こた ほほえ とたん 声が出るようになった途端、俺は微笑みかけてくる多摩湖さんに全力て応える。 「お供します ! 」 「うむ、よろしくてよ」 じよ、つさまふ 脇からチケットを剥がした多摩湖さんがトウルーお嬢様に振る舞って俺の胃の底をトウル ー奮い立たせる。 波紋として広がる、静かな感動さえ内にあった。 おお・・・・ : おおう : ・ : ・旅行 ! トラベラー ! 俺たちカップルの進展まてトラベリングかー もちろんうそいつわ かあ 健全な付きあい ? 勿論嘘偽りなどございませんよお義母さん、ちゃんと脱衣ポーカーとか キスババ抜きって段階踏んているじゃないてすか、何か問題ても ? さっそく キスババ抜きの効力を、早速身をもって知らされた。 このカードゲームを十二回戦やり遂げることて、手も繋いだことのないカップルが旅行の約 束をするまてに仲を深める効能ありー ス キ ただし、相手の脇や眼球に喜をてキスしたり舌てレロレロしたりする変態カップル限定て。 相手の汗の味がご褒美と感じられるカップルは是非一度、両親の目が遠いご家庭の場所てお気 かいまみ 驂軽にトライを ! 上手くいけば、脇の下に新世界まて垣間見えますー 多 「行き先は何処てすか ? 」 2 「多摩湖」 はもん と ぜひ つな ま だつい
148 「じゅるるつ」 かしわ 「うわ、急に黄鶏君の顔が映像化出来ないレベルに陥った」 小学生なのに ! 」 「だってこれ太もも丸出してすよー 「それってどっちかっていうと」、 ハ学生だからじゃないの ? 」 「生足丸出しナマコさん ! 」 しかもそんな名前叫ばないて ! 」 「略し方のせいて別の生き物になっちゃってるからー りようよく あわ 多摩湖さんが、ハタ、ハタと両翼をはためかせるように慌てふためく。よーし、二人ともい しゅうちしん あんばい 塩梅に暖まってきた。俺たちのゲームの本質は常に羞恥心との戦いだからな。カップルとし ひとみかんばい つな 『君の瞳に乾杯』とか言っ てあるべき姿を取るのは、非常に恥ずかしい。お外て手を繋い はじかべ こくふく て相手の眼球に唾つけたりするのは勇気がいる。愛情だけじゃ克服ぞきない恥の壁がある。 それを熱と勢いて乗り越えるというかぶち当たって砕いて前に進むのが正しいカップルの在 り方といえよう。愛と勇気は両方ないと万能じゃないのさー そんなカップル談義はさておき写真てある。二枚の写真、どちらが十一歳なのか。 「むう。多摩湖さんかナマコさんか」 「同一人物じゃないような言い方なんてすけど ! ちょっとされたくはないけど くわっと目を見開く。背景に多摩湖さんの全身。なにかないものか。運動会のナマコさんの : ん、そ - フかー 方につい目が行く。ナマコさんの生足、服のシワ、胸もとの膨らみ。 なまあし こ おちい ふく
「そうてすねー。俺たち普通のカップルたし、わははは」 「いいからほら、さっさと評判の洋菓子屋行くよ」 「あれ、今日の放課後の活動は ? 」 「たからケーキを食べに行くことだって」 「あの、俺たちカードケーム研究会なんてすけど」 エピローグ「多摩湖さんと』 233
とびら 一一階に上がってから、扉の開け放してある俺の部屋へそのまま一一人ぞ入る。窓も全開て、室 と、つとっ 内には風車がカラカラと小気味よく回る音がした。以前、唐突に旅に出た多摩湖さんから観光 そとば かたむ ばちさ みやげ 地土産として貰ったものが窓の縁の植木鉢に刺してあるのだ。卒塔婆のように少し傾いている。 「ふんふふーふんふふー、んっふふつふふー」 きげん 「ご機嫌ッスねー。なんの鼻歌だろ、それ」 0 これぐらい分かってくれなくちゃ黄鶏君ったら」 「やつだー けんこうこったた ハンバン肩胛骨を叩かれる。骨の軋みは、不安に軋む心と連動するようだった。 たが ちなみに俺が一方的にべロチューしたダルマ ( キスの練習の相手。お互いにファーストキス てした ) は棚の上て、壁の方を向いて貰っている。多摩湖さんとダルマを同一視していたのに 張本人とご対面させたら気恥ずかしいじゃないか。 