208 ろうぜき : ついににゃん付けですか。マスターに対する狼藉といい、私達に長年嘘を吐いてい おんこう た件といい 温厚な私もそろそろキレますが、なんでしようアズリール先輩。 呼びかけに、空間転移で横に並び、不機嫌に告げるジプリールに。 アズリ 1 ルはほっりと、自分で考えた疑問を、ロにした。 なぜイマニティ 「ジプにゃんは、かっての大戦、何故人類種が生き延びたと思うのかにや」 ・ : それは」 かね 予てからの疑問。特に最近、ジプリールを強く苛んでいた疑問だった。 と 弱すぎたため誰も気に留めず、偶然生き延びたとされている。 そら だが、空達と出会ったジプリールは、そこに違和感を覚える。 と。 大戦終結時、全ルーシア大陸が人類種の領土だったのが偶然か イマニティ 人類種ーーそのカの源を、アズリールが自分で考え、語る。 イマニティ 「負けなくなるまで負け続けるーー・それが人類種、と仮定してみるにや ? 」 敗北や失敗を前提とし『学習』を続け、未知を恐れず嬉々と身を投じる。 かっぽう 誰より不完全であるが故に誰より完全であろうと渇望する種族ーーーそう仮定するなら。 アズリ 1 ルは苦笑し、何故生き延びたかーーーではなく。 「 : : : なんでうちらは、そんな種族を大戦中気にしなかったのかにや ? の ジプリールは、息を呑んだ。 うそ
端的に一言えば、フィールはフリツツの直球ドッポだった。 きょ・つ 「あら、こんなところで奇遇ね。バルテル卿の執事 : : : フリツッと言ったかしら」 ツにおまえはニルヴァレンのーーー」 イマニティ どれい 慌てて振り向くと、そこにいたのは黒髪黒装東の人類種 : : : ニルヴァレンの奴隷。 クラミーと言ったか、とフリツツは舌打ちした。 「 : : : ちつ、貧乳が。気安く声をかけるな」 イマニティ ますもって人類種の哀れ乳に話しかけられたのが酷く不愉央だ。 まして今はそれどころではない。 バルテルのサポートをしつつ、フィールのおつばいを余すところなく観賞するという重 要な仕事があるーーーだがこちらの内心など知る由もないのか、貧乳は親しげに続ける。 「こんなところで会ったのも何かの縁。私にゲームをク仕掛けてみない ? わきま 「 : : : ロの使い方を弁えろ飼い大。せめてその乳を三倍にするまでロを開くな劣等種」 けいべつぶべっ 軽蔑、侮蔑、無数の意図を含んだ言葉に、だが少女は、 「ロの使い方 : ・・ : そ、つ ? じゃあ例えばーー」 笑顔のまま、目を細める。 ばくろ 「あなたがバルテル卿と不正してることを暴露するーーーなんて使い方はどう ? 「 : : : なんのことだ ? ひど
この四十回の局面で、クラミーが『攻撃』を受けたのはほんの数回。 それも偶然の要素が大きい初期の局だけだ。残りの局はーーー全て手札を読まれた。 イマニティ エルフ 森精種ですらない、ただの人間、劣等種が 「ーーーあまり、人類をナメるんじゃないわよ、老害」 得体の知れない、黒髪の少女が、 「 : : : さあーーーゲ 1 ムを、続けましよ、つ ? 」 死に神のように嗤って告げた。 鋭く奔った精霊流がバルテルの腕を捕まえーー精霊回廊接続神経をかき乱す。 名状しがたい苦痛に、齢数百の老人は子供のように泣き叫んだ。 そして、庭園に咲いていた花を吹き散らすほどの衝撃が収まった後 イマニティ ささや 椅子から転げ落ちてもがき苦しむ森精種の老人に、人類種の少女が優しく囁いた。 きょ・つ これで四周目が終わったわけですが。どうされました、バルテル卿 ? 「ひいつ、ひっ : フィール・ニルヴァレン へキサ・キャスター : 我が主は 「ちなみにお気づきでしようが、フィ 1 『六重術者』です。 耳元で囁かれたその言葉に、老人の顔が紙より白く青ざめる。 それが嘘ではないことは、すでに理解している。 めいじよ - っ わら よわい
