233 第三章ーーー - 誘導法 ワービースト ここは獣人種の、東部連合のために、空から『誰も死なない根拠』を聞き出すべきだ。 なのに なん、で かっとう たか、いづなの葛藤を余所こ、 ( いづなが放った弾は直進し。 そしてーーわずかに首をかしげた空の頬を、かすめて通り過ぎる。 まるで いや。間違いなく、予知していたように。 : とっ / に。 そしてその瞬間には : 空が放った二発目の弾が。 ワービースト 獣人種の 『血壊』まで使ったいづなの眼にすら。 胸に到達しつつあるのを、捉えるのが限界だった。 いづなが、二発目の弾を撃っことを読み切り。 いづなの射撃のマズルフラッシュにあわせてーーーすなわち。 わず いづなの五感の一切が封じられる僅かな時間にあわせて撃った、弾丸。 それが、いづなの胸に沈んでいくのを感じながら。 いづなの耳には、確かに空の声が聞こえた。 「そう、それでいいんだよ : : : それがいづなの、本心だ」 とら はお
2 引第三章ー - ーー誘導法 コインが高い音を鳴らして空高く舞い上がる。 いづなの黒い瞳に、空の顔が映る。 感情が読めない、 唯一、自分に勝利した人物。 東部連合の大陸領土を一手で全て奪い、大勢の獣人種を追い詰めている人物。 それを『誰も死なない』と言ってのけ、その根拠をちらっかせてきた人物。 コインが、床に打たれて音を鳴らす。 : いづなはただ眼をふせ、銃を抜く気配は、ない 「ふむ : : : まあ、やつばそっちを選ぶか」 そう言って空、ゆったりと銃を抜き、いづなに向ける。 ・ : そう、いづながわざと負ければ、空は『誰も死なない』根拠を提示する。 それが納得いく理由なら、いづなが背負っている責任感から解放される。 だま 仮に納得いくものでなくても、自分を騙した奴と『友達』になる必要はなくなる。 どう考えても、いづながわざと負けるように仕組んでいる。 これでいい わざと負けて、誰も死なない理由とやらを聞けばいい。 それでーーーそれで 「 : : : ふむ、正直に言っていいかな」 ワービースト っ
「やれやれ、獣耳っ子なのはいいんだが、触れないのが辛いなっ ! 」 法 おんなのこ 導 言って、猛然と抱きついてくる Zæo 達を、片っ端から狙い撃ち消していく空。 誘 なぜ らぶパワ 一「何故です ? マスタ 1 ならこれだけ『エネルギー』に余裕があるのですし、多少の消費 章は気にせずもっと無遠慮に欲望のままに触ったりするものと思ってございました」 かろ おんなのこ 第 白を守りながら、辛うじて Zæo を掻い潜る空に対し、余裕の表情でジプリール。 ワービースト つか 「そうね、相手が獣人種じゃなきゃね ! 掴まれたら振りほどけねえっていうか・ーーっ 『最後にゲームをク楽しいッって感じたの、いっ ? 』 そら 脳裏を過ぎった空の言葉に、壁を殴りつける。 建物が揺れ、砕けた壁から拳を抜いて、いづなが立ち上がる。 : はあ : : いづな》 ( うるせえ、ですっ ! ) 、 0 楽しいわけがない、こんなものを楽しいと思う神経を認めるわけにはいか はやく、はやくあいつらを仕留めなきゃいけない さっさと終わらせないと しろ こぶし
228 「い、いづな、落ち着けーーおまえは どうこく どうすれよ、 ーしいかわからす叫び散らすいづなの慟哭はフロアを静まり返らせ。 いのも対応に困り、ただ肩を抱き落ち着かせようとするのみ。 そら なおも空。 「安心しろいづな」 狂乱のいづなに近づき、空が優しく口を開く。 「いづなが何をしようが、どうせ俺らが勝ってたから」 満面の笑みでそうロにする空に、フロアが、凍りつく。 なぐさ もうちょっとマシな慰めはないのかこの男・ーーとあきれた顔のステフに、だが なおも震えるいづなに、空がしやがみこみ、頭をなでる。 「あと、勘違いしてるようだがーー誰も死なないし、誰も苦しまない」 「この世界はゲームだ。根本的に間違えてんだよ、みんな」 それはーーー空がステフと、ジプリ 1 ルにもこばした言葉。 だがその本意を、ついに明かさないままでいた言葉。 「納得いかないって顔だな。ならこうしようぜ
