クラスメイト - みる会図書館


検索対象: 二度めの夏、二度と会えない君
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1. 二度めの夏、二度と会えない君

そのとき、ふと背後に人の気配を感じた。 つい反射的に振り向いてしまう。 しのはら 「よ、よーっ、篠原。お疲れー」 はなぞの 「花園 ? そこにいたのはクラスメイトの女子だった。 クラスメイトとはいってもそこまで親しいわけではなく、クラスメイト以上友達未満といっ たところだ。クラス展示の手伝いで何度か絡んだが、最近ではそのくらいしか接点が思い出せ ない存在だった。 下は制服のスカート、 上は緑のクラス e シャッと、文化祭においてはごく平均的な服装だ。 いつもはクラスの中心近くで屈託なく笑っていることの多い整った顔が、人工灯に照らされ て少し陰っていた。 嫌な予感がした。 別に俺の勘が鋭いとかそういう話ではない。 ただ単純に、ここで花園に呼び止められるなんて過去は俺の記意になかったからだ。 「ちょっとさ、今、いい ? : 悪い。急いでるから」 花園を振り切って店長を捜そうとするのだが、

2. 二度めの夏、二度と会えない君

翌日、ヒミコ留年のタイムリミット。 俺と燐は教室の出入り口をじっと睨んでいた。 始業五分前。 クラスメイトが駆け込んでくるたびにガタッと椅子から立ちあがり、「静かにしなさい」と 会長に怒られた。 「まだあんなのに期待しているの ? 」 「あんなのとはなんだーっ ! 」 燐が小動物のように会長を威嚇した、そのときだった。 廊下の方から悲鳴が聞こえてきたのは。 章 第騒ぎを聞きつけた生徒が廊下を覗き、さらなる悲鳴を上げる。 悲鳴の連鎖はどんどんこの教室に近づいていた。 「んじゃ、 ハンドのこと、もう一度だけ考えてみてくれ」 不安に駆られて、過去にはなかった一一一一口葉を重ねそうになる。 だがそれ以上の一一 = ロ葉はきっと蛇足にしかなるまいと、俺はヒミコの家をあとにした。 そうして、俺と燐の説得は終わった。

3. 二度めの夏、二度と会えない君

「そんな時間取らせないからさつ」 ひとけ 切羽詰まった調子の花園の勢いに押され、俺は人気が少なくなっていた中庭の木陰に引っ張 られてしま、つ。 頼りない外灯と校舎の光で薄く照らされる中庭は物陰も多く、見通しが悪い。 「えーと、その、さ。 花園が身体の前で手をもじもじとさせ、頼りなげに見上げてくる。 「うちら、付き合わん ? こいつはいきなり、なにを言い出すんだ。 「なんで : : : 」 「なんでって、うち、篠原のこと好きになっちゃったみたいなんだ」 ろ、つばい 花園は俺がわけのわからない展開に狼狽している間にどんどん話を進めていく。 プ 「なんてゆーか、前から悪くないなーとは思ってたんだけどさ。最近の篠原、なんとなく雰囲 化気が大人っほい気がして、なんかいいなーって」 、つかっ 迂闊だったかもしれない。 章 第燐たちへの態度を過去と同じようにすると徹底していたせいで、ほかのクラスメイトたちへ の態度にまで気が回っていなかった。 からだ

4. 二度めの夏、二度と会えない君

さとし ハーな転校生の仲間かよ」と奇異の目で見てくるこの クラスメイトが「智のやつもあのミー 空気も記億にあるとおりだ。 俺が過去と違った行動をとっているのに、実際過去とは違うことが起きているはずなのに、 流れが変わらない・ なら、このあと燐がとる行動は : 俺は燐の意識が会長へと向いているうちに教室から逃げだそうと静かに席を立った。 そのときだ。 「この高校の文化祭でアニマートみたいなライプを演るために転入してきたのに ! 」 俺の記憶にある通りの声を上げながら、燐が逃げようとする俺の手首を掴んできた。 じかだんばん ハンドやらせてくださいって直談判だよ ! 」 「よしつ、職員室に行こ、つ ! 燐がその暴力的なまでに無邪気な笑顔を俺に向け、ぐいぐいと力強く引っ張ろうとする。 懐かしい感覚に、暗い部屋の中で何度も思い返したその情景に、そのまま身を委ねそうにな 「ちょっとあなたーーー」 会長が燐を押しとどめようとしたときだった。 「触んな ! 」 る。 りん

5. 二度めの夏、二度と会えない君

「あなたたちは帰りなさい。邪魔よ」 「もう敷地内に入っちゃったしー。ここで揉めると会長の印象も悪くなるんじゃないの ? 」 会長と燐がバチバチと火花を散らすも勝負になるはすもなく、燐はすごすごと俺の後ろに隠 れた。 「大人しくしてるから、勘弁してくれよ」 「 : : : 今度は一体なにを企んでいるのかしら」 いがみ合いながらも他人様の家で言い争、つこともできず、俺たちは引きこもりドラマーの母 親に案内されるまま客間に通され、大人しく待機することになった。 「それにしても、うちのクラスにこんな金持ちがね : : : 」 客間の内装を見まわしながら、俺は会長に聞こえるよう声を漏らした。 かんべき 和風のお屋敷は素人目に見てもしつかりとした作りで、掃除も完璧に行き届いていた。 「知らなくても無理はないわね。その子、入学当初からほとんど保健室登校で、最近になって からはそれすらやめて引きこもっているんだもの」 . そこで会長は進路相談のプリントを口実に、クラスメイトとして学校に来るよう説得してく れないかと先生から頼まれていたのだった。 章 第「あなたと違って成績は優秀みたいだから、学校としてもちゃんと卒業、進学してほしいんで 川しようね」

