少女 - みる会図書館


検索対象: 剣刻の銀乙女(ユングフラウ) 2
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1. 剣刻の銀乙女(ユングフラウ) 2

Ⅷ「待ってエステルさん ! ここから落としたらヒースが・ーーって、あっー 涙ぐんで腕を振り上げるエステルをエリオが止めるが、今度は彼がよろめいた。 「危ないエリオ : って、ん ? 」 危うくすり落ちそうになるエリオをヒースが抱き止めるが : : : 腕の中に、なにか柔らかいも のが収まった。 「だ、大丈夫 ! もう、大丈夫だから」 エリオはすぐに竜の背へしがみつくが、裏返った声は、変声期まえの少年か、少女のそれの ようだった。グルグルと目を回す顔は見るからに動揺しきっている。 ーー今の、なんだ : 少なくとも、エリオの体のどこかだったはずだが、肩や腰にしては妙に柔らかかった。 手の平に収まるほどの大きさで、それでいてよほど圧力がかかっているように弾けそうで、 ちょうど直前に触れたエステルの胸の感触に近いような気がした。 数秒の間困惑して、ヒースは納得できる答えを見つけた。 ああ、お尻か。 うろた いきなり尻をつかまれれば、男でも狼狽えるだろう。 うなず 半ば現実逃避のように何度も頷くヒースだが、隣のエリオは乙女のように顔を紅く染めたま まだった。

2. 剣刻の銀乙女(ユングフラウ) 2

でも、誰が 昨晩の光景が、まだヒースの瞼には焼きついていた。 けんこく これまでも、《剣刻》がらみで人が死ぬところは見ている。だが、同年代の少年少女がああいっ た目に遭ったのを見たのは、初めてのことだった。 それだけに、ヒースも犯人を捜し出したいという気持ちが芽生えていた。 ・ : ああ、便所か ? 「なんだヒース、怖い顔をして。 すれ違ったクラスメイトが、出し抜けにそんなことを言ってきた。 こつけい 「俺が真面目な顔してるとそんなに滑稽かなっ ? 「え、でもそっち、便所だろ ? ・ : どれだけ真面目なことを考えていても、生理現象というものは抗いがたいもので、ヒー スの足は確かに男子便所へ向けられていた。 クラスメイトは、なぜか励ますようにポンポンと肩を叩いて去っていった。 さいな なにやら敗北感のような、屈辱のような気持ちに苛まれながら、ヒースはトボトボと便所の 扉を開け、そこで硬直した。 乙 : つ、ああ、エリオか」 の 刻 学生寮の男子便所にて、ヒースは来る場所を間違えたかと思った。可憐な少女 : : : にも見え 剣 る少年が、そこにいたのだ。

3. 剣刻の銀乙女(ユングフラウ) 2

ヒースが呼びかけると、男子生徒は足を止めた。 声をかけて気づしたが、、 : 、 ' すしふん綺麗な顔をした少年だった。背もヒースより頭ひとっ分低 ようし く、体の線も細い。少女と言われても疑わないだろう容姿である。だが、服装は男子のものだ。 : だったよな ? ええっと、確か転入生のエリオット・グリート : ヒースの少しあとに転入してきた生徒だ。転校生仲間ではあるのだが、当時のヒースは 今もそうだがーー・自分が授業に追いつくのに必死で周囲に目を向ける余裕はなかった。 ほとんど口を利いたことはないが、 癖のある碧い髪だからヒースも名前を思い出すことがで きやしゃ きた。華奢な身ながら騎士科の生徒で、剣の腕もかなりのものだったはずだ。 男子生徒ーーーエリオは気を遣、つような目を向けて来る。 せんさく 「安心してくれ。ボクは詮索するつもりはないよ」 「そうじゃないよ ! 俺が補習を受けてるのは知ってるだろう ? 」 うなず そう説明すると、エリオは納得したように頷く。 「二人っきりの教室で間違いが起こったとしても、ボクはおかしなことだとは思わないよ 「違、つって言ってるだろうよおおっ ? 涙を浮かべて叫ぶと、エリオはカラカラと笑った。 「ははは、冗談だよ。ベルグラーノくんにそんな度胸があるとは思ってないよ」 ぶじよく 「それはそれで俺を侮辱してるとは思わないのつ ?

