相手のイカサマを看破、逆利用する搦め手、プラフ、駆け引きに至るまで。 そらしろ その手は全て , ーー空と白に挑み、負けに負け続けて身につけたものだった。 確かに最初はステフも、自分が負ければ連邦実現が遠のく緊張感かやーー空と白なら、 まね どうするか。そう、意識して真似ながらゲームしていた。 ところが睡眠不足と、戻ってくる気配のない二人に対するイラつきがステフからその緊 張感を奪いし 、つしかステフはーーー空と白を相手にゲームしている気になり始めた。 あき だが、弱すぎる。そんなザコに一瞬でも空と白を重ねた自分に呆れ。 そんなザコどもに。 ーーー、ー自分や、お祖父様が。 見下されていた事実がーーーたまらなく 唐突に、憑き物が落ちたようにステフの顔が変わった。 「ああそっかあ、そもそも連邦制に貴族なんて邪魔だから苦労するんですのよお」 「ス、ステファニー殿 ? 」 ひょうへん その豹変振りに、いのが不安げな声をかける。 だがその声が聞こえていないように : : : 見えないものが見えているように。 らんらんめ 爛々と眼を輝かせたステフが、くるりとその場で踊り から
220 : え ? ど、どうしてですの ? そら 一人っいていけない様子のステフに、だが不思議そうに空。 焼き魚の刺さった串を差し出し みぐる 「必勝の手と嘘ついて無理ゲーにハメて身包み剥いだ方がウマいだろ、食わねえの ? 」 えげつない発想を、笑顔で言い切る空に思わすステフの顔が引きつる。 「ーーーとはいえ、ク気がかりツはあった」 ほおば 焼き魚を頬張りながら、空は続ける。 「俺には、プラムが嘘をついてるように見えなかったんだよな。同じ部屋にいたいづなも、 嘘の反応を読めなかった様子だしーーってそうだ。いづなあ、魚いらないのか ? 」 プラムに最初に会った夜を思い出しながら、串を差し出し言う空に、 いらねえ、です」 少し離れたところから、ただ小さくいづなが首を振る。 続いて対面に座って酒をあおる巫女もーーーだが眼を閉じ首を振る。 「そう、だから念のため巫女さんとこにも連れてったがーーーやはり嘘はなかった」 ジプリ 1 ルが警戒した中なら、嘘を偽装する魔法の類は看破される。 「ク確実に起こせる魔法作ったから助けてク うそ ははつ、ありえねえな」
214 あまりの辛さから解放された反動で、倒れ込みそうになる巫女は。 だが意地で、何とかあぐらをかいて座り込むに止めて、頬杖ついて嗤う。 え ? 意味がわからない顔のプラム、アミラ、そしてーーーステフ。 そら だが取り合う様子なく、仮面のように感情が抜け落ちた空が続ける。 こんせき 「ーー・だがクそれほどの水圧がありや血は体外に出ないク 『血壊』を使ってる痕跡も 残らず、悟らせす連中の心音を読み放題ーーーお疲れ巫女さん。結論を聞かせてくれ」 その顔に、 「 : : : 人使い荒いやっちゃなあ : : : まあ、ええよ」 み味方でよかったクと心から思って、薄く笑って巫女は答える。 「そこな海棲種ーーー女王起こして欲しなんぞ微塵も思てへんよ」 その言葉に、アミラの表情が、明確に揺らぎ、 そして更に : : : と続いた言葉に、今度は明確に凍り付いた。 あんた 「空のカマかけーー女王が設定したク掛け金クに頷いたんも嘘やったーーあ 1 あと そんなアミラとプラムの反応に気をよくして、苦しげに笑って。 巫女は、空に優しい眼で、続けた。 セーレーン つら ほおづえ わら