ばくらはてをにぎるのもはじるようなけんせんなおっきあいをしているんだー すす はいしやく ざぶとん 多摩湖さん用にと一階から拝借しておいた座布団〈の着席を「どうぞどうぞ」と勧める。 かばんひもかた くず 「ありがと」と短く礼を言って、足を崩して多摩湖さんが座った。それから鞄の紐を肩から外 と あ ゆか して床に置く。文化祭の準備用の道具ても入れてきたのかな。取り敢えず向かいあって座る。 はず とな ほか 健全なカップルは隣りあって座りこむのかな ? 他の友達とそんな会話が弾んだことないか かんべん いっしょ ごごしそこらのバカップルと一緒にされるのは勘弁だ ら、カップルの常識はよく分からない。オオ 節度あるお付きあいをしています、って多摩湖さんのご両親には説明したよ。キスどころか たな もら きは ふち かしわ 0
238 「映画はフィクション ! 徹夜はノンフィクション ! 」 なんだそりや ! 多摩湖さん特有のメチャクチャな切り返しに、しかし引きずられる。 こ け しだいあきら 映画デートを次第に諦めて、俺も自前の足て地を蹴り、多摩湖さんを追い越そうと全力疾走。 だいごみ 映画といい、計画通りにはいかないのも、多摩湖さんの醍醐味かな。 旅一丁と、 ・・とまあ、まったく順調に交際は続いているわけて。これからも、きっとこのままだろう。 昨日の幸福を今日に持ち越そうとするバカップルが、使い古した幸せに亀裂を入れて別れる。 っちか 明日に向かって日々培われるものを更新するカップルだけが生き残るのだ。 変化するものが生き残るこの世界の生物のように。 にわとり・ 卵を抱えた鶏はいつまても、青空の下て羽をばたっかせて、地面を走り続ける。 かか てつや こ、つしん きれつ しっそ、つ
240 しよ、つかい 本作の登場人物紹介、ネタバレ全開編。 黄鶏くん : : : 主人公。変態てお馬鹿。 多摩湖さん : : : ヒロイン。お馬鹿て変態。 う あとがきのネタがないからキャラ紹介て埋めようと思ったら、二人しか出てなかった。しか もネタ、ハレすることさえなかった。二百ページ強もなにが書いてあるんだ、この本。 本書はバカップルというかカップルの馬鹿がカードゲームの形を借りていちゃっいているだ けてす。人がバッサバッサと死んだり宇宙人モドキが出てきたりといったドーラマティックな ふくせん 展開もなく、伏線 ? なにそれ ? 状態なのて、緩い感じてお読み頂ければ幸いというかこれ をマジメに読むのは難しい気がしてならない。ても書くのはすっげー楽てした。 そんなしようもない内容てはありますが、お買い上げ頂きありがとございました。 少しても気に入って頂けたら、それ以上の幸いはありません。 おうしゅう 『この借りを返すのは来世て ! 来世はアラブの石油王てすから ! 欧州のサッカーチームを かしわ たまこ ↓のし」か」 ゆる
研究結果ねえ。 さっそく ては早速、夜など待たずしてはっぴょーう。 ズヴァリ、もどかしい男女の仲を深めるには脱衣ポーカーが一番 , : ただし、変態カップル限定て」 いっかん 無難に盛り上がるか、単なるプレイの一環になるだけてす。 バカッフルたと 「いや変態なのは黄鶏君ご イ・わに、刀、ら」 多摩湖さんが言う。 おと 「いやいや負けず劣らずどころか足下にも及ばない変態ぶりを多摩湖さんは : : : 」 じゃれあうように、なすりつけあう。 これが俺と多摩湖さんの、平均的に愉快な一日。 ゆず にわとり 卵ても鶏ても、両方がこうして一緒にいられるのなら、先は好きに譲るよ。ホントさ。 カ まあこの後に譲りあいか加熱して、更なる秘密を温泉の源泉みたいに掘り当ててしまうのだ 衣 がそれはまた別の話。 めずら 珍しく活動した、本日のカードゲーム研究会の結果報告は、ここらてお終いだ さ 多 あしもと いっしょ さら およ だつい
