「あ、ありがとう、ピーちゃん。・ : ・ : 何気にいろいろできるんだな」 「フギュッ ! 」 : が、ないんだよな : 「よし、それじゃ早速俺のプーツ : : どう見てもプーツが入 モルトは鞄を壁のヒカリ苔の近くに持って行き、中を見るが : ふ - っとう っているとは田 5 えない。 というか、入っていたのは石と封筒が一つだけだった。 「例年 O 出してたけどお 5 、委員会内でモルトのプーツってえ、ちょっと武具臭くな い ? って議題になったのお。それでこれはやつばりダメってなったからあ、代わりに私 がモルトにピッタリのお、モルトらしい、如何にもモルトだなあ 5 って思えるものを入れ ておいたからあン、それをたつぶり使ってねエー チョココより』 「 : : : な、何言ってんだ、コイツそれがこの石かつて、こんなのどう見てもただ ーも どの石 : : : いや、まさか何らかの魔力が込められたもの、とか ? 」 ふつう モルトは鞄の中に入っていた二つの石を持ち上げ、魔獣に投げつけてみる。ごく普通に 市 当たって跳ね返って、床を転がっただけだった。 英魔獣さえも、どうしていいのかわからないようで、一つだけの目で困ったようにモルト を見つめてくる。 「 : : : チョココ : : : あいつ、ただの石入れやがったのかってか、なんで石が : : : 重し ゴケ ノ、さ
192 ポロのラベルが張られていた。 おそ 「おやっさん、これ、何だ ? 恐ろしく古い : : : ビンテージ・ワインっほいけど : たまに手に入る。入荷次第届けることに、なってる。金 「その、占い師の、注文だ。 : だから、届けるだけで、いい は後で、支払いに、来る。 ね これだけ寝かせたということは、相当に良い物なのではないか ? とちゅう ゅうわくわ ) っそ途中で : : : と誘惑が湧く。が、グレ モルトは受け取るなり、そんな感想と共に、し ーンの切れ長の目はモルトの心を見透かしていたように「未開封で、届けろ。そうしたら、 もど ちゅうぼう 夕飯ぐらい、喰わせてやる」と言い残して厨房へと戻って行ったのだった。 アルコ・ホールからかなり離れた場所、それこそリキュールの片隅にある森の中に、そ の小さな占いの館はあった。 おどろ : 想像していたのとはかな 中に入ってみてモルトは驚いた。占いの館ではあるのだが : ちが り趣きが違、つのだ。 日の光を拒むかのように窓が一枚もなく、床を転がっている黄色い魔光球だけを光源と おもむ ゆか みかいふう かたすみ
「ええのう、ええのう : : 若いおなごは実にええのう : : : グエフッ となり 大きなゲップをかます隣の老人の言葉に、モルトは頷いた。 さかな 店内の雑音を聞きながら、クラツツの姿を肴に一杯やる。 かんべき : これでグラスの中が酒ならば完璧だったのだが : 「腹も減ったしなあ。ひもじい ・ : 今日は一段と良い匂いさせやがって」 あした 「叔父さん、明日の漢祭りのために最後の調整に入っているからね。だから今日は炒め物 しか料理出してないの , こた 浴衣姿でシェイカーを振りつつ、クラツツはモルトのばやきに応えてくれる。 きょだい かたまり 耳を澄ませてみれば、なるほど、確かに巨大な金属の塊を振り回すようなガッチャンガ ひび 2 ッチャンという音か響いていた。 「おおう、炒めものかあ。そうじゃな、飲んでばかりじゃいかんなあ。どれ、アスパラと カ べーコンのバター炒めをおくれ」 の 都「はあ 5 : って、アレ ? そういえばお爺さん、一杯やったら配達に行くって言って 雄 英なかったつけ ? 」 「もうええ、も、つええ、今日はも、つ店じまいじゃ」 まど - っし いそが 「いいわけないでしょ ? 今が一番忙しい時じゃないの、魔導士ギルドなんて」 お す ふ にお 0
