第 2 話「幻と言われたあの怪物が目の前に すでにどちらが病人かわからない状態で、俺たちは一階の保健室まで来ていた。 どういう症状で保健室に来たのかを説明するのは難しいなあ、ということを考えているうち に、すでに小鳥遊は保健室に人っていた 仕方なく俺も後を追って保健室に人ったが、保健室の先生らしき人は見当たらない。 本当は、此処に学校中が噂するほどのイケメン保健室の先生なるものが存在するらしい。普 通なら美人の女性がいるはずだろうとツッコみたくなるほどツッコミがいのある所である。 俺はまだ一度もお目にかかったことはないのだが、先生目当てに女子が、病気だ、腹痛だ、 怪我だ、など様々な理由をつけて逢いにきている : : : らしい。ただの噂だが。 まあ、そんな先生ならどんなものか一度は拝見させて頂きたいと思っていたが、今日は居な くてよかったと安堵する。 「誰もいない」 俺の方に振り返り、そう単調にコメントする小鳥遊。 「みたいたな 「どうする ? 」 「いや、目が痛かったんじゃ :
それに、俺は元中二病患者だから迷惑だとは思わないけど、俺以外に被害者 ( ? ) を出す前 になんとかしてあげたいという気持ちになる。こいつのためにも、だ。 だから俺はこう一言った。ちょっとムロ詞は中二つぼいけど。 「だからまあ、契約はしないでほしいけど、俺を頼るくらいなら、 しいからな」 ほっとけないよ、やつばり。なんっーか、先輩風を吹かすってわけじゃないけど後輩とか、 妹みたいなもんだよ、中二病の。 「しかし、契約は完了している 「いや、え、強行ですね : : : 」 : ちょっと迷惑かもしれなし 「とりあえず、保健室に行こう」 「俺の台詞だよ ! 」 花設定は強行されたまま、小鳥遊はすっくと立ち上がり何故か運んでいた俺を置き去りにする も形ですたすたと階段を降りてい ・ : 元気じゃん。 「何をしてるの ? 力を使い過ぎた ? 」 話 「ああ : : : ある意味な。俺が保健室で寝込みたいよ」 第 違う意味で眩暈。保健室で仮眠でもしよう、そう思い、俺も小鳥遊の後ろについて行く形で、 足早に保健室へ向かった。 、。どこまで強行する気なんだ。
「キモッー もういいわ ! 授業始まるし 「ああ、さっきの会話を文章で切り取って見ると女の子と会話してるみたいじゃないか ? いいな、富樫もっとそんな感じでやってくれ」 俺はそんな一色の妄言に付き合うことなく自分の席へ戻る。 席に着くと、なんだかどっと疲れが出てきた。深くため息。 さっきの保健室での疲れも抜けきっていないのに、今日はもうへトへトだ。まだ一時間目し か終わっていないのに、すでに六限目まで授業を終えた気分。まじで保健室に行きたくなって きた。 保健室、まだ六花は居るんだろうな。前の席は空席のままである。 始 少し、六花のこと、そして過去の自分のことを思い返す。 開 秘過去の俺と限りなく近い存在。性格が似ていると言ったけど、行動とかもやつばり似ている 気がする。保健室でずる休みしたりしたし : 勉 後 それに、俺はよく見ていた。そう、見ていたことはずっと見ていたんだよな。 放 ちょっと気になる女の子を目で追いかけることなんてよくすることだ。たから俺は知ってい 話 たじゃないか。そしてずっと気になっていた。 やつばり六花は誰とも喋っていなかったことを。
「私とは友達じゃないって言うの ? 」 今度は本当に睨まれた。いや、でも俺と丹生谷って友達でいいんだろうか : 最近になって喋るようになったくらいたし、まあでも、そうなれば友達か。一度会ったら友 達って言うしな。毎日会ったら兄妹だ 「いや、丹生谷も友達だけど : : : 丹生谷はその『にふたに』って言う方がすごい良いんだよ。 ! 』って感じなんだ、俺の中では」 語感ってやっかな ? まあ、なんか丹生谷は『にぶた 「そっか。まあ、それはいいや。で、色々って何 ? 」 丹生谷は睨むのだけ止めて、素っ気無く言う。 : しかしまあ。ホント勝てる気がしない。