222 ートバイを降りて雨 少しくらいの雨なら、俺はオ ート。ハイに乗る。激しく降ってくると、オ 宿りする。雨の日に乗るとオー ト。ハイも俺もすつごく汚れるが、洗えばい、。 そんな俺は、この日もまあこのぐらいなら、と思って家を出た。十分もしないうちに激しく こうかい ふってきて、後悔する。すぐにバイクを止め、国道沿いの屋根っきのショッビングモールの中 に、俺は飛び込んだ。 たた ハチバチと音をたて、雨は激しくアスファルトを叩いた。今日は早めに家を出たのだが : この分じや一時限目はサポりかなあ、とそんな風に思っていると : 、、ハイクの後ろにハザードを出したマーチが止まった。 ばたんとドアが開き、京子さんが顔を出した。 「なにしてんの」 「雨宿り、です」 ちょ、つし 俺は両手を広げて、やれやれといった調子で言った。 「こんな雨の日に、く / イクなんか乗るからでしよ」 それから京子さんは、乗りなさい、と言って助手席を指差した。 「こんなとこに、、、、 / イク置きつばなしにできませんよ」 むごん 京子さんは無言で車のドアを閉める。そして走り始め : そのまま行くと思ったら、少し とちゅう 走って途中でハザードを出して止まった。 ぞ あら
「ばかじゃん。死んだほうがいいんじゃないの」 「いいからもう、お前は彼氏でもっくれ。いつまでも啓介や俺に引っ付いてんな」 「やだね。あたしの彼氏になる男は、あたしより速くなくちゃいけないんだ」 カオルは得意げに指を立てて言った。 「 : : : お前はマンガに出てくる走り屋少女か ? あき 俺は呆れて言った。 どうろ そんな風に道路でカオルと言い合いをしていると、横にマーチが止まって、助手席の窓がす るすると開いた。 「こらっ ! あなたたち ! 」 カオルと俺はびくっとして、振り向いた。助手席に身を乗り出した京子さんが、目を吊り上 げて怒っている。 女 彼「 ( イク通学は禁止でしよう ? 」 「別に通学してません。学校に停めてるわけじゃないもん」 マ カオルは言い返した。 遠「屁理屈言わないの」 まゆ 京子さんは、俺のバイクを見ると、眉をひそめた。 「魚住くん」 へりくっ
玄関を出ると雨が降っていた。 朝から降ってたその雨で、あ、今日は。 ( イクじゃねえやと思いだす。玄関の脇の傘たてから、 傘を取り出して広げ、駅にむかって歩き出した。 ちょ 0 と自己嫌悪にがた。自分から、兄貴の一兀彼女ということでなれなれしい態度を取 0 とたんふきげん たくせに、兄貴と比べられた途端に不機嫌になるとはどういうこっちゃ、と自分を責めた。 そんな風に傘を差して歩いていると、隣にキッと音を立てて車が止まった。 フロントガラスの向こうに京子さんの顔が見えた。ロのかたちが「乗って。いそいで」に動 にぎ じよしゅせき 俺は傘をたたむと、助手席のドアを開けた。京子さんは真っ直ぐ前を見て ( ンドルを握って いる 2 俺が助手席のドアを閉めるやいなや、車は走り出した。 「あぶねえ ! 」 めんどう 「誰かに見られたら、面倒でしよ」 京子さんはむすっとした声で言った。しかし、いつもの冷たい感じはしなかった。一応、感 情がこもった声だ。 「今からどこに行くの ? 」 「きみとちょっと話がしたいの。どこかいし 「ホテル ? じこけんお ところない ? ます わきかさ
