160 どこまでも伸びやかに。楽しそうに。リスクさえ笑うように空を舞う主二人。 と・つ・んい だがその姿が投影された虚空を眺めて、なお理解できない様子で。 ただ顔をしかめるアズリールに、ジプリールが何度目かわからないため息をつく。 : このままではマスタ 1 達は勝利するーーーだがそれだけでは意味がないのだ。 ッ アズリールは何もわからぬまま、マスター達の期待まで裏切ることに なぜ 「 : : : 先輩、何故わからないんですか : 「このまま全員に自決を命じるんですか。あの子達はあなた一人のせいで死ぬんですか」 その焦りを色濃く滲ませたジプリールの言葉が、アズリールにはわからない フリューゲル 何故、天翼種が死を恐れる。 天翼種にそんな感情はないはすだ。 しかも自分の死ではなくーーーあの子達を心配しているのか ? 「マスター達の顔、あの子達の顔を見ても、まだ何も分からないんですか。あなた一人が ぐどん 愚鈍なせいで、あの子達の可能性を閉ざし、この六千年が無駄になるというならーーー」 フリューゲル
182 打とうとして、だが。 「ーーーあ、あれ ? 」 そらしろ プラムかこばす。い や、空と白も心境は同じだった。 フリューゲル 迫ってきていた天翼種達が、空と白の前でーーー止まったのだ。 うやうや 恭しく、そう、まるでジプリールのように天翼種達の一人が一礼して、 「必要ですよね。この文字が」 かざ : そう言って、自分の胸元の『ハ』に手を翳し、言った。 なら それに倣うように、残る文字持ちの五人もそれぞれの文字を見せる。 その真意を測りかねて、戸惑う空と白に、だが天翼種達は、微笑を浮かべて言った。 「あたし達はもう、十分魅せて貰ったからーー」 「握手券サイン券デート券添い寝券は、う 5 ん正直借しいけど 5 ッ ! 」 「お二人とゲームが出来ただけで十分満足しましたので ) 」 「ーーーですから、どうか、お願いします」 そして最後の一人の言葉で 「アズリ 1 ル姉様をお願いします、そう遠くない・・ーー未来の私達の主さまー よ、つやノ v' 。 空と白は、このゲームに ジプリールが仕組んだ罠を理解した。 フリューゲル フリューゲル
170 人込みをかき分けてこちらへ向かい突進してくる複数の人影ーーー幼い子供の姿。 「な、なんですの ステフが驚き、棒立ちになった間に、子供達はステフといづなを取り囲んだ。 それから一斉に、やいのやいのとやかましく声を重ねる。 「いづなだ ! すげ】、本物だ ! 」 いづなー、勝負しろよ】。超強いんだろー ? 」 「あんたたち、ばか。ちょーばか。様をつけろ、デコスケ」 「 : : : なんだてめえら、です ? 」 はしゃいだ子供達の勢いに押されて、いづなが困惑した声を上げる。 ステフはどう止めに入ろうか思案したがーーーふと、その騒ぎ立てる子供達の中に。 ワービースト 獣耳や尻尾ーーー獣人種が交じっている事に気付いて、慌てて声をかけた。 「あなたたち、何をしてるんですの ? 」 「あそんでるの ! みんなで ! 」 子供達の一人ーータヌキのような丸い耳の少女が舌っ足らずな口調で答える。 ワービースト 「みんな : : : お友達ですの ? 獣人種の子たちも ? 「そ、つだよー ? 」 ぼうぜん 呆然と問いを重ねるステフに、丸耳の少女がきよとんと首を傾げる。 イマニティ その隣から、人類種の男の子が嬉しそうに声を上げた。 かし
154 一瞬の、ラグ。そして。 問答無用に、あらゆる法則を無視して、瞬間的に。 アヴァント・ヘイムそのものが、水平に『廻った』。 「「「はああああああああああ プラムのみならす、『捕縛光』を放った天翼種全員が いや、上空から見ていた者、遠隔で見ていたジプリールまでもが声を上げた。 アヴァント・ヘイム まわ フィールドそのものが水平に廻れば、どうなるか フリューゲル 空中にあるものーー空中を走る『捕縛光』や天翼種達はそのままに。 大音量の絶叫さえドップラー効果を伴い、フィ 1 ルドにーー地に手足をつけていた者達 フリューゲル そらしろ 即ち『捕縛光』を発射した天翼種達と空と白二人の位置が。 反転し、入れ替わる。 「「「きゃあああああああああ凵」」」 「発射した本人達すら回避不能に、突然目の前 ( 、 リこ迫ることになるわな ? 」 そう笑う空のロが、引きつっているのが、白にだけは見えた。 ・ヘイムを廻す イメージした通りの位置を中心に廻って貰わなければ光が迫る方向が変わるだけだ。 アヴァント フリューゲル
