それは、誰の声だっただろうか。 あるいは全員の声だったのか。 そら 空達はもちろん、女王さえほかんと口を開け杲ける中、だが構わずいのは続けるツー 「あなたを一目見た瞬間から、私の心はマグマのように煮えたっているのです。ご覧くだ さいー 私の逸物は鋼のように硬くそそり立っておりますーー・ツ凵」 「ひっ : 女王が息を呑み、笑みを崩して後ずさる。 だがいのは一層声を張り上げ、押し通る : 章 だがあなたの美しさが悪いのだ ! あなたを一 「おお、お許しください海の女王よツー あふ 第 目見た瞬間から、あなたを抱き、貫きたいと思うこの情動が溢れてとまらぬのです ! こ の燃えるような私の気持ちを、どうか汲んでは頂けまいかアッ ! 」 この私とツー 「ど、つかツー 土下座であった。 いちもっ だれ はあ ? 」」 一晩、熱く情交しては頂けませんかア
こ・つせいはいごう なぞ 「うむ ! ジプリールの光精配合っー謎の日焼け止め液のおかげで ) それよりーーー」 いぶか 冷めた声をかけるいのを、だが空が訝しい声で、目を向けず応じる。 ふんとし 「ジジイ、あえて視界には入れてないが、よもやまた褌一丁じゃねえだろうな ? 」 「空殿、妙なことを : : : 男が水浴びするのに褌以外どのような選択肢が ? 」 たくま 空の予想通りのーー・褌一丁のーーー筋骨逞しい老人が、はてと首を傾げる。 嫌そうにため息一つ、空が自分を指さしてこばす。 「なあ、爺さん。俺を見てくれ。どう思う ? 」 「ーー・空殿、そのような趣味が ? 」 「ポケてんのかジジイイ凵短パンにシャツー これも立派に水着だよー 嫌悪を含んだ声が数歩後ろに下がる気配に、空が起き上がり叫ぶ。 だが、やれやれと、いのは首を振る。 「貧相な体を見られたくないと。よいですぞ空殿。恥部を隠すのも礼儀ですからな」 「テメーみたいなマッチョになる気はねえよ ! あと貧相一言うなー こないだのいづなと 陽の戦以来、体力も大事だと思い直してコレでも鍛えてんだからな」 一そう叫び、舌打ち一つ、再び横になる空。 章 腹筋・腕立て五十回が限界で、自分でも驚いたのは、黙っておく。 第 「 : : : それより、他のみんなはまだかよ」 「女性は支度に時間がかかるものですぞ空殿ーーー失礼、初耳でしたかな ? 」
「 : : : なんやろ ? これで魔法にかかったん ? 特に何も変化を感じない様子の巫女に。 だがプラムは、笑顔に若干の疲れを滲ませて、言う。 「はい ! あとはあーー・空さま、巫女さまのーーーツ ! 」 「おつばいを揉んでくださいいッ 声を上げたのは、空と巫女、同時だった。 そらしろ イマニティ だが一切魔法を感知出来ない人類種ーー空と白には、それすらわからない。 へんさん 唯一、魔法を正確に認識、編纂される術式の意味すら見えるだろうジプリールが。 「ーーーおや : : : まさか、本当に ? と、本当に意外そうな声をこばす。 かざ 数秒の間を挟んでーープラムがゆっくりと、その手を巫女に翳す。 一瞬 あか なにかが弾けるような音で、巫女の周囲を渦巻くように紅い光が奔った。
210 そら ( しなかった。 そこに マまでの空よ、、 げつこ、つ 先ほどまで激昂し、声を荒らげ腕を振りかざしていた男も、いなかった。 ヘラへラと笑みを浮かべプラムの頼みを聞いていた軽い男も、いなかった。 そこにいたのはーーープラムの知らない誰か ふそん ただ不遜に、薄い笑みを浮かべて : かりゅうどめ クワナにはまった獲物クを哀れむ狩人の眼の男。 その男が、底冷えするような声で、ただ一言、言った。 なんで ? 「もう一度 ? だって : ・ 「 : : : もう、こっちの : : : 勝ち : : : 」 一切の温度を宿さぬ眼でゆらりと立ち上がる男に、白が続いた。 いやーーー白もまた : : : プラムの知らないーーー絶対零度の眼の少女だった。 ひょうへん その豹変にーーープラムは、一歩後すさる。 その二人を、プラムは知らない。 だが、ステフも、ジプリ 1 ルも、巫女も、いづなも : : : 知っていた。 しろ
ドラちゃんもいつまでも寝てないで起きてください」 ん、あれ ? 何が起き・ー・ーーな、なんですの海が割れてますわよおおおに」 と一人叫ぶ、ステフを無視して一同がジプリールの周囲に集まる。 セーレーン 「それでは、これより海棲種の都ーーーオーシェンドへ空間転移します」 再びジプリールの羽が発光しだし、光輪もまた、回転速度を上げていく。 「距離は三百七十八・二三キロメートル、ですがそろそろ割れた海が戻る頃でございま ごうおん その言葉に応じるように、海が轟音を立てて閉じていく。 「そのため、オーシェンドには空気がないものと推測します」 「あ、だ、大丈夫ですう、水中呼吸の魔法がーーー」 だが、プラムの声が聞こえなかったのか、それとも無視したのか 「そのためーー半径二百メートル圏内の大気ごと空間転移致しますね ) 」 「下がりッ ! 」 再び、巫女の声が響く。 その一言で、いのといづなを除いたーーー浜辺に同伴していた獣人種達が一足で離れる。 瞬間。 ワービースト ころ
