「いや、まあ、それでその仮面の少女なるものが、りつ、小鳥遊かもっていうことなのか ? 」 地味に六花の契約 ( 洗脳 ) が利いてきているのか、六花と言いそうになってしまったが、な んとか言い止まれた。急に呼び方が変わっていたらさらにフラグフラグと騒がれそうな気もす 「ああ、お前達が保健室に行った後、手紙まで回ってくるほどだったんだからな : 手紙 ? 紙回してまで騒ぐものなのかと少し不思議に思ったが、まあ、そんな仮面の少 女がうちのクラスの人かもとなるとそこに興味がいくのはわかる。 でも、なんでそんな話になったのだろうか ? 別に、さっきの突然大声を出したりしたこと が、仮面の少女かもと思わせるような出来事でもないと俺は思う。 やつばり元々あった中学の頃の噂が更に誇張され、仮面の少女が小鳥遊ということになって いるのだろうか ? それにしても仮面の少女か : 「ふーん、それでこんな雰囲気になってるわけだ。というか何で仮面の少女が小鳥遊ってこと になるんた ? 別にさっきの目が痛みだしたってのはあんまり関係ないんじゃないのか ? 」 「なかなか。さすがに鋭いな。そうなんだよ、俺も最初はそう思ってたんだ。それでさっき情 報を集めてきたんだが、なんと。聞いて驚け。いや、俺が聞いて驚いた。仮面に小鳥遊と書い てあったんだそうだ」 「なるほどなー珍しい名前だし小鳥遊に、ってそんなアホなやつがいるか ! それならもう小 とど
一体どういうことた ? 「べ、別に聞きたいわけじゃないけど、ま、まあ教えてくれるなら、教えて」 聞きたいけど、聞きたくない素振りで聞いてみた。変なツンデレみたいになってて自分でも 少し気持ち悪い 「実はだな、この間の仮面の少女の噂 ! あれは小鳥遊さんじゃないんだよ。何か、アニメ研 究会の人達が犯人らしいのだが、ふざけて仮面を付けて職員室に乗り込み、恥ずかしい台詞を 言うというゲームだったそうだ。これは信頼度の高い情報だぞ。それもメールで回してある。 まあ、これで小鳥遊さんの仮面少女もとい中二病かもしれないと言う噂は薄れたという感じだ な。良かったな ! 」 超が付くほどの中二病少女なのは俺が一番知っている。だから何とも言えなかった。 中強いて朗報になったものと言えば、仮面の少女が六花じゃなくてちょっと安心したくらいた。 話悪ふざけも別な感じでやってほしい。六花は興味すら持っていたのだぞとそのアニメ研究会の 中方に申し付けたいね。 話 「そういうことだし、放課後イチャイチャ頑張るんだぞ。羨ましい : : : 実に羨ましいな ! 」 第 「ああ、数学苦手みたいだし、頑張るけど : : : 」 この後もランキング表について熱く語る一色の話を聞きながら、俺達はいつもの通学路を歩
大きな声を出して練習に励んでいた。そんな感じで外を眺めていたら、一人の少女が眼に人る。 とても小柄で、ジャージを身につけ必死に水の交換やノートに何かを書き込んでいる少女。遠 目から見ると、どことなく目の前の少女と被る印象を受けた。マネージャーさんたろうか ? そういえば、仮面の少女の噂をコイツに聞いてなかったと、ふと思い出す。 「あのさ、仮面の少女って六花なの ? 」 「仮面 ? 少女 ? 」 六花は机に突っ伏したまま、顔だけ上げて、何も知らないと表情で訴える。 ん ? 六花じゃないのか ? 「ほら、噂になってた、この世界は死後の世界たー とかなんとかっていうことを先生に言 いに行ったってやっ、知らないか ? 」 「初耳。この世界って死後なの ? どういうこと ? 」 六花の興味は別の所にあったらしい。それは知らないが、と濁して会話を中断させる。 まさか : : ・・六花以外に : いやいや、考えたくない。考えないでおこう。 「さて、じゃあそろそろ再開しますか ! 」 「回復モード継続中」 俺の教育パパの血が疼いた。こうなれば奥の手だー
