めんどうみ ほほえ 対する面倒見は相変わらず良くて、微笑ましい気持ちに。真帆の場合は気分良くプレーさせる こうちょう じゅくち ことが、好調を引き出すポイントだと熟知しているからこそ、好きにさせてやろうと判断し た面もあるのだろうけど。 「よっしや、行くぞっぱひー チミたちの修行のセーカを見てやろうてはないか」 「つばひーいうな ! あとマホなんかにダブルチームするわけないじゃんー 「もともと、ボクたちの方がマホより上手なんだから、 10n1 てもョューて勝てるし ! 」 あら 受け取った。ホールを小脇に抱え胸を張る真帆に、双子はまったく同じ顔つきて怒りを露わに する。挑発て相手の判断力を低下させるトラッシュトークだったとすれば、抜群の効果を発揮 したようだ。もちろん真帆にそんな意図はないだろうけど。 ひとり 「あわてるてない、あたし一人て攻めるとはまだ言ってないぞ。つばひー、そしてあたしとヒ ナのコンビブレーて勝負だ 「おー。しようぶだー」 ふたりふきげん 一一人の不機嫌を軽くいなし真帆が宣一言すると、両手を高く掲げたひなたちゃんがやる気満々 ようす あおい に並び立つ。作戦を隠す様子など全くない辺りには葵も苦笑を禁じ得ないようだったけど、因 いっきよう 縁の対決ならてはということてそれもまた一興てはないか。他の子たちもここはあえて邪魔を きより ひいらぎ すまいと思ったのか、少し距離を置き、真帆 & ひなたちゃん、椿ちゃん & 柊ちゃんの 20 ゆだ 対決に局面を委ねることにしたようだ。 ねん こわき じようず ほか じゃま
276 「うるせーよ」 もう少し質問をしようとおもったけど、赤ジャンは時計を見ながら自分勝手に走り去ってし まった。 : せめて、名前くらい聞いておくべきだったよな。 「大丈夫か ? 」 ふたり ひとまず、妹たちが心配だったのてコートに入り、ばーっとしたままの二人の近くてしやが み込む。 にーたん」 「 : : : なに、なんなのあれ。 「ボクたちより、ちいさいんだよ。ボクたち、一一人だったんだよ。 なのに、負けた。完敗した。 つばきひいらぎ この事実が、椿と柊にとってどういう意味になるか もう、バスケなんてせんぜん勝負にならないから、止めちゃおうと思うか、それとも。 「言い訳、てきねーな」 「つ からだ 「身体の大きさても勝ってたし、得意のコンビブレーも自分たちだけ使えた。それても負けた ってことは、言い訳の余地もねえ。お前たちの完敗だ」 これて、二人は認めなくちゃいけない。実力て勝てない相手なんて、バスケのコートの中に は嫌ってほどいるってことを。 や ・なのに、なのに」
194 ねえさま 「いつまぞも抜かれてばかりては、姉様の練習相手は務まりませんからっ ! 」 このまま躱せるかとも思ったが、想像以上にしぶとく食い下がるかげつちゃん。重心の低い ドライブて脇をかすめようとしたひなたちゃんを、自らも尻もちをつくすれすれまぞ腰を落と はま し、広げた長い腕て行き先を阻をてみせた 「じゃあ、こっちからいってみる」 しかし、抵抗もそこまて。異常なまてに身体が柔らかいひなたちゃんは前傾姿勢のままくる りとその場てスピンムープ。まるて水鳥が湖面すれすれを飛行するようなしなやかさて、かげ っちゃんが伸ばした右手を逃れて左手側を素通りしていく。 「やぎさんもふもふしゅ 1 と」 そこて、勝負あり。再び完全フリーとなったひなたちゃんはゴール下まぞ悠々と到達し、ボ おれ ・ : どのへんがもふもふの由来かは俺には看破てき スハンドシュートを確実に収めてくれた なかったが、 まあ細かいことは置いておいて見とれるような素晴らしいドライブ技術だった。 変則型のフォワードとして、真帆と同様ひなたちゃんもこのチームにはかけがえのない存在 なのだと、しみじみ思わされる かくじっ からだ しり
