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検索対象: 多摩湖さんと黄鶏くん
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1. 多摩湖さんと黄鶏くん

0 ( 二つの意味て ) なんかィッチャッテル多摩湖さん。ばさりと靴下の上に下着を落として、胸 す うでかく もとを腕て隠すように覆いながら、椅子に座り直す。置かれた手札を拾い上げて、多摩湖さん うわめづか こうたんゆが ろうばい は俺の狼狽を面白がるようにロ端を歪める。そして俺の手の内を探るような上目遣い 「下着、って : : : って ! 。こっちは手札など見ている場合てはない。 おそ 何という欲望に直結した心理戦を展開してくるんだ。恐るべし多摩湖さん。ていうか多摩湖 さんの下着、下着の多摩湖さん。しかも今まぞ身に着けていた下着。目玉がゴロゴロする。 ふぜい いんきょ 美術準備室の、隠居して枯れたお爺さんみたいな風情のテープルに、靴下一一つと下着が一つ ともな かげろう も、つしょ 重なって置かれている構図は、猛暑によって生まれた陽炎より実体の伴わない風景だ。 つらぬ 0 多摩湖さんが背景に背負う窓を貫き、じりじりとした光が俺の眼球と思考を焼く いやいやいや ! 待たれい ここて勝てば、多摩湖さんの下着を戦利品として : この勝負に、勝ったら、俺はこいつを、何処に、装着しろって、言うんだ。 にたく 何処に着けても下着泥棒と変質者の一一択しか存在しないじゃないか ! お腰に着けたキビ団 ももたろう いぬさるきじ 子の代わりに下着を差しだしても、大、猿、雉は俺を桃太郎さんと認めてはくれまい にんしき 頭がピーチ野郎とは認識されるかも知れないが かしわ 「ふつふつふ。勝てるかな、黄鶏君。それともフォルトかね」 多摩湖さんが脚ても組んて机に載せかねない勢いて勝ち誇ってくる。これが脱衣ポーカーの なや これは隸い悩む。負ければ失うばかりだが、勝っても俺は大 、い理戦だ、とばかりに。確か おもしろ やろう おお の くっした さぐ だつい むな

2. 多摩湖さんと黄鶏くん

0 こうにん ちなみに俺と多摩湖さんのお付きあいは、彼女の家族公認だ。 むすめ 付きあいだしてから娘が平日にふらふらと旅に出なくなった、と多摩湖さんの母親に感謝さ ぶんちん れていたりする。俺は文鎮か うすめ おもしろ 「しかし、下着一枚のまま薄目て気絶しかけている黄鶏君の姿は : : : 面白いよ」 ておく 「俺が一番傷つかない感想を選んてくれてありがとう」てももう手遅れてす、ズタズタ。 そ 多摩湖さんは俺の予想から大きく逸れず、「こっちも秘密を賭けるゼ」と言って服を脱がな かった。 ' 」だ、想象ては一一度目のべットまて服を何かしら賭けてくるはずだったが、どうも 枚たりとも俺に着せるつもりはないらしい。上等だ こうかん カードを多摩湖さんは三枚、俺は一一枚交換する。そして、互いに秘密を三つ賭けての勝負。 結果は、「つよし ! 」俺がツーベアて、多摩湖さんはワンペア。やっと一勝をあげた。 ちょっと無理、マジ無理 ! 無理無理 ! 」 にわとり 多摩湖さんが俺の名前を奪ったかもしくは式ても挙げたかのように、鶏つばく準備室内を駆 ろうばい ほほえ け回る。俺はその狼狽ぶりを至福の笑顔て、そして。ハンツ一丁て微笑ましく見守る。 まし」 いやー、やつばり勝負事は勝ってこそてすよね。そして多摩湖さんは服を脱げない、 かたむ 賭けられない以上、秘密を口にするしかない。眼鏡が良い感じに傾いていらっしやるね。 「多摩湖さーん、お待ちかねの告白タイムぞすよー」 「待ってねー ! 」 えがお かしわ たが か