カードを放り投げて後ろに倒れこみかけた多摩湖さんが、その体勢のまま復帰してくる。 「多摩湖さんの目玉の味を確かめたかった : 「魚の目玉みたいな味なんじゃないかな。私、魚よく食べるし」 そ - フい - フことじゃないだろ , フ ! 今の多摩湖さんの発言には夢がない、ダルマよりない ! かしわ ますます 「ていうか、黄鶏君が益々変態つばくなってきてちょっと不安かも」 「こほんこほん」 少々熱暴走気味だったかな。風車ても見て落ち着こう。あ、今は回ってないや。風がないっ むあっ てことだから、自覚すると一層の蒸し暑さを知覚してしまう。むう : : : 暑いから暴走続行。 だいじようぶ だつい というか大丈夫、全然変態じゃない。カップルはみんな脱衣とかキスとかしてる。 おもしろおか カードゲーム研究会だからそのやり方が少し面白可笑しいだけ。ひやつはー まぶた じゅうけっ 瞼を指て押し上げて、充血している部分まて見せながら多摩湖さんに言う。 「じゃ、じゃあ多摩湖さんが俺の目玉にキスを : : : 」 ス 「う、うっすっす」 キ 「舐め舐めを : : : 」 湖「言い直しになってないって ! は 多 これはこれて認められるかも知れない。恥じらう多摩湖さんという特典もある。 いっしょ しんてい 「もじもじ」「もじじ」俺も一緒になって照れる。多摩湖さんからキスの進呈だなんて。 たお
「 : : : 黄鶏君から今まて送られてきたメールを夜中に、毎日五回は読み返してる」 、つかが お互いの首筋に目がいっているから顔色は窺えないけど、多摩湖さんの左の髪が大げさな感 かたまり じに揺れて、こそばゆい。 言葉自体がこそばゆさの塊なのにそんなことされたら、鳥肌だらけ になる。ても相手には触れないし、香りは嗅ぎ続ける。ヾカップルじゃないから。 「黄鶏君、呆れた ? 」 かわい うなぎのぼ 「むしろ多摩湖さんの可愛さがただ今鰻登り」 「 : : : 恥ずかしい」 「ていうか、むしろこっちがジャプなのては : : : 」 じゅんぼく 「そうかな」そんな純朴そうな疑問声を出されても困る。 「いやそうだろ : て、最後は ? 」 これホント恥ずかしいし」 一「負けたのだからそれに耐えるように」聞く俺も恥ずかしさと戦っているのだから。 はだか つか 衣多摩湖さんが俺の服の裾をキュッと擱もうとして、「あ、ごめん黄鶏君裸だった」「ソウダネ」 くちびる すごきょだっ すきっ ん もの凄い虚脱感に襲われた。その隙を突くように、多摩湖さんがばそばそと唇を動かす。 ばってき さ 湖 「 : : : 映画のヒーロー ヒロインに私たちを空想抜擢する」 移「はあ ? 」 「だから、映画とか見るとき、格好良い男の子役は黄鶏君て、その男の子と恋愛する女の子を ゅ は あき おそ ふ た すそ かみ とりはだ
たまこ かったけど、その名目て多摩湖さんが家へ来たのだから一応は話してみようと隸った。 うつぶ 「んむ、よくぞ聞いただよ」と多摩湖さんが俯せに寝転がったまま顔をこちら ~ 向ける。に ~ ゆる ーっと頬の肉を限界まて緩ませて、両手をいい加減な角度に広げた。 「まずてつかいトランプ型の着ぐるみを作るのね。顔が見えて、手も出せるやっ」 「 : : : それて ? じゃっかんこうかい その時点て話を振ったことを若干後悔していた。何となくの予感によって。 かしわ 「それに私と黄鶏君が入ってお客さんとポーカー勝負するの」 おお 多摩湖さんの日本語の正体が擱めない。俺の混乱はまたたくまに視界を覆い、日差しを虚ろ にした。風車の回る音だけが耳もとて風を切る。 「いやいや、本気て意味分からない」 「あ、カップル限宀てキスババ抜きをやらせるのもいしオ 「それ、楽しい文化祭がエロ祭になるだけては」 「黄鶏君は表か裏、どっちの面て顔出したい ? 「いや俺は世間様に顔向けしやすい方向て行きたい おもしろ だいじようぶ 「大丈夫、絶対面白いから」 いや、会話を非難する前にこっちもちょっと想像してみよう。 会話が噛みあっていない。 ハンペンかぬりかべみたいな着ぐるみに、多摩湖さんともそもそ入る。背中合わせて。お尻 ねころ うつ しり