邊に冷浴をした、岸は眞白い御影石の小砂利で水は透通って見えた。兵士逹も裸になって湖水一 に入り汗を流し洗濯に徐念なく、プリ 1 ミング軍曹は水筒の水をラツ。ハ飮みにして渇を醫した。 下士官のプ君は一一發の砲聲を湖面に響かせ、對岸のマネ ヤオンに一行が到着した合圖となし丸木舟を呼んだ。初島 、君は足の疲れを忘れた如くすぐ湖畔の採集を始めた。 渡 小屋の仕度が出來たので私はべッドの上に脚を延して休 木んだ、湖面から吹く風は秋を思はせる程冷い、私は毛のシ , をャツを着て脚を毛布で包んだ。 一をタタ方、マネキオン族の丸木舟が野菜を積んで對岸から着 いた、是れを岸に上げると今度は私達一行の荷物を載せて 間もなく引返して行った。 ・夜の帷が下りると太古の様な靜けさで、島の鳴聲一つ聞 えなかった、然し夜牛に風起り湖面には相當高い波が出た。 四月六日 拂曉、岸邊の小屋のべッドから這出ると朝の湖水は鏡の様な靜けさである、朝のいつもの熱い ー 168
色のツリフネサウが喰き亂れてゐた。 湖畔の濕原を岸に滑ふて一キロばかり進んた、珍しい大きな蝶が只一つ空を飛んてゐた。此湖 日 ~ りがよく風當りが少いので 畔の稍々凹人した岸邊にノ 1 ス・ポ 1 ルと名づくる地點がある、 、 5 出 = を、↓ , 1 ,. った、私達は先づに腰を下し今日の 屡々十ャンプの場所となり、さやかな苦カ小屋が一 ) 疲れを休めた。 ー 166 ー
ウラル・ビサと云び、その咬傷には痛みが無いが三十分位で落命すると云ふ、この蛇の血清の研 究が出來てゐるかどうか疑はしい。 平地を過ぎると止陵地帶に入ったらしく度々坂を上下し、再びナビレ川の支流に出た、この支 流は珍らしくも紺碧の水が淵に淀み兩岸の樹木はそ の蔭を水に投じてゐた、道は此川の岸の断崖にも近 い危險な傾斜面を滑ふて上ぼる、例の瑠璃色の美し 行い蝶がでも川の上を高く飛んでゐた、不思議な 〔の ~ 岸がビッタリと止んた。道に滑ふた谷に 第こは所々に清水が湧出してゐる、この冷い水で私達は 渇を臀した。 この岸邊を暫く進むと川の支流に出來た中洲に出 た、玉砂利が一面に擴がりその中洲を廻ぐる淸流に は凉しい樹蔭があった、先發の苦カ達もに荷物を 下し寬いで休んで居た。 中洲を出て反對の岸に上がると道はナビレ川の右岸に滑ふ叢林を拔ける、間もなく開墾跡地で一
川を下るに從って急流の個所も減り、河身は右に左に羊腸の如く曲り、流れも緩になった、空一 は睛れ、太陽が頭上にちりちりと燒き付けた、川幅は廣く、水は岸邊に沿ふて流れ採集には便利 であった。會々 = クヅクモドキ ( ミ e ミ ) の實のある標本を取る爲めその枝に採集棒を引き 掛けんとしたところ、その枝の付根に毒蛇がドクロを卷き小鳥や木鼠の來るのをヂット待って居 るではないか、土人はこれを見付けると大聲で「アワス ! 」 ( 危い ! ) と叫んた。この蛇は叩き落 すは易々たることだが丸木舟の上に落ちると危險であるから舟を岸から避けた。 正午、河岸の小石原に上がり椰子の葉を敷き、いつもの飯盒の辨當を聞き水筒のお茶を飮んだ。 舟は再び川を下った、陽差しの熱は一脣酷しかった。密林は次第に疎開した、氾濫地帶であら う、孤立した樹冠には色々のツルが全く覆び被さるまで絡まってゐた、中にも大きな蘭が幹に着 生し、その葉は幅一尺もあろうか、日本婦人の帶を垂らした様で、舟を止めて樹に登らせ花を搜 させたが時期が既に過ぎて居たのは殘念であった。 舟が下流に進むに連れ、流れは綏となり岸邊の植物は單純となった、所々の砂洲には野生の井蔗 モドカ が一面に茂って居た、採集すべき植物が少くなると人間の我儘が出て舟の進みも遲綏しく「漕 げ ! 漕げ ! 」と急がせた。 大きな馬蹄形从に曲がったタンジョン・。ハンジャン ( 長岬 ) の廣い河原に着いたのは太陽のま ー 124