「違うよな、いづな」 「ーー・・ク楽しかったから、どうすればいいかわからない、だろ」 はっとするいのと、ステフ。 けつかい 最後の、いづなが『血壊』まで使った時。 確かに。明確に。口にした 『おもしれえ』という一言に。 「 : : : そんなわけ、ねえ、です・・ : : 」 「負けたせえで、たくさんの人が苦しみやがる、です」 いづながそれを認めることはない。 なんなん、です」 「でも なのに。 認められるわけがない 法 導「なんでーーーなんでこの顔は、笑いやがった、ですつ」 いづなの脳裏に、最後の空中での邂逅がよぎる。 章 はっきりと、ク楽しいクと感じた瞬間が。 第 「あの時、んなことを思わなけりやもしかしたら勝てたんじゃねえのかです いづながーーー楽しいなんて思ったせえでつ凵 せーで、たくさんの人が死ぬです ヾ、」ヾ、 0 かいこ・つ いづなの
150 そら ふむ、なるほど と空。 頭の中でルールをまとめながら、半眼になって口を開く。 「 : : : イラつく設定だな。要するに片っ端から女の子をフって廻れって、何様だ」 ハイバーリア充様ですかそうですか、爆ぜちまえ。 おもびと つまり、全員がスー 1 モテモテ。空側四人は、全員いづなが『想い人』。 たカ、いつなは『四人全員が想い人』ということだ。 「つまりいづなは四人を惚れさせてハ 1 レムエンド狙い、俺達はいづな単独狙い、と」 『まあ、設定上そうなってしまいますな』 「 : : : なんっーか、なんだ。こう」 もやもやする気持ちを抱いて、空が言葉を紡ぐ。 かわい 「いづなたんが可愛い獣っ子だから許すけど、これが例えば爺さん、おまえとかだったら 今すぐログアウトして、助走っけてチョキで目を殴りたい設定だな」 『お気持ちは強くお察ししますが、一対四を要求したのはそちらだとお忘れなきよう』 このイラつく設定は空達によって生み出されたのだと強調するいの。 だが続く言葉はむしろ空に同意を見せて、 『昨今はこのような可愛いゲームが流行でしてなあ : : : 私の若い頃はもっと熱く かいこちゅ、つ 何処の世界にも懐古厨はいるのか、と妙に感慨深げに空。 つむ まわ
うさぎ よこめ と、本当に名残惜しそうに空達を振り返りながら立ち去る兎少女を横目に、空。 「さていづなたん、ますは拠占 ~ を構えなきやだ。このへんに泊まるところある ? いづなんちに泊まってけばいいだろ、です」 「・ : : ・お泊まり、イベント : : : キタア : もちのろんだよなー 「いづなの家つったら、そりや当然ゲ 1 ムあるよなー 「あたりめえ、です。しょ 1 ぶしてくれやがる、です ? 「当然だっ ! じゃまず朝までゲームで明かし、朝また街に繰り出すぞ ! あ、いづなた ん、この国って電子ゲームあるんなら、もしかしてエロゲって。ーー」 こっそりやるぶんには問題ないじゃないですかツに」 「なんですかツー そんな三人のやり取りを、少し遠巻きに見ていたジプリールといのの合間を縫って。 「や、やっと追いっきましたわっ ! ふ、二人とも : : : 王不在の国ってどういうーー」 真っ先に追ったのに全員に置いていかれたステフ、息絶え絶えに追いつくもーーー空。 法 東「ジプリールツ ! ステフを連れてエルキアまで翔べ ! その後戻って来い ! 」 「御意に」 章 そっとステフの肩を掴んだジプリール。 四 あらが 第 だが抗いようもない力だと確信して、ステフが青ざめ。 「あ、ついでにジィさんを連れてけ ! ステフ一人じやキッいだろうし」