か俺にプーツが入っていると思わせるために嫌がらせか」 がくぜん 愕然とするモルトに、何故だかわからないが、ふと、チョココの声が聞こえた気がした。 クあらあん ? 失礼ねえ 5 、確かに石はただの重しよお 5 。でもそれとは別にちゃんと私 が選んだアイテムが鞄の底に入ってるわあン。よく見てえ 5 あさ ひび も・つそう モルトは頭に響いた言葉に従い、鞄の底を漁る。する 妄想か何かのような気もしたが、 みよう と、妙に軽く小さい宝石箱のようなものがあるのに気が付いた。 それを開ける。出てきたのは : : : 女性物のパンティーだった。 それを両手に持ち上げ、掲げたモルトは : : : しばし、固まった。 マークを浮かべてそれを見やる 手紙を回し読みしていたグレーン達もまた、頭に ' のだが : 「お、おいモルトよ、それ、どういう意味だ : モルトにもわからなかった。 ピンガに問われたが、 たつぶり使ってというのはコレをその、いわゆるエログッズとして使っていいぞ、とい うつうつ うことなのだろうか。確かにあの低血圧そうで、鬱々としながらも美人といえば美人であ るチョココの下着だというのなら魅力的と一一一一口えなくもないアイテムではある。使用感も多 少あって悪くない かか みりよく
180 しんし 十中八九彼らは街の外の人間だろう。酒が入っているのかもしれない そこに「どうした」という、自警団の声が上がるわけなのだが : : : それは、若き自警 団団長ライのものだ。 その小柄な風貌が人混みをかき分けていくのを見た街の住人達は、さらに苦笑した。 よりにもよって、運のない : ・ : と。住民達はこの後の展開を想像して、男達に同情した。 : で、ど、つしたんだ ? 」 「よせよ、折角の祭り前なんだ。 邪魔すんじゃねえよリぶつ殺すぞリ なんだあ、このちっせえガキはよお。 きた むだ かけら ライの外見は無駄など欠片もない鍛え上げられた体をしているものの : : : 服の上からは あまいろかみ わかりづらく、また姉のオリービーと同じ温かみのある亜麻色の髪に童顔とあって : : : と しつねんれい いうか実年齢からして一八歳なので、もはや長柄刀を担いでいるだけの少年にしか見えな いのは致し方なかった。 ライは自分がこの街の自警団団長であり、大通りでもめ事を起こすのは見過ごせないと よそもの わかりました」と応じる 真摯な対応をするのだが : : : 当然、彼に対して余所者が「はい、 わけもない あ ぶつはー 笑えるぜ、この街の自警団ってのはガキを担いでるのかよ ガキは家でママのおつばいで れか、そんだけ平和な街だってアピールしたいのか こがらふ・つぼう じゃま くしょ・つ
、、あいさっ : 後でまた挨拶にでも行くか。モルトがそんなことを考えていると、不意にリツツの 手が伸びてきて、羽織っていたロングコートのポケットをまさぐられる。 「あっ、ちょっ : : リツツ、よせ、エッチ ! 」 「何がエッチなんだか。 : 何だ、やつばり丁度あるんじゃん」 ポケットから抜かれたリツツの手には、モルトの財布があった。 「ダメだ、リツツそれはダメだ ! 今夜の飲み代がー 折角まとまった収入もあって、お 祭りで、祝いの一杯を : ってかそれがないとタ飯も喰えないし : たいのう 「家賃滞納している分際でどのロが言ってるわけ ? : そもそもこの微妙に足りない金 わた 額を渡してどうにかなると思ってたの ? やさ いや、ダメ、 「リツツ様の優しさによってお値引きされるのではないかと期待を込め : ど行かないで ! 待って待って ! 」 モルトが膝を突き、部屋を出て行こうとする華奢なリツツの腰に腕を回し、追いすがる。 都ええいも、つ ! と振り払われそうになるものの : : : 力を込めたら折れてしまいそうな腰、 雄 ぶろ やわ 英朝にひとっ風呂浴びたのか、柔らかなソープの香り : : : 何より白いワンピ 1 ス越しに感じ る彼女の体温を、モルトは意地でも放さなかった。 : ったく。じゃ、まだ日暮れ前なんだから、今から働きに行ってきなよ。前夜祭みた いつば、 きやしゃ かお
トラップ 、つ ・ : 奴は今のところほとんどカードを切っちゃいない。簡単な罠を一つ二つ組み合わ せるだけで、これだけ俺達を追い込んでる。 レジェンド 「 : : : では、やはりアイツはお前の一言う伝説だと ? 」 「そうは言っていない。アイツは : : : えーっと、俺がリキュールに来るより前だから : うわさ わざかんべき 一〇年以上前に表はもちろん、裏の世界からも消えている。噂じゃ、その技を完璧に伝授 だれ した三人の弟子の手にかかったとされているんだが : : : その誰かなら、ありえるかもな」 レジェンド こうけいしゃ おもしろ 「 : : : 伝説殺しの後継者、三人の内の一人、か。なるほどな、面白くなってきたじゃな こわきかか かばん いか。だが、依頼主のペットは : : : ああ、小脇に抱えていたあの鞄の中か。ようやくいろ いろ見えてきたぞ」 ひ あせ サシャは己が相対する敵がどれほどャパい奴なのかを理解してか、冷や汗を流しながら、 ど手の平にハンカチを包帯代わりに巻き付けた。そして、立ち上がろうとするのだが、ぐら り、とその体をよろめかせる。 の と 都モルトは懈てて抱き留める。サシャの体が恐ろしく熱くなっていた。 雄 : 毒だったかな、やはり。回ってきてる。すまん、モルト、悪いが立てそうにない。 1 私は置いて行ってくれ」 らしくもないサシャの言葉に、モルトは「つたくと一言漏らした。 0 あ だ も