125 第二章ー - ー失敗 「元々はアズリ 1 ル先輩が、主亡き天翼種の存在意義を見出すまで、自害を禁止するため ご・目・田に 取り上げた権利ですので。私達に存在意義なしと判断されるなら フリューゲル 元より天翼種に死の恐怖は薄い。 一同に走ったのは恐怖ではない 兵器として作られた種族、永遠を生きる種族にとっては誉れですらある。 それでも、参加者に緊張が走ったのは『期待』からだ。 何かが始まるか、何かが終わるか それだけの違い。だか その予感に、ただ期待している空気だった。 「 : : : わかってる、なら : だが、この場で唯一、アズリ 1 ルだけがそれを理解していないらしい その様子に、ジプリ 1 ルはやや失望した眼差しを向ける。 むしば その眼が、何よりアズリールを蝕む。 「アズリール先輩。あなたにもわかるはずです。我々ーー天翼種の根本的な勘違いを」 空達は、知らない。 だがジプリ 1 ルは、空達と出会ったことでー・ー明確に変わった。 空達に負けるまではジプリールもー・ー・何か違和感を覚え、行動はしても。 基本的なところでは、やはりアズリールとさして変わらなかった。 未知を既知に変えるーーただそれだけに、意味を見出していた。 フリューゲル われわれ フリューゲル
206 . 」 ~ やははは、」 ~ やはははははははははははは・はツ凵・」 「にやは : しや、もしかしたらはじめてーーー本心から笑った。 心からーーー六千年ぶりに。、 人類種に身体性能を縛られたせいだろうかーーー笑いすぎて、お腹が痛む程に。 笑いすぎて、涙さえ零しながらアズリ 1 ルが顔をあげーーそして。 そら おもむろに空に抱き付いて、キスをした。 「んむつ」 マ、マスタ 1 ツア、アズリ 1 ル先輩ッ凵」 : たつぶり数秒、ねぶるような口付けを経て、アズリールが離れる。 「にやはは 5 どっちも『出来る』に賭けるゲームは成立しないにや学」 ぼうぜん 呆然とする空と、視線で殺す勢いの二人の視線を受け流して言う。 「俺達 : : : 死のうとしてるうちに、一緒に楽しむ席をくれるお誘い本当に嬉しかったにや。 でも うちはジプちゃんみたく空ちゃん達の傍にいる資格ーーーまだ、ないにや」 「俺達にそれが出来るか否か・ーーさあ、どっちに賭ける ? イマニティ へ
258 書類の山は日に日に高さを増していくが、それが更に増えるのを想像し。 恐怖のあまりステフは視線を逸らしーーだが、思う。 「 : : : 実際、貴族達はこれで、黙ってくれたんですのよね : : : 」 認めかたい事実に、ステフが書類に目を落としため息をつく。 連日連夜、利権を求めゲ 1 ムを挑んで来た権力者達の姿はーー・・もうない そら 今は、空達がオーシェンドから手に入れた広大な海洋領土と資源の分配に関する手続き エルキアと が山積するのみーーそれでもステフを睡眠不足にするには十分だったが 東部連合 : : : 致命的な国力差に見通しも立たなかったク連邦構想 % の状況は一転した。 セーレーン 海棲種の領土ーーっまり領海からの海底資源。 エルキアにも、東部連合にも採掘不可能なク海底資源クを手に入れたことで、本来なら 東部連合と併合すれば失われた利権は、だが新たに、膨大に発生した。 それを餌に各方面を日和らせるだけで、驚くほどスムーズにことは進み始めた。 っふや あまりに馬鹿げたゲーム、呆れるしかない結末ーーだがステフは、ふと呟く。 とは、さすがにない : : ですわよね ? 」 「 : : : はじめからこれが目的だった 元々はプラムが空達を訪ね、偶発的に発生した今回の件。 だが最後のゲームに巫女ーーーっまり東部連合が関与しなかったことで、オーシェンドの 資源は全てエルキアが独占する形になり、連邦最大の障害だった国力差は、逆転というに は程遠くとも現実味を帯びる程度には縮んだことを、ステフは疑わすにいられない。 えさ あき