4. 剣刻の銀乙女(ユングフラウ) 2

ー迅社文庫が贈る本格ファンタジー作品、好評発売中 ! J サウザンド 千の魔剣と盾の乙女① ~ ⑨ ◆著者名川口士 ◆イラストアシオ 魔王ノヾロールの侵攻により、窮地に追い込まれ た人類は、魔物を倒すことができる古代の魔 剣、その量産型を精錬する技術を編み出し対 と 抗した。 世リよ しかし、勢いを増す魔物たちの前には力が足 イラストアシオ らす、ついに人類は大陸を明け渡し、漂流する 島々へと逃げ延びることとなった。 それから 150 年 - 剣士ロック、魔法盾を操る美 少女工リシア、魔剣練成師の少女フィルの三 人は、魔剣の材料を求めて魔物たちが跋扈す る暗黒の大陸へと旅立つ ! 魔剣ファンタジーの決定版 ! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ヴァルキュリア 銀閃の戦乙女と封門の姫① ~ ◆著者名瀬尾つかさ ◆イラスト美弥月いつか マナの満ちあふれし世界クアント = タン。 かってクアント = タンへと召還され戦士として戦 った少年カイトは、今は地球へと戻り平凡な高 校生活を送っていた。 そんなカイトの前に、かっての戦友、フレイが現 れ、かの地へ戻って欲しいと要請した。妹の希 望もあり再びクアント = タンの地を踏んだカイト は、かって仕えた紅蓮の姫君と再会する。 進化するモンスター、変化する世界。カイトはふ たたび、剣を取る 瀬尾っかさが贈る魔剣・魔導ファンタジー最新 作、堂々の開幕 ! ! 一迅」社文庫 ト J / み 門、閃 、のの / 广

5. 剣刻の銀乙女(ユングフラウ) 2

れる。カタリーナのように、同性相手でも今のような反応をしてしまう。 恐布を振り払うように、ルチルは頭を振った。 えんたく 自分は円卓の騎士なのだ。 騎士姫なのだ。 けんこく こうしている今も、どこかで《剣刻》の持ち主が命を狙われ、誰かが命を落としている。 そして、ヒースたちには知らせていないが、現在この学園ではある事件が起こっている。今 かんこうれい のところは関係者に箝ロ令を敷いて騒ぎを防いでいるが、騎士の介入を考慮すべき事態だ。 弱音を吐くことなど許されはしない。 少しの間、立ち止まる甘えを自分に許したのち、ルチルは廊下を歩きだした。 「特務小隊の編成を、急ぐ必要があるわねー その顔は、十代の少女とは思えぬほど強い意志に満ちていた。 それは、張り詰めた糸のような、危うい強さでもあった。 「ーー・でさ。なにをすればルチルは驚いてくれると思う ? 」 その張り詰めた糸のような危うい少女の心労が、ここで増やされようとしていた。 学生寮の食堂にて、ルチルと別れた四人はテープルを囲んでいた。ヒースと向き合ってマナ。 その隣にエステル。ヒースの隣にはエリオという順で腰をかけている。エリオは完全になりゆ

6. 剣刻の銀乙女(ユングフラウ) 2

いますよ。お急ぎの方も多いんですから、俺たちが手を止めちゃ駄目ですよ」 「え、俺か ? 俺がおかしいのか ? 困惑する門番をよそに、ヒースが検問を続けようとしたときだった。 ス。ハンツーー景気よく、頭を叩かれた。 「 : : : ヒース、あなた、こんなところで何をしているの ? 後ろからかけられた声に、少年は露骨に顔色を変えた。 そこに立っていたのは、浅紫の瞳をした少女だった。 ヒースと肩が並ぶほどの長身で、艶やかな緑の黒髪は下ろされて腰へと流れている。少女と よう・はう そ・つぼう 呼ぶより美女といった整った容貌で、怒りで切れ長の双眸はキッと吊り上げられている。 オーメン 手には十本の指輪とふたつの腕輪がはめられており、そのひとつひとつに〈占刻〉の紋様が オーメントーカー 刻まれている。それだけの数を装備できることから、彼女が相当腕のいし 〈占刻使い〉である ことが伺い知れた。 エストレリヤ学園の制服を着ており、その手に握られているのは同校の教科書だ。 「ひいつ、ルチル ? 嫌だ。俺は門番なんだ。この仕事が好きなんだ ! 生き甲斐なんだ。勉 強はもう嫌なんだよー つや もんよう

