ハイク - みる会図書館


検索対象: 遠く6マイルの彼女
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1. 遠く6マイルの彼女

とカ 俺は嬉しくなって、頷いた。カオルが口を尖らせて、言った。 「間に合ってます。今からあたしが送るから」 「送るって、、、ハイクじゃないの」 京子さんは驚いた顔をして、カオルを見つめた。 「そうよ。それがどうしたの ? 「ハイクはだめ。まだ松葉杖なのに : だいじようぶ 「大丈夫だよ。スクーターだもん」 カオルは、得意げに指を立てて言った。 「スクーターでもなんでもだめ。怪我人を乗せていい乗り物じゃありません。さあ、魚住くん、 いらっしゃい さと 京子さんは、諭すような口調で言った。それがカオルを刺激したらしい。目を細めると、カ いちげき ォルは京子さんの前に立ちふさがり、痛い一撃を見舞った。 あにき 「兄貴から聞いたよ。森崎先生、昔、ケンの兄貴と付き合ってたんでしょ ? 今度は弟ってわ け ? すごくない ? 俺ははっとした。京子さんの顔が青ざめた。違うわよ ! とか言って怒鳴るかと思ったら、 うつむ まるで少女みたいに、く ノッが悪そうに俯いた。 くちびるか その様子にカオルも、唇を噛み締めた。 し み

2. 遠く6マイルの彼女

166 ものほ 「それだけじゃねえだろ。お前ってば、物欲しそうにバイク見てるんだもんよ」 ふくざっこっせつなお 俺は言葉につまった。右足の複雑骨折が治ったら現金なもので俺はバイクに乗りたくなって たず いたのだ。京子さんは怒るだろうが、キスの相手が誰でもいいのかと尋ねて、「そうかもしん ぎりだ ない」なんて答える年上の女に義理立てする必要もあんまり感じない。 「ま、乗りたくないってことはないよ。うん」 うなず 俺はもっともらしく頷いた。 なや 「実はな、どうしようかってずっとんでたんだ。去年のお前の事故は、半分、。ハイクをいじ りようしんいた った俺のせいかもしれんしってな。でもなあ、いつまでも隠しておくってのもなあ、良心が痛 むんだよね」 啓介は顎に手をやり、目をつむってそんなことを言った。 「な、なんたよ。隠し事はナシだろがよ」 「ま、いっか。お前もアレじゃふっとばそうなんて思わないだろうし」 啓介は杖をついて歩きながら、ついてこい、とでも一言うように顎をしやくった。 ものおき 啓介と向かったのは、店の裏手にある物置だった。そこには壊れた。 ( イクやら、エンジンや らがガラクタといっしょに並んでいた。その一画に、灰色の、、ハイクカバーのかかった一台があ った。かなり大きい車格だ。 っえ しやかく なら うらて こわ

3. 遠く6マイルの彼女

170 啓介はメットを俺に渡しながら、 「なあケン。わかってると思うけど、この、、ハイクでとばそうなんて思うなよ。この骨董品で無 ちゃ 茶したら : : : 、今度は死ぬよ」 「わかってる」 うらはら またが 受け取ったメットをかぶりながら頷いた。横から見た車格と裏腹に、跨ってみると意外に小 いっそく さく細く、そして軽い。ハンドルの取り回しがいいんだろう。ニートラルからギャを一速に 入れる。ガコン ! とやたらにでかい音がして俺はびびった。なんだか、いちいち音がでかい。 すな そしてクラッチもブレーキも全部重い。まるで砂の人った袋をぶら下げているみたいだ。 あらあら そりやまあ 走り出すと、心もとなかったアイドリングが荒々しいサウンドに集束していく。 くら よりよく そんなスビードのの 今のエンジンとは比べるべくもないが、なんだか余力を感じさせる : り方をした。 メーターに気づく。キロメーターでなく、マイルメーターだった。 N 2 の部品がなかったん ゅしゆっしよう だろう、そこだけ輸出仕様のメーターがくつついている。 ひょうじ もそうだった。マイル表示は兄貴の趣味なのかもしれない。 よこみち 国道 6 号線から横道に入り、海に抜ける。 しをししハイクだと思った。 海沿いの道を走りながら、こ、つま、 しゆみ しゅ、っそく