3. 多摩湖さんと黄鶏くん

止、というより意味ないてしよ」 「まあ、七並べみたいにカードを共有してませんしね」 かく この歳並べは手の内の中て完成させるパズルに近、 したからシールぞ日付を隠したわけだ。 多摩湖さんが徹夜て考えた割に、意外と健全てある。ただトランプというか、カードゲームか ら遠ざかってはいるけど。あっちが立てばこっちが立たずとはよく言ったものた 「後、特別かは分かんないけど、一度ても並べる写真を間違えたら即負けね」 「おおい待った ! 」 「ん ? これこれ、みだりに大声を出してはいかん。先生にバレるとうるさいし」 「それじゃあ先に並べ終えるも何もないじゃないてすか ! 前提プロークンじゃん ! 」 「馬鹿モン、カレシカノジョの顔を間違えるなんて愛と勇気が足りぬ ! 」 いっしゅん そういうことを指摘しているわけじゃない か、その通りだと 一瞬賛同しかけた自分が ついきゅ、つ いることは否定しないー そしてその上て、俺は次になにを追及すればいいんだろう。 歳「俺が勝ったらこの写真貰っていいをてすか ? 」 ん それが最優先かよ、俺 ! 「そこが一番大事なところかー ! 」おお、多摩湖さんとシンクロ。 驂「ても他に聞くことないしなあ」 多 「いつばいありそうだったじゃん ! そっちこそ前提プロークンだよー こ、つぎ たた 。反省。 ノンバンと机を叩いて抗議してくる。なるほど、御説ごもっとも べ てつや してき もら ごせつ

4. 多摩湖さんと黄鶏くん

129 「多摩湖さんと歳並べ」 なかな 『うん ? どのあれ ? 』 『いや、多摩湖さんと肩とか当たってて、それと : 『あ ! もう、言わなきや意識しなかったのに』 『すいません』 『もう少し自然と、黄鶏君と背中お尻その他諸々をくつつけていたかったのに』 『えつ、そっち ? 』 『照れ照れ』 『くねくね』 しいから学校行きなさい』多摩湖母。 『おめーら、 というわけて健全な男女交際からバカップルに一歩前進したのてあった。え、いやほんと健 くちびるふ つな だって俺たち、手を繋いだことも唇が触れあったこともないよ。まあお ムみてすけどなにか ? 腹を舐めたり目玉を舐められたことはあるけど、それはみんなやってることだから。多分。 もど 現在に戻るわけだが とまあ、そういうわけて回想お終い。美術準備室にいるという 「 : : : しかし、今日はなにをやるつもりなんだか」 まえふ さすがにもう徹夜宣言の前振りから、ある程度の察しはつく。多摩湖さんに言われて用意す ねんれい 一枚ずつ、とい る写真の内容にも指定があったし。俺の『 15 歳』まての写真を年齢ごとに あや そろ うお達しだ。多摩湖さんの 1 ー肥歳の写真も揃えられますよ、と危うく口にしかけたがなんと たっ もろもろ : こう、お尻がてすね』 しり

5. 多摩湖さんと黄鶏くん

136 正確に並べる。これが歳並べよ」 「この一歳から十二歳まての写真を、七並べみたいに たまこ : ええっと、多摩湖さんの写真を一歳から順番に、ってことてすか ? 」 かしわ 「そうそう。私の場合は黄鶏君の写真ね」 せんとう おうぎ 写真を再び擱んて、扇状に持つ。それを斜めに構えて戦闘態勢に入ってる多摩湖さんはさ ておき、なるほど、そういうゲームかそしてはて、どういう意図のゲームなんた ? それに、 「あの、多摩湖さん。一枚足りない」 「いや、七並べというかトランプに見立てるなら、写真が足りないぞす。十二枚しかない エースキング トランプは << ーて十三枚なのてすが かんちが 多摩湖さんの表情が固まる。ひょっとして、十二枚と勘違いしたとか ? さっそく 「さあ早速デュエル的なアレの開始よ ! 」 うわあ聞かなかったことにしたぞ。カードゲーム研究会的に非常に問題があるから流したぞ。 ほか 「いやいやちょっと待って、なんてこんなゲームを考えたとかそういう説明は ? それと他に 特別なルールとか、勝ったら多摩湖さんの写真全部回収オッケーとか言わなきや」 「最後のやつにしか一言葉にカ籠もってなかったよこの人 ! ん、まあルールとしては、えー 十一一枚 ! を先に正確に並べ終えた方が勝ちね。写真は一枚ずつ交互に置きあって、パスは禁 つか しちなら なな としなら