7. 剣刻の銀乙女(ユングフラウ) 2

碧い髪を揺らす少年が、そこにいた。どこか、思い詰めた顔をしているように見える。 「エリオ先輩 ? 」 少年の顔を見て、カタリーナがメガネの位置を修正しながら逆の手を剣の柄に乗せるが、マ ナはそれに気づかなかった。 ルチルが向かったのは、医務室ではなく女子寮だった。どうやら病室として個室を与えられ、 療養しているらしい うろた 女子のための空間に、男子のヒースはわけもなく狼狽えてしまった。 「マナと入れ違ってしまったわね」 途中、マナの部屋も訪ねてみたのだが、べッドは空だった。ルームメイトの話だと、彼女も 生徒会室に向かっていたらしい。 そうしてラリの病室に到着すると、まずルチルが扉をノックした。 女「こんにちは、ラリ。具合はど、つかしら , ー・ー」 乙 銀 他に二人いることを話してから、中に入る。 の べッドに横たわっていたのは、黒い髪を肩で切り揃えた神経質そうな少女だった。切れ長の 剣 そう、ほ・つ オーメントーカー 双眸は浅紫で、彼女も〈占刻使い〉であることがわかった。

8. 剣刻の銀乙女(ユングフラウ) 2

この少女も、そうして校舎に忍び込んだ生徒のひとりだった。 ただ、運が悪いことに、少女は出くわしてしまったのだ。 まぎ 他愛のない噂話に紛れ込んだ、本物に。 やがて少女は、校舎の出口へとたどり着く。 開かないっ ? 」 ガチャガチャとノブを捻り、扉を押したり引いたりするが、まるで開く様子はなかった。 なんで。さっきは開いたのに : りよりよく 思い切り叩いてもみるが、木製の重厚な扉は、少女の膂力ではビクともしない。 オーメン だったら、〈占刻〉なら : 少女は指にはまった指輪へ呼びかけるが 「ーー応えないっ ? 」 オーメン 自の〈占刻〉は、少女の呼びかけにまるで反応しなかった。 コッ : ・コッ : ・コツ・ 青ざめる少女の背に、小さく不吉な音が忍び寄る。 逃げなきや : 逃げ道を探して、中庭から射し込む月明かりが目に留まった。 わら 藁にもすがる思いで、少女は明かりの射し込む窓へと駆け寄る。そしてそばに転がる花瓶を

9. 剣刻の銀乙女(ユングフラウ) 2

132 に安さを叫んでいる。 未成年が酒を飲んではならないという法律はないが、独特な苦みと金額ゆえに、少年少女の うちから手を出す者は少ない。 はっぽうしゅセルペッサ しかし門番内では、酒類は気つけとして腰から下げているものも少なくない。発泡酒の麦酒 は、栓を開けたら炭酸が抜ける前に飲まなければ味が落ちる。それゆえ、門番仲間から分けて もらったことが何度かあった。 セルべッサ 「麦酒か。なんか懐かしいな。飲んだことないの ? 」 「あるけど ? 」 平然と答えるその眼差しから、ヒースは彼女の言わんとすることを察してしまった。 「つて、俺が買うのつ ? 」 「だって、ルチルやマナには買ってあげたじゃないか」 「、つう・ 、仕方ないなあ : : : 」 学費を稼ぐ必要がなくなっても、貧乏性というものはそうそう抜けるものではない。ヒース が泣く泣く代金を支払うと、店主が驚いたように目を見開いていた。 「 : ・・ : ? どうかしたんですか ? 」 「ーーー離れてヒース ! 」 叫んだのは、ルチルだった。 せん

10. 剣刻の銀乙女(ユングフラウ) 2

こわね まるで申し訳なさそうではない声音と顔の少女に、ルチルは苦笑をかみ殺して頷く。 「例の小隊の件です」 そのひと言で、ルチルの表情はまた険しいものになる。 「 : ・・ : 反対かしら ? 」 けんのん つい剣呑なもの言いをしてしまうルチルに、カタリーナは首を横に振る。 ) え、反対はしませんが、隊員は女子に限定すべきかと思いますー 「なぜ ? かし 首を傾げるルチルに、カタリーナは何気ない仕草でポンと肩に触れてくる。 っ ビクッと、身を退いてしまった。 書類こそ取り落とさなかったものの、動揺は隠しようもなかった。 カタリーナはメガネの位置を正して表情を隠す。 「 : : : 気づいて、いたの ? 」 ヒースのときもそうだったのだ。幸い、あのときは少し震えた程度で済んだが、これが見知 らぬ男が相手だったらと考えると、それだけで血の気が引いてしまう。 きびす カタリーナはそれ以上なにも言わず、踵を返す。その先にあるのは生徒会室だ。まだ生徒会 の職務を続けるつもりなのだろう。 うなず