23 プロローグ コート上て軽口をたたき合ったりしているムードメーカーたちも、互いのエースのプレー えがお ひとみあっ 感化された様子ぞ、表情は笑顔ながらも瞳には熱い炎が揺らめいている。 じよばん まだまだ、まだまだ戦いは序盤も序盤。 きようえんおが 、学生たちの競演を拝ませ これからいったいどれほど、俺は想像と期待のさらに上をいく月、 てもらえるのだろ - フ。 あまりにも楽しみすぎて、危うく自分もコート内に飛び込んてしまいそうになるほどごっご。
276 「うるせーよ」 もう少し質問をしようとおもったけど、赤ジャンは時計を見ながら自分勝手に走り去ってし まった。 : せめて、名前くらい聞いておくべきだったよな。 「大丈夫か ? 」 ふたり ひとまず、妹たちが心配だったのてコートに入り、ばーっとしたままの二人の近くてしやが み込む。 にーたん」 「 : : : なに、なんなのあれ。 「ボクたちより、ちいさいんだよ。ボクたち、一一人だったんだよ。 なのに、負けた。完敗した。 つばきひいらぎ この事実が、椿と柊にとってどういう意味になるか もう、バスケなんてせんぜん勝負にならないから、止めちゃおうと思うか、それとも。 「言い訳、てきねーな」 「つ からだ 「身体の大きさても勝ってたし、得意のコンビブレーも自分たちだけ使えた。それても負けた ってことは、言い訳の余地もねえ。お前たちの完敗だ」 これて、二人は認めなくちゃいけない。実力て勝てない相手なんて、バスケのコートの中に は嫌ってほどいるってことを。 や ・なのに、なのに」
0 2 ようす ひとみ 破を受けてもなお、ギラギラした瞳をコートに向けたままの葵。両者の様子が偶然同時に視界 けいけんけいしよう に入り、経験が警鐘をけたたましく鳴らす。 ねら まずい、何か、狙ってる。 「みんな、気をつけて ! 」 先制点に驕る 思わず叫んてしまったが、決してこちらの五人に汕断があったわけてはない。 ことなく、全員が間をおかず気持ちをディフェンスに切り替え、自陣に戻ろうとはしていた。 ただひとつの問題は、相手の速さが想定を大きく飛び越えていたことだけ。 「つば ! 」「ひー ! 」「ゲッタン ! 」 ひいらぎ つばき まさみ エンドラインから雅美さんが椿ちゃん ~ パスを出したその直後、今度は椿ちゃんから柊ちゃ しゅんそく いなずま ん〈、さらに柊ちゃんからかげつちゃん ~ 。コートの中心に稲妻を描くような瞬息のパスて、 俺たちは一気にフリースローライン近くまて詰め寄られてしまった。 「まかせてつー うわぜい 豊かな上背をグッと沈ませてドリブルてゴール さらにかげつちゃんは足を止めること無く、 下への到達を為そうとする。 まさに電光石火。短期間てここまて息の合ったパスワークを身に着けられたのは対抗心が産 ゅうしゅう たまもの み出した執念の賜か、はたまたコーチの優秀さ故か おそらくは両方だろう。 おれ な あおい
26 7 scene. 5 「おうよー。あんなもんてよければいくらても。あ、そいや七芝ってもうすぐ学園祭なんだっ 、再来週てす」 いっしょ 「暇だったら一緒に游一びに行こ , フよお、ちゅんちゅん」 あおい 「いいね、いこっかな。葵ちゃんのメイド姿も見たいし 5 」 ど、どこてその情報をち、違うんてす、私は反対だったんてすけど にぎ うわそら おれ 女子高生たちの賑やかな会話を上の空に、俺もコートに戻りながら気合いを入れ直す。 ま、そんなことまて心配していたらきりが無いか今日のところは遠くまて足を伸ばしたん だし、自分のバスケに集中しよう。学園祭シーズンも控えていて、今月は何かと同好会の予定 が組みづらいしな。てきるうちに、てきることを、てきるだけこなしておかねば。
204 ほうよう ゆだ だから、残りの距離は。ホールに委ねる。長年親しんだグリップを指先に感じながら、プロッ ほうぶっせん クのさらに上。緩やかな放物線て放ったシュートの行き先を見つめる。 しゅんかん けんそう ありとあらゆる喧噪が聞こえなくなって、静寂の世界に誘われた次の瞬間。垂直に射貫か まさつおん ひび れたネットの摩擦音が軽やかに響き、それが合図てあったかのように巻き起こる歓声。 きかん おれ ようやくそこて、俺の自我がべンチサイドに帰還した。 ともか コートの中ては、ラストショットを収めた智花が満面の笑みの仲間たちから、一斉に祝福の 抱擁を受けている。 俺もまたガッツポーズて最高の試合を締めくくりながら、つい先ほどまてこの身を包んてい はんすう ふしぎ た、白昼夢のような不思議な感覚を反芻する。 なにが起こったのか、現象を正しく説明することは難しいけれども。 「 : : : ありがとう」 今口にすべき言葉は、この他に何も思い浮かばなかった。 「いよっしゃー勝ちい ! ゆる きより やつばすごいなーもっかんは ! 」 し え
