からやってきた男というの に自分が行けば、とりあえずのすべての力がそこで揃うことになる。 は、どのような一言葉をしゃべる ? 」 そこで何が起こるか、それを知りたいと思った。 キリイは、とまどった。というよりも、ウェイルの質問の意味を 「決心がついたようね ? 」 取りかねたのだ。どのような言葉 ? それに何の意味があるのた。 0 - 」 0 、、 0 ー 45