ねばごし しばし、停滞が長引く。以前も思ったことだが、かげつちゃんの粘り腰は実に大したものだ。 うわぜい 上背は明らかに劣り、身体の幅を比べたって互いに細身同士てアドバンテージは無い。それな のに愛莉が押し込みきれないているのは、天性の足腰の強さとバネ使いの上手さが理由だろう か , 、と′、 か。かって、本格的な運動に取り組む前からマラソン大会ては学年一位を獲得てきたという事 しんぢから 実は、その先天的な芯力を端的に示しているのかもしれない。 ひかかがや いっしゅん 一瞬俺の眼に、かげつちゃんの肢体が光り輝いて映ったような気がした。 し力しわはから、」。 力だけじゃ、愛莉は止まらないぞ。 : こ一ズて、 ひろう 一進一退の攻防が続くさなか、不意に愛莉がふっと力を抜きバックステップを披露する。一 途に踏ん張りを見せていたかげつちゃんは支柱を失って上体をよろめかせ、相手の次なる一手 に対応する術を失ってしまった。 見事かげつちゃんの守備を剥がした愛莉は、ミドルレンジからジャンプシュートを放つ。 ′ 4 「げつたん、リバウンドだ め は
もっかんといちゃいちやするの 「こらー 今はあたしとアイリーンとヒナのターンだぞー はあとにしてくれたまえ ! 」 なんだかふわふわした気分に身を任せていると、真帆が両手を振り上げ、頬を膨らませなが いちゃいちゃしてたわけてはもちろんないの ら俺たちの間に身をねじ込んてきた。いーない かんしゃ だが、確かに感謝すべき相手は智花だけぞはなかった。 すてき ( い力な ? 」 「ごめんごめん。じゃあ早速、真帆たちの素敵なプレゼントをご馳走になっても、 「おー。ひな、おにーちゃんにごちそうになられたいてす」 「上手く出来るか不安てすけど、よろしくお願いしますつ。それては、今から最後の仕上げを させて頂いてもいいてしようか ? 」 「もちろん。麺を伸ばしたりするなら、テーブルを半分片づけてそこを使おう」 あいり ひなたちゃんと愛莉にも快諾を伝え、皆て一斉に準備にかかる。食べ物の皿を移動させるつ かあ いてに、真帆がひょいとべーコンロールをつまみ食いしてくれたのを見て母さんと笑みを交換。 ウチの食べ物も気に入ってくれているのがわかって、料理してない俺まぞなんとなく嬉しくな なべ 「このお鍋はおっゅよね ? 先に温めておきましようか ? 」 「ありがとなゆっち ! よろしくおねがった 気を利かせ、深鍋をキッチンに運んていく母さん。よし、これにてお膳立ては完了。あとは かいだく ねが ちそう ほおふく
もはやミミちゃんの前に立ちはだかるものはなく、か細い右手から悠々と放たれたレイアッ プは、それが自然の摂理てあるかのようにネットの中心を通り抜けていった。 あおい まね 「葵め、こしやくな真似を」 すばる 「ふふん。昴だってどうせ、得意技いつばい伝授してるんてしよ。 : こっちは最初から出し 惜しみなしぞいくよ かべ トレイルプレー。味方に壁になってもらい自分のマークを引きはかす、ミミちゃんとか きようと おれ げつちゃんが先ほど繰り出した連携技は、ちょうど秋の京都旅行て俺と葵がチームを組み 2 こ、つげ・き 0n2 を挑んだ時に使った攻撃パターンのひとつだ。 コーチ同士が、互いの手の内を知り尽くしている。そしてなにより、実際にプレーをする子 ぞろ どもたちが双方タレント揃い かくしん オ ( ふ前カら予感していたけ。 れと、確信が何重にも連なった。 おもしろ この試合、面白くならないわけがない 「ふふーん、次はボクたちの必殺技てあほにマホヅラさせちゃうもんね」 「わはは、い ーのかねそんなふうに作戦バラしちゃって : : : ってこらー 「真帆ー いちいち挑発を真に受けてないて集中なさい、もう ! んとかなる相手じゃないわよ」 マホヅラってなん ・少しても気を抜いてな
1 74 あおい 、」いに突っ込みすぎだ』 『ーーー葵こそ、もう少し先読みして動けっての。猪みオ きんせん フ単語が怒りの琴線に触れてしまい思いっきり蹴っとばされたわけだが、 この後『猪』 まあそんな些事はさておき。 しようとっ おれ そうだ、そうだった。俺たちはずっと、お互い何度も衝突しながら、それてもどこか認め ふたりせっさ 合っていて。気付かれないようこっそり相手の良いところを取り入れたりしつつ、二人て切磋 琢磨してバスケの技術を高めてきたのだ しゅんかん そんな瞬間をもう一度、こうして形を変えて繰り返している みちび ありがとな、葵。おかげて大事なことを見落とす前に、子どもたちをより良い方向に導いて やることが。て、さそ - フだ。 なんて、まだしみじみするのは早すぎるけど。 まずはミスを反省して、挽回して。この試合をしつかり勝利て終わらせないと。 すばる 「なあ、昴。理屈は分かった。ぞも、じゃあなんて愛莉にあんな指示出したんだ ? 俺だった ら相手の速攻に置いてかれないよう、バンバンボール回すように伝えるが」 ばんり 気合いを入れ直していると、しばし物思いにふけっていた万里がおもむろに顔を上げ、眉間 に皺を寄せる。 「たしかに、それもひとつの解答だと思うよ。ても、ちょっと心配もあってな」 、 , し配っ・・」 しわ ばんかい いのしし あいり
160 しかし、ごとしたら、ど - フやった。、 どうやって、葵は絶好調の六年女バスと対峙し、このリ ードを生みだしたのだ。 まほ、フ まるて、魔法ても使われた気分だった。 「ひー て、もっかいつばっ ! 」 「ほあちゃっ ! どーだみたかー こーゅーのが本当のコンビ技ってゆーのさ ! 」 つばき ひいらぎ 椿ちゃんと柊ちゃんのワンツーリターンが決まり、これて俺たちは四点のビハインドに。 こ、つげき じよばん 相手の攻撃スタイルは、序盤から一貫してラン & ガン。速攻重視の軽やかな連携て小気味よ っ く点数を積み重ねる五年生たちは、確かにずっと好調をキープしている。それはわかる。 「ぬー。なかなかしぶといなー」 「しぶといどころか、リードされてるわよ。 : おかしいわね。私たちだって、そんなに大き なミスはしてないはずなのに」 みけんしわ たか、眉間に皺を寄せつつ汗を拭う真帆に紗季が言ったように、こちらとて調子を落とした わけてはないのだ。むしろシュート決定率なら、六年生の方が上てあるはず。 それなのに確固たる事実として、相手の方がより多くの得点を積み重ねている。 かくヤ」 ぬぐまほ あおいぜっこうちょう おれ
莉はマッチアップ相手のかげつちゃんとしばしカ勝負を挑むが、相手もしぶとくてなかなか停 滞状態から抜け出せず、 : つ。ごめんね紗季ちゃん、いったん戻しますっ 「オーケー ばっちり周り見えてて良い感じよ」 しかもミミちゃんがあわよくばボールを奪おうとダブルチームに付く気配を見せたのて、ひ とまずリターン。ハスて体勢を立て直すことに。 「紗季っ ! 」 ねが トモっー 「お願い、 きんばくかん 再び静の時間が訪れ、緊迫感を伴ったまま牽制を繰り返す両チーム。と、 一瞬の隙を突いて ともか 智花が急速始動。愛莉の至近をかすめて自分をマークするミミちゃんから進路を奪いつつ、右 から左にサイドチェンジした先て。ハスを受ける。 おれあおい うん、 いスクリーンプレー 俺と葵のコンビネーションを見て、あれから密かに練習 を重ねてきた成果は既に充分出ているな。 「まだまだ、デス それぞも食い下がるミミちゃん。そのまま智花をフリーにはせず、辛うじて再び前方に立ち はだかってみせた 敵ながらあつばれ。しかし、もはや立て直しの余裕はない。 ここまて攻撃に出てから既に二 あいり けんせい いっしゅんすき ひそ
146 ・つ、とー よかった、取れた」 ふわりと舞い上がったボールは運悪くリングに嫌われて、より近い位置にいたかげつちゃん にリバウンドも奪われてしまったが、攻めの形としてはバッチリだった。よし、このパターン は、今回もしつかり使えそうたな。 ディフェンスもすごく良かったよー 「かげつちゃんナイスリバンー この後もその調子て ねが お願いね ! 」 あおい 「はいつ、ありがとうごさいます葵さん ! 」 けどなんだか、やや意外てもある。かげつちゃんのディフェンス、あれは完全に正面突破だ けいかい かわて けを警戒し、バックステップによる躱し手のことなどまったく意識してない感じだった。てつ ちゅうよう きり、もっと中庸な構えを選択してくると思ったのだが。 なぜなら、愛莉にあの柔軟なスタイルのポストプレーを伝授したのは、他ならぬ相手コーチ の葵なのだから。 「 : : : 相手、腰の入った良いディフェンスだったな」 「万里」 みけんしわ 腕組みし、眉間に皺を寄せていた俺に、横から野太い声がかかる。顔を向ければ愛莉の実の きび 兄てある香椎万里が、やや厳しげな表情て妹をまっすぐ見つめていた。 そういえば応援に来てくれるのかどうか万里には直接訊いてなかったけど、そりや来るか あいり おれ しき ほか ちょうし