233 第四章再試行 あ 「ゆ ゞ、卆ナていた。 海を震わせる衝撃、頭上を見上げるとーー空カ石 : そうとしか表現できない。海中からも見えるほど亀裂が走って割れた空が、巨大なガラ あか スのように降り注ぎ、海に突き刺さりーー天と海を、血のように紅く染め上げる。 そんなガラス片に紛れるように、声の主も、海に降り落ちてくる。 おれ ・落ちてく 5 るう 5 う : ーーー愛で 5 空が 5 : っと」 胸に大きく『—学人類』と書かれたシャツを着た、黒目黒髪の人類種の男。 イマニティ そして隣には、対比的に、白い髪に紅い瞳をした人類種の少女。 二人とも、魔王を思わせる漆黒のマントを揺らめかせ、邪悪な笑みで告げる。 スリーピンビューティ そらしろ 「はじめまして眠り姫、お休みのところ毎度お騒がせ、空と白でございま 5 す」 : こん、ちわ : : : 」 : ふ、つん ? 今回は、こういう趣向なのね。 一多くの男が、様々なシチュエーションで口説きに来たけど、こんな登場は初めてだ。 でも、違うーーわたしが欲しいのは『真実の愛』ーー奇をてらったものじゃない。 うれ 「ごきげんよう、夢の来訪者さん。来てくれて嬉しいわ」 その一言で、おしまい。わたしの声ーーー魅力に逆らえる男なんて イマニティ つくツツい」
だが、相手はあのニルヴァレンの恥だ。 フィール・ニルヴァレン ニルヴァレン家はじまって以来の無能 リンクタトウ ブースタ シングル・キャスト 学院ー『白の楼樹』でも落第、手の甲や額の刻印術式と補助魂石なしには単一術式す トライ・キャスト やおちょう ら危うい落ちこばれ。対するバルテルは三重術式の使い手。ましてや八百長勝負に油断し ている愚かな巨乳が相手だ。たとえ自分が一瞬抜けたところで何の問題がある ? ク透視クする。伏せられたこちらのカードは『エース』。 残念ながら事前に見抜けなかったが、相手が提示したゲーム。イカサマは確実だ。 イマニティ 魔法の気配はなかった。それは断言できる。ならば人類種に出来るイカサマ 意図的なシャッフルで引く札を操作したか。 何にせよ、この貧乳の札は自分に勝てる札ーーー『クイーン』なのは確定だ。 あらかじ 予め提示された、三枚しかないカード。 仮に自分の伏せ札の『エース』を『キング』に描き換えても、伏せられた一枚をめくら れた時点で不正が露呈する。 だが、ならばク相手の伏せ札と自分の伏せ札の絵柄を魔法で入れ替えればいい。 作為的に札を引き自分の伏せ札を把握していたとしても、それ自体が不正。 イマニティ まして入れ替えたところで、魔法を感知出来ない人類種にはそれを立証出来ない とでも思ってるのだろうか、と。 さくいてき
あば 主二人は言うまでもなく、東部連合のゲームを暴いた先王、森精種と組んだクラミー。 彼らが示した可能性は畏怖さえ抱く程、既に身に染みていた。 ゆた 彼らは時に狂気に、死にさえ身を委ねーーーそれでも次へと繋げる種族だ。 「果てなく学習を続ける種族ーーーそんな脅威を何故気に留めなかったのかにや 5 」 か 如何に脆弱でも、永遠を重ねれば必す不可避の脅威に必ず至ることを意味する。 そんな種族の本質に気付いていたら、大戦時、自分はどうしただろうか。 まっさっ 考えるまでもない ク危険過ぎる % 即座に抹殺したはずだ。 イマニティ 「 : : : なのに人類種の記録はーーー一切ないにや。なんでかにや ? 」 イマニティ そう、大戦時の人類種の記録は一切遺されていないーー不自然な程に。 「にやははは 5 ま 1 ふと思っただけにや。ひょっとして、っちら しろ そ、つして、アズリールは空と白に視線を送り、 「まんまとル 1 シア大陸から戦線を外されたんじゃないかにや 5 と 習そ、つ、いかにも彼らがやりそ、つなことと、 学 ェクスマキナ ふか力い 「アルトシュ様を討った機凱種の大戦末期の動向は不可解だったし、もしーー」 章 そう 目だけは笑わすに笑い、結論づけた。 第 「人類種が誘導していたとしたら もしーーー大戦終結の引き金となったアルトシュの死が、
