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検索対象: スノーデンが語る「共謀罪」後の日本
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1. スノーデンが語る「共謀罪」後の日本

35 第 2 章大量監視は人の命を救わない 秘密の取引をしたりしています。さらには、自分たちの友人である有力者を社会の特権的な地位 に任命しています。 彼らのしていることは、政府に対する国民の掌握力を徐々に、少しずつ弱めます。政府がもは や国民の意思に従う必要のないところまで。 そして、どんな国であろうと、国民が選挙に価値はない、孑。 殳票こ意味はないと感じるようにな るのは、とても簡単なことなのです。彼らはほかにあまりに多くの責任を引き受けています。仕 事があり、家族がおり、支払わなければならない請求書があり、そうした理由で、政治に関心を 向けません。 しかし、こうして私が一人の米国人として、あなたに会いにきたのは、米国史上最低の能力し か持たない大統領が直近の選挙で選ばれたのを目撃したからです。これは極めて重大です。すべ ての投票に意味があります。そして、ほかの何よりも重視しなければならないのは、適切な権力 のバランスを確保することです。 たった一つの政党しかなかったら、という場合を考えてみて下さい。その政党が、完全な支配 権を持ち、その権力があなたの利益とは相反する方法で使われるかもしれないという場合を。

2. スノーデンが語る「共謀罪」後の日本

17 第 1 章共謀罪法 , 大量監視の始まり ことです。そして、プライバシーの保障は、政治家の言質ではなく、法的措置で強制されなけれ ばなりません。つまり、監視が始まる前に、すべてのケースで政府はこの監視が適法で、警察が 示した脅威と関連づけるのが妥当という、個別の令状を取るべきなのです。 安倍晋三首相は、共謀罪法案の国会審議で「捜査機関が国民の動静を監視するようになると いう懸念は全く無用だ」と述べた。金田勝年法相は「 ( 共謀罪法は ) 通信傍受法の対象犯罪では なく、対象に追加する法改正も予定していない」と述べた。仮に政府の答弁を信用するなら、 共謀罪法は監視社会の始まりにはならないようにも思えるが、スノーデンは「違う」と言う 国民は「答弁」を信用してはならないと。 スノーデンこの問題を考察する良い方法があります。私たちは政府を信用すべきではありませ ん。政府の「主張」を信用するなら、私たちは市民としての責務を果たしていないことになりま す。私たちは、「法律」を信用すべきなのです。 もし、政府が「そうした意思はない」というなら、彼らが法律そのものに、そう書き込むべき です。政府が保障条項や補償制度なども創設すべきです。 なぜなら、これこそ政府が ( 国民から ) 敬意を獲得する方法だから。政府は ( 自らの主張を ) 信用せ よと求めるのではなく、政府が信用に足る理由を自らが明示すべきなのです。

3. スノーデンが語る「共謀罪」後の日本

15 第 1 章共謀罪法 , 大量監視の始まり 容に目を通しているわけではないと言います。一般論として、これは真実です。なぜなら、もち ろん政府だって、時間を浪費しようとは考えていないからです。彼らにも目標があります。 問題はこういうことです。ひとたび政府が社会全員の通信情報を習置的に集め始めたら、彼ら は、あれもこれもと何でも手を出します。「われわれ政府は正当な理由がない限り、内容を見る ことはない と約束する。でも、理由は出てくるのです。政府が一般市民との関係を変更してし まうのです。 ートナーで 通常、民主主義において国民と政府は同じ立場で一体と思われています。彼らはパ あるはずです。しかし、これは一般人と政府の力関係を変えてしまうのです。「市民と国家」に 代わり、「被支配者と支配者」のような関係に近づきます。これは、多くの面で根本的に危険で す。 権力とテクノロジーが結びつくとき スノーデンなぜなら政治運動の組織化や政府への抗議、汚職の追及など、これまで人々に許さ れてきたことに異論を突きつけ得る共謀罪法のような新しい法律とテクノロジーが結びつくと、 抗議や追及に関わった人々の通信情報が「バケッ」から取り出される可能性があるからです。 それらは合法だろうか、非合法だろうが、政府によって密かに、誰にも告げることなく行われ、 われわれはそれをうかがい知ることができません。正しい方法でなされたのか、誤った方法でな されたのかも、分からないのです。なぜなら、この共謀罪法には法的な保障条項がないからです。

