そして ッ プ 最後にフィニッシュラインでチェッカーフラッグを浴びたのは、二台ともほほ同時だっ 「お、終わった、のか : あせ アびっしよりと汗をかきながら、ユースフは言った。正規のグランプリに比べればはるか きんちょう 周に短い周回数と時間だったが、それでもレースの緊張は、ユースフの気力を大きく削ぎ落 庫としていた。 フサーキットの脇に〈シャドウ〉を寄せ、がつくりと両膝をつく。そのまま機体の両手を ンっき、駐機態勢。コクピットを開放する。 フ「ふう」 雲一つない青空がのぞく。吹きつける風が心地よい。コクピットから垂れ下がった縄ば しごで、ユースフは地面に降りた。 きんさ 『まさか、ここまで僅差の勝負になるとは思わなかったよ。写真判定でも判別がっかない んだ』 ちゅうき わき ここち りようひざ なわ
うめ でいる。そのコクピットで、達哉は完敗に呻いこ。 「順当な結果であろうな」 さんじよ・つ 動かなくなった〈シャドウ〉の惨状を前に、ユースフは非情に言い切った。 ちが 「そもそも、目方や足腰が違いすぎる。〈シャドウ〉の機体重量が一〇トン足らずで、対 する〈ェイプラムス〉は六〇トンを超えておる。言わば、人の身で牛を止めようと試みる ようなものよ」 ザ「 : : : てめえ、人ごとだと思いやがって」 ナ まうほ . ってい ア 々の体で〈シャドウ〉のコクピットからい出した達哉が、地面に寝っ転がったまま クュースフをにらむ。大きく胸を上下させており、息も絶え絶えの有様だ。 もど と、そこにスタッフとの打ち合せを終えたアデリ 1 ナが戻ってきた。 「しかし、やはりタッヤに任せるべきではなかったのでは ? メやや不信げな声で、アデリーナはユースフにそう言った。ちらりと一瞬だけ、達哉に目 フ線を向ける。 「わたしが今の勝負に挑んでも、戦車に勝てたかは分からん。だが少なくとも、真っ向か らぶつかることしかできないタッャよりは、ましな勝負ができたはずだ」 いっしゅん
上げてきた。 四つのタイヤがアスファルトを噛みしめ、急加速。ガソリンエンジンを高らかに響かせ じよじよ クながら、徐々に〈シャドウ〉に追いすがっていきーーそして、あっさりと抜き去ってしま プった。 コクピットのスクリーンに映った敵手の後ろ姿を、ユースフは切れ長の目で鋭くにらみ サ つける。 ア「ここまでは当然。だがーー」 周 庫「やつばこ、つなるよな」 予想通りのレース展開を、達哉はやや白けた目でながめた。先行するレーシングカーは、 タ ン たた フ「ユースフのやっ、あそこまで大口叩いてこの様かよ」 思わず毒づく達哉の前で、アデリーナは言った。 「いや、これからだな」 ほば同時に、レーシングカ 1 は最初のコーナーへと差し掛かった。およそ一八〇度の大 〈シャドウ〉をさらに引き離していく。 ざま するど
チャララ 5 ン ) チャララララララララ 5 ント . チャララ 5 ント . の狭苦しいコクピットに、荒い呼吸音が響いていた。 「く、くそ」 いちのせたつや あぶらあほお 顔を引きつらせながら、市之瀬達哉はうめいた。脂汗か頬からあごにかけて流れ、した ザたり落ちる。 ナ アひどく不快な感覚だ。全身をマスター・スーツによって半ば拘束されているため、汗を クぬぐ、つことさえできない。 ッ 「なんで、こんなことに : ごと 意味のない繰り言だと、自分でも分かっている。だがそれでも、ロにせずにはいられな ル メかった。 ル フ 今、達哉が乗っているのは、〈シャドウ〉。ロシア製の第三世代型で、達 哉が初めて乗った機体でもある。 実戦で、あるいは演習で、様々な困難を共に乗り越えた相棒だが、今日の『敵』は極め せまくる あら ひび こ・つそく きわ
「 : : : 無理だな」 「そ、つ思、つなら、よく見ておけ。そして、ユースフの技術を盗め 「ああ、分かったよ」 しんけんまなざ すなお 素直にうなずいた達哉は、真剣な眼差しを疾走する〈シャドウ〉に向けた。 「これは、想像した以上に Z — O なレースになったね』 「ええ、とてもだわ』 ザ ジョーイとジェニファーの一一一一口葉通り、〈シャドウ〉とレーシングカーのレースは、一進 ナ ア一退を続けていた。 ク直線でレ 1 シングカーが引き離しては、コーナーで〈シャドウ〉が追いすがり、時には ッ 一 ) うば硺・つ あや いつばっせんきん 」抜き返す。言葉にすればそれだけの単純な攻防が、一髪千鈞を引くようなぎりぎりの危う ルいバランスで、果てもなく繰り返されていく。 タ メ レ うめ フ〈シャドウ〉のコクピットで、ユースフは呻く。 よ・つと きみよう <()n と車という、構造も用途も全く異なるビークル同士の、奇妙なせめぎ合い。二周、 三周と、周回数のみが積み上げられていく。 めす