鈴の音と、ほっくりが床を打ち鳴らす音を連れてーー金色の狐が姿を現した。 「なーーーみ、巫女様ツ」 その姿を確認するや、即座に地に伏したいのに、巫女は言う。 はっせ 「初瀬いのーーこれよりあてらはク総員でクオーシェンドへ向かう」 ころころと楽しそうな声で、続ける。 みちみち 「説明は道々行うが、ぬしの女癖の悪さ、今こそ発揮して貰いたい。かまへんかえ ? 「み、巫女様 : : : 巫女様まで私をそのような眼でーー」 わず 涙で床を濡らしそうになるいのに、だが巫女は僅かに声を落とし、再度、 「ーーかまへんか ? そう、問、った。 いのが顔をあげ、周囲を見回した。 壷その場の一同の顔を見回し、果たして何を理解したのか 「 : : : 御意に。お任せください」、と。 章 第 状況についていけず、扉の前で途方に暮れるステフに、 もら きつわ だが一言で応じた。
205 第三章ーーー 4 瞬間、女王の周囲を赤い光が渦巻き、女王の目が見開いた 同時。 ッ 「ーーー・あ、ぐっ プラムが、眼に複雑な模様を浮かべ、苦しそうに声を上げた。 ごっそりと力を奪われたのか、黒い翼は一瞬血色に染まり、そして座り込んだ。 だか、女王よ、、 ( しのに乳を揉まれたまま、か細く声を上げていた。 そら 顔は朱色に染まり 目に見えて鼓動が跳ね上がるのが、空達にすら見て取れた。 「や、やりました これでー、ーツー プラムも確信をもって、 「こ、これでえ、いのさまがどんなにドン引きする下半身最優先の方でも、それによって 女王さまがどんな感情を抱こうとお : ・・ : それがーーー『れた』と認識されますうッ ! 」 どさくさに紛れて好き放題、だが疲れた様子で言い放つ。 ひど つくづく酷い魔法だと空も内心こほす。 だが過程はどうであれ、これで女王は『惚れた』。 つまりはゲームは終了であり。 そして。
なぜ 何故だろう。 そらしろ 空と白は、かってない親近感を覚えた。 「そうかー 「・ : ・ : じゃ、しよ、つが、ない : そう、二人してため息をつき、そしてプラムに向き直る。 「悪いなプラム、今は諦めてくれ。滅びるなよ ? 」 「 : : : 強く、生き、て ? 三度さらっと見捨てられたプラムが、泣きそうな顔で叫ぶ。 ため 「話をちゃんと聞いてましたっ ? クその為の策みを用意したんですってばあツ」 泣きそうな声で叫んで、プラムがメモを指さす。 ダンピール 「ダ、吸血種だってただ黙って食われてきたわけじゃないんですよお : : : 女王ーーーあの 『ゲーム』をお、長年解析して、よおおやく、完成させた絶対の策があるんですよおー う だが、空も白も、もはや興味すら失せたのか なら 巫女に倣って、自分達の髪の枝毛を探しながら気のない様子で応じる。 「 : : : 必勝法、ある、なら : : : 自分で、がんば : : : 」 章 うううううと呻いて、プラムが声を張り上げ、 第 ろ、論より証拠です ! 空さま ! 」 うめ あきら
警戒剥き出しの底冷えする声で、いづなが唸る。 そら 緊迫する二人に向けて、おそるおそる空が声をかけた。 「な、なあ : : : 『十の盟約』があるんだから、危害は加えられないんじゃ ? 」 「危害は加えすとも、認識を偽装することは可能でございます。たとえばーー」 敵意の塊をプラムのク傍らにク向けて、 「そちらの大量のトランクを見えなくしたり などです」 何もない場所を睨みつけるジプリールに、涙目でプラムが手を振ると、 「ご、誤解ですよおー これはボクに対する認識偽装ですよお ! 」 虚空から、複数のトランクがドカドカと音を立てて現われる。 すんすんと鼻を鳴らし、警戒を解いたいづなが空達のもとに戻る。 「に、荷物が多かったので、その、存在に偽装をかけて持ち歩いただけでえ : と、ようやく状況を把握した空と白が目を見張り、 「つまりーーー荷物ってク存在クを隠して重量を消したってことか ? 」 「いえ ? 荷物の量や重さを感じなくなるだけで、なくなるわけではございません」 「じゃあ最初に現われた時やたら疲れてたのは」 : この、せい 「す、すみませえん : : : その、お、重かったんですう : : : 」 しろ あら
なるほど、それなら減びてないことに驚くのも当然だろう。 だがそうなると逆に空も疑問に思、つ。 なぜ 何故、滅びていないのか ? : も、死にそ・ : : ・です、つ : : ど、ど、つか『魂』を : : : 」 「お : : : お願いです、つ : 考え込む空に、少女が乞うように息を乱して、か細く声をかける。 死にそうという言葉通り、かすれてひび割れた声ーーーだか : いやだって、魂提供したら『病気』になるって聞かされて応じるかよ。アホか死ねー とはいえ、目の前で死なれるのは、素晴らしく寝覚めが悪い なんとかしたいところではある、が 童貞ビヨーキ持ちと言うのはちょっと と頭をかく空に、だが 「あ、マスタ 1 、説明不足でした。噛まれなければ『病気』にはなりません」 ん ? 一「噛み付きによる牙からの吸血ーーー『魂混合』なしに成長はできませんが、生命維持だけ しの スでしたらーー対象から体液をク直接経ロ摂取することで凌げるのでございますー ジ ・つまり ? 「血に次いで『魂』濃度が高く、噛まずとも摂取できる体液、つまり」 続いたジプリ 1 ルの一言葉を聞いた空の挙動は。