318 しゃ ちが ズムが違うせいで、せいぜいお互いに顔と名を知っている程度なものなのだが : : : 最近の モルトは彼らと何かと交流が深かった。 毎朝強制的に顔を合わせるとなると、それも当然だ。 かろ 階下から軽やかなサンダル履きの足音が聞こえてきてたので、モルトは寝たまま頭を掻 まぶ き、眩しい太陽の光に目を細めた。 「モルト、起きてる ? 」 のぼ 階段を昇ってきたのは、案の定のリツツである。 ろうか 「そりや起きてるさ : : 。階段前の廊下で寝てりや嫌でもな : モルトがべッドにしていたのは、言葉通りに階段前の廊下、その床である。 ぜいたく 下に敷いていたのはマットなどという贅沢なものではなく、モルトが普段着ている革の コート一枚で、その上で毛布を被っているに過ぎなかった。 れつか わざ 木製の床板は経年劣化なのか、それとも職人が技の限りを尽くした上で手を抜いたのか びみよう ゆが おうとつよう はわからないが : : : 微妙に一枚一枚が歪んでおり、普段は気にならないわずかな凹凸が容 ひど 赦なしにモルトの背中を刺激し、一晩も横になっていれば全身が酷く痛んだ。 うでまくら モルトが半身を起こし、背中に手を回してしばし揉む。相棒に腕枕をしていた左腕も同 ながえとう 様に。無論、相棒というのは鞘代わりの帯を巻いた長柄刀である。 さや ゆか かわ
「あ、冗談ね。わかった」 ちが 「違う違うマジだって。本気だって。実はさ、今し方デカい仕事を終えてきたんだよ。 た ・え ? 仕事内容か ? なあに、ゴミ溜めになってた倉庫の片付けさ 「水 ? それとも一番安いワイン ? 」 「聞けって、クラツツ。そんでだ、ゴミの中にしいものがあったら持っていっていいと もう 言われたから : : : その全てを売りに売ったら、これが予想以上に儲かって今笑いが止まん ねえのさ。古くせえ本ってたまにすげえのがあるのな」 はいぎよ・つ あさ 「ゴミ漁りに、せどり : : : 何でも屋は廃業にしたら ? 「何でもするのが何でも屋さ」 なっとく 呆れながらも納得してくれたらしいクラツツは、ショットグラスに半分ほどの琥珀色を ワ」 注ぎ、チェイサーとして氷とレモンを浮かべた水のグラスをモルトの前へ。 かお か カ その小さなグラスを鼻に近づけ、そっとその香りを嗅ぐ。 の のうど ほうじゅん びこうすべ 市鼻腟へ滑り込む芳醇な香り。高いアルコール濃度によるとげとげしさなどこれつほっち 英もなく、ただひたすらに濃密な味わいを感じさせるもの。 全身がとろける。鼻から吸い込んだ空気を、吸う以上にゆっくりと吐き : : : 金を持って いるということの幸せを噛み締めたのだった。 か し こはくいろ
314 出そうとする。 「どうせもう食べたんでしょならいらないでしょ卩」 「いやだいやだ ! 食べる、食べたいんだ、リツツのが食べたいんだよ ! 」 「と欲が深いのだな、モルトは。あれもこれも食べたいなどと : : : まったく」 閑静な夜にそんなことをやっていたせいか、気が付くと辺りには人が一人、また一人と はんら みりよく 増えていき、気が付くとアパート前には大勢の物見が現れていた。半裸のエビーザの魅力 ごうよく も強いが、彼女はおろか、幼いリツツをも食べたいとするモルトの強欲さに人々の興味が 引かれて、集まってきているようだ。 なんてひでえんだ。一人最愛の者 おいおい、モルトの奴、強欲がすぎねえか。 いやわ あの地下から来た女、いい乳してんなあ。 かいりやそれで十分だろうに。 そういう生き物だものな ! かる、わかるぞ。男なら女はいくらいてもいい ! さわ : どれ、モルト。わらわは先に部屋に行っているぞ。 「何だか騒がしくなってきたな。 三階の端の部屋だったな」 がくぜん そう言って一人さっさとアパート内に入っていくエビーザをリツツは見送ると、愕然と つぶや 呟いた。 : 一緒に : : : 本気で : 「え、なに、本当に : いっしょ やっ