4. スノーデンが語る「共謀罪」後の日本

55 第 4 章死ぬほど怖いが , やるべき価値はある 基になる考えは、反政府勢力の取材をするジャーナリストを政府が追跡し、彼らを抹殺するた めに監視するシリアのような戦場で、•- (-) ( アイフォーン ) のような現在の携帯電話を持 ち歩き、使うことは可能なのだろうかということです。実際に、あるジャーナリストの際だった ケースを聞きおよび、二度と同じようなことが起きないようにしたいのです。 マ携帯の位置情報を標的に スノーデンこのジャ 1 ナリストは、英タイムズ紙の女性記者で名前をメリー・コルビンと言い ます。著名な戦争記者です。彼女は、シリアのどの町かは覚えていないのですが、たしかホムス だったと思います、シリア政府軍が包囲する町からリポートしていました。彼女は反政府勢力側 に取材して、政府軍が市民、非戦闘員、普通の人々をどのように殺害したかを報道していました。 ・コルビン (MarieCoIvin) は一九五六年生まれの米国人女性ジャーナリスト。一九八 五年以来、英タイムズ紙の日曜版であるサンデー・タイムズで記事を書いていた。シリア内戦 では、スノーデンが指摘したとおり、シリア政府軍が包囲したホムスの町から報道を続けてい スノーデン記事を書き上げて、彼女はそれを「中央通信社」に持ち込みました。包囲された町 の中に、唯一の地下メディアがあったのです。シリア政府側は必すしもそれがどこにあるのか、

5. スノーデンが語る「共謀罪」後の日本

13 第 1 章共謀罪法 , 大量監視の始まり スノーデンの見解は、日本政府の説明と対立している。政府は国会答弁で「一般人は処罰の 対象にならない」「対象はテロ集団や暴力団など組織的犯罪集団だ」と繰り返した。安倍晋三 首相は「監視社会になるなどということは決してない」と言い切った。だが、スノーデンにと っては、既視感のある風景なのだった。米中枢同時テロ後に、米国で成立した「愛国者法」だ。 スノーデンこの法律が二〇〇一年の中枢同時テロの結果として米国で成立した際、米政府が、 現在日本政府の言っていることと、同じことを述べていたという事実を指摘することは重要でし よう。米政府は「これらの法律は一般市民を対象にするものではない。われわれは、国際テロ組 織アルカイダとそのテロリストを発見することだけに関心がある」と述べていたのです。 にもかかわらす、法案の議会通過からわすか数年後には、政府は国民に知らせることなく秘密 裏に、この法律とそれによって生まれた権限を米国や世界のあらゆる人々の通話記録を収集する ことに活用しました。米国最大の電話会社や大手企業を通じてアクセスすることによってです。 スノーデンが暴露した文書によると、米国家安全保障局 ( zco< ) は米通信大手べライゾンな どにすべての通話のメタデータ ( 注電話の発信・着信番号、発信日時、通話時間など ) を提出させ ていた。また、フェイスブック、ヤフー、アップル、グーグルなど世界最大手のインターネッ ト企業各社のサー ハーから情報を直接収集していた ( —プログラム ) 、 z < が英国の情 報機関、政府通信本部 ( o c) と協力して取り組んだプログラムもあった。スローガンは

6. スノーデンが語る「共謀罪」後の日本

「コレクト・イット・オ 1 ル ( すべてを収集する ) だ。 スノーデン「大量監視を恐れることはない。なぜなら一般人は対象ではないからだ」と懸念を 打ち消す日本政府は、あるいはどの政府にしても、誠実さに欠けています。もちろん一般人は 「ターゲット ( 標的 ) ではありません。でも「ターゲット」とは、意味のはっきり限定された言葉 です。 と一一一一口い 米政府が「米国では大量監視を行っていない」ーー実際には行っていたわけですが 切る方法は、言葉を代えることでした。用語を変更したのです。彼らは「われわれが行っている これは大規模収集 ( バルク・コレクション ) である のは大量監視 ( マス・サーベイランス ) ではない。 と述べました。大規模収集とは単に、あらゆる人の通信情報を収集するという意味です。一般人 であるとか、中学生であるとか、山間部の農場に住む退職者であるとか、全然お構いなく。彼ら の通信情報全てが傍受され、「バケッ」に放り込まれるのです。 「バケッ」とは、スノーデンの比喩表現で、実際にはもちろん収集したあらゆる人の通信情 ーのことだ。米ユタ州にこのための大型施設があるとされる。 報を格納する巨大なサー スノーデン米政府は「これでよし。問題はない。なぜなら政府は、通信情報を「読んでいる」 わけではないからだ」と主張します。彼らは「バケッ」から一般人の通信情報を取り出して、内

7. スノーデンが語る「共謀罪」後の日本

スノーデンなぜ議会は、この問題の追及に時間を使わないのでしようか。まさに現在進行形で すよね。もちろん、私も ( その理由を ) 知っています。答えは政治だからです。自民党は、学校建 設や不動産売買をめぐる腐敗を語るより、日本で真の問題ではないテロリズムについて語りたい のです。 別にこれは日本特有の問題ではありません。世界中の異なる国々で、繰り返し起きてきたこと です。でも、私が思うに各国政府は国民を甘く見ています。政府は、市民には何が起きているか 見えていない、理解していないと思っている。そうこうしているうちに、これも何度も繰り返さ れたことですが、政府は、国民の関心をそらし、国民生活にさしてインパクトのない争点、ただ し国民に恐怖を抱かせ、政府に寄りかかるしかないと思い込ませるような争点を語るようになり ます。 政府はこう言います。「もし、この法案が成立しなかったら、われわれに権力を与えなかった ら、与党に投票しなかったら、あなたたちが危険に陥る。あなたの子どもや家族が危険にさらさ れるのですよ。私は、これは不誠実だと思います。明らかに。 共謀罪法案については、国連人権理事会のプライバシーに関する特別報告者ジョセフ・ケナ タッチ氏が書簡で懸念を表明した。二〇一七年五月一八日のことだ。安倍晋三首相宛ての書簡 で、ケナタッチ氏は「 ( 法案は ) プライバシーや表現の自由を不当に制約する恐れがある」と警