つけだった。 きど・つ ・つな 直線主体の角張った車体を、無限軌道が支えている。ガスタービンの唸りを、〈シャド ほうしん クウ〉の高感度マイクが拾っていた。そしてこちらをにらみつける、長大な砲身。 ッ まぎ プ コクピットの正面モニターに映し出されていたのは、紛れもない戦車の、威圧的な姿だ った。 サ 「 : : : 帰りてえ」 ノ ア ばやきながらも達哉は、事の発端を思い出していた。 年 周 庫「 e の取材っすか ? 」 ア こぢんまりとした社長室で、達哉は軽く首を傾げた。 タ 「そ、つい、つこと ン けげん フやや屋訝そうな達哉の声に、社長のメリッサ・マオはにんまりと笑う。 O ダーナ・オシー ・ミリタリー・サービス ここは達哉が <co オペレータとして身を置く民間軍事会社、 Q ・ o ・・ co ・の総合 訓練キャンプだ。カリフォルニア東部の山中に設けられており、窓からはシェラネバダの 山々がのぞいている。 「ケープルテレビのミリタリーチャンネルで、 < ()n の特集を組むらしいのよ。それで、う 138 ほったん かし あっ
( 今にして思えば、班長もカルロスもげ出したんだな ) 回想から現実に返り、達哉は〈シャドウ〉のコクピットで歯ぎしりした。 パワーため 『じゃあジェニファー 、まずは <<U) の力を試してみようか』 『そうね、ジョ 1 イ。でもあの〈シャドウ〉って <<()n 、中々のハンサムだわ。私、今日は おうえん 彼の応援をしちゃおう』 『そうかい。でも彼の相手は、中々の強敵だぞ。合衆国の誇る主力戦車、〈ェイプラ ムス〉だ ! 』 ザ通信機から、番組司会者の陽気な掛け合いが聞こえる。 ナ アそもそも、キャンプから〈シャドウ〉を積んだヘリで向かった先が、海兵隊基地という あや ク時点で怪しむべきだった。 」現地で合流した番組スタッフから告げられたのが、この『三本勝負』である。そし てその一戦目が、こともあろうに戦車とのカ比べだったのだ。 ほほえ 1 s t M a ュ n e D 一 s i 0 n せいえい メ『第一海兵師団の精鋭と、のべテラン兵士。果たして、勝利の女神はどちらに微笑 フむかな ? 』 『がんばってね、〈シャドウ〉』 「いっ俺がべテランになったんだよまだ初めて ()n に乗ってから、半年も経ってねえ めがみ
っている。 『続いて、今度は <()n の速さを試してみたいと思うんだ』 それは楽しみね』 さっえい 昨日の海兵隊基地からは場所を変え、今日の撮影はカリフォルニア州西部のサーキット へと移っている。 「たかね、ユースフのや ? 「彼ならば、任せて問題あるまい」 わき ザコース脇のピットで、達哉とアデリーナはそう言葉を交わしながら、グリッドの方を見 アやった。そこにはすでにユースフが乗る〈シャドウ〉と、エンジン音に車体を震わせるレ ク ーシングカーが待機している。 」両機ともレースの開始を、今や遅しと待ちわびていた。 ふつう 「レーシングカーって言っても、見かけは普通の車とあんまり変わらないんだな。色は派 タ 手だけど しはん フ「外見だけはな。中身はシャーシからエンジンにいたるまで、市販車とは全くの別物だそ うだ」 「ふーん、くわしいな」 ため おそ ふる
け「いいよ」 つぶや と、俺は呟いた。 ン ほお ゾ ほっと赤く染まった頬に手を当てると、とても熱かった。 れ こ「じゃあ、とりあえず俺が中へ突っ込むから、相川は後ろから突っ込んでこい バックでやろ、つってことか くそ、なんて野性的で、そして豪快なんだこの人は。 205 短髪の少女に声を掛けられて、アンダーソンくんは手を振る。 「わかったー」 「 : : : アンダーソン : : : くん」 俺は熱を帯びた視線を送っていた。 いっしょ 一緒に行こうか」 「よし、相川、 しんし 一緒にイクだって ? なんて紳士なんだ。 男なんて、自分勝手に果てていくモノだ。 それを、一緒にイクだなんて : たんばっ ご・つかい ふ
第 24 回 大 ファン 9 著 : 武葉コウイラスト : 血 ny