ふつう ちが このゲームは普通のこいこいと違って、次の相手の番て命令が成立する確率は非常に高い そろ 特定の絵札を揃える必要もないからだ。だからこ いこいはあまりしない方が勝ちやすいとは : まあいいか。ついさっき言ったが、俺は多摩湖さんに命令されても負けを感じない しようぶ 「んふふ、ゲーム続行て私の番と。軽く菖蒲の札ても取っちゃおうかな」 にわとり まえかが 同じ絵の札を重ねる。前屈みになった 多摩湖さんが鼻歌演奏中の鶏と菖蒲の描かれた札に、 むな しゅんかんゆかた かく すき とっさ のぞ ぜんけい 瞬間、浴衣の奥に隠れた胸もとが隙だらけになるのてはと俺も咄嗟に前傾姿勢を取って覗こ あら さこっ うとする。けど露わとなったのは鎖骨まてだった。俺はこれても健全力ップルの片割れなのて、 くや だきよう はだ , 」こて悔しがらない、鎖骨て妥協する。鎖骨と肌の間に舌這わせてみたいなあ。 めく 「捲って、あ、残念」 山から捲られた札の中ては、舞い散る桜の下、学生服を礼儀正しく着た鶏が直立不動してい いっしゅんかんき やっと鶏がマトモな出番を与えられた、と 一瞬歓喜しかけたが人間のように背筋を伸ばし うで て立っ鶏は予想以上にキモかった。しかも普通に腕生えてるし。ちょっとムキムキてグレート チキンに似ていた。 多摩湖さん、筋肉質な俺が好みなのか ? いや存在しねーけど、そんなの。 「ても取った札と、こう組み合わせれば : : はい、出来たー ! 」 もろて はず 多摩湖さんが諸手を上げて、弾んだ声て完成を報告してくる。 「あれ、こい こいはフ・」 「するかそんなもん ! なははー、勝ち勝ちー あた れいぎ の
気恥ずかしさによって穴だらけにされた神経を埋める為、そんなノリを維持しながら三回戦 しつぶうどとう を始めた。しかしここからが疾風怒濤にエライこととなるのてあった。 むだ 「うわっ、勝った ! 」「オラオラオラ、耳をお貸し ! ー「無駄無駄無駄、わぎや ! ちょ耳の穴 は駄目、反則、ロープロープ ! ひょいひょいあ ! 」「うわ、反応が女の子つぼいよ黄鶏君。可 ふる こわ 愛い可愛い」「きゃい、うわなんか下半身震えてる ! 布い、なんか怖いタイムアウト ! ーやーじゃー ! 黄鶏君の耳をはむる ! ー「はまれる ! ちょっと、キスじゃないのか ! 噛ん くちびる きら てる噛をてる ! 」「時には相手の唇を噛むこともあるからその練習 ! 」「嫌ってないかそれ ! 」 そうじ 「いいから大人しく耳の穴をかつばじらせなー」「俺実は五年ぐらい耳掃除してなかった気がす る ! 」「つしゃー ! 」「なんてやる気になるんだー 「ういーん ! 」「舌が耳の穴てー ! 」 「四回戦はほっ。へ ! 」「おー、唇に一番近い ! 」「そうだろそうだろー、夢があるよねー」「へい つ、キスー ヘイへイ ! 」「まだババ抜きやってないじゃん ! 、「俺たちの愛にババ抜きなん か不要てすよ ! 」「ぶっちやけっちゃったー いやいやカードゲーム研究会だから私たち ! 」 みりよく キ「キス魔訓練所に改名しません ? 」「しません ! それも魅力的だなーとか私が思わない内に さー勝負 ! 、「俺のターン ! 」「続いて私のターン ! 」「カードを引くこと以外何も出来ない俺 既のターンー 「トラップカードも発動出来ない私のターン ! 」「不毛な宣頁俺のターンー 多 「いえー、黄鶏君からのキスだ」「勝っちゃった ! 多摩湖さん空気読をて負けてよ ! 」「私の ふつう しいじゃん。男の子にほっぺにキスされるの ほっ。 ~ がご不満 ? 」「逆てしょ普通 ! 」「えー きは ため