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266 は、困ったような声で言った。 きようし 「 : : : きみぐらいの年の頃にはよくあるんだよ。教師に恋したり、なんてのは」 しぼ 俺は北村の胸倉をつかんだ。高そうなシャツを絞り上げ顔を近づける。 「おいおい、こっちだって、いつまでも笑ってないよ ? 」 北村が冷たい声で言う。 「勝負してくれよ」 吐き出すように言った。 「勝負 ? ここで ? 北村が問い返す。 「なぐりつこしたってしようがねえだろ。決着なんかっかねえし」 「そうだね」 よゅう 「余裕かますな。むかっく。あんた、速い車乗ってんだろ ? 「それがどうした」 「好きなんだろ ? 車。だったらそれで勝負だ」 「きみは車持ってるのか ? 「ハイク」 「勝負にならないよ」 むなぐら

5. 遠く6マイルの彼女

112 口を開いた。 「あのな、実はな : : : 、親父の : : ・・」 「親父 ? 」 啓介の親父は、もちろん、この店を経営するバイク屋だ。 「なんかさ、俺の親父が昔乗ってたバイクを : : : 」 それから啓介は、俺の方を見た。俺はきよとんとして、啓介を見つめ返した。 「でも、お前は、もういいよな。、、ハイクは」 「なにが言いたいんだよ」 「忘れてくれ。なんでもない」 ふたた そういって啓介は再び作業を始めた。 「なあケン。お前、卒業したら、どうすんの ? 」 佐藤が声をかけてきた。 「わかんね」 俺は言った。 卒業後のことより、卒業できるかどうかが問題だった。 みんな、卒業後、何をするか決めていて : : : 、俺は決まってない。 なんだか、こうやって同じ年のヤッと比べただけで、自分のみじめさというか : くら なさ 、情けな

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翌日、晴れた。 学校にバイクで行き、例によってレストランの駐車場に停めていると、がらがらぶおんと派 手な音がして横に真っ赤なバイクが止まった。 ドカティの 4 0 ジュニアである。 メットを取って、ジャン姿のカオルがにつこりと笑った。 「お前、また勝手に店の・ハイク持ち出して : : : 。親父と啓介に怒られるそ」 「店のじゃないよ。あたしんだよ」 「まじで ? 」 まみかり 「買ったんだよー バイト代とお年玉前借で」 へえ、と呟いて、ドカティを見つめた。中古だろうけど、程度は悪くない。タイヤが新品だ った。たいしたもんだ。 女 彼「乗り出し三十万だよ。どうだー たた カオルは俺に > サインを突き出した。ばちばちと気のない感じで俺は手を叩いてやった。 マ 「なあケン」 遠「あんだよ」 「今日、早速やろうぜ。 「やだ」 よくじっ 245 号線トライアル」 ていど

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俺が表情を変えずにそういうと、柊先生は微笑んだ。 「卒業したいんでしょ ? 」 「ええ」 「だったら、ケンカなんかしてちやダメなんじゃないの ? 」 につこり。とろけるような笑み。 「そうですね」と答えながら、兄貴はどうしてなんかを組み立てたがったのか、この人な ら知ってるかもしれない、と思った。 けい十 . け・ みと だれ 啓介が。ハイク屋で言った、兄貴のセリフ : 『認められたいから』。誰に、何を、認めて 欲しかったんだろう ? たず でも、ここでいきなり昔のことを尋ねるのもはばかられる。 女そんな風に俺がガラにもなくもじもじしていると、柊先生はちらっと横を見た。いつの間に ' のか、京子さんが立って、なぜかじとっと冷たい目でこっちを見ている。 えしやく 柊先生が、にこ 0 と笑みを浮かべて会釈すると、京子さんはてたようにペこりと頭を下げ マ くちびるか た。それから、唇を噛んで、小走りで消えていった。 遠 「変わらないわね、彼女」 ひとごと 独り言のように、柊先生が言った。 「昔、教え子だったんですよね」