6. 二度めの夏、二度と会えない君

あたしもお化け見たい ! 」 「みんなばっかりするい ! クラスメイトたちから聞いた噂話に感化された燐がばしばしと机を叩く。 耳障りだとばかりに会長がこっちを睨んでくるが、燐は気づいていないようで、 「捕まえたらきっと国からお金が出るよ ! 」 「ツチノコと一緒にすんな。てゆーか、そんなことしてる場合じゃないだろ」 このとき、俺と燐が最優先すべき課題は公演場所の確保だった。 ライブハウスの一件で市内全域、下手をすれば県内のかなりの範囲にプラックリストが出回 、俺たちが演奏できる場所はほとんどないに等しくなっていたからだ。 演奏ができなければファンを増やすどころかメンバーを集めることさえむずかしい 「ふふふ。演奏の発表場所に関してはすでに対策を考えてあるのだ」 かばん 燐が鞄から取りだしたのは小型のノートパソコンだった。 「店長のところで録音して、動画サイトに投稿しよう ! 上手くいけば人気爆発だし、バンド 組もうって人も見つかるかも ! 」 É画面に表一小されていたのはニョニョ動画というサイトだった。 確かに俺たちの年代がかなりの割合で閲覧しているし、人気が出れば支持も得られるだろう。 章 第 た , カ 幻 「こういうのって、色々と特別な機材や技術が要るんじゃねーの ?

7. 二度めの夏、二度と会えない君

276 さとし 「智君さー、結局最後まで歌ってくれなかったよねー」 と、燐が不満そうにふくれつ面で睨んできた。 ろくろ、つ なんのことかといえば、ライプのクライマックス用にヒミコと六郎が作った新譜のことだ。 燐はそれが出来上がったときから俺にツインボーカルやろうツインボーカルやろうとしつこ く迫っていたのである。 「だから、俺は歌だけはダメだつつってんだろ」 あの黒歴史 OQ のことを忘れたのかと燐の提案を改めて拒否するが、燐にしてみれば黒歴史 O Q を聴いたからこそツインボーカルを希望しているらしい。まったく趣味が悪い。 途中から俺たちの練習を見学していた会長がくくくと悪役みたいに笑いをかみ殺しながら、 「あの OQ だけじゃなく、あなたには中学の時のトラウマがあるものね」 「おいお前、やめろ」 しかし会長が俺に情けをかけるわけもなく、 「うちの中学は毎年、クラス対抗の合唱コンクールに力を入れているのだけど、一年生のとき しのはら だったかしら。篠原君、自分の歌唱力も知らずに張り切って、クラスから総スカンを食らった のよ」 一兀クラスメイトからすれば笑い事かもしれないが、当事者にはトラウマだぞ。やめろ。 燐に出会うまでろくにバンド活動できなかったのも、多分それがでかいからな ?

8. 二度めの夏、二度と会えない君

本当に大変だったのは、模試が終わってからだった。 仮にも進学校の受験生ということで模試の前は自重していたのだろう。 模試が終わった途端、解放感も手伝ってか、俺と燐、それからヒミコはクラスメイトに取り 囲まれてしまったのだ。 あわ 俺と燐は人に囲まれて慌てふためき、ヒミコは屋力と俊足を駆使して一目散に逃走した。 、つさんくさ この前まで俺たちのことを胡散臭そうに遠巻きにしていたくせに、ず一定数はいるクラス のお調子者を中心に、調子のいい一一 = ロ葉が乱れ飛ぶ。 プ ろくろ、つ ししくら夏フェスのことが記 しかしそれにしてもこの前まで六郎の件で誤解されていたのこ、、 祭 事になったからといって、ここまで急に好感度が上がるだろうかと当時は疑問だった。 文 しわざ 実はそれもまた会長の仕業で、俺たちが勉強と練習に追われている間、生徒会の仕事をこな 章 第しつつ誤解を解いたり俺たちの曲を布教したりしていたらしい その地道な活動によって俺たちの曲は水面下でかなりの人数に広まっており、そこに今回の うれ たのに。 ) しまだって無事にここまで来られて嬉しいはずなのに。 周りの空気が盛り上がれば盛り上がるほど、燐とのお別れを意識してしまい、どうしても心 は晴れなかった。

9. 二度めの夏、二度と会えない君

夏休み前日。 フリーダウンロードで配信する曲がいくつか出来上がった。 店長のところで録音した音源をヒミコが編集し、あとは学校の生徒にパスワードを配布する 校内での俺たちの立場は最悪なものだったが、それでも話を聞いてくれる人はいるし、そこ から音源が広がっていけばいいという、やや長期的な計画だ。 「夏休み中でも部活動はあるし、曲が評価されさえすれば支持は増えていくだろう」 ろくろ、つ 六郎は美術部をあたってみるといい、俺と燐はクラスメイトを中心に無差別的にパスワード を配ってみることにした。ヒミコにそんなコミュカはないので、俺と燐の付き添いだ。 一学期の終了を告げる全校集会とホームルームを経て、その日は午前で学校が終わった。 俺と燐がパスワードを受け取ってくれる人はいないかと校内を練り歩き、その後ろをヒミコ がビクビクしながらついてきていたときである。 いつもより人の気配が少ない職員室から声が聞こえた。 声の主は教頭だった。 だれ そろ のぞ また誰ぞを高圧的な態度で説教しているようで、誰が被害者なのだろうと三人揃って覗いて みる。そこで怒られていた哀れな被害者は、会長だった。 「最近、生徒会の仕事にもミスが目立ちます。それにあの成績。少し、気が緩みすぎなのでは ゆる