中 ( ただのズル休み ) だとはロが裂けても言えなかった。 「勘違い ? 勘違いもなにも、確実に最初のフラグは回収したね。俺が言うんだ、間違いない。 まあ、その彼女が中二病じゃないということを俺は切に願うだけだ」 一色が無駄に中二病という単語だけを大きく言うものだから、つい動揺してしまった。たふ ん、また六花が本物の中二病患者だという正確な事実を知っているやつは俺くらいだろうし、 一色は中二病に対してあ 出来れば現役中二病患者であるという事実は隠しておいてあげたい。 んまりいいイメージを持っていなさそうだったし。 「今、その話題で持ちきりだぞ ? 今騒がしいのはみんなその話をしてるんじゃないだろう ムロ か ? やつばり小鳥遊さんは噂の少女じゃないのかと言う」 開 ム 「う、噂 ? 昨日言ってた中学二年の頃から変になってきたってやっか ? 」 「いや、それじゃない方だ。む、昨日言わなかったか ? 実はついこの間、『この世界は死後 強 後の世界だー ! 』というようなことを先生に抗議しに行った仮面の少女がいたとかいないとかっ 放て言う話」 話 「聞いてないし、それ以上聞きたくないわ ! 」 第 思わず大声でツッコんでしまった。危険な香りがする話題でしかない。なんだよ、死後の世 界って。俺ら死んでるの ? っーか、そんなことわざわざ先生に言うなー
鳥遊が呼び出しくらってるだろ卩 あまりにもアホすぎてノリツッコミしてしまったじゃないか。 自分でも珍しいパターンのツッコミをしてしまったことに驚きを隠せないぞ。 「ふむ、そんなにツッコまれるとは思わなかったが、冗談だ。聞いた話だと、まず小柄な体格 だったそうだ。そして、仮面は左半分だけだったようで、右目を包帯で隠していたそうだし、 左腕も右腕も包帯でぐるぐる巻き。おまけに首にチョーカーを付けていたらしい。他にも色々 装飾品が付いていたそうで、それに該当しそうなのは小鳥遊さんなのでは ? ということにな っているそうだ」 仮面って顔全体を覆っているものじゃなかったのか。固定観念というかジェイソンみたいな 始仮面を想像していたけどオペラ座の怪人みたいな仮面ということだろうか。 ム だけど仮面被って、包帯巻いてって顔隠しすぎたな。そりやもう明らかな不審者だ まあ、それなら小鳥遊かもって噂に 「確かに小鳥遊も色々装飾品つけてたりするもんな : 後はなってもおかしくはない、かな : 放 現にやりそうだし。やってそうだし。むしろ安心するだろう。あいつ以外にもいるのかと思 話 うと、それはそれでおぞましい気もするといったところだ。 第 もし、学校にそんな中二病末期感染者がたくさんいたら、それは、学校としての沽券にも関 わってくるんじゃないだろうか。
229 第 8 話遠足 ! : 今は、勇太がいるからもしかしてと思った。たから今日はお父さんに会えたのかも」 ・みよノり 「契約者冥利に尽きるな、それは」 だから、六花がこんなに現役中二病患者なのも、意味があるんじゃないかと思う。中二病に、 意味。 丹生谷の言っていたこととは、全く正反対だな。例え、それが現実から逃げるための仮面と しての中二病でも意味はあるんだと気付いた。気付けた。決してそれは悪くないんだと俺は思 う。だって、意味があるということはその人にとって必要なことだから。 今まで考えもしなかったけど、そうだよな。色々な理由で色々な中二病を発症するんだから、 人それぞれに意味を持っている。見解に違いはあれど、と中二病論は人それぞれだとか思った ばかりだけど、間違いじゃなかった。中二病の意義は拡散されていても、意味は確かにあるん だよ。俺の場合は、自分魅せだったかな。 六花の場合はどうだろう。今はまだちょっとわからない 「勇太が契約者でよかった」 六花はそう言って、やっといつもの可愛らしい笑顔を咲かしてくれた。 「なあ、なんで俺を契約者に選んだんだ ? 」 昨日ふと湧いた疑間の一つ。それを聞いてみる。 「・ : ・ : 秘密」
