「そう思うなら結構、それがおまえの限界だ そして空、目を細めて。 「相手が森精種だろうがーーー神だろうが『 』に敗北の二文字はない」 言ってーーー・誇りを汚されたことを示すように。 あご クラミーの顎をつまみ黒いべールを剥がし。 その目を直視して、空が、初めて仄かな怒りをその目に宿してーーー一言う。 「あまりーーー人類をナメるんじゃねえ」 : その言葉は。 城内の全ての人々を沈黙させ。 その胸に染みこむように響いて広がった。 繋がれた『最下等の種族』というコンプレックスの鎖を千切るように。 者 長く続いた闇に一筋の光を差すように。 ともしび とも 静かな希望の灯火を、その胸に灯すように。 あふ 第 そして、クラミーの口からも、言葉が溢れる。 つな じんる
207 第三章ーーー熟練者 たたず それを証明するように、勝利して当然という佇まいの二人に、なんと声をかけるのだ。 かっと・つ だがーーーそんなステフの葛藤などっゅ知らず、空は気楽に言う。 これでいいだろ ? 」 「おまえの爺さんーーー前王が愚王だった、と言われすに済む、だろ ? 」 おれら 』が王になればーー賢王だったことになる」 「なんの後ろ盾もない、人類最強の『 : これで、エルキア : : : 滅びない、よかった、ね : : : ステフ」 言葉に迷い、悩み。 自分が彼らにされたことを思い返してもみたが。 その全てを補って余りある結果に。 しずく ステフは、目から零れた雫に従って、素直に、ロにすることにした。 「ありがと、つ : : : 本当にーーー感謝しますわ : : : あっ」 だって、そ、つだろ、つ ? 魔法という絶対的なイカサマを使う敵を正面から下し、勝利に喜ぶ様子すらない。 』に敗北はないク・
260 「 : : : なるほど。唯一神の座さえ、ゲ 1 ムで決まるってことか」 と、感心した様子の白を除いた、その場にいる全ての人間が絶句する。 そして唯一、テトは楽しそうに笑って、一一一一口う。 「正解 ) わざわざ【十六種族】に設定したの、そのためだったのにさ」 そら ふと、・・・・・・・・・・・・・・ーーー空の頭の中で全てがつながる。 イクシード 十六種族ーーー地平線の向こうのチェス盤ーーーあそこに住んでいるという神。 チェスの片側の持ちゴマはーーー十六個。つまり。 「 : : : 全種族を制覇するのが、おまえ 機嫌よく笑って、テトが答える。 「いいねーその頭の回転。異世界から来たばかりとは思えない順応性だよ」 「そりやどーも ) 」 「その通り。でもせつかく『神の座を賭けて』勝負出来ると思ったら、もう何千年も瑕で うわさ 暇でしようがないんだよね。で、異世界をぶらついてたら君達『』の噂を聞いた」 楽しそうに、興味深そ、つに、空と白を見やって、神は言う。 しろ つまり『神への挑戦権』か」
202 っ この売国奴どもめ : : : っ ! 」 クラミ 1 が歯噛みし、毒づく そうーーー結果、戦況が膠着する。 「ーーなあ、狂乱の王、いや『洗脳王』よ、知ってるか ? 」 そら それを、最初から狙い通りだったかのように、空が笑って語りかける。 「現実の戦争はなーーー必すしも王を討ち取らなきや勝てないわけじゃないぜ ? さあ、そ っちにもはや勝ち目はない。互いに手出しが出来ない状態だーーー「降伏』しろよ」 内乱を誘発させ国力を分断、そこからの圧倒的優位での『講和』。 これが , ーー空が知る『戦わすして勝っ』方法の、一つ。 全て最初から、そう仕組まれていたように観衆の目には映っただろう。 鮮やかすぎる逆転劇に、城内は沸き上がり、熱狂の叫びが響いた ただひとりを除いて。 そうーーークラミーだけが、射貫くような目で空を睨み。 不気味に笑った。 「ふふ : : : ふふふ : : : なめないでーーー・この国は渡さないわよっ ! 」 それは、本物の狂王さながらの嗤い 沸き返った城内を静まり返らせるほどの不気味さで、クラミーが命じる。 ねら わら
176 そら と、あることを危惧する空。 もしクラミ 1 の一言う通り、このゲームが『意思を持ったコマ』であることが鍵なら。 そしてーーーその危惧は、すぐに現実となる。 「ポーン 5 、前へ」 そう指示した白のコマが しかし、動かない と、ここに来て初めて、白の表情に戸惑いが浮かぶ。 同じく、戸惑うステフらとは対照的に。 「ーー・やつば、そ、つい、つことだよな」 と、予想が的中したことに、舌打ちする空。 つまり。 かぎ このチェスの鍵は、カリスマがあればコマがルール無視で動くこと , ・ーーーではない。 『カリスマが不足すればコマが動かない』ことにこそ、あるのだ。 コマが現実の「兵士」だとすれば、通常まず使えない戦略ーーーそれが、 しろ