威圧感だけは変わらずで、俺は大人しく質問に 答えるしかないようだ。 「えっとー : ほら、こないだ、六花を保健室に連れて行ったときがあるだろ ? あん時にな」 谷 「あん時にな、って言われても、ね ? あん時保健室でまさか告白とか ? 」 生 丹 王 「ち、違う ! あん時に ! 六花も ! 点数悪かったみたいで ! 困ってたから、じゃあ一緒 級 学に勉強でもしよっかってなったの ! 」 話 恥ずかしさを紛らわすために少し怒鳴る俺だった。それに気付いてさらに恥ずかしくなる。 第 恥ずかしさのスパイラルである。 「じゃあ、私にも教えてくれるってことだよね ? 」
クラスに、目の前に、苦しんでいる子がいるのに、だぞ ? くそ、なんだよこの気分 「先生、保健室連れて行きます ! 」 小鳥遊の返答を待たずして「悪い」と声をかけ、右腕を取り、肩にかける。 「歩くぞ まだ目が痛むらしく左手で右目を押さえながら、引きずられるような形で俺に付いて来た。 「あ : : : うん、ごめん、大丈夫 う ? 少しびつくりしたのよう。んじゃ、富樫君よろしくねう」 ナナちゃんは本当にびつくりしていたらしく、今も目が点の状態で俺達を見送ってくれた。 他のやつらは、どうだろう、少しわからなかった。 授業開始十分後、テスト返却だけを終え、俺と小鳥遊は教室を後にした。 花 も教室から出て、保健室に向かう途中。四階と三階の階段の踊り場で、俺に引きずられるよう に歩いていた小鳥遊が突然、 話 「ああ : : : 共鳴する、目が : 第 と、叫びながら俺の肩から崩れ落ちていった。 崩れ落ちるのを支えようとし、左手を身体に回したのだが成功したとは言えず、その左手が
第 3 話「放課後勉強タイム開始」 ナナちゃんと一緒に保健室を出た後。丁度一時間目の終わりを告げるチャイムが鳴ったので ナナちゃんと別れ、俺は四階の教室に向かった。 休み時間、中学の時と違うのは移動教室が多くあるので廊下ではけっこう生徒とすれ違う。 さっき六花が崩れ落ちた踊り場に着いた時、なんとなく授業中でよかったなと思ってしまった。 教室に戻ればいつもより人が居てざわっいていた。普段なら疎らに残っている、と言ったと ころだけど、今はほぼ全員居るんじゃないだろうか。 どうしたものかと思い 一色の所に足を運ぶ。 「どうしたんだ ? なんか妙に騒がしくないか ? 」 一人で机に座って勉強でもしていたのたろうか。一色はノートにペンを走らせていたが、俺 が声を掛けると同時に、俺の方を見てからノートを机にしまう。 「おう、おかえり。お前は一級フラグ建築士のようだな。アレはフラグを立てるための行動と みた」 「なっ、ちげーよ。目の前であんなにつらそうにしてたらほっとけないだろ。まあ、それも勘 違いと言うか : : : 」 実はあいつが本物の中二病少女で、その中二病的自分設定で大声を出し、今も保健室で治療 まばら
「まだあるのかよ 「秘密」 「何があるかないかも秘密なの卩」 「秘密」 全然話通じねー : こいつが横に居る中、仮眠なんて取れるものか心配になる。思考。 無理だ。即時に計算された俺の答えはきっと正しいだろう。横にいるだけで何やら、契約の 続きだ、あれやこれやと色々あるに違いな : 。 しせそれに気を取られてちゃ、仮眠どころではな さそうだ。 の そうと決まればここは授業に戻るというのが一番だろう。よし、戻るか。 物 「あー、うん、まあそれはまた今度聞くということで。じゃあ、六花は休憩してた方がいいだ 怪 のろ。俺はやつば教室に戻るからさ、なんとなく戻りたくなったんで」 れ わ 目に見えて残念そうな表情をする六花。こんな表情もするんだと、いつもとは少し違う一面 幻を見せたことに驚く 話 そんな表情を見せられては、俺も出るに出れなくなってしまう。一体どうしたらいいんた ? 第 そんな重い空気が流れそうになった瞬間、軽い空気を含んだ風のような人が保健室を訪れた。 「ややー、大丈夫う ? ごめんねえ、さっきは先生もおったまげてさ、もう何があったのかも
