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検索対象: 銀の十字架(クロス)とドラキュリア
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1. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

ばってき びしよう はにかむような少女に、緋水も微笑して返す。 世羅玲奈ーーー自己紹介前のオリエンテーションで、いきなり担任からクラスの委員長に 抜擢された、ある意味不運な少女だ。 せいどう この清堂高校では、入学当初のクラスの係決めは、担任の一存で行われる。 特に委員長については、問答無用で推薦入学で入ってきた生徒に白羽の矢が立つらしい がいと・つ このクラスでの該当者は、この玲奈だった。 さいしよくけんび 才色兼備を絵に描いたような少女で、それでいて驕ったところがない。常に周囲を思い つか やって、気を遣っている : : : そんな印象だ。まあ適任だろう。 「このクラス、愛心中出身の人、いないみたいだね : : : まあ、想像はしてたけど ようちえん 「愛心って、あのカトリック系のミッションスクールだろ ? で、幼稚園からエスカレー ター式のお嬢様校。普通はそのまま高等部に進学するだろうから、そりやいないよ」 「まあ、そうだけど : : : あ、でも紅城君もこの辺じゃ聞かない学校だよね ? 「 : : : 多分、出身者は俺一人ー 「そっか、じゃあ : : : 似た者同士だ」 共通する心細さを見つけ、どちらともなく笑い合う。 じよ・つさま すいせん おご

2. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

るおそる教室を振り返る。 明らかにヒイているクラスメイト一同。 たず 委員長としての責務か、あるいは隣の席という縁からか、玲奈がおずおすと尋ねる。 どうせい 「紅城君、彼女と : っていうか、その、まさか : : 知り合い ? ・ : 同棲 ? 」 ・そ、つい、つ説もある、かな ? むだ とばけてみたが、無駄だった。 クラス中の視線が集まってくる。 ャパイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ、マジでヤバイ。 ア 「何だ、アイツ、あんなトリプルエークラスの美少女と知り合い っーか同棲 ュ ラ「オイオイ、高校生だぜ : 「テンション上がったのに、彼氏持ちかあ : 架 字「入学早々、見せつけやがって : の いやあせしたた クラスがざわめく中、緋水は嫌な汗を滴らせながら、必死に打開策を考える。 こんなに注目を集めるなんてーー望んでいない。 ふ となり えん

3. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

「用件 : : : 何 ? 」 たず 男の本能を押さえつけ、緋水は冷静を装って尋ねる。 「やだなあ、 5 わかんない ? いたずら 悪戯つほく問い 返す芽依。 正直、かなり色つほい。 いかにも遊んでいそうで、スカートもやたらと短い。制服のエロイ着こなしは、学年随 一だろう。 「 : : : わかんないな、同じクラスになったばかりの俺を、いきなり呼び出すワケなんて」 かく 警戒した様子を隠さず、緋水は周囲を見回す。 ア 特に人の気配は感じない ュ キ 「リにいないわよ、アタシ達以外。何気にしてるのフ うの もうそう A 」 「手紙を鵜呑みにして、さらに都合のいい妄想して、のこのこやって来たバカを笑い者に 架 字する : : : なんて可能性が裔めないんでね」 人間不信 ? そりや今日は目立ってたけど、入学早々そんなイ 銀「何よ、そのドッキリ ? ジメかます . 奴、クラスにはいないと田 5 、つけ - ど ? 「 : : : だといい。ど よそお

4. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

ヒト あれ知らない吸血鬼あれ知らない吸血鬼あれ知らない吸血鬼あれ知らない吸血鬼。 とうひ 逃避を込めた自己暗示をかけ、緋水は夢の世界に飛ぶ。 つか が、ルシュラにあっさり発見され、首根っこを掴まれて現実に引き戻された。 「見つけたぞ。まったく、苦労かけおって : : 何で、いるのフ まぎ 覚めない悪夢ではなく、目の前の少女は紛れもない現実。 どれい わずか数秒で急速にやつれた緋水に、ルシュラはそれだけで男を奴隷に変えられそうな、 愛らしい笑みを浮かべた。 「来ちゃった D 」 「彼女かツツツツ もうれつ 猛烈なツッコミに、クラス全員の視線が緋水とルシュラに集中する。 「何だ、何を見ているのだお前達 ? 緋水は生徒へ因縁をつけ始めたルシュラの手を引き、彼女を教室の隅へ連れ出す。 「 : : : 何で来た卩 どうやって俺のクラスを割り出した卩 いんねん ヒト ヒト すみ

5. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

彼が樹里に何事か告げると、彼女は腑に落ちない様子で首を傾げた。 : ですか ? でも私、何も聞いておりませんし : ・ : 大体、昨 「え、この時期に : 日は何、も : ・ : とりあえず、お願いします」 「いや、まあそうなんですが、校長に言われまして : 告げた学年主任自身も、何やら腑に落ちない様子だった。 いったんきようだんもど 樹里はさらに首を傾げつつ、一旦教壇に戻った。 「え 5 っと、転入生というか、新しいお友達を紹介します」 「はあっ、何でまた卩 「普通に入学式に来ればいいじゃん」 「つーか、昨日休んだだけじゃねフ 「あ、でも出欠のとき休みいなかったよね ? 」 とうとっ あまりに唐突な発表に、クラス全体がざわめき出す。 こんわく 発表者の樹里自身も同じ疑問を抱えているらしく、困惑していた。 が、来たものはしようがない かか

6. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

クラスの最後の良心と言える存在も、空しく散った。 何かもう午後の授業出たくない。 うわさ 女同士の噂の速度は、それすなわち光速に匹敵する。 さっきさよならした、平穏な高校生活。 みよう そしてこんにちは、妙なレッテル貼られた高校生活。 しんけん そば のんき 真剣に転校まで考え始めた緋水の傍で、ルシュラは呑気にいちご牛乳を啜る。 「ホントに甘いなこれ ! 血の次ぐらいに甘いんじゃないか ? 」 いっそ殺してくれ」 つぶや かげ 血を吐くような呟きが屋上に切々と流れる中、二人を見つめる影があった。 ア 玲奈達とはまた別の女生徒が、塔屋のドアの陰で、二人を、特に緋水に熱つほい視線を ュ ラ向けている い男、見 5 つけ D 」 架 字 十 の 「 : : : 貴様、今日の体たらくは何だっ、だらしないにもほどがある ! 」 「たかだか体力測定ごときで全力出してどうするよ ? 