こんな難儀を幾度も繰り返して居るのを知らぬ顏に、私達は兩岸の植物に珍しいものがあると一 プレンテ 進行中の舟に「止れ」と命令を下す、舟は惰力で數 間も十數間も下流に押しやられるが苦力は默々と遡 江してその植物のある岸邊に舟を寄せて哭れた。 ~ 」 ' す ( ・行兩岸の森にはムクロジ科、アヲギリ科、 = クヅク る科、アカネ科、センダン科など多く、オホバセンダン を ( ぎこの赤い實のなる樹木が多かった、乂 川の中の砂礫の洲には邦人がカハシャクナゲと呼ん ) 一 1 、」縫でゐる。屬が屡々一面に密生してゐるのが目 、 ~ 「気一い林に着いた、乂川の水に漬かる岸透には木性の ト 0 la ミ & きをが美しい花をつけてゐた。 舟を、とある小石原の洲に寄せて上陸した、苦カ は一種の大きな野生の椰子の樹を代り倒した、これ は土人がその頂の芽を切り取り野菜の代用にする爲 めなのだ、この河で暫く休んでゐると白い鸚鵁が、ギャー、ギャ 1 、と無寀味な鳴聲を立てなが 0. 74 ー 104
もあらうか、日蔭の全く無い草原に出た時は強い直射の日光と燒けつく様な地熱で酷しい暑さを一 覺えた、だが最後の進撃に汗を絞りつゝ進むこと二キロで再びナビレ川の上流に出る、對岸の森 ビーバッグ の蔭に今宵の宿となる。ハテマの小屋が見え 水 ( た時、唯れ云ふとなく、 「來た ! 來た , ・」 。墸醫の聲が聞えた。 今、私達の目の前には澄んだ淸い流れが a 掬横はり、その水は玉石やト身司 / ) 不のヒを囁ら " テむぎつ、岸邊の狹い淵に流れ込むと、そこに は大きな渦卷を殘して居た。 待の 私達は脛を沒する川を渡って向側の岸に上 がった、風通しのよい、また建てゝ間も無 ビーベック い小屋がある、今宵の一夜を明かす處で、 周團は一度も斧鍼の人らぬ密林で圍まれてゐた。 今朝先發した鉞砲の名手、バス君は今日既に火喰鳥の雛を生捕った外に王冠鳩を射止めたので
林が績き、珊瑚礁にはクチナシモドキ ( ト、 ) の大棆の白花がき亂れてゐた、この砂濱で多 少の採集をしたが思はしくなかった。そこで舟を沖に廻してこの島の南面にあるヘンホベキリと 云ふ部落に着け砂濱に上陸した。。ハプア土人の家が十數戸、海岸と平行して規則正しく列び、道 カバラ 路もよく淸掃せられ、椰子林が一面に茂ってゐた。我南洋群島の離島と變りはない、村長を始め アルビノ 土人、子供が周圍に群がって來た、うちに白子の小供が二人混じて居るのが目立った。 村長の家を訪れると軒下に長さ二尺もある大きなヒラアジの燻製が澤山吊さし 蠅がたかって ゐた、その一尾を幾何かの金を出して讓って貰ひ、外に一個一仙と云ふ若い椰子の實、二十五個 を求めてポ 1 トに戻った。 ポ 1 トはこの島の對岸、印ち一一ユ 1 ギニヤ本土の一部の濱邊に進み白い細砂の岸に上がった。 森蔭にマネキオンの家が一、二軒見えた。 濱邊に椰子の葉を敷き、持參した辨當を開き嚢のヒラアジを炙って齧り、椰子の實の水で渇を 竹製の嬖火筒中に瀬戸の破片さホクチが入れてある ( 原圖 ) 器醫した。 發眞裸の黒いマネキオン ーⅡを〔一一人が何時の間にか私達 の傍に來た、ニ人のうち一 147 ー