6. 多摩湖さんと黄鶏くん

3 カ自匍した。 それはさておき 1 から、そしてカードゲーム研究会と徹夜。この各要素が組みあわさって たまこ 導きだされる結論は、多摩湖さん考案のオリジナルカードゲーム以外にあり得ないだろう。 多摩湖さんの性格から考えて、写真をカード代わりに使うつもりだということは分かる。し かしそれてなにをするかまては予測がっかない。写真も年齢ごとのやつが四枚あるわけじゃな いから、カードとしては枚数が足りないし。 十二枚のカードぞてきるゲームってなにがあったかな。いやいや、多摩湖さんの発想は既存 のゲームをぶち壊すからな、常識に囚われてはいけな、 : などと考えて、写真と睨めつこ。 そうして多摩湖さんを待つ。ばんやりと、鼻の先の乾きを指て掻きながら待つ。 おとず ひか そこに訪れる幸福感は夏休みを明日に控えた終業式の時よりもずっと、実感があった。 スゲー、多摩湖さんスゲー 文化祭どころか夏休みにも勝っちゃったよ。 つぶ 十一一枚の写真をさして興味もなく眺めて時間を潰していたら、すぐに多摩湖さんがやって来 た。口が半開きて、ボーツとして : : : そんな気の抜けた昔の自分の顔ばかり見ていたからか、今 とら 日の多摩湖さんの笑顔を一層魅力的に捉えてしまう。この写真、引き立て役として意外と便 こわ えがお みりよく なが とら かわ ねんれい てつや にら きそん

7. 多摩湖さんと黄鶏くん

128 『ふむ、じゃあ当家に何用かね ? うおつほん』 とカ隸っこり 『いや、そろそろ俺たちも一緒に登下校していい仲なんじゃないかなー 『えー、そんなバカップルみたいなのは先走りになるんじゃないかな。ほら健全なお付きあい はちゃんと段階踏まないと』 てつや 『段階を踏むための階段を徹夜てぶつ壊す人が言うとかえって説得力ありますね』 かしわ 『まあ黄鶏君がどーしてもと一一一一口うなら一緒にどっか行ってもやぶさかてなくってよ』 かあ 『どっかじゃなくて学校ッス』お義母さん後ろて睨んてるし。 ずいん 『引っかかりなさいよー しかし久しぶりに会ったら随分日焼けしたねえ』 うなず 『昨日も一緒に買い物行ったばっかりてすけど、なにしみじみと頷いてますか』 『本当、一夏の間に背もおっきくなっちゃって。カッちゃんいい男になったねー』 『なぜ親戚のおばちゃん風。 : : : あれ、むしろ多摩湖さんが背伸びた ? 』・ 『そ , フ ? じゃ、測ってみる ? 』 『どうやって ? 』 ちが 『二人て背中くつつけて。前と肩の当たる位置とか違ったら、どっちかが伸びてるってこと』 『いいてすよ : : : あ、前より多摩湖さんの肩が高い。やつばりそっちの背が伸びてます』 『うーん、成長期もそろそろ終わりのはずなんだけど。 黄鶏君が縮んだとか』 『まだそんな歳じゃないてす。ていうか、これは、あれだなあ』 ひとなっ しんせき いっしょ かた こわ にら