13 8 「て、くれるんてすか ? 」 ゆず かしわ 「そこは譲らないのね、黄鶏君」 おもしろ 「勝負は賭けるものがあると面白くなりますし。焼き増しても可」 ( いよ、うん。勝ったら私も黄鶏君の写真一式貰っちゃうし。それに黄鶏君が勝つよう すてき なことがあれば、もっと素敵なものを見つけられることてしよう」 ろうどく 後半は絵本を朗読するような口調だった。素敵なもの ? もっとと言われても、銀河系ては たまこ 多摩湖さん以上はちょっと見つからないだろう。なにか誤解があるんじゃないか、多摩湖さん。 げんち オこれて歳並べに目を血走らせることがてきる。負 しかし、写真を賞品とする言質は取っ ' 」。 けて失うものが自分の締まりがない写真とか、リスクが低いのに見返りは大きすぎる勝負だ 「そういえば、どうして歳並べやろうって思い至ったんてすか ? 」 けいがん 「最初の質問が後回しになりすぎてしょ : : : 言ったじゃない、慧眼を養う為だって」 「慧眼 ? 」 「黄鶏君、私たちの時間は貴重なのよ。も、ひつじよーに尊いのよ」 かみけ 身振り手振りを交えて時間の大切さを主張してくる。ついてに自分の髪の毛を指て梳いた。 のが ちょうぼっ 「そんな貴重な時間の中て起こる、日々の相手の変化を見逃すのはもはや懲罰モノ。だから 私と黄鶏君の観察力を鍛えることにしたの」 「はあ : みぶ し きた としなら もら ため す
と内心て叫びながら一一枚のカードを中央 スペードの 6 と、 ノートの 5 を弾き出し、ドロ の山より引く。とんがれ、とんがれ ! ってそりやブラックジャックだったか ? と雑念に気 ジャック せんせんきようきよう ートの。 を取られながら手に取ったカードを戦々恐々、確かめる。ダイヤのに : ぎそう 出来た役はのワンべアだった。色が同じ赤なのて、どうにかこのハートをダイヤに偽装出 さと むだ ちえねっ 来ないものかと知恵熱気味の頭を振り絞って手札と睨めつこしたが、時間の無駄と吾った。 すいさっ ホーカーらしく。 ここは多摩湖さんの心理の流れを推察するべきだ、。、 今の多摩湖さんの表情からそれを読み取っても『あついよー』ぐらいしか出てきそうにない のて、ここまての行動から考えてみよう。 ひとがらこうりよ まず人柄を考慮して、自分の下着が俺の方へ流れるのを甘んじて受け入れる多摩湖さんじゃ ないだろう : : ・多分。今はこの熱気の所為ぞ脳みそのネジ具合が心配なのは唯一の気がかりだ 司か、それはさておき。 よほど カ つまり多摩湖さんが下着を賭けるということは、手札が余程良かったか、それとも俺をゲー こうかん ムから降ろさせる作戦のどちらかだ。そして多摩湖さんは手札を一一枚交換した。初期の手札て 残したのは三枚だから、その時占ぞスリーカードは成立していた可能性がある。 となり みよう さ 湖 だが、カードをチェンジする際の捨て方が妙だった。多摩湖さんはカードを中央と、その隣 そろ くせ マージャンしか 多 から一枚捨てている。人間は麻雀然りトランプゲーム然り、手札や手牌を綺麗に揃える癖が ある。多摩湖さんの最初の手札てスリーカードが成立しているなら、右か左を始めとして真ん にら ーしきれい てま、 ゆいいっ
219 「たまこい はあ、てりや 掛けしてる人かいたらみんな、そのまま星がそいつの頭に落ちろって思うよー 「なら俺のターン ! 取ってえ、 あ ! うおお、黄鶏君が多摩湖さんにて命令が止まったー かみけ 取ってえ、また取ってと。出来た ! 多摩湖さんの髪の毛を腰に巻く ! , 「そんな腰に巻くな ねっぞう んて一言葉の札作ってないってーの ! 命令捏造はペナルティ ! 、「それならやむを得ない、 ・命令出 いこいてす ! 」「やむを得ないってルール尊重する気ゼロじゃん ! え、こい だれ 来てるの ? 「多摩湖さんが逆立ちて過呼吸する」「誰が得する組み合わせなのそれ ! ー「そ つか して疲れた多摩湖さんを俺が介抱するわけてす」「まさかじ、人工呼吸てもするつもり ? 「いや皮膚呼吸してる場所にキスして酸素注入ぞもしようかと」「介抱の意味をご存じかし と思う ! 」「はい多摩湖さんの番てす ら ! , 「安楽させる」「黄鶏君の頭も介抱された方がいい にわとり よ。