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検索対象: 英雄都市のバカども 2 (女神と漢たちの祭り)
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1. 英雄都市のバカども 2 (女神と漢たちの祭り)

292 クラツツが冷や汗を流しつつ、窓の外を見やれば : : : もうリツツの姿はどこにもない。 「 : : : ん ? おいっ ! お前、何しているここは病院だぞ怪我人増やして何しょ うってんだ」 どとう 女医が戻って来るなり怒濤の勢いでまくし立てて来たので、クラツツはたまらず呻いた。 「 : : : だってえ : はるいにしえ 「つまり、こういうことか。自分は女神なる存在であり、遥か古よりこの地に住まう生命 と共存し、特に人と深く交流をしてきたものの、ある時を境にばったりとそれがなくなっ さび て、割と寂しく思っていたところだった : 「うむ。そうだ。どれだけの時間であったかは、もう、はっきりとはしないのだが。 とたん 人は勝手なものだ。たまに会いに来るかと思えば、途端に来なくなるのだな」 にお 病衣のまま、すまし顔でエビにして無毛な女神ーーエビーザは匂いを嗅いでからハープ しぶ ティーを口にする。苦手だったのか、少し渋い顔をしてカップを戻した。 おだ 一方、穏やかではないのが、彼女を囲むリキュールの政治を執り行う一三人の議員を始 4 あせ

2. 英雄都市のバカども 2 (女神と漢たちの祭り)

「だからダメって : : : ん ? 今し方のク待てツはモルトではない。モルトの背後から、だった。 「待つのだ、リツツ、モルト : : : わらわをあんなところに置いていくな」 振り返ればハアハアと息を切らしているエビーザがいた。どこかデジャヴを覚える光景 である。 リツッとモルトは顔を見合わせるの 何故博物館で別れたはずの彼女がそこにいるのか、 ・問うよりも先に答えが全速力でやって来た。 「どこですかな女神様どこに行かれたのですこの発掘されし遺物が何であるのか をどうして教えくださらんのです」 かか わききょだい 2 脇に巨大な、卵の化石のようなものを抱え、もう一方の腕には二メートル近い細身の銅 かっ ど像を担いでいる : : : 半裸の館長であった。 はんば こがら あせ 小柄な老人だと思っていたが、何気に汗が流れる上半身は半端なくマッチョだった。 の おとこ まっえい 都そうか、彼もこの地に脈々と伝わりし最強と謳われた漢達の末裔だったのか、とモルト ひとごと 英はどこか他人事のように考えていると、その背にエビーザが抱きつくように身を隠した。 とちゅう やっ 「な、何なのだ、奴は。途中から目つきが変わったかと思えば、まるで一秒を惜しむよう に次から次に、これは何だ、あれは何だ、これは何と書いてある、どういう時に使うのか なぜ はんら お

3. 英雄都市のバカども 2 (女神と漢たちの祭り)

こんな時間にどうしたのかと思ったが : : : ひょっとすると長い時間ここにいたのではな いかと、モルトは気付いた。 アパートの前は軒こそあるが、雨が降れば足下に水が来るのは避けられない。 リツツの サンダルに雨染みが見受けられた。 はい、これ」 そむ リツツは躊躇いがちに、顔を背けながら手にしていたハスケットをモルトに差し出した。 ぜっえんじよう 「・ : ・ : 絶縁状 ? 」 ちが 「バカ。違うから のぞ モルトが受け取って中を覗いてみると : : : そこには、大きめの布に包まれたサンドウィ っ 2 ッチが詰めてあった。 ど「えっと・ ・ : : リツツ、ど、つしたんだ ? 」 とうたつほうしよう 「その、三ヶ月分の家賃として : : : 最深部到達の報奨金、先にもらっちゃったから : の 都から、その : : : モルト、お金、今ないでしょ ? だからタ食に : : : 」 英やつばり、長くここにいたのだろう。 サンダルの雨染みもそうだが、それと同じぐらい、サンドウィッチのパンの端が乾いて いることからも、それは察せられた。 のき はしかわ

4. 英雄都市のバカども 2 (女神と漢たちの祭り)

ひどおっくう 酷く億劫だった。瞼を開けるというのは、どうしてこうも大変なのか。 どうせ雨だ。夜の、雨だ。嫌な天気だ。瞼を閉じていればいい。 ゅうわく あざわら そう誰かが胸の中で誘惑するように、嘲笑う。 こがら くらやみ 誰だ、と暗闇の中で目を凝らせば : : : 細身で、小柄で、生意気そうな十代そこそこの少 おど いくしゅ 年が幾種もの短刀を大道芸のように手の上で踊らせていた。 眠っていれば、 しい。少年が一一一一口う。思わず、そうだな、と応じてしまいたくなる。 暗い。雨が降っている。夜の雨だ。嫌な天気、嫌な時間。 : だがおかしい。それに気付いた。自分は何故雨を防げぬ場所で眠っているのか。 ねどこ 自分の寝床は、雨になど濡れはしない。 寝床は : : : アルコ・ホール三番街のアパートは、雨に濡れたりは モルト 誰かが自分を呼んでいる。瞼を開かなくては : : : そう、思う。何故かはわからない。け れど、瞼を開かなくては。そう思った。 たとえ雨の降る夜であっても、目を覚まさなくては。 それはもう、きっと嫌な時間ではないはずだから。 : だから、瞼を開く。 なぜ 0