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190 と言って去って行った。 「で、なにがあったの ? 」と聞かれたので、俺は参ったなと思いながらも、京子さんに一部始 じゅ - っ 終を説明した。 「そりやこんな人がこないトコで、、ハイク止めていちゃいちゃしてたら、からまれるわよ」 ぜんりよういつばん 「俺たちは善良な一般市民ですよ。ここはサウスプロンクスですか」 「世界中のどこだって、暇で乱暴な連中はいるのよ。デートなら他所でやりなさい」 「あのね、デートじゃないんですけど」 えいカ ひょうじよ、つ 京子さんは、腕を組んだ。すつごく冷たい表情と声で、まるでつまらない映画の感想を言う みたいに言った。 「でも、キスしてたんでしょ 「いや、無理やり・ : 「胸も触ったんでしょ 「それも無理やり 「あのさ、魚住くん。女の子から、そんなことする子なんてほとんどいないんだから。女の子 ひきよう のせいにするなんて卑怯よ」 あの京子さん、カオルはその数少ない例外なんです、あいつの頭の中にはサイコロが三つば さわ ひまらんぼう いちぶし

9. 遠く6マイルの彼女

しゅんかん ちよくりつ カオルを見た瞬間、佐藤は直立した。 じよう 「お帰りなさい。お嬢さん」 「お嬢さんってなによ ! やめてって言ってるじゃないよ ! 」 じゅうぎよういん いや、その、自分この店の従業員ですんで。お嬢さんはお嬢さんですんで」 佐藤はしどろもどろになりながら、顔を真っ赤にして言った。好きなのは、、ハイクだけじゃな くしよう いらしい。なんともわかりやすいャツだなあと思いながら、俺は苦笑した。 カオルは「お茶でも淹れてくるわ」となんだか疲れた声で奥へと消えた。いやお茶なら従業 員の自分が、と佐藤があとに続く。 あにき 「お前、あれに兄貴って呼ばれるようになってもいいのか ? 」 かぶりふ 俺がそういうと、啓介は頭を振った。 女「ま、それはねえだろ」 が「だよなあ、いくらカオルだって、趣味ってもんがあるだろうしなあ」 こま つぶや イ 啓介は困ったように頭をかいたあと、話題を変えるように呟いた。 マ 「ところでお前、足なくてこまんないのか ? 」 遠「 ( イク ? もういいよ。兄貴のはつぶしちゃったし」 「じゃあなんでウチにくんだよ」 「お前がいるから」 しゆみ つか

10. 遠く6マイルの彼女

304 ト。ハイ出てきます。自分が乗ったことのあるやつを勢そろいさせました。今 今回作中でオー 乗ってるのはカワサキの N* という、、ハイクです。ま、ほとんどと変わりません。 めいわく では最後になりましたが、松本さんイラストありがとう。今回バイクとか多くてご迷惑かな ーとか思ったんですが、氏もお車とか好きみたいで、快く引き受けてくださいました。バイク おおあらい も女の子も、すごくいし 、感じです。茨城の海岸の絵を描くために大洗までドライプにいかれた そうで。その祭に撮った写真が入ったまで頂いちゃいました。茨城つ。ほさ、出てます。あ りがたいことです。 担当のさんもありがとうございます。やつばりこういうなんでもない青春小説ってのは、 むずか ライトノベルというレーベルでは難しいと思う。それをこうしてやらせていただけるというの みようりつ はやつばり作家冥利に尽きますし、大変にありがたいことです。まだまだやりたいです。 やろう。うん、やろう。 みな そしてこの本を手にとってくださった読者の皆さんどうもありがとうございます。 それではまた。 いただ こころよ ヤマグチノボル