生活 - みる会図書館


検索対象: 銀の十字架(クロス)とドラキュリア
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1. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

「ずいぶんとぞんざいな口を利くな、貴様」 プライドを刺激されたのか、ルシュラが唇を尖らして近づいてくる。 昼で身体能力が落ちているとはいえ、カずくで来られると分が悪い。 さなか 緋水が対応策を練る最中、ルシュラは不敵に笑う。 「お前を打ち負かすのは簡単だが、それではある意味私の負けだ。貴様を自らの意思で屈 ひざまず 服させ、跪かせてこそ私の気も晴れるというもの」 まがん 。まあ吸血鬼自体がそんなもんだけどさ。っーか、血を吸うとか魔眼使う 時点で、相手の意思関係なくね ? 」 「お前には効かぬではないか ! ある意味やりがいはあるがな。ところでお前 : : : 私が血 あさ を漁らぬかどうか心配していたな ? まださして親しいとも思えぬ朋輩でも、やはりその 身は案じるのか ? だれ 「当たり前だろ。身の回りで誰かが死んだり、人間をやめるのは : : : ゴメンだ。そうなっ たら、いくら俺でも : : : 吸血鬼ハンターやらなきゃな」 へいおん 平穏な高校生活を守るため、さすがに緋水も顔を引き締める。 かたすく ルシュラは鼻で笑い、肩を竦めた。 ほろ 「お前に私を滅ばせるとは思えんがな。だが、それならば話は早い。やはりお前は私を手 くっ

2. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

: 俺に何の恨みがある しいかげんにしてくれ : 「ホント ) しもべ 「たくさんあるぞ。血を吸っても下僕にならなかったり、ニンニクぶつかけられたり しか 「元々そっちが仕掛けたことだろ卩大体、何でわざわざ転入生にまでなりすますんだ よ ? 高校生活と俺の体質は関係ないぞ」 してき もっともな指摘に、ルシュラは目を逸らした。 あさ : 若い血を漁りに来たとかじゃないだろ、つな ? 「まさか : 緋水は、少し厳しい口調で尋ねた。 かっこ・つえさば 十代の男女が集まる高校は、ある意味吸血鬼にとって恰好の餌場だ。 いつばん 一般に吸血鬼の好物として知られる処女の血も、ふんだんにあることだろう。 げせんやから えものは・つ ちが 「違う。私は、飲みかけの獲物を放り捨てて、他に目移りするような下賤な輩ではない」 りくっ 別にありがたくもないけどな、そんな理屈 「飲み残さず、最後まで、ってか ? 「なりかけの状態で放置されるよりは、はるかにマシであろうが ? 」 「吸血鬼の論理だな」 かなあみ 溜息を吐き、緋水は落下防止用の金網に背を預ける。 吸血鬼に咬まれた者の末路は、原則として二つーー死ぬか、あるいは吸血鬼になるか、 そのいずれかだ。

3. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

けたら、教えてください かわい しょ - つかい と、最後に多少の可愛げを演出した自己紹介を終え、緋水は教室の右後ろに位置する、 自分の席に座る。 この時間は、入学直後の定番とも一言える、オリエンテーションでの自己紹介。 す とんきよう やから 素っ頓狂なことを言って、一気にクラスの注目を浴びる輩もいるが、緋水はゴメンだ。 きよりかん 適当な距離感で話せる友人が数人いて、大過なく学園生活を送れればそれでいい。 へいおん 平穏きわまりない日常、それが求めるものだ。 緋水の後も自己紹介は進み、女子に移っていく。 ひだりどなり 特段興味もなく聞いていたが、左隣に座る生徒の順番では、多少耳を澄ました。 ア あいしん せられいな ぜんばん 「愛心中出身の世羅玲奈です。趣味は読書とお菓子作り、特技は陸上競技全般です。よろ ュ ラしくお願いします」 くろかみ とセミロングで真面目を絵に描いたような黒髪の優等生が、ポイントを抑えた紹介を終え 字て、着席する。 しゅんかん 銀その瞬間、たまたま緋水と目が合った。 「よろしく : 「こちらこそ」 おさ

4. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

ガブツ。 くじようひすいは その一咬みで、紅城緋水の栄えある高校生活第一日目は、朱に染まった。 高校の入学式を終えての帰路で、いきなり吸血鬼に咬まれた。 ほか 他の生徒は、この人生の節目を両親と共に祝い、記念に食事にでも行くのかもしれない が、一人暮らしの緋水にはそんなイベントもない。 ア ぶらぶらと寄り道をして家路についたときは、もうとつぶり日が暮れていた。 ュ はだざむ ラ多少肌寒さを感じる夜風に当たりながら、緋水は自宅近くの公園に足を踏み入れた。 と近道ではあるが、自分をめた近所の者は、夜の通行を避ける場所だ。 おお うすぐら むだ 字無駄に多い木々が街灯の光を覆い隠し、昼間でも薄暗い。無論、夜はなおさら暗い。 : 緋水にもわからない。 銀なのに何故今日はそんな道を通ったのか : しいて言えば、香りに惹かれたのかもしれない。 そば ほう一 ). っ 薇を思わせる高貴な芳香が、公園の傍を通りかかったとき、香った。 イスカリオテ 第一章血を注がれぬ者 あけ

5. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

おどろ 「何無能丸出しの顔で驚いているんです ? 我々は、魔物から国民を守るのが仕事です。 はあく 人でないモノの存在を把握して当然でしよう ? 「いや、そりやそうだけど : : : でも、協力者ってのは ? 」 「そのままの意味ですよ。あの一族は、人間になることが目的ですから、人間と敵対の意 ちが 志はない。吸血鬼とは違ってね。ゆえに、協力関係を結ぶのはやぶさかではありません。 こせき あちらが人間としての生活を送れるよう、こちらは戸籍の発行などの援助を行う。あちら だいしょ - っ は、その代償として我々の任務に協力すると。何か問題でも ? : 今は何も言いたくない ア「何を落ち込んでいるのです ? 彼女は義務を果たしただけですよ。それこそ、人間とし ュてのね。人造人間の方が、よっほど人間としてまともですね。生きてて恥ずかしくないん ラですか ? ばとうよ、つしゃ えるるの罵倒は容赦がない。 架 ぼ・つよう 字 + 傷口に塩を塗り込まれた緋水は、茫洋と事の真相を口にした。 の なりかけ 銀「 : : : 巣道からの報告で、吸血鬼の傍にいる俺も、犠牲者だと疑われたわけか」 「そのとおりです。ですが、吸血鬼化が進行している人間、あるいは吸血鬼を普通の人間 ひっす と見分けるのは、これで中々困難でしてね。精密検査は必須です」 えんじよ

6. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

第一一章被造物は土よりいする ふきげん 「何をそう不機嫌にしているフ ひすい 愛らしく小首を傾げたルシュラだが、緋水は答えない。 のろ ただ、茫洋と空を眺め、世の無常さと自身の運命を呪う。 時は昼休み、場所は屋上。 しょ・つちょう かんきよう かおあふ 高校生活の象徴とも言える、青春の香り溢れる環境ながら、緋水の顔は晴れない。 悪夢のようなホームルームが終わり、午前中は何とか無難にこなした。 ア 授業初日だけに、内容はほばオリエンテーションで、ただ聞いていれば事は済むはすな ュ ラのにーー時折ルシュラが尊大な口調で教師に物申すので、大分精神が磨り減った。 A 」 数少ないやすらぎであるはずの休み時間も、ルシュラがいちいち学校の備品や仕組みに 架 字ついて尋ねてくるので、まったく休めない。 銀転入生にして美少女たる彼女には、当然男女問わず人が集まってきたが、ルシュラは相 ふおん ただよ 手にせず、緋水だけに話しかけるので、何か男子中心に不穏な空気が漂っている気がする。 ようやく迎えた昼休みも、結局ーーっいてきた。 むか ゴーレムアダマ かし なが

7. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

昨日の仕打ちを思い返し、緋水は額を押さえて首を振る。 吸血鬼と日常生活を送っているというだけで、あの扱いだ。咬まれていたり、もう完全 に吸血鬼化していた場合、何をされるかわかったもんじゃない。 「あ 5 確かにね。かわいいけど、魔物、特に吸血鬼にはエッラク冷たいから」 「 : ・・ : 何でだろ、つな」 ゅうしゅう つぶや 緋水はばんやりと、昨日からの疑問を呟く。どれだけ優秀な少女か知らないが、あの態 きようき じんじよう れいてつ 一種、狂気じみたものを覚える。 度のでかさと吸血鬼に対する冷徹な態度は尋常じゃない。 「でも彼女、仕事熱心で優秀よ。委員長も心配だし、解決するに越したことないでしょ ? 「 : : : 俺は、そもそもアイツら自体を信用してない」 緋水は苦々しげに一一 = ロ、つ。 芽依の行動ーーそれは、昨夜緋水がえるるから受けた依頼が理由だった。 ちょうしゅ 事件の第一発見者である緋水は、通報の後、そのまま警察署に連行され、聴取を受けた。 「最初に言っておきますが、我々はすでにあなたと同居する吸血鬼を最重要容疑者として ひがいしゃ にんしき 認識しています。うわ言で、被害者が『ルシュラ』と犯人を名指ししています。あなたは 聞きませんでしたか ? 」 : 聞いたよ」

8. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

「イデデデデッツツ かくせい 翌朝の目覚めは、目覚まし時計でもなければ心地よい自然な覚醒でもなかった。 あらし しきなりの土日。 嵐のような授業初日の後は、 ) 休んで本格的な高校生活に備えようと思った矢先、いきなり首筋に走る鋭い痛み。 すす 目を開けてみれば : ・ : 昨日とまったく同じ姿勢でチュウチュウ人の血を啜る吸血鬼 が約一名。 「何やってるのかな : : ルシュラさん卩」 ア「何って、朝一番の一吸いだ。風呂あがりだけに、余計に喉に染みる ュ 堂々と言い放ったルシュラの肢体はほんのりと熱を帯び、濡れている。 キ ラ白い肢体を覆うのは、バスタオル一枚だけ。 と 昨日と同じく、風呂あがりの一杯ならぬ一吸い中。 架 しずか 字 + 「何勝手に風呂入っちゃってんの卩っーか昨日の夜入っただろーが ! 静香ちゃんかお の 銀則は だま 「黙れ、風呂あがりの方が、より血をおいしく感じるのだ ! 」 「何で人の血をおいしく飲むために風呂入ってんの 2: 完全に手段と目的入れ替わってま おお ふろ したい いつばい ここち のど か

9. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

ふつう だれ 特に問題なく、誰からも馬鹿にされず、敵対せず、ごくごく普通の高校生活を送る : ただそれだけが望みなのに。 まど 「貴様ら、何を見ているこの私の美しさに惑うのは勝手だが、人間風情が : ルシュラが余計なことを言いかけたとき、緋水は反射的に彼女のロを手で塞いだ。 はヘほ ほほへはひほふふ 「やめろ、お前、何をする フガフガと口を動かす彼女に構わず、緋水は猛烈な勢いでクラスメイトにまくしたてる。 とおえん しんせき ・ : 親戚です、親戚 ! 遠縁で、ずっと海外にい 「え 5 っと、その、コイツはえっと : : お嬢様育ちで、海外育ちで、ちょっと : て、俺も最近会ったばかりで : なり一一一一口動がおかしいけど、大目に見て下さいリ転入の件は、その、ほら、海外いたから ・なっ 編入とかの手続きが、色々あって、入学式に間に合わなくて : テキトーに並べた事情に同意を求め、緋水はルシュラを見つめる。 のが 当然、彼女が承知するわけもない。緋水の手から逃れ、解放されたロで反論した。 「お前、何を言っている卩この私が、お前ごときと血縁などと : はさ 言い終わる前に、緋水は両手で彼女の顔を挟み込み、グイツと顔を近づける。 だま 「いいからちょっと黙ろ、つか : : ねっ ? 」 ききせま 血の気のないどこか虚ろな、それでいて鬼気迫る表情は、吸血鬼たるルシュラさえ押し うつ ばか じようさま ふぜい ふさ

10. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

きまじめ ねら 皆勤賞を狙っているわけでも、生真面目に高校生活を送りたいわけでもないが、高校生 ちこく 活初日から遅刻するのはゴメンこ、つむる。 なぜ 「お前、何故脱いでいる卩ま、まさか人間の分際で私を卩 むなもと ハスタオルを胸元に引き寄せ、身を強張らせるルシュラ。 もちろん、緋水は相手にしない。 「見たくないなら、部屋から出ろよ。もう構ってるヒマはない」 きはく いったん ノ ーフパンツを脱ぎ出した彼の気迫に押され、ルシュラは一旦部屋の外へ出た。 きが のぞ それでもやはり気になって覗き込もうとしたがーーすぐにプレザーの制服に着替えた緋 みすい 水が部屋から飛び出たため、未遂に終わった。 ア げんかん そのまま玄関へ向かって全速力で駆けていく緋水を、ルシュラが追う。 ュ ラ「お前、どこへ行く卩」 「学校だよ、学校。言っとくけど、俺の体質に吸われた血の量は関係ない。たとえ全身の 架 きゅうけつき 字血を吸い尽くしたところで、単に干からびた死体ができるだけで、吸血鬼にはならない あわ : だが、死は恐れるようだな。先ほどはずいぶんと荒てていた」 銀「ますます面妖な体だな : ふつう 「人間ならト 1 ゼンだ。普通は血を吸われるのだって嫌がる」 「それだけか ? 」 かいきん めんよう カ こわば