飛ぶ鶏を落とす勢いて俺の喜ぶ命令を作っちゃってくださいー「鶏は飛べねーてしょー 今の君はどんな命令しても喜びそうて怖いよ ! 」「多摩湖さんと別れろ系以外なら好き嫌いな はあ ! 鎖骨を しけます ! 」「そんな命令する多摩湖さんは地球上にいません ! せい かた たが いいなー。お互いに要らない札をトレード 肩を髪を ! なにこれ、③が一枚もない ! 」「あ、 こしませんか ? 「トレカじゃねーっつーの ! 少しはゲームしてる気になりなさい ! 」「じゃ あ逆立ち。多摩湖さん逆立ち ! 」「なんてそんな逆立ちさせたがるかな ! 」「逆立ちしたら なまあし っ ゆかたきじめく 浴衣の生地が捲れててすね、多摩湖さんの生足がデーンと天を突くようにそびえ立つわけてす む とうひってき よ ! それを太陽の塔に匹敵する造形物と認めるのはやぶさかてはない ! 」「君の脳も剥きだ か かいほう こわ きら さこっ
212 臓が鼓動を速めている。「これは新たな恋の兆し ? 「順調に危なくなってるだけだと思う」 おお、そ - フカ じゅんすい さこつな 「鎖骨を舐めるとかそういう変態セレクトせずに、純粋にゲームを楽しみなさい」 「そもそも舐めるとか鎖骨とか書く方が悪いのては」 「だってさー、意外と命令の言葉なんて思いっかないじゃん。ついめんどくなっちって」 も 「いやいいんてす、揉むがあったから全て許されるんてす」 ・ : 段々触れる面積が増えてきた気がする」 「今度は揉むことに目覚めたのかよー くちびる まあそりや唇や舌よりは手のひらの方が大きいわな。さて、無難なところて : : : これにして えが にわとり たまこ おくか。『①多摩湖さんが』と裏面に書かれた鶏のカス札て、卵の描かれた雨札を取る。 「そういえば雨って何月の札てしたつけ」何気なくそんな話題を振ってみた。 「んー、雨だし六月 ? 」 : たったかな」 めく 十一月だった気もする。中央の山札を捲ると、「あ」雨の絵札だった。雨に打たれて、髪の おび びき ようなトサカが禿げることに法える鶏一匹。そしてその鶏の胸て雨宿りする卵が一つ。 「残念だったねえ」 まえかが うれ 嬉しそうに多摩湖さんが言う。「そんなことないッスよ」と強がりながら、前屈みになってい からだ た身体を引っこめる。俺の取った札は『①多摩湖さんが』の他に『②腰を』。腰。多摩湖さん こどう すべ きざ ほか かみ
1 ) 4 : 色々と聞かなかったことにして流そ - フ。 あわ うん、俺の番だね。さっき思ったとおり、今回は正解が分かっている写真があるから慌てる必 要はない。一つの写真が明らかになればその前後はある程度の保証が生まれる。なんだかマイ じらい かいたく ンスイーハ ーをやっているみたいだ。地雷の場所が一つ分かればある程度はマスを開拓てきる。 長方形の運動場を駆けるナマコさんの写真を手に取る。取るだけてあり、机には向かわない。 あふ とげとり 窓の外から溢れてくる演劇部の刺々しい発声練習を小川のせせらぎのように聞きながら、じっ なが ろ、つか だれ くりと写真を眺めた。廊下からもハタハタと誰かが走る音がする。活気ある放課後だなあ。 ちまなこ 「うーん、これは分からない。 もっと血眼になって見ないとなー」 「なに白々しいこと言ってるの ! 運動会の写真が特定てきてるてしょ ! 」 とっぜん 「いやてもナマコさんは突然変異の三歳児とかいう引っかけの可能性もあるし」 「名前が突然変異になってるつつーの ! 」 もちろん だま いっと手ごと写真を引っ張られて、取り上げられそうになる。勿論、それを黙って受け入 れない。 「ナマコさん盗っちやダメー ! 」 「ナマコさん見てちやダメー ! 」 た しの むぐぐ、と手を引っ張りあいながら耐え忍んて、写真の中のナマコさんを愛てる。 しゅうちしんともな 羞恥心を伴いながら相手の過去を愛てるゲームは、まだこれからだ。 しらじら と か め
