ぜろから数えりやいいのか、です ? 」 ステフは理解した。 そらしろなっ なるほど、いづなが空と白に懐くのも当然、まったく同族なのだ。 天才的なゲーマー、ただしゲーム以外はからっきし、と。 ため息一つ、ステフが別の本を差し出す。 : いづなさん、こっちの本から読んでみるといいですわ」 「なんだこれ、です ? 「学生の頃、獣人語を習った教本ですわ。二カ国語対語のゲームになってて 「ーーむつ。がってん、です」 ゲームと聞いた瞬間、本を手に取り、ばらはらとページをめくっていく。 気合いは認める、真面目にやっているのもわかる だがその速さでは何も読めないだろうーーと天井を見上げステフがため息をつく。 「と : : : とにかく総当たりしていくしかないですわねー・ー」 ひそう そう、ステフが悲壮な覚悟を固めると同時。 ハ」ゅ、つ、 5 、く ( く〉 るるる、と。 うんさんむしよう 章 その覚悟を雲散霧消させる音と、言葉が響いた。 第 「ーーーステ公、ハラ減ったぞ、です。メシよこせ、ですー 0
あざわら なまぬる 冷笑すら生温い、失望すら込めた笑みでジプリールが嘲笑う。 しろ と白は、静かに兄に視線を向けた。 ジプリールが言ったよ、つに、彼女は全 あっさりと自分の身柄を提示したアズリール フリューゲル 権代理者ではない。彼女を手に入れたところで天翼種が手に入るわけでもない たやす フリューゲル だが、天翼種相手のゲームは容易いものではない。 クわざと負けることさえチラつかせたクアズリ 1 ルを取り込むのは悪くない手だ フリューゲルの まして兄は天翼種を呑み込むのも目的に含んでいる。 そう思えた白が、答え合わせでもするように兄の顔を窺い だが興味が失せて冷め切った空の顔に小首を傾げ、再度アズリールを見る。 相変わらすの見惚れるような笑み・・ーー完璧過ぎるその笑顔に。 「 : ・・ : ああ : ・・ : 」ーーーと、兄の表情の意味を掴んで、白は小さく頷く。 きびす 案の定、空はため息を吐いて踵を返した。 その話はまた今度にしよう : : : 」 試「 : : : せつかくだが、 : ジプちゃんの裸あーーー」 「えええ つな 章 食い下がるアズリールを無視して、空は白と手を繋ぎ、深くため息を吐く。 第 「 : : : 三種族手に入れる、ってステフに啖呵切ったが、後でごめんなさいしねえとな」 アズリ 1 ルを見やって、空はーー心底がっかりした眼差しで言った。 つか うなす
43 ノーマルスタート 直球で詰られて、バルテルは絶句する。 もんごんぎんみ 私は条件確認で『わたし達』と明言したわ 「盟約に誓う文言は吟味しなさい 今度こそ、バルテルは言葉を失って目を見開いた わたし達は、と宣言した以上、このゲームはバルテル対クラミー・フィール組の勝負と 見做される。ゲーム中に席を離れることを禁ずるルールはない、離れた場所からフィール いや待て、それ以前に。 が防御陣を張ったところで、ルール違反には当たらない ( 相互の姿を変え、我輩らにそれを認識させず、二階でゲ 1 ムをしながら防御陣ーーー ? ) ため息交じりに、クラミーが唇を歪める。 このアホ、やっと気づいたみたいよ ? / デ持ちなのですよお、労ってあげてはあ ? 」 「股間に血が行き過ぎて頭に回ってないハ、 、だが冷たさしか感じられない声音で、フィ 1 ルが一言う。 「こんな単純な言葉遊びにあっさり引っかかってくれるんだもの。がっかりだわ。もっと 何よ、徒労だったじゃないの」 複雑な仕掛けや保険、対策を用意してたのに 目の前で、劣等種の少女が呆れたようなため息を吐く。 てふだ 「ついでに : : : あんた手札分かり易すぎ。最初の手は必す力攻め。防がれたら呪い役。カ ウンターは好まないから使わない、さっきの手に至っては動揺そのまま、局を流して時間 を稼ぐ『攻撃無効』の役。アホでも分かーー失礼。ならあなたに分からないのも道理ね , バルテルの肩が震えた。怒り、屈辱ーーーそして認めがたい、恐布に。