202 そら イマニティ 「 : : : 四つ質問していいかにや人類種 いや、空ちゃん、白ちゃん」 そう、答えなどない。振り出しに戻っただけ なら確認すべきことがある。 「キミらは : : 何で生きるのかにや ? 」 「白がいるから」 し力、いる、から」 「どっちかが死んだらどうするにや ? 」 「死ぬ時は一緒だからどうもしねえ」 「 : : : 右に、同じ」 「キミらは : : 何のために生まれてきたにや」 「さあな ? 」 「そんなこと考えてるほど暇じゃねえんだ。おたくらと違って、短い人生だからな」 「・ : ・ : 忙、しい 全て即答で。空は笑顔で、白は大真面目に答えた。 参考にしかならない だがーーーそれは自分の答えではない と、アスリールは問、つ。 だから最後に 「、っちも : ・ジプちゃんになれるかにや ? 」 「そりや無理だ。おまえはおまえ自身にしかなれん」 しろ
「 : ・・ : 先輩。よ、つやくお目覚めですか ? 」 ーー全身が、酷く重い。それが目覚めたアズリ 1 ルの最初の感想だった。 翼が動かない、身体に力が入らない そも、身体に力を入れるということを知らないのだ、と気づく。 身体とはどう動かすものだった ? 空間を舐めるように , ーーではなかったか ? こんなにも強く、身体を縛るものだったか ? 地とは 重石のような頭をもたげて、アズリ 1 ルは自分にかかる影を見上げる。 そらしろ イマニティ シフリールとーー・空と白、二人の人類種。 見下ろすのは、。 ' イクシード かいじよれっさい力い 習【十六種族】位階序列十六位。最弱の種族が自分を見下ろし、言う。 章 「チ 1 ト性能で俺して、負けイベント一つでクソゲ認定とか意味わかんねえ」 第 苦笑交じりで言う空に白が笑うーーーその言葉の意味を理解は出来なかったが ) ンプリール、と・
142 「む : : : また戦略変えてくんの ? 」 そらしろ 即座に発見される。姿を現した空と白に、だが追手たちはその出方を警戒。 まわ 直線で向かわす包囲するように、一斉に廻るような軌道で迫る。 誰も、思ってもいなかったのだろう。 カくい、つプラムも、予想していなかった。 フリューゲル 向かい来る天翼種達の前で、手を合わせて二人は、【言霊】を紡ぐ。 三文字が消失する前に自分達に触れて、叫ぶ。 カ・ソ・ク ■・■ そして追手のみならず。 プラムも、観戦していたジプリールさえ絶句した。 わず ゲーム開始から、翼を手にしてから、僅か十五分にも満たない時間 プラムから借りているだけの、人類種二人が一打ちした翼が かなた 音を遥か彼方へ置き去りにする衝撃波だけを残して。 直線距離で、天翼種を真っ正面から振り切るなど、誰が予想したか。 フリューゲル イマニティ つむ
260 あれが、唯一神側の持ち駒なら。 各種族のコマも、それぞれ役割があるのだろうか。 そら 他の『種のコマ』を見たことはないが、空達が見せた『人類種のコマ』は、 「 : : : キング、でしたわよね : : : 」 キング。それはチェスにおいて ク最弱のコマ〃だ。 重要度は最大、だがキングの特曲は、ポーンにも劣るのは常識 「いくらなんでも、考えすぎですわね : : : はあ、仕事仕事」 同時刻 エルキア王城中庭。 すなわ 東部連合の建築技術によってようやく完成した空と白の城ーー・・即ち小さな木造の家。 空達の注文どおり畳を敷かれた部屋に、乱雑に散らされた無数のゲームと本。 その中、狭いスペ 1 スに布団を敷いて静かに寝息を立てる兄妹に。 音も気配もなく、歩み寄る影があった。 だがその影に 「ーーよ、プラム。こんな時間に何の用かな ? 」 「・ : ・ : すいみん、ば 1 が、 しろ イマニティ