8. スノーデンが語る「共謀罪」後の日本

裁判所が、ひとつひとっ個別の事件レベルで確認するのです。政府が誰かをスパイしたいと思 ったら、裁判所に行って「ここに、この人物が犯罪者であることを示す証拠があります。彼を監 視したいのですが」と言、つのです。 日本では、警察が伝統的にこうした令状請求を通して捜査を進めてきたことを知っています。 捜査令状の九七 % は承認されていると思いますが、裁判所の許可を得ている。道理にかなってい ます。 警察であれ、政府であれ、監視令状請求が適正であるなら、なぜそれを裁判所の目から隠すこ とに悩む必要があるのでしようか。もちろん裁判官は監視にゴーサインを出すでしよう。政府が 裁判官の机の上に証拠文書を出して、この人物はテロリストで、人混みでの爆弾事件を計画して いると述べたときに、「だめだめ、監視令状は出せないよ」と言う裁判官など世界のどこにもい ません。もちろん、裁判官は「よろしい、この人物をスパイし、逮捕したまえ。社会の安全を保 っために、われわれはそうすべきだ」と一言うでしよう。 裁判官たちは合理的な人物であり、そこに私たちが頼るべき理由があります。彼らがバランス これはテロリストだ。彳 皮らを監視してもいい」 を保つ役割を担うことは、重要です。「確かに、 、。土会ことって危険 とか「いや、これは政治活動家だ。暴力的ではない。破壊活動分子でもなしネ ( ではない」という形で進めるのです。 さらに言えば、このことは、より大きな立法措置を講じる際に、少なくとも政府は信頼できる ことを確かめることにもなります。繰り返しになりますが、政府は ( 国民に ) 信頼を要求するので

9. スノーデンが語る「共謀罪」後の日本

共謀罪法には、正しい方法で監視情報の収集を行おうと心を砕いた国々でつくられた典型的な縛 りすら存在しません。 そうした国々では、ものごとをこのように進めました。 「オーケー、政府に新たな権限を付与しよう。ただし、これらの権限は、国民の必要性との間 で釣り合いを取ろう。われわれは政府が正しい方法で仕事をしていると信じる必要がある。政府 が監視情報で調査をする前に、あるいは誰かの通信情報収集を始める前に、毎回確認のため司法 システムを活用しよう。山間部に住むおばあさんの通信が傍受され、収集されていないことを確 認するために。おばあさんは犯罪者ではないのだから。政府は監視を始める前に裁判所へ行き、 裁判官に「この人物を犯罪者あるいはテロリスト、スパイと考えるこれだけの証拠がある。です から、判事さん、この特定の個人について監視する許可を下さい」と頼まなければならない」 これが、代表的な正しい規範です。しかし、情報機関や政府というものは、もはやこのような ことをしたがらない。時間がかかりすぎる、あまりに遅いと一言うわけです。彼らはむしろ、単に あらゆる人の通信情報が収められた「バケッ」を手に入れたいのです。彼らの前に、ある名前や 電話番号、テレビで気に入らないリポートをする誰かが出てきたとき、ただ「バケッ」をかき分 けて調べ、「ああ、この人物が過去六カ月間、メールを送った全員の名がここにある」と言える から。 これは、われわれが避けなければならないことです。そして、避けるための唯一の方法は成立 する法律に制限をかけること、成立法に人権やプライバシーを守る、強力な保障条項を確保する

10. スノーデンが語る「共謀罪」後の日本

スノーデンできればそうしたいのですが、言えません。正直に言って、知らないのです。自分 が証明できないことを断言するわけにはいきません。この場合、日本の共謀罪法案は、私が既に Zco< を去った後で、つくられました。だから、確かなことは知りません。 しかし、あなたに言えるのは、こういうことです。両国の関係で、米政府が「おお、われわれ は日本の秘密保護法が気に入らない罰則が十分でないし、強力でもない。だから、日本側がわ れわれの法に適合するよう法改正しない限り、日本に機密情報は供与できない」と言う。これこ そ、われわれが歴史的に繰り返し目撃してきたことです。 米政府は、日本国憲法を書き上げるのにも手を貸しました。したがって、テロに関連するこれ ほど重大なテーマで、日本が米政府に助言を求めないということは、あり得ないように思います。 マ取り込まれる日本 「スパイのグ 1 グル」とされる高性能の大量監視プログラム「エックスキースコア」を米国 が日本に供与した意図は何だろうか。米国にとって利益がなければ、渡すはすもないプログラ ムだ。 だとすれば、共謀罪法も米政府がデザインしたのだろうか。単刀直入に「そう言いきれる 、か」 A 」問、つに。