こ・つこっ 恍惚と手を合わせる少女とは対照的に、白は後悔した様子だがー - ー・それはさておき。 よ、つやく質問ができる、と空は少女を見やった。 だれ 「ーーーで、結局おまえ、誰なわけ ? 」 ダンピール 「あ、申し遅れましたあ。ボク『プラム』と言いますう、お察しの通り吸血種ですう すっと背筋を伸ばして正座になった少女ーープラムが真剣な面持ちで続ける。 「今日はあ、えっと : : : お願いがあって来ましたあ つぶや えとえと、と呟きながら何やらメモを取り出す。 せきばら コホン、と咳払い一つ。 おもむろに三つ指をつき、台本を読み上げるようなぎこちない声音で、告げる。 フリューゲル 天翼種を、東部連合を下した 「お、お見苦しい初対面になったことをお許し下さいい : : : イマニティ 人類種、エルキアの王。空さまと白さまにーーーボク達の種族を助けてくださいッ ! 」 ・ : その言葉に、空は全てを理解した様子で、 タ ス「あー血の代わりに精液でも良くて、生きるのに許可が必要ーーそして助けて欲しい」 ジ それらから導かれる状況ーー設定を思い描いてみよう。 しかがだろ、つか。思い描けただろ、つか 即断、空はさわやかな笑みを浮かべ、
やっちまってくれ 「よし、じゃあも、ついい かしこまりました ) ひざ 空の言葉に、隠し切れない喜びに表情を緩ませ、ジプリールが膝をついて了承する。 「え、な、なにをするんですかあ : : : ? つぶや しのも訊きたがっていた。 不安げに呟くプラムに、だが同じ質問を、、 ワービースト いのの、獣人種としての『勘』が警告を発していた。 確認しろ。事と次第によっては、止めろ。 こいつらーーーー・碌でもないことをしよ、つとしている、と。 と、いのがちらりと、巫女を見やる。 巫女がゆっくりと『大丈夫』と頷くのを見て、胸を撫で下ろす。 わら 『だが気をつけろ』と嗤った巫女の顔に、いのは血の気が引いた だが続けて 陽 空が、白を抱き上げ、ただ無造作に言い放つ。 太 「「こっちから乗り込むぞ。全員下がってろ」 第 言って浜辺から離れていく空達に、ジプリール。 マスタ 1 、本当にやってしまってよろしいのですね ?
「女王が目覚める条件は : ギリッ、と。 プラムの奥歯が軋む音に、だがなおも空は続ける。 そそのか 「アミラはそれを知ってた。じゃなきやおまえがいくら唆しても、海棲種にとって致命傷 リスク なクおまえが本当に女王を起こしてしまう機会クを与えない もうわかったか ? 」 ちょうしよう 嘲笑するような笑みさえ消して空。 アミラ 「おまえが見下してた海棲種はー・ーお前の裏切りも織り込んでたぞ」 っ 完全に見下していた海棲種にまで出し抜かれ、砂浜に座り込むプラムに。 だがーーー空がなおも追い打ちをかける。 しよせん 「弱者らしい戦略、見事な策略、けど・ーー所詮、付け焼き刃だな」 そ、つ。 ぶき 弱者の知恵は、強者が振るってもその真価を発揮しない。 何故ならその根拠となるのは、卑屈なまでの。 おくびよう 章 弱さから生じる 臆病さ故に。 四 第 そして一転、空は笑みを消し、真剣な顔で、言う。 「強者の天敵は弱者だが、弱者の天敵は、強者じゃない セーレーン ク惚れさせることじゃない乙 より弱い者だ」 セーレーン
168 『ーーーはじまりがあれば終わりがあるよ、つに : きらきらと無駄に輝くエフェクト。星くずをこばすよ、つな。 どこか棒読みのナレ 1 ションが、淡々と後を続ける。 『出会いがあればまた、別れもーー』 「悠長にオープニングムービー流してる場合かつ」 そら 必死に海面から顔を突き出して、空は怒鳴り声を上げた。 おぼ 「何処の世界に溺れてスタートする『と〇メモ』があんだ、ときめけねえよッ ! 」 どうき いや、確かに動季は激しく高まっていたが。 ひん 命の危機に瀕しての脈動を『ときめき』とは形容したくない 「あ、す、すみませえん : : : 空さまのイメ 1 ジと、女王さまのイメージを混合して、舞台 シチュエーションを構築するのに少し手間取ってますう : : も、つ少し時間をおー、ー」 考えてみれば、当たり前の話だった。 女王の夢に干渉できても、この世界に空達の世界の『学園モノ』があるわけがない。 当然、空のイメージと女王の知識をすり合わせる必要が出てくるーー・が、 : いいごばつ、人生 : : : だった : あきら 「プラ ) ~ 弖ムツー うちの妹が早々と生を諦めかけてるぞ早くしろ 5 おッ ! 」 はやばや