121 scene. 3 あかし 自信たつぶりな言葉は、それを裏付けるだけの努力と成長を、自分の目て見届けてきた証な のだろ , フ ならばその信念を汚さぬためにも、 100 % のフル。ハワーて迎撃するのがコーチとしての俺 の務め。 「なら、 ーさ。んじゃな」 「ああ、また後て。コートて」 こぶし こつんと拳をぶつけ合い、今度こそ俺も竹中の傍を離れる。 かんしゃあふ 胸の内には静かな高揚と、この日を迎えられた数々の出会いへの感謝が溢れていた。 「にやははは、青春よのー」 ・いけね、そういえばこいつも居たんたった。 かっこつけ気味なシーンをミホ姉に目撃されてしまったことに遅れて気付き、ちょっと後悔。 いさか それにしても教師のくせに、子どもたちの諍いを見てもいっさい収める気無しなんだな。ま あ深刻な類てはないという判断なんだろうけど、それ以上に面白いから放っておこうとか思っ てそうなのがやっかい極まりない いや、それはちょっと身勝手な言い分か だって、どんな結末に転がるとしても、この対決を楽しみにしているのは俺自身も同じなの 4 に力、ら 0 0 たぐい ねえ おもしろ
273 scene. 5 ケが弱いって思ってる人たちが、自分よりちっちゃい人に負けたときの顔、早く見たいなー 一よ・ら、 いこ。あーそれと、ちびすけって呼ぶな。こっちだって五年生なんだだから、タメ たよタメ」 おいおい、すげー自信だな。 ひたすら勝ち気なままて先行して移動し始める赤ジャンパ そして五年だったのか。ちっさ。 ねが きようみ 願ってもないチャンスが降ってきた。これて、少しても二人がバスケへの興味 を取り戻してくれれば良いんだけど。 のんき : なんて、この時はまだそんな呑気なことしか考えられなかったのは。 きっと、可能性すら想像てきていなかったんだと思う。 まさか妹たちが、あのちっこい子に、一一人がかりても勝てないなんてことは。 「うそ、だ」 ひいらぎ まず、椿が抜き去られ、次に柊が抜き去られ。 めんどう 極めつきに『面倒だから一一人て来い』と強要されたダブルチームすら破られて、二人はカな ひざ くコートの上て膝をついた
140 ズ バッとまほまほ毎度あり 真帆のレイアップが、コートを雷光のように貫く ともか あおい 智花、そしてミミちゃん。エース同士の速攻の応酬て開幕した、葵率いる五年女バスとの さき 試合。続いてのオフェンスぞは、紗季の絶妙なパスから真帆がベネトレーションを成功させ、 再びこちらが二点のリードを日寸た。 「げつたん ! 」 ひいらぎ らっかん しかし、まだ楽観の息を吐くことは許されない。エンドラインから再び鋭いパスて始まった かがみ 五年生の進攻が、鏡の間を乱反射する光のようなボール回してすぐさまこちらのゴールを射程 圏に捉える。 速い。そして、早い。ほばワンタッチてパスを繋ぐリズミカルな攻めが、非常に小気味良い よど べースて淀みなく繰り出されている。 「ウイ、まいりマス」 : つ、今度は決めさせないー いっちよくせん 柊ちゃんの手からボールが託されるや、一直線のドリプルてインサイドに突っ込むミミち とら つな するど
十秒を消費しており、あと十秒以内にシュートを打たなければ三十秒バイオレーションて俺た ちはポール権を失ってしまう。この局面は、エースの個人技を信じ全てを委ねるしか選択肢は なくなつご。 。ても、智花ならきっと しようそうかん かっと脳内が燃え上かるように、焦燥感か強烈な藝と化して駆け巡った。 フてフ、刀 そ - フいう、ことたったのか 「オララ、だまし , フち コート内ぞは、ドライプに出ると見せかけた智花がその場てジャンプシュートを放ち、それ を見事に収めて敵のリードを一歩埋めてくれた これて再び一 . 一点差。さすが頼りになるエースのおかげて、まだ決定的な差は生まれていない。 試合が終わるころには十中八九もっと点差が開いて、俺たち ても、ダメた。このままだと、 は敗北を喫すだろ - フ。 選手のせいてはない。やはり、俺だ。俺が智花たちを受け持ってから、ずっとひとつの瑕疵 というか、このチーム特有の『癖』を作ってしまっていたことを見落とし、見過ごして来たせ も くせ ね すべ ゆだ
110 ついに迎えた、十一月六日 たいいくかん おれ 決戦の日、俺たちはミホ姉の運転て郊外にある市営の体育館まぞやってきた。 ふうが 風雅さんが主催するミニバスケットボール大会の会場てあるこの施設は、コートが一一面取れ めんせき ぶたい る充分な面積を誇り、総体の舞台となったりすることも少なくない。 ちゅうしやじよう レンタルのワゴン車が駐車場に収まるのを待って助手席のドアを開きながら、木々の合間 のぞぎんいろ から覗く銀色の屋根を見上げ、ふと雑念がよぎる。 ここてきっと、インハイ予選も行われたんだろうな。 うそ 参加すら出来なかったことが、悔しくないと言えば嘘になる。 もだ て も、悶えたところてなるようにしかならない。今は、今の、ハスケに全力を尽くすだけご。 「今、か。俺にとっても、大事な言葉になったな」 今に全力を尽くすことが必ず未来に繋がるとかって教えてくれたあの人は、元気にしている 。 ' 」っつ - フ、刀 「よっしや、行くぜ ! 」 きんちょう 「はう、緊張してきたかも : 「私もよ。大会なんて、初めてだもんね。・ : ・・亡も、ふふ。ようやくここまて来られたんだな うれ って、嬉しい気持ちもたくさん」 ねえ つな