226 うつむ 椅子から立ち上がる様子はなく、ただ俯いてるその姿に。 なぐさ いのが、絞りだすように 、だがせめて慰めようと、言葉を選び、ロにする。 「いづな : : : おまえに責任はない : : : 本国が下し、私が命令したことだ : : : 」 そら こと、ここに至りステフはようやく、空の言葉を理解した。 、つつむき、震えるその小さな、あまりに小さな肩にのしかかるもの。 東部連合の大陸上の全権利という、あまりに膨大すぎる重責。 失った結果、何人の : ・ : いづなにとっては同胞が すみか 家を、住処を、仕事を失い、路頭に迷いーーともすれば命を落とすだろう。 ステフは自分のロにした言葉を回想する。 『どう責任取るんですのツに』 取れるわけが、なかったのだ。 数十、数百万の「命」さえ預かるーー全権代理者。 それが背負わされる責任を、背負いきれるものなど、いやしない。 『王』というものを軽く見ていたのは : : : 空などではなくむしろ。 わたくし ( 私のほう : ・ : だったんですの、ね ) そう、頭を垂れるステフを、だがどこ吹く風で空が言う。
( もう、十分必要なものは見せて貰ったわ。あとはーーー空達の仕事よ ) 人類は信じない、だがその可能性は信じる : : : 面白いじゃない。 「いいわ。信じてみようじゃない」 黒いべールを脱ぎ捨てて、顔を露出させたクラミーが笑う。 「フィ 1 、空に記憶を改竄して貰ったら、すぐに帰国するわよーーーやることは多いわ」 カメラよーし、容量確認よーし、湯気よーし。 「 : : : 確認。健全と判断するに十分な量の湯気と認識 : : : よしつ」 そして今日も今日とて、空は背中を向け、言う。 「よーっしや、皆の者、苦しゅうないぞ入ってたもう」 法 導「 : : : なんで風呂入らなきゃいけねえ、です。 「マスターがク新しく仲間になったら意思疎通の儀式をクと定められたからでございます。 章 マスターが光あれと申せば光あり、それは名誉をもって従うことなのでございます , 第 「それよりシロ、なんか今日はノリ気ですわね、お風呂嫌い克服したんですの ? 」 しっぽ : いづなたん、の : : : 尻尾、洗う・ : : ・の : : : わくわく」 もら
278 そらしろ 慌ただしく叫び散らし、やかましく全速力で走り去っていく空と白の背中。 その後ろを迷わずついていくジプリールと、慌てて追いかけるステフ。 「ちょ、嘘ですわよね冗談ですわよね大陸編入だけで死にかけてるんですのよ多種族 わたくし 連邦なんて前例のないこと本当に私に丸投げする気じゃないですわよねっ ! ねえっ凵」 せいじゃく そして・ーー嵐が通り過ぎたような静寂が、庭園を包む。 走り去っていった嵐ー・ー・空と白のその後ろ姿を、いづながちらちらと気にする。 静寂が包んだ庭園の中、落ち着きを取り戻した巫女が、鈴のような声を響かせる。 はっせ 「 : : : 初瀬いの、初瀬いづな」 「なんだ、です」 「だからいづなおまえ ! 」 「両方の要求が通った以上ーーあんたらの所有権は、解放されとる」 そう、獣人種の権利の保証。 空がそれを飲んだ以上、二人の所有権はもうエルキアにはない。だが 「ーー獣人種全権代理者、『巫女』として命するわ。あの者らに、ついて征けー 「がってん、です ! 」 巫女がそう一一一口うや、理由も聞かず全速力で空達を追い、駆けだすいづな。 ワービースト うそ ゅ