144 ジプリ 1 ルは眩しそうにそれを見つめるーーーだか 退屈そうに眺めるアズリールはやはり、その意味をまだ理解していなかった。 その姿に、ジプリールは静かに告げた。 「先輩、どうして私が《共有法》に反対したか、その理由がわかっていますか ? 」 きちょうめん : ジプちゃんが儿帳面で、他人に触られるのが嫌だからにや ? 」 「違います。私はーーー同じ本を繰り返し読むのが 好きなんです , 初耳だった。アズリールが不思議そうな顔をする。 「 : : : なんでにや ? 記億すればもう不要にや」 「ええ、そう一言うとわかってたので、言わなかったのです : : : 」 ため息をついて、ジプリ】ルが意を決した様子で、一一一一口う。 「一度読んだ本も、もっと多くを知ってから読むと新たな発見があるんです」 「それを、読みたい時に読めないのが、嫌だったんですーーーわかりませんか」 「 : : : なにを、にや」 「ーーー記憶すると、そこで終わりますー 目を伏せ、言い含めるように告げるジプリールに アズリールは、やはりわからないとい、つ顔をする。
205 第三章ーー一学習 沈黙、そしてため息が応える。 それが、空の言葉を何より雄弁に肯定していた。 《答》があり、天翼種達がそれに到達出来るなら、自分が預かっている自害権を解放して ももうみんな死のうとはしないだろう。たとえ答えがなくとも、ジプリールをはじめみん なが死なない理由を見つけることが出来れば自害はすまい その時点で、誰にも自害させないために生きていたアズリールの役目は終わる。 : 空ちゃん、踏み込みすぎってよく人に怒られなかったにや ? 」 「ああすげー怒られた。けどこの世界、誰も死なせないって決めてんだ。だからーー・」 ハンっと、立日が響いた 「俺らとゲームをしようぜ」 たた 手を叩いて、笑顔で空が言った。 「また一からニューゲ 1 ムってのも辛いだろ ? 」 だから、そう、ゲームをしよう。 「だったら話は簡単だ。要するにゲ 1 ムを変えればいい」 きっと、楽しい楽しいゲ 1 ムだ。 「この世界ーーーもっともっと面白くしてやるよ」 永遠に、退屈させないゲームだ。 フリューゲル
204 そら 頭をかいて、言いにくそうに、空が告げる。 「こいつに全天翼種の自害命令を出すなんて権利ーー・ないぞ ? 」 よそ あせん 唖然とするジプリールを余所に、アズリールは苦笑した。 「あれ、バレたにや ? 」 憎たらしく舌を出して、にやははと笑う。 「許可なしの自害を禁じるーー、っちが命令すれば自害させられるわけじゃないにや ! ん うそ 六千年もよくバレなかったにや 5 こんな嘘、にやはははツ ) しろ 更に白が、追い打ちをかけるよ、つに ・ンプリール、は : : にいと、白のもの : : : だし : 「 : : : 仮に、あっても・・ マスター達まで巻き込んで。死すら覚悟したのに そう肩を震わせるジプリールに 、だが空はため息交じりに言う。 「ーーけど、アズリール一人なら出来るんだよな、これが」 その鋭い声に、ジプリールは息を呑み、アズリールは笑みを止めた。 「こいっ最初から自分以外は賭け皿に載せてないぞ。たぶんどんな結果でも一人で死ぬ気 だった。可愛い妹に死ねなんて言う姉いるわけねえだろ ? ジプリールが信じた姉だぞ ? 」 の はい ? 」
212 と、ク姉 / に笑みを向けて、 ) ンプリールは言った。 「大、丈夫にや : : : すぐ、かわいい妹の、もとにーー駆けつける、にや」 ため にやはははは、と。涙がこばれるのを堪える為に、笑って歩く。 こんな自分でさえ、たった一時間で変えられたのだ。そう時間はかかるまい 立ち去りながら、ふと立ち止まり、周囲を見回しーーため息。手を振る。 「みんな 5 誰かうちをおぶってくれないかにや 5 それと急いで議会を開くにや 5 せめてうちまでの道がないと困るから 5 道路を敷いて欲しいにや 5 にやははははは ) 」 力を封じられたまま、歩いて帰る。 その程度のことさえ出来ないことが 妙に、新鮮だった。 そんな馬鹿馬鹿しいことにさえ、一々楽しいと感じる自分を笑う。 地に足をつけて、彼らと同じ視線で、蟻の這うような速度で、世界を見る。 二万六千年も生きていれば なに、それも一興だ。 ィ一フィト 「ですが悠長にしていると名場面を見逃しますよーー『姉さん』」 彼奴らを、新たな主と認めるのか ?