5. 英雄都市のバカども 2 (女神と漢たちの祭り)

そこに司会者の声が上がる。 みな 「さあ皆さんお待ちかね ! クライマックス ! 英祭りの名はこの組のためにあったと言 っても過言ではありませんリもはやこのパーティを相手にするには一個中隊規模の兵力 れんらく が必要とさえ思われます : : : がっリ運営委員会よりここでご連絡リなんと、最終組は きんきゅう 三人でしたが緊急参加する命知らずが現れたとのことですリ」 たれ 誰だ、誰だ ! そんな声が上がる。モルト達も聞いてなかったので顔を見合わせている と : : : 何だか見知った奴が闇夜の中から現れたのだった。 「モルトさん、お願いいたしますわ ! 」 つな ふんどしし そう言って綱を引っ張るリーフィである。そしてその綱の先には : : : 褌を締めて、とこ 2 とことヒョコ歩きのピーちゃんの姿。 さきほど ごうしゃ 会場内が、ざわめく。リ ーフィは先程同様の豪奢な姿だが : : : その彼女が連れているの カ ノは、どう見ても中年を幾らか過ぎたオッサンなのだ。 のうみつギャランドウ じゃっかんあふ びみよう 都それも不健康なメタポ体型、濃密な腹毛、褌から若干溢れている公開していいのか微妙 とうはつうす 英なラインである太もも周りのやや長い体毛 : 。そのくせして頭髪は薄く、すだれのよう あぶら 5 な七三分けは脂ぎった頭皮に贐り付いているだけという有様である。 とくちょう そして一番の特徴としては、相変わらす穴の開いたボールを革バンドでロに固定されて やみよ かわ

6. 英雄都市のバカども 2 (女神と漢たちの祭り)

240 「 : : ・・、つつリぐああ・ : ・ : っ ! し、しまった、こ、こんなところにトラップがあるだな ・つそ う、嘘だ、こ、こんな : : : ア、アニキイ、オレっちもうダメだ、足が んて : : : ぐぬっ : 足があ : 「まったく・ : ・ : 仕方ないな」 ジンがジュニバーの体をお姫様抱っこで持ち上げ : : : そして、去って行く。 : え神殿行かねえの」 うなず モルトは思わず声を出したが、それは辺り一帯の誰もが思ったらしく、大勢が頷く。 おとこぎ 「私が用意したのは漢気 : : : そうである以上、大切なジュニバーがこうなってしまっては し方ない。退くのも勇気、あえて自ら罵声を浴びるのもまた漢気なり わな 「アニキ、アニキすまねえ : : : オレっちのミスで。あんなスゲー罠があるなんて思わなか ちくしよう アニキとオレ 0 ちなら最深部まで余だ 0 たのに、畜生 : いっしよかじ さあ、帰ってイカ焼きでも一緒に齧ろうじゃないか」 ししんだジュニバ 「 , も、つしし ー。私は街の英雄よりも、お前のような者を守り、導いていける 「気にするなジュニヾ ・ : そんな一人の漢でありたいのだ」 そんな二人が去って行くのを、モルトを始めとした全員が見つめ : : : 気が付くと誰から ひめさまだ よ

7. 英雄都市のバカども 2 (女神と漢たちの祭り)

352 ツツは頷いた。 「川はダメ、賭場や夜のお店もダメ、大浴場はうるさくて拒否、博物館も獅子が荒ぶりす : どうすりやいいんだよ ぎてて嫌だ、と : モルトとリツツが額を突き合わせるようにして頭を抱えると、腰に手を当てたクラツツ がため息を一つ。 「館長の : : : その、知識欲だっけ ? しばらく質疑応答したら収まるんじゃないの ? 「どうかな。目を血走らせて半裸でデカい銅イ担いだ上で、クソ重そうな変な球体抱えて あ なぞ 突っ走って来るような知識欲だぜ ? そのうちに人類誕生の謎とか、魂の在り方とは、み たいな質問に至るだけで永遠に終わらねえよ、アレ」 めがみたず なにそれ ? と、クラツツは店の隅で、再び桶に顔を突っ込んでいる女神に尋ねた。 みやげ おそ 恐らくこの地のものではなく、どこかで作られたものが土産品か何か 「銅像は知らない。 かんちが で持ち込まれたのだろう。それを街の歴史ある品と勘違いしているのだと思う」 : ありそう、そういうの。それじゃ球体の方は ? 」 「、つわー ほうだん 「あれは昔の : : : そう、かなり昔の砲弾だったように田 5 う。何らかの凄まじいパワーで敵 しょ・つ・げ・き ばくはっ じんじようへき 陣や城壁などに撃ち込み、その衝撃を得て爆発を起こす : : : というようなものだ」 しゅんかん 女神の言葉が放たれた瞬間、モルト、リツツ、クラツツの三人は一斉に頭痛がするよう いや おけ きょひ いっせい すさ てき