8 かくにん ートの 3 、 7 、 9 。スペードの 2 ノ 置に投げられた手札を適当にかき集め、内容を確認する。 キング ダイヤの。ブタだが、フラッシュの影がちらっく手札。初回と一緒か そろ 一方、多摩湖さんは揃えた手札を一度見下ろし、その直後にそれを机に置いてしまう。 「多摩湖さん ? 「このままていい」 せりふ 「あ ? 」何処かて目にした台詞を多摩湖さんが男前に吐く 「私はこの手札のまま勝負するよ」 いや、あの、いいぞすけどね別に」 ふく 成りきっているというわけてもなく、勝算を含めての行動つぼいし。 ちが まずアレと違うのは、手札を一度確認しているということ。これによって、イカサマてはな ゅうしゅう めぐ く運の巡りによって本当に手札が優秀てある可能性をちらっかせている。 その動作から導かれる、『このままていい』発言を信用すべきか、疑うべきか 題に直面したようだ。 長いろうそくと短いろうそく、どちらか長く燃えるかを選ぶという 次いて多摩湖さんは、眼鏡に手を伸ばし、スッと取り外す。それを机に置きながら、 てぶくろ 「今回の私が賭けるのは秘密じゃないよ」帽子を脱ぐ。手袋を外す。マフラーを取る。モコモ まと くっしたそろ コの主成分てある服を脱ぐ。俺のカッターシャツも纏めて脱ぎ捨てる。靴下を揃えて置く。ス カートのホックを外してパサリと置く。そしてブラウスを「多摩湖さん、下着外してるから ! 」 の は いっしょ
142 「黄鶏君、早くしてくれないかしら ? 」 「よくってよ」 じよ、つさま 「いやなをてお嬢様言葉が伝染してるの」 しちなら ちが とはいうものの、一枚目が難しい。七並べと違って最初に置かれる一枚、基準がないからだ。 ねんれい 何歳から始めたものか。一応、確実に年齢を特定てきる写真は一枚だけある。小学六年生のと きにこっちへ越してきた多摩湖さんの写真。子供会の集いて、公民館て卓球して遊をていたと きの写真があったからだ。多摩湖さんが卓球台の手煎てラケットを振って、対戦相手の六年生 がビンポン球を必死に目て追っている、という構図だ。多摩湖さんと二人きりて写真に写ると ろうぜき はけしからんやつだ。どこの黄鶏君の許可を取って狼藉働いてるんだね、まったく。 けいたい そういえば、俺と多摩湖さんのツーショット写真って撮ったことあったかな ? 携帯電話の カメラも有効活用していない俺たちにそんな機会はないよな。 : : ・亡も、写真も悪くないか。 れつか 思い出は時間によって劣化するかも知れないけど、それても、そのときの気持ちが数 % ても しいものじゃないか。 保存てきるのだから。形格好にこだわるのも、 せりふ 「あ、今の格好良い台詞はロにしておくべきだったかも」 「ん ? なんの話 ? 」 「いやいや、こっちの話」 そろそろ一枚目を選ばう。この十一一歳の写真だ。このゲームにおいて確実な答えを後に取っ かしわ たっきゅう
かくう 「架空のあ、相手は ! 」 みやげ 「多摩湖さんが旅のお土産にくれたダルマ」 「ダ、ダルマとべろちゅーしてたの , 「俺の中ては多摩湖さんに見えてたから大丈夫 ! 」 かしわ 「病院行こうよ黄鶏君 ! 」 とちゅう 「多摩湖さん、途中からうへへへって笑っちゃってまーやらしい 「それキミの笑い声だから ! 」 「うへへへ 「ほら出た ! 今キミの口から出たー 小悪党笑いやめなさいー 「さあ次のゲームだ。 ここからが本番だよ、多摩湖さん いんわい 「ほ、本番ってその格好て一一一口うと淫猥な感じ」 そうコメントしつつ、いそいそと多摩湖さんが俺のカッターシャツを着こむ。モコモコがぶ っ よぶよに変化する。綿を詰めすぎたぬいぐるみというか、磁石て何ても吸い付けてみました、 って状態になってきているなあ。 だけど、その厚着が仇になる。 多摩湖さんの下着戦術はここから通用しない。 何故なら多摩湖さんの目的は、俺に秘密を明かさせること。 あだ だいじようぶ すばだか だけどそれには俺の素っ裸寸前