井上 - みる会図書館


検索対象: ニューギニヤ探検 改訂版
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1. ニューギニヤ探検 改訂版

人情に變りはないと思った。 記念の撮影後、井上夫人、津久土夫妻の見送りを受 、一・一 ~ 、 ~ 一ミ。け一行が宿舍を出たのは七時半であった。 苦力の監督、炊事、その他の世話は井上さんが宰配 一・ ~ →を振る = と」なり私達はそ 0 命を守る = とにした、私 逹は先づ井上さんからナ・ヒレ川に出る迄は採集せざる 、第、 ~ 一、、謹ご、進ことを中渡された、それは今日の行程が相常長く、豫 , ド河定の宿泊所に行き着く爲めには他日採集し得る地或を 一』見送くるより外なからだ 0 た。 今、進みつゝある道路は前日採集した所なのですん すん進んだ、どこまでも密林が績き、島の聲は引き切 りなしに聞えて來た。行くこと四キロでナビレ川に出 た、川の幅は百米、淸流が片側の岸に滑ふて流れてゐ この川の深さはどの位あったらうか、私は他の人逹が何うして渡るのかとヂット見てゐた、す一

2. ニューギニヤ探検 改訂版

「今日午前十一時、ランシキより直ちにアンギ湖に出立し度いから、その準備をせられ度し」一 との傅言がコントリ 1 ルから通ぜられた。 私達は豫て出立の準備はしてゐたが、此の急な出立には少しく慌てざるを得なかった、然し直ち に旅装を整へ必要の品を荷造りし、四十一人の苦力に配分し、井上さんを釆配として山内、達藤 兩氏之れを助け、一同農場を出立したのは十時であった、十一時に指定の場所に到着した。 私達の案内役としてマメコワリから來たコントリ 1 ル、ムルグ 1 君は、私がマカッサ 1 から同 地に航海中、ソロン港から同じで赴任したので面識があった、今日は大きな金の徹章を着けた 白いへルメット、カ 1 キ 1 の正服でゲ 1 トルを履き、颯爽たる姿でツカッカと近づき私を迎へて 握手した、私は同行の田山、初島兩君をム君に紹介した。 次に私は、私達一行の世話役を勤める井上さんを紹介した、ム君は私を振り向いて「井上さん とはどう云ふ人か」と尋ねた 井上さんは私達の迚れて來た苦力の監督、探集の手傅をする興發會社の社員であり、なほ外に 二人の同行者があることを私は讒明した、するとム君は 「自分はバタビャからドクトル、金平、外一一名の案内及び護衞の命を受けてやって來た、從って 三人以外の日本人に就きては何等の通知を受けて居らぬから同行を許す譯に行かぬ」 ー 150

3. ニューギニヤ探検 改訂版

喪と吹ー 穹こその數をした。八十キロの川を遡上ぼるには六日を要するのだがそれを三日でやっ て來たのだから彼等苦カ達の疲勞も思びやられた。 三月十ニ日 ( ンジョン・バ 朝、室を眺めると雨は止んだが、室はなほどんよ ことり掛った扣】 り曇ってゐる。直ぐ出立の準備ー 第 ( す全部を丸木舟に積むことは一仕事で、食料は減った 第ゞんがその代り標本が次第に増えた、これをエ合よく 、立むには和當の苦心を要した。 先發隊として井上さんの舟が出立したのは漸く八 時半頃であった、川は思ったよりも急流で倒木が行 手を阻む時には苦カ達は直ぐ水に飛び込んで舟を操 った、か様な急流で私達が探り度い植物を見付け、 ツレンテ 突然「ストップ」とか「待て」とかを命すると苦力は 梶を取り損ね、舟を岸や岩にぶちつける危險がある、 出立前に井上さんから厳重な注意を受けて居たので採集には暫く目を暝って進んだ。 ー 123 ー