8. 多摩湖さんと黄鶏くん

20 ) 「たまこい てんじよう は とつじよ 突如飛び跳ねた背後の男に、多摩湖さんが目を白黒させる。天井が低ければぶち破っていそ ほほえ からだ っ うな勢いて突き上がった俺の身体が着地を果たして、多摩湖さんに微笑みかける。 「カードゲームはやつばり楽しいてすね」 ははは、とか付け足して笑ってみる。多摩湖さんの右の頬がひくっと引きつった。 「嫌な予感がヒシヒシ伝わってきたからそろそろゲームお開きね」 「またまたー」 「うわあ絶対ぶっ飛んだこと考えてるよ」 きよくたん げんなりしたりすることはない多摩湖さん。 そう言いつつも極端に嫌そうな顔をしたり、 しんけん なにを思っているのだろう。自分の考案したゲームに、俺が真剣に取り組んていることを喜ん ている面もあったりするのかな。 それから十分ほどて肩を揉み終えて、一一回戦開始。多摩湖さんが勝ったのて親は続行。集め て切った札を俺が配り、ゲームの準備を行う。見覚えのある札が中央に幾つかばらまかれた かしわ や見た目が同じなだけて、裏 さっき俺の手の中にあった『①黄鶏君が』の松のカス札だ。い 面のワードは異なるかもしれない けどイラストが手描きだから、目をこらせばさっきと同 にぎこぶし えがお 一か判別出来る。 : 間違いない、同じだ。よし、と笑顔の代わりに小さく握り拳を作る ~ は、一一回せーん。さあて今度はもう少し過激な命令作っちゃおうかな」 も にしし、と多摩湖さんが意地悪そうに笑う。うしし、とこっちも笑いが漏れそうになったの ほお 0

9. 多摩湖さんと黄鶏くん

たんのう じられた。多摩湖さんはひとしきり目玉を堪能してから、味についての感想を述べてきた。 かしわ 「黄鶏君の目はうっすい涙の味がしたよ」 「そーっすか : : : 」 「初めてのキスの相手が目玉てしたって、私なんか誤解されそう」 「初めてにしては情熱的なキッスてございました : なが 精神的ボロ、ボロによって床にへばりついている俺を眺めて、多摩湖さんが破顔する。 「なんか私、試合に負けて勝負に勝った ? 」 「まさしくそれ」 むじゅん ていうかキスババ抜きって、負けた方が勝つんじゃないか ? 矛盾しているけど。 「そういえばババ抜きのババって、の絵札に載っているおばさんのことらしいね 「はい ? なに、その急な豆知識」 たま 「いや偶にはカードゲーム研究会の会長つぼい部分を見せないと、ふつふつふ。 ひろう とうとっ 本当に唐突だった。仕入れた知識を披露しようとしたけど忘れていて、今ふと思いだしたよ 。てもその話題の変更によって眼球を取り巻く空気も一新される。俺は立ち上がった。 せんせい 対戦相手の復活を見計らって、多摩湖さんがカードをピッと指に挟んてから宣誓する。 かくご 「次は耳よ ! 覚悟するヨロシ ! 」 「アイヤー ! 」 へんこう ゆか の はさ

10. 多摩湖さんと黄鶏くん

「五歳より , ハ歳の方が、今の多摩湖さんに近いから」 「 : : : はあ ? 」 うなず いや、だからさ。水着の多摩湖さんを見下ろして、うんと一度頷く。それから顔を上げた。 たど す 正面から多摩湖さんを見据えて、その健全に辿り着く為の問いかけを発する まぶ いや俺 「五歳の水着姿より六歳の水着姿を眩しく感じる方が健全力ップルと思いませんか ? は胸のサイズとかそんなことて判断したんじゃなくて愛のパワーぞ今の多摩湖さんに近い , ハ歳 の方を選んだをてすよ本当てす」 「この変態純度の増した黄鶏君には負けるべきじゃなかったー 「もう遅いてす ! 勝ったー これて新しく十一一人の多摩湖さんを手にしたぞ ! 」 「黄鶏君の中には何人の私がいるのだろう」 「やつほー ゆかたお す せの 椅子の背もたれがないことを失念した背伸びて、どてーんと背中から床に倒れる。倒れる途 しよ、つげ・き けんこうこっ 駐中、腰に椅子が弾き飛ばされて一緒に転がった。 , 衝撃が首の後ろや肩胛骨を中心に息苦しく しんと、つ あつばく んなるほど浸透してくる。それが終わるまて歯を食いしばって、圧迫感が散った頃に大きく息を なみだ は む のど 既吐いた。急な呼吸を数回繰り返したから噎せて、喉の痛みに呼応するように涙が勝手に滲んだ。 いもほ 多 顔の側には芋掘り中の多摩湖さんの写真が添えられて、その全てがどこか愛おしくなる。 ′ 0 「黄鶏君、 ごいじよぶー ? 」 べ おそ そ ため 0 ころ と