この外、籘 ( ミミ ) の類が甚だ多く、又未鑑定の。 ) ~ ~ も屬などがあった。 形態上、特に目についたのは、幹からニ米にも及ぶ穗从の花序を懸垂するぎミ ) 3 ) ・ M 【 Q. や、川の中洲或は岸邊にシャクナギに似た葉を有する当。 p ・が叢生せるもの、又長さ一 米牛にも達する大きな橢圓形の葉をつけたミミ。 2 D 【 0 などであった。父 0 ミ 類もこの附近から出現した。 ダルマン附近 ナビレからダルマン迄の行程四十五キロ、心持ち少しづゝの登り道で、最後の坂道二〇〇米を 登りつめると、第四期乂は第三期の新脣一面に蛇紋岩、班礪岩、閃綠岩の母岩が出現し、此母岩 は風化作用により熱帚特有のラテライトに變じ、表面には所々に褐鐵鑛や赤鉞鑛が現はれた、從 ってこゝに生育する植物は特殊のものが多く、植相は一變して針濶混淆林となり、」 ~ ミ Foxw. , ト a 、にミ。ミに m WALL•' a03 ) ) ~ 0 ( fo ~ D02 が現はれた、その最初の種類 はダマル樹で通直な幹と林表に彜立する濃綠色の樹冠が冂立った。父濶葉樹中 c ミミ き d 守 FOR 胃・が川の岸邊に淺綠色の細葉を垂れ、針葉樹に似た樹相を呈してゐた。 父下部に殆ど無かったタコノキ科の植物も出現した、タ 0 ノキでは次の種類を得た。 ー 253 ー
こともあれは、樹に登って枝を切らせたりして標本を見逃すことはしなかった。 月の幅がせかれて倒木が之れに懸って横はって居ると荷物を全部陸に揚げ、舟を持ち上げて通 過したこともあった、兩岸には蔓の絡んだ森が今日も長く績いた。 空がれ正午に近づくと樹蔭の無い川の上では無 風の一と時が績き、頭上から直射する強い陽光は何 物をも濬かさすには置かぬかと思はれる暑さであっ 私達は川の岸邊に舟を寄せ、上陸して中食した、 蝶が多く捕るのに忙しかった。 午後の暑さも亦一脣強い、強烈な陽ざしを受ける と冂は自然に閉ぢ、睡氣さへ催した。 陽が西に傾きかゝった頃、川は急に淺くなり淀ん ベルに着いたのだ。 だ濁水に變った。スリ 1 今霄宿るべき小屋は川岸から一「三町も奧まった風通しの惡い低濕地にあり、自然蒸し暑くも あった、小屋の床は恐ろしく高く梯子で上がった、小屋の内にはダマルの袋が天井に屆く迄積ま一
午後はムルダ 1 君も役所の用事が濟み暇になった、私の希望でギジ湖に丸木舟を浮べ此湖水唯 一の魚族であると云ふ鰻を捕獲して標本にるプ ガ氏ランが立てられた。 いはタ 私達はム君の外に、護衞の鉞砲を携へた下士官 のプ君と二人の。ハプアを連れ宿舍から眞直ぐに大 」まで歩んた。湖 濕地帶を横ぎる立派な道路を湖 邊には莎草が茂り湖に注ぐ川の入口に丸木舟が待 ってゐた。 全員はこの丸木舟に乘り櫂を取って川を進み湖 」っををき の方へ向った、しかし、出立してもの、五分もた 、ぬうちに舟の割目から水がどんどん漏れ、次第 にそれが勢よく噴出して來た、此水の浸人には防 ぎ様がなく、ノアの土舟の様に危險が迫って來 た、大急ぎで後に引き返すより外無かった。 せめて湖の水面でも眺めて歸へろうと叢原を分け濕地帚の岸邊に出た、このギジ湖は女湖に比一 183 ー