4. ニューギニヤ探検 改訂版

が十貫もありそうな大きなカソワリ ( 火喰島 ) を肩にかけて戻って來た。 寫眞が濟んで料理にとりかゝった、私はその羽毛を集めさせ、田山さんは頭をアルコホール漬 として持ち歸ることにした。 陽が昇にるにつれて雲が睛れて來た、今日は二班 に分かれ、一班はソイ樹の探檢で田山、初島 山内の三君之れに加はり、私と井上さんとは附近 っ ち一 の探集に出掛けた。 道は小屋の裏から森に入った、日光も射人せぬ 擲密林で、近くで極樂島の鳴聲が頻りに聞えた、行 くこと一キロ餘りで小川があった、この小川で一 寸佇んだ時、ふと上を仰ぐと大きな黒い鸚鸙が高 さ、三十米計りの枯木の頭に止まってゐるのが日 に入った、一見して有名な黒鸚鵁、ちラヂャ 1 ・カガッ 1 なることがわかった、ワレースはそ の著「馬來群島」に詳しく説明してゐる、井上さんは直に持參の單發銑を取り出し狙びを定めた が、枯木の枝が大きく、鳥の體の大部分が隱れ、長い尾だけが見えるに過ぎぬ、暫く待ったが發

5. ニューギニヤ探検 改訂版

張 ) 。下駄及スリッパ ( 若干 ) 。 食料品 白米、味、油、塩、砂鞜、各種罐 ( ハム、コ サルモン、 角上力マコ アスパラがス、野菜類、ミルク、訷漬、梅千、バク、 蜜豆、ゆであづき ) 、剏類 ( ラッキョ ) 、乾素麺、魚十物 ( 苦 に ~ ~ のカ川 ) 。 苦嗜好品 酒類、珈琲、紅茶、カカオ、英子、煙草、煙草レンべン ( 苦 な、あカ月煙草 ) 。 立炊事具 鍋、釜、フライバン、茶碗、皿、飯盒、庖丁類、コップ、 ナイフ、フォーク、ス・フーン類、カンバス・バケッ、水筒 箸、マッチ。 採集用具その他 古新聞紙、プリキ製 ( 相 ( 一〇個 ) 。アルコホール鑵、プレス及び細引、採集棒、踞、手だ、剪定鋏、捕虫一 NO. 38 ( 井上氏 )

6. ニューギニヤ探検 改訂版

ウモリを持って來た、アルコホ 1 ル漬とした。 今日の日程は二組に分れることになり。私と井上、高橋の兩君は丸木舟でセンネンに行き、田 山、初霧、山門の三君は陸行して同地で落ち合ふことにした。 陸上組は七時半に出立した、我々川下り組 は三艘の丸木舟に荷を積み、この荷物の上に を曇り勝ちの天候で雨が降らねはよいがと心 配しつ、出立した。 この川の -e 流で川幅は狹い處は二十米、廣 チす ン集い處では五十米を超えた、水流は概して淺く ゾて河底は丸石や小石からなり、所々の急湍には 倒木が水に隱れて横たはり、舟行が屡々妨げ られた。 舟が淺い川底にれたり、或は餘り速い流れの爲め、その操縦が困難な場合には苦力は川の中 3 に飛び込み舟を擔いで進んた。

7. ニューギニヤ探検 改訂版

三月十四日 昨夜は赤虫の爲め安眠が出來なかった。 カントル 朝、ビスチュ 1 ルから十時に役所に出頭して哭れとの傅言があった、私達は井上さんと共に出 掛けた。 私逹のナビレ旅行にはマメコワリ支廳の許可證を持って居らぬ筈だ、一應取調べをして哭れと 舟には大浪であった、この大きな浪に飛徠を上げて漕ぐ苦カよ第 ) ~ イ . 「儀であったらしい、一時一 間も進んだ頃、遙か前方から白波を蹴って。ヘンタが進んで來た。私達は津久土氏が島民を連れて 迎へに來たそのポ 1 トに乘り移ってナビレに向ひ、無事宿合に歸った。 私達はこの地を出立以來、始めて温浴を取った、乂心づくしのク餉も特においしかった、食堂 から私の宿舍に歸ると察には鎌の様な月が出てゐた。 は再びナビレ滯在 ー 128