白の目が一瞬ーー本当に一瞬だが、泳ぐ そら その理由を、空は察することが出来ない。 だからーー今まさに理由を : ・ : ・『ロ実』を、その頭脳をフル稼働させて考える、などと。 そして、ようやく一つの口実を見つけ出した白が、ポツリとこばす。 だれ にい、が : : : 誰かに惚れ、たら : : : なにする、か : : : わから、ない」 「し、白ーー・・・兄ちゃんの鋼の精神をまだ疑うかつに」 もはや己の自制心は誇るに値するものだろうと、空が悲痛に訴える。 だがーー獣人種の常軌を逸した、心の機微すら読み取れる巫女は。 空よりはまだ、感情の動きがわかるらしく、コロコロと笑う。 「ーーーま、ほんならあてに試したらええよ 「巫女さん ? ほほえ どこか微笑ましいものを見る目で巫女が続ける。 おんな 「恋愛感情がよーわからんのはあても同しやし、問題あらへんやろ ? が、白がなおも警戒した様子でプラムに問う。 「 : : : 解除、は : : : でき、る ? 」 「え ? あ、は、はいー もちろんですう ! 」 ちゃ 「くはは、安心しいよし、あての趣味とは違うさかい なにやら相互理解がなされている様子の白と巫女に、だが一人っいていけない空。 しろ ワービースト
242 事実として、エルキアの諸侯達相手でさえ、その通りだった。 だれ 可能な限り誰も損しないよう努めても、完全な平等など、どだい不可能だ。 こぶし そう、拳を握るステフに、今度はジプリールが追い打ちを掛けた。 ステフの主張が理解出来ないのか、純然たる疑問という顔で、 「ドラちゃんは何が不服なのでしよう。たった一名で滅びかけている二種族を救済しエル キアは国力が肥大、東部連合との連邦構築も近づくーーこれ以上何を求めるので ? ステフは、なおも反論出来ない まさか とジプリールが続ける。 「犠牲、不満なく世界ーー いえ、エルキア国境奪還すら可能と思ってらしたので ? 「それとも単純に と、 ) ンプリーレゞ、 ノカ一際挑発的な笑みで、一一一一口う。 エゴイズム 「身近な人に限り苦しんで欲しくないーー自己愛、利己主義の極みでございますか学 ステフが歯噛みするーーわかっている。 たった一人の犠牲で二つの種族を手に入れる。 それは、同時に放っておけば滅びていた二つの種族を救うことでもある。 それを、いの一人の犠牲が釣り合わないと感じるなら、それは それが、どうしたんですのよ :
あ ? につこにこと、何かそこまで楽しいのかジプリール、「つまりと。 ダンピール 「吸血種を死なせず、海棲種が繁殖可能な『現女王』ーーーまだその母が女王だった時、な にやら童話に影響を受け【盟約に誓って】、そう言い残して寝こけたのでございます」 : おいおい、冗談だろう。 「彼女を惚れさせる王子様が出現するまでーーっまり【盟約に誓って】彼女が定めた『ゲ セーレーン ワービースト 1 ム』をクリアするまで起きませんし、『凍眠』とは海棲種のーー獣人種の『血壊』のよ うな力でして。千年以上は眠り続けられます、がしかしッ ! 」 そう言って、ジプリールが正座し、何やら扇子を叩くような仕草で。 「残念ながらマスタ 1 、その仕組みも、当代の女王で破綻しました」 この話、いくっオチがあるんだ ? 「 : : : で、その当代の女王は何をやらかした」 そら 半眼で問う空に、だが笑顔でジプリール、今度は両手の全ての指を開いて。 『なにも』、でございます学」と答えた。 さちうす そして、ただでさえ幸薄い顔のプラムが、魂すら吐きそうな苦笑でこばす。 「ク私を目覚めさせる王子様が現れるまで起きないクと言ってえ : : : 凍眠したのですう セーレーン