257 第四章再試行 天井を仰いでこばす空に、笑顔でジプリールが答えた。 「プラム様が仰った通りではないでしようか。そうと認識すればそれがそうーーと」 一方、少し離れた場所でよ、、 ( しのがいつなと感慨深げに喋っていた。 「いやはや多くの愛の形がありますなあ : : : ふ、私もまだまだ青いですな」 「 : : : なあじーじ。いづな結局なんもわかんねえままだぞ、です」 「よいのだぞ、いづなよ、いづなも、そのうちわかる日が来るぞ」 だがため息ついて空は思うーーー果たして、そうだろうか、と。 「 : : : 俺には、永遠にわかんねえ気がする」 こうして、女王ーーライラ一人以外、誰も納得しないまま この馬鹿げたゲームは、ひとまず終わった : ■・■ エルキア王国・首都エルキアーー深夜。 たそが イマニティ 一人類種最後の国、その王城の執務室で、ステフは相変わらす黄昏れていた。 んん、わかってましたわよ、今度はオーシェンドまで併合するんですのね 仕事は更に増え、ステフの目の下のクマは定着しつつある。 この上アヴァント・ヘイムまで、名目上とはいえ加わる方向であるという。 しやペ
: いづなさん、いのさんが心配じゃないんですの ? 」 「その、聞きにくいんですけど : きよとんと手を止めーーーーなおも魚をくわえたまま、いづなが即答する。 「心配じゃねえ、です。なんで心配すん、です ? 「 : ・ : ・なんで、って : ・三」 そらしろ 「空と白が、助けるから大丈夫つった、です」 一切疑念のない断言、そしてまた食事に戻る。 ため息一つ、ステフが手元の本に視線を落とし、愚痴るように言う。 それは、以前から気になっていたささやかな疑問だったが 「巫女様もいづなさんも、なんであのク嘘つきクをそうも信用出来るんですの ? 」 確かに空達はなんだかんだと最後は締める。 だがその過程はあまりに嘘とペテン塗れだ。信用しようにも そう考え込むステフ、だがいづなが首を傾げ断じる。 「 : : : 空達、ク嘘つきじゃねえぞ、です」 たんのう いづなさん、人類語が読めるようになっても、まだク堪能みではないですわね 学 一あれが嘘つきじゃなきや何がーー、苦笑するステフに、だが 章 第 てめえを偽ってるにおい、大嫌えなにおいしねえ、です」 「嘘つきのにおい
79 第一章試行 そら 涙混じりの視線が、空達を射貫く。 睨み殺すことさえ出来そうなその眼差しの圧力に 「ほい、俺は空。こっちは妹の白。よろしく だが、ジプリールでとっくに慣れていた二人は、意に介さす受け流す。 その様子に「ほむ ? と興味深そうな声をこばすアズリールを指し、 フリューゲル 「つかなに。お姉ちゃんって、ジプリール、天翼種の全権代理の妹なのか ? 」 「そうにや学」 「違います ) 即答で , ーーー本当の姉妹のような笑顔でーー真逆の解答を出す二人。 ため息一つ、ジプリールが淡々と続ける。 、造まれの後先の話でございます。 「天翼種は繁殖しません。姉も妹も親もない 「 : : : ああ、それで先輩」 つまり、ジプリールより先に造られた個体ということだ。 一「ちなみにアズリール先輩は『全翼代理』であ 0 て『全権代理』ではございません , 「 : : : どう違、つんだ ? 「彼女は、彼女を含めて九人の『十八翼議会』のク議長に過ぎません」 言われて空も思い出す。