8. ニューギニヤ探検 改訂版

場長の宿舍は例のアグップ葺の粗末な家、玄關の廣いヴェランダから應接間に入ると厚い絨氈 が室一杯に敷かれ、革張りの椅子、美事な書棚やラヂオが備へられ、珍しい土俗品が棚や壁に飾 ってあった、その高級な調度品に一同は目を瞠った。 場長はもう相當の年配でその温顔は誰れにも親しみ で 2 を持たせた、大きな椅子にゆったり腰を下ろし葉卷を ン 銜へながら一同に、煙草や、ウヰスキ 1 ・ソ 1 ダを勸 一フ の め、靜かに會談した。 一丁一丁 歸路は往路と同じで宿舍に着いたのは午後一時。午 ボる べを後小雨があった。 ン ル朝三月ニ十九日 ( 滯在 ) 朝十時、大東丸がナビレから入港した、ナビレの宿 。・ , 誉舍を引き上げる爲、同地に迎 ( に行った井上さんが夫 人を伴ふて歸着した。 三月三十日 ( 滯在 ) 朝、食事をしてゐると屋根の上の方で飛行機の爆音が聞えて來た、ヴェランダに出て室を仰ぐ一 145 ー

9. ニューギニヤ探検 改訂版

らぬ、この旅行の宰配を振って來た井上さんが心配し出した。 小屋から見下ろすプミ川はナビレ川に比べ格段と大きい、幅は廣い處で二百米もあろうか、淸い 水が滔々と流れ、右手の岸に突當った川水は大きな半圓をつくって左に曲ってゐる。私は何を置 いても川に飛び込み汗を流した、河の對岸は畑の跡 、当 " 金らしくバナナの幾株かが績いてゐた、苦カ達は何時 の間にか川を泳ぎ渡って共大きな房を持って來た。 水浴して小屋に着くと突然、雷鳴が谷に響き森の 彼方に電光が閃めくかと思ふと烈しいスコ 1 ルにな 下 った、その間髮をも入れぬ電撃的な雨は熱帚の特色 である。 一同は小屋に雨を避けた、小屋にはダマルの袋が 一杯積まれ、辛じてその一隅を片づけべッドを組み 立て雨の止むのを待った。 間もなく下の小屋で苦カ達の喊聲が聞えて來た、舟が下流から上がって來たらしい、何か合圖 の聲がする、一同愁眉を聞いた、やがて川の曲りの一角に小さい丸木舟が一艘現はれ、次ぎに乂一

10. ニューギニヤ探検 改訂版

ら川を横ぎって森から森に飛び、乂何日も聞き慣れてゐる旋律的な雨島の鳴聲が岬の聲と共に 川の面に響いた。此川邊には蚊は居らぬが蟻が足と云はす、手と云はす這ひ上った。連れの小供 達が川の中で泳いでゐるが美しかった。 少憩後、丸木舟は出立した、少し下ったと思ふ頃、他の舟で一一疋のカンガル 1 を捕へて來た、 川の岸で大を嗾かて搜し出し、・川の水際まで追詰めた處を生捕ったものゝ、丸木舟の上ではど うにもならす、殺して仕舞った、可愛和なことをしたものだ。 岸迸で私は滿開のオホ・ ( センダン ( 2 ~ ぎ。。こ屬の樹木を見付け、舟を寄せると、それは に採集済みのものであることがわかったので私が「スダ、アビス」 ( もう済んだ ) と告げた、その 瞬聞、苦力は ウラル 「蛇 ! 蛇 ! 」 と叫んた。 私「何處 ? 」 苦力「サナ」 ( あすこ ) と答へた、よく見ると今私が採集すべく舟を寄せたその樹の枝の付け根に一疋の蛇が卷きつい てゐる、井上さんは是れを見るや携帶の實彈を込めた單發の小銃を取り出し、丸木舟の上に立ち一 プロン・ウジャン 105 ー