49 第 2 話幻と言われたあの怪物が目の前に 今更なリアクションだなあ。 とりあえず、保健室に休んでいる人も含めて、誰もいないことが確認できたので、空いてい る椅子に小鳥遊を座らせ、勝手にではあるけど目薬を探す。 共鳴で痛んたと言う小鳥遊の言葉を真面目に受け止めて、目薬を探してる俺はえらいんじゃ ないかなっ , 「お、あったぞ。ほら、目薬だ、とりあえず点しておけ。金色だと体に悪そうだし」 絶対ドライアイとかになるよ、金だもん、根拠ないけど。 受け取った目薬を不思議そうに眺める小鳥遊。 「神聖な水という保障はある ? 」 「ねーよ ! なんだよ、神聖な水って」 「この邪王真眼には、それ相応の清らかな水でないと腐食してしまう可能性がある」 えらく危険な眼球たこと。怖いよ、ゾンビみたいに目とか出てくるのだろうか。 「んー : : : 効力とか書いてるんじゃないのか ? それでどうにか判断してくれ」 かなりやけくその返答だった。「それは神聖な水だ ! なんて言ったらいかにも嘘くさいし、 たぶん神聖じゃないだろうし。 「目の疲れに効く ・ : なるほど。適切な水と判断。点して」
108 本当に全く話が見えなかった。丹生谷が何を言いたいのか、何を企んでるのかもさつばりで けげん ある。俺の顔、すごい怪訝な顔になっちゃってるよ、絶対。 「まあ、あれだ、悪いな、六花のことで手一杯なんだ。だから俺以外を頼ってくれ、ホント悪いな」 「ふーん ? じゃあ、ちょっと関係ない話なんだけどね、富樫くんは、あの小鳥遊さんの眼帯 のこと知ってる ? あと包帯も ? 」 突然の話の転換だったので、思考がついていかず唖然としたような不思議な顔を今度はして しまったに違いない んー、眼帯のこと ? そんなことを知ってどうするんだという気持ちになるが、まあ確かに 気にならなくはないか。眼帯の下の秘密は知っているが、包帯を巻いている理由は俺も知らな いのでちょっと気になっていたりする。まあ、どうせカッコイイからだろうけど。 「聞いてどうするんだ ? ってまあ、俺も知らないけどさ」 「そっか、残念。眼、すごい痛そうにして保健室に行ったから、あの眼帯の下も見せてもらっ たかと思って。気にならない ? 」 「そうか ? 怪我とかそんなもんだろ ? 」 現に俺も最初はそう思っていたし。恐らく、クラスの皆もそう思っているだろう。 「うーん、そうかな ? 私はね、小鳥遊さん、中二病を現在発症してるんじゃないかと思って るんだよねー」
「いや、まあ、それでその仮面の少女なるものが、りつ、小鳥遊かもっていうことなのか ? 」 地味に六花の契約 ( 洗脳 ) が利いてきているのか、六花と言いそうになってしまったが、な んとか言い止まれた。急に呼び方が変わっていたらさらにフラグフラグと騒がれそうな気もす 「ああ、お前達が保健室に行った後、手紙まで回ってくるほどだったんだからな : 手紙 ? 紙回してまで騒ぐものなのかと少し不思議に思ったが、まあ、そんな仮面の少 女がうちのクラスの人かもとなるとそこに興味がいくのはわかる。 でも、なんでそんな話になったのだろうか ? 別に、さっきの突然大声を出したりしたこと が、仮面の少女かもと思わせるような出来事でもないと俺は思う。 やつばり元々あった中学の頃の噂が更に誇張され、仮面の少女が小鳥遊ということになって いるのだろうか ? それにしても仮面の少女か : 「ふーん、それでこんな雰囲気になってるわけだ。というか何で仮面の少女が小鳥遊ってこと になるんた ? 別にさっきの目が痛みだしたってのはあんまり関係ないんじゃないのか ? 」 「なかなか。さすがに鋭いな。そうなんだよ、俺も最初はそう思ってたんだ。それでさっき情 報を集めてきたんだが、なんと。聞いて驚け。いや、俺が聞いて驚いた。仮面に小鳥遊と書い てあったんだそうだ」 「なるほどなー珍しい名前だし小鳥遊に、ってそんなアホなやつがいるか ! それならもう小 とど