信号待ちで止まったとき、ようやく口を開いた。考え事をしていたようだった。 「そっか。だからほっとけないんだわ」 「なにが ? 」 あぶ 「きみのこと。一人で悩んじゃうでしよ、魚住くんは。それが危なっかしくて、見てらんない の。だから、わたし、ついつい世話を焼いちゃうんだわ」 なっとく それから京子さんは、一人納得したように、頷いた。 「そうよ。だからなのよ」 家の前につくと、京子さんは助手席に回り、俺を立たせようとしてくれた。しかし、暗かっ かっこう くず たので京子さんはよろけ、俺を押し倒すような格好で、助手席に崩れ落ちた。 俺はごんっ ! とハンドルに頭をぶつけ、シフトレ、、ハーを背中でドライプに入れてしまった。 女 彼しかし、そんなことより、抱きかかえる格好になった京子さんのほうが何千倍も問題で、息が 止まりそうになった。 イ きより いっしゅん マ 息がかかる距離に京子さんの顔があり、髪の香りがした。京子さんは一瞬、なにがあったの 遠かわからないと言った顔で、目を見開いて俺を見つめた。 かんちが 目が合った。京子さん、今まで見たことのない、色気のある目つきをしている。暗くて勘違 こいびと いとか、そういうのじゃなく、たぶん、恋人に見せるような、そんな目の色だった。気づいた なや
「マジで ? 「おじいちゃんの妹が、キタムラグループの一族の人に嫁いだんだって。で、この前親戚の集 まりのときに聞いたんだけどさ」 よそお 俺はシャーベンをおき、じっと参考書を睨み、いかにも勉強してますよというふりを装いな がら、その会話に集中した。 「北村の御曹司、今度結婚するんだって。すごくない ? 「すごいねえ」 全然すごくない。結婚ぐらい誰だってするだろう。とにかく相手は誰だ。誰なんだ。 「しかもそれがさあ、ウチのガッコの先生なんだって」 俺は思わず後ろを振り向いた。 女会話は続いていた。 ' の「それって誰 ? 」 じよしゅせき 和「あの人じゃないの ? 森崎先生。たまに車の助手席に乗ってるの見たことあるよ」 そこまで言ったとき、その女子はじっと自分を見つめている俺に気づく。 おび 遠隣のクラスの留年生、顔だけは知ってたんだろう。ちょっと怯えたような、そんな顔になっ 1 た。しかし、そんなことにかまってられない。 「それほんと ? にら とっ
ゴールの駅前にはフェラーリが止まっていた。 その隣にを止める。 北村が降りてきた。 俺たちはなんとなく、く / ツが悪そうに見つめあった。北村はなんか、憑き物が落ちたような おこなは 女顔だ。カッとしたとはいえ、自分の行いを恥じているような、そんな態度だった。 のそこにヘッドライトの明かりがやってきた。 イ京子さんのマーチだった。 ばたん、とドアが開いて、助手席から柊先生が降りてくる。続いて運転席が開き、青ざめた 遠顔の京子さんが降りてきた。 くちびるかし 怒りか、悲しみかわからないけど、唇を噛み締めわなわなと震えている。 きんちょう 京子さんの顔を見たら、張り詰めていた緊張だかなんだかわからないものが、どっと緩んだ。 ちぢ 俺はその距離を縮めようとするより、身の安全をとった。 啓介、俺、やっと卒業でぎたかも。 つぶや そんな風に呟く。 どことなく晴れ晴れとした気持ちで、俺は遠くなるフェラーリのテールランプを見つめつづ けた。 ふる もの ゆる
276 北村は、紙を俺に渡した。 せきにん 「そうだよ。これからレースをしますけど、事故って死んでも怪我しても、全部自分の責任で すって書いてくれ。じゃないと万一のことがあったとき、僕が困る」 淡々と北村は言った。 俺は言われたとおりに、紙にしたためた。 「拇印でいいよ」 しゅにく 渡された朱肉に親指を押し付け、紙に押した。 「なんで柊先生がいるの ? 」 俺がそう尋ねると、 すず 「わたしに関係あるみたいだから」と涼しい声で言ってくれた。 「生徒がこんなことするの、見過ごすんですか ? 」 「関わってる以上、〃見届ける〃わよ」 あにき かみ そう言って髪をかきあげる。この人は、昔京子さんから兄貴を取り上げただけじゃなく、今 こんやくしゃうば 度は婚約者を奪っている。 ふたた 北村は再びドライ。ハーズシートに腰掛けた。 柊先生は助手席には乗らずに、フェラーリとの前に進み出た。スターターを務めるつも たんたん わた こしか っと