8. 英雄都市のバカども 2 (女神と漢たちの祭り)

アイツ 「こ、これでどうしろってんだよつてかこんなもんチョココどうやって持ち出したん きぎよう ' それは企業秘密よお 5 ン ) あはつ、うふふふふ ) ク おそ 恐ろしく楽しげな声がまた頭に響いた気もしたが、それどころではない。 : 奴らを見た。 モルトはパンツを掲げながら : かたべ そう、語り部達だ。 「モルトの持ち込んだアイテムはアルコ・ホール三番街アパートの大家、その娘リツツの メモを取れ、取ったら走れ ! 地上の観客へ伝えるの ハンツだ ! 水玉パンツツ ! 「モルトが己に最も相応しく、最も己を示すのは一二歳の女の子、リツツの夏を思わせる りようかい 爽やかな水玉パンツとの判断、了解リ」 「いやいやいや待て待て待てリ」 もさ あわ モルトは荒てて制止しようとするも、彼らは彼らで祭りの中で戦う猛者だ。止める間も すさ なく凄まじい速度で駆け出して行ってしまうのだった。 もど 「 : : : 俺、もう地上に戻れねえよ : : : 」 「諦めろ、モルト。あの、占い師 : : : 気に入った相手、には、いつもイタズラ、する。そ あきら カ

9. 英雄都市のバカども 2 (女神と漢たちの祭り)

246 かく ちょう いることだろう。またそれと一体型になっている顔を隠すための蝶を模した大きなマスク あお めがね 状の眼鏡もまた : : : 変態感を強く煽っていた。 「あのさ、リーフィ : ぜひ おもしろ 「こんな危険で面白そうなお祭りですもの : : : 是非ともうちのピーちゃんも参加させたい と思いましたの」 オッサン フギュ : : : と、ピーちゃんは切なげに鳴いた。参加などしたくないのだろう。 しようだく 「運営委員会の方々にお酒を差し入れたところ、快く承諾してくださいましたのよ リーフイかニッコリと笑、つ。 モルトがちらりと運営委員会の連中が控えているテントを見やれば : : : 街の老人達が盛 はたかおど やっ 大に酔っ払い、中には裸踊りをしている奴までいる始末である。 司会者が続ける。 とちゅう 「こちら旅の途中であるリ 1 フィさんの : ・ : ・えっと、ペット : : : ですか ? ペット、ピー ちゃんを含んだ、モルト、グレーン、ピンガの四名が最終第一一三組として最深部を目指し へんかん ます ! : では、得物の返還ですー ひざかか グレーンは例年よりも大きい、膝を抱えたガーナぐらいなら丸ごと上に乗りそうな鋼鉄 製の巨大フライバン。 よ きょだい

10. 英雄都市のバカども 2 (女神と漢たちの祭り)

8 議員達が一気に精力的に喋り出したのを小耳に挟んでいると、リキュールの街がどうし てこうも発展し続けられたのか、そしてどうしてこうも真実から遠ざかった祭りになって しまったのかが、よくわかった気がした。 あき モルトはウイスキーを飲み干すと、カウンターの中で呆れているクラツツに空いたグラ かざ スを翳して見せる。クラツツはすぐに気付いてグラスを受け取ると : : : そのまま流しの洗 い物の中に入れてしまうのだった。 チェッと舌打ちして、モルトは席を立つ。ほろ酔いにはいささか遠く、これから辛い現 こころもと ふところ 実に立ち向かうには少々心許ないが、懐はもっと心許なかった。 いまさら まぎ 「 : ・・ : 仕方ねえさ、今更ど、つしようもねえもんな。ヾ ノンツが頭に馴染んでたのは紛れもな い事実だ : : : 土下座でもするか : あきら モルトが諦めと共に店を出ようとした時、背後から声を掛けられる。女神だった。 ・モル , 「、 , か 「わらわを連れ出した一人たるお前。そう、お前だ。名は何という ? では、モルト、ひとっ責任を取ってわらわを地下へ送り届けてもらおうか」 だれ 店内が女神の言葉にざわっいた。てつきり誰もがこの街に今しばらく居座ってくれるも のとばかり思っていたよ、つだ。 こんだく 「うむ、おぞましいものを見せられ、勝手に連れ出され、意識混濁しているところに肘打 しゃべ はさ つら ひじ