わたくし そう言われて、ほいほい私がチョキを出すとでも思ってるのかしら。 提示した条件を見ればーーーあちらの意図は明らかですわ。 あいこを狙っての勝負ーーコレしかないですわ。 この男は、宿が欲しいだけーーーそしてイカサマも本当はわかってない。 こんなところが真相じゃないかしら。 彳かパー以外、負けというなら、私が出す手の勝率は グー〕 2 勝 1 敗。チョキ〕 2 勝 1 分。 ハー〕 1 勝 2 分ーーとなる。 ーしか出さないと宣言し。 私が素直にチョキを出したらグーを出して。 『はい予定通り 5 バカ正直乙』とでも笑う腹づもりなんでしよう。 かといってパ 1 を出せばーーー負けることはないけど。 つぼ ほば確実に引き分けられて結局相手の思う壺。 この男、私が絶対グーは出さないと思ってる 唯一、負歩る可能性がある手だからっー 、カにしてーーーっー 章 グ 1 でもチョキでも、私の勝率は『 2 〕 1 』ですのよ。 第 狙い通り 引き分けになんてさせてやらないですわっー と、空を射ぬくように睨むステファニー ねら
182 やっ 国王権限で、好きな女と一発ャる権利をやる ! 」 打って変わって、海底のような静寂が城内を包む。 けいべつあき 静寂が意味したものはーーー疑問、軽蔑、呆れ。 だが、構わす空は、なおも続ける。 「なお ! 前線で戦う兵士諸君、この戦に勝てば以後の軍役を免責し、生涯の納税義務を どうてい 免除 ! 国家から給付金を保証する ! 故にーーー童貞よ死にたもうなっ ! また家族が、 愛する者が待つ者達もーーー全員生きて帰って来るのたっ ! 」 下劣極まる演説に、なおも城内は静まり返る。 チェスの盤面からは。 「この戦で功績を上げた奴には きわ
この男は何を言っているのか、ステファニーは更に警戒を深め。 「ーー・賭けるのは、何ですの ? 」 話が早くて助かるーーとでも言いたげに、にゃあと、空が笑って答える。 「おまえが勝ったら、おまえの要求を全て呑もう。おまえが負けた理由、イカサマの真相 を教えてもいいし、愚王のジジイを侮辱した罪で、死ねというならそれも仕方ない」 : このツ」 「ーーで ! 俺が勝ったら。逆におまえが、俺の要求を全て呑むわけだ」 楽しそうな、だが氷より冷たい表情に、不気味に笑みを張り付かせて。 下品にも、醜悪にも、そしてーーー冷酷にも思える口調で、こう続ける。 しいたろ ? 「こっちは命を賭けるんだ、・ーーーそっちも、貞操とか色々、賭けても、 頭に上った血が、寒気に引いていくのを感じるステファニー 日国、つ だが、そのぶん冷静になった頭で、慎重に 「ーーー引き、分けたら ? 」 一「俺はイカサマのヒントだけ教える・ : ・ : そのかわり、 章 一転して、困ったように頭をかいて、笑う空。 ささい 第 「些細な願い叶えてくれないかな。手持ちで数日は凌げそうなんだがーーーぶっちやけここ で 4 泊した後、宿も食い物もないんだわ。そもそもこの先どうするか困っててな : しの
下は駄目だ、と。 それは駄目だ。どうしても駄目だ。少なくとも今は駄目だ。 その、なんといえばいいのか 植え付けられた感情とはいえ。 好きな人に押し倒され胸をもみしだかれたら。 起こるべくして起こるーーー『生態的状況の変化』故につー 「ーーーひーーーきゃああああああツ その本能が、溶けていたステフの脳を突き動かした。 とっさ 咄嗟に自分を触っていた空の腕を振り払って、突き飛ばすステフ。 「うやーーっと ! 」 ひざ スカ 1 トをめくるため膝立ちになっていた空、女性の軽い一突きでバランスを崩す。 人何とか倒れまいと、立ち上がって堪えようするも、それがさらに災いする。 一倒れる距離を引き伸ばし、数歩後ろに歩ませ。 章 すなわち扉まで。ステフの軽い一突きが、空を運ばせ、そして。 第 ゴッ、と。鈍い音。
91 第一章ーーー素人 「 : : : でも、感情まで賭ける : : : 必要、なかった」 コレは自由意志が介入しないと確認するためで止む無く 「すみませんでした」 ど、つやら『ミスなどなかった』は、妹には通用しないらしい 「で、でも こんなペテンでーーー」 こんなペテンで、自分の初恋をーーーと。 涙目で、なおも反論しようとするステファニ 1 を、本来責めるのは酷だろう。 ・『十の盟約』その六 : : : 盟約に誓った賭けは、絶対遵守・ : 十一歳の少女がーー・・憐れむような目で、静かに。しかし的確にトドメを放つ。 「 : : : そのいみ、重さ : : : わすれて、挑発に、のったの : : : そっち」 そう、そもそも十の盟約に従うなら。 【五つ】ーーゲーム内容は、挑まれたほうが決定権を有する。 ステファニーにはゲームを拒否する権利も、ゲーム内容変更の権利もあった。 その権利を棒に振って勝負にのったのは、他ならぬ あわ