「今まで通りに違法な商売を続けなさい」 「そしてえフリツツさん ? あなたは半月後ーーーク全てを自白クするのですよお」 と、つい、つ、一」とたと バルテルもフリツツも理解が追いっかすにいる中、クラミーはテ 1 プルに近づき、 いとま 「それじや私達はそろそろお暇するけどーーーその前に」 ゲームに使っていたタロットカードをシャッフルしながら嗤、つ。 「置き土産に、あなた達の未来を占ってあげるわ」 「あれえ、クラミー、そんな特技があったなんて初耳なのですよお ? 「ええ、今日はじめてやるもの。でも この占いは絶対よ」 冗談めかした様子で、だが不気味にクラミーが四枚の札を手にとり 「あら、面白い札が出たわね。えー私が見るに 5 ? 言って、四枚の札を手に持ったまま一枚すっ裏返して見せて行く。 【節制】の正位置。 「あなた達は今後とも万事順調に、地精種への魔薬密売を続けるみたいね」 ザ・タワー 【塔】の正位置。 テンペランス ドワーフ わら
138 恐る恐る、プラムが尋ねた。 : え、あの : : : 今のは : 「何って『穴』だ。触れたものに機能する【言霊】 ク空間に ・ : 穴、空けた」 「 : : : だか、ら : プラムが絶句して回想する。 つな 自分達を中心に、左右の空間に穴を空け、繋ぎ、天翼種達の挟み撃ちを回避。 そら 穴から出れば当然、空達に向けているのは背中ーーー『文字』を回収ーーーそれより。 「 : : : まさか、文字を持ってる人だけ誘導したんですかあツ」 そろ 「ああ、だが目的の文字は揃わなかったんでーー」 じゅず 何でもないように肯定。数珠のように連なった腕の文字に、空が不敵に視線を上げた。 釣られて、プラムは視線を上に移す。 フリューゲル ・ : すると四、五、八ーー十二人の天翼種が、恐ろしい速度で向かってきていた。 「あわわわわわわどうするんですかこれええッ 「回収、上から、十二人引くーー予定通りだ、騒ぐな」 . にい、抜けられ、る ? 」 高速で空と白が飛び抜けているのは人ひとり通るのがギリギリの隙間だ。 つまり次に大きな空間に出た瞬間に襲って来る天翼種が , ー、ー十一一人。 それを、だが空は不敵に笑って しろ フリューゲル フリューゲル このゲ 1 ムのルールだろ
117 第二章ーー失敗 「さあ、です。海棲種が触ったか、海棲種に触った手えで誰か触った、です こくん、と首を傾げていづなが一一一一口、つ。 わたくし 「ソラやシロ : : : もしくは私達ですのに」 : ? 違え、です。ここの本全部と同じジジイのにおいが混ざってるだけ、です 自分達のにおいではない。空や白のにおいでもない そもそも空達はオーシェンドに行ったあと、ここに来ていないはすーーーなら いっ触ったかわかりますの ? 」 前のめりに問うステフに、だが困った顔でいづなが指折り、答える。 「 : : : 指、たりねえ、です : : : 」 だが、それは、十年以上前のにおいだと断言しているに等しかった。 「 : : : ま、待って下さいな。そこまでわかるんですの ? 「ステ公はわかんねえのか、です ? においは残んだぞ、です」 そんな異種族の常識がわかるかと内心叫ぶも、これでーー謎は全て解けた。 もら いづなに手伝って貰えと言った真意、空と白が読んだ本を特定した理由、そして。 十年以上前に、祖父が海棲種と関わったことを裏付けることが出来たツー ッ あとは 「そ、その前後に書かれた本を特定することは出来ますのに」 すんすんと鼻を鳴らして、いづなが小首を傾げる。 セーレーン セーレーン セーレーン