それから俺は、ものすごく暇で暇ですることがないとき : ここで昼寝をすることにして しゅ、つ、よ , フしき 時計を見た。午後三時だ。今日は十一一月の二十六日。終業式の日が、二十四日だったことを 思い出した。さらに頬が引きつる。 二十四日のクリスマスイプに、男の助手席かよ。 それってつまり、デキてるってことじゃねえか。 そして自然消滅した勉強会。 それって、あの男と会う時間が必要だったからなんじゃないだろうか ? 落ち込む。 女考えるなと思えば思うほど、京子さんの顔が思い浮かんでしまう。 の ほかにすることもない。 レ イ暇だけはいつばいある。思えば、事故る前までは、ほとんど、、 ( イクばっかり乗っていた。事 故ったあとは、入院してたし、そのあとは勉強ばっかしてた。 むだ 遠 こうやってべッドに寝転んでいると、それらすべての行為が無駄なことのように感じられる。 携帯が鳴った。 誰からだろう ? 発信者は『カオル』だった。舌打ちして、ボタンを押した。 しようめつ ほお ひま したう ひるね
あきら ろかた しばらく追いかけると、京子さんは諦めたようにハザードを出して、路肩に車を止めた。俺 わす はその後ろにスクーターを止めた。松葉杖を忘れたことを思い出す。 カオルに手を貸してもらって、俺は京子さんの車に近づいた。するすると運転席の窓が開き、 京子さんが震える声で言った。 ートバイを運転していい体じゃないでしよう」 「 : : : 俺が謝っとくから」 カオルはわかった、と言うように頷いた。ドアロックが外れる音がする。俺はカオルに手伝 ってもらってドアを開け、どすんと、倒れるようにして助手席に座り込んだ。 京子さんは無一言だった。唇を噛んで、フロントガラスから視線を外さない。 ギブスがついたままの片足を持って、車内に乗り込み、ドアを閉めた。 女 「京子さん、その : = : 」 京子さんはまっすぐに前を見て、目の下をごしごしとこすった。あちゃあ、と俺は思った。 イ マ 泣いてるし。 おおつぶなみだほお 遠夕日に照らされて、京子さんの顔がよく見えた。大粒の涙が頬を伝い、かたちのいい顎から ぼたっとたれた。 「ごめんね」 たお
まち さび こんな寂れた街でこんなアホウな車に乗るのはいったいどんなャツなんだと思いながら、運 こぎれい かっこう Ⅱ転席を見た。なるほど、いけすかない小綺麗な格好の若い男だった。 ひにくま でもって、そんな男の車の隣に座った女は、さてどれほどいい女なんでしよう、と皮肉混じ りな気分で、視線をずらした。 の その瞬間、俺はうっと息を呑んだ。 はず イタリアンレッドのドアの向こう、助手席に座った京子さんがいる。俺に気づいている筈な のに、恥ずかしげに顔を赤らめ、こっちを見ようともしない。 風のようにイタリア製のオープンカーは、走り去った。 っ まうぜんた 俺は呆然と立ち尽くしたあと、大声で怒鳴った。 「なにあれ ! 」 「え ? 今のオープン ? あの車ってイタリアの車でしよ。やつば、、ハイクも車もイタリアよね。 うなず イタリア製のオー ト、、ハイ、ドカティが愛馬のカオルは、うんうんと頷いて言った。 「車じゃねえよ ! 乗ってた人 ! 」 「あれでしょー。最近、国道沿いにたくさんファミレスとか電気屋とかできてきたじゃん。お しょ , ってん力い はくしゃ かげで商店街が、寂れに拍車をかけている、という」 「電気屋 ? 」 しせん ぞ