「まだあるのかよ 「秘密」 「何があるかないかも秘密なの卩」 「秘密」 全然話通じねー : こいつが横に居る中、仮眠なんて取れるものか心配になる。思考。 無理だ。即時に計算された俺の答えはきっと正しいだろう。横にいるだけで何やら、契約の 続きだ、あれやこれやと色々あるに違いな : 。 しせそれに気を取られてちゃ、仮眠どころではな さそうだ。 の そうと決まればここは授業に戻るというのが一番だろう。よし、戻るか。 物 「あー、うん、まあそれはまた今度聞くということで。じゃあ、六花は休憩してた方がいいだ 怪 のろ。俺はやつば教室に戻るからさ、なんとなく戻りたくなったんで」 れ わ 目に見えて残念そうな表情をする六花。こんな表情もするんだと、いつもとは少し違う一面 幻を見せたことに驚く 話 そんな表情を見せられては、俺も出るに出れなくなってしまう。一体どうしたらいいんた ? 第 そんな重い空気が流れそうになった瞬間、軽い空気を含んだ風のような人が保健室を訪れた。 「ややー、大丈夫う ? ごめんねえ、さっきは先生もおったまげてさ、もう何があったのかも
302 「知っているか ? 風紀と言うのはだな、別に制服の乱れに限らない。守るべき道徳上の規律 だ。前にも言っただろ ? 清い男女交際は風紀を乱さないと。もし、仮にお前がココで呼び止 められ、それで止まる様なやつなら風紀違反だったな。女子を守る、男子として風紀を守るこ とはそれだろ : 一色。俺は最高の親友を持ったんだな。 「注意、してないぞ 「ふむ。俺はお前が小鳥遊さんの所に行くのに、無策で行こうとしているのを注意したかった だけだ」 「何だよ、超かっこいいじゃないか : : : 」 俺、乙女なら惚れてるよ、まじで。男で良かった。 「ふ、一級建築士も一人で仕事が出来るわけじゃない。他の建築士もいるんだよ。富樫がフラ グを設計するなら俺がその現場管理をしてやろう。安全管理に品質管理。任せておけよ」 何だよ、あんまりかっこよくないよ、それ。俺、乙女なら振っちゃう。よかったな、俺が男 で。でも、そんな一色の台詞がおかしくて、強張っていた身体の力が抜ける。 「とにかく、四の五の言うな、早く行け。小鳥遊さんを探して来い。そしてちゃんと連れてこ い。追試、あるんだろ ? 言いたいことを言い終え、一色は俺を急かした。
303 第 12 話アプソリュートアプソリュー 「ああ、ありがとう」 「廊下は、走るもんじゃないぞ 学校風紀委員の仕事も忘れてはいない。助かるよ、その真面目さが。冷静さを取り戻すのに は充分な言葉だ。 ゆっくり、けして遅くはないスピードで力を貯め、校舎を歩く。階段を降りている時、ナナ ちゃんとばったり会った。 「おやおやう、勇太くんもう授業始まるよう ? 」 「先生すみません、ちょっと早退します」 ナナちゃんは少しだけ首を傾げたけど、すぐ何かを理解したかのように言葉を返してくれる。 わけありなんだ ! 少年の目に宿る魂が見えないほど私も落ちぶれちゃいないようー ねう ? 気をつけていってらっしゃいうー どうして俺の周りはこんなに優しい人達ばかりなのだろうか。もう、ほんと、救われる。 「はい ありがとうございますー ナナちゃんとすれ違うようにして、自転車置き場まで歩を進める。 校舎を出た瞬間、走った。 一色のいつも乗ってきているママチャリを探す。人の愛車に乗るのは少しだけ躊躇してしま うがそんなことを言っている暇はないな。特徴的ではない一色のママチャリだけど、すぐに見 ち 0 うちょ
「判断基準甘すぎるだろ卩」 薬物的な意味で神聖じゃないと断言したいね。しかも点してくれときたか。一人で点せない 。仕方ないので手を貸してやる。 ものだろうか、高校生にもなって : 無防備に顔を上げる小鳥遊に、ちょっとだけドキドキしたけど、手が震えないように心を落 ち着かせ目の上に目薬を持っていく。 「あ、こら動くな ! 」 「や : : : やだ : ・ : 人ってくる : 「なっ卩変な声だすなー ・ : 残像・ : 「避けただけじゃないか卩残像も残ってやしないー そんなことを繰り返すこと十分。 格闘の末にやっと目薬を人れることができた。ドキドキの感覚なんて一つも残ってやしない。 目薬一つ点すのにこんなに体力と精神力を消耗するとは : : : まじで、仮眠取る必要がでてきた よ - つだ。 「回復した、感謝する。勇太」 小鳥遊は椅子に座ったまま、礼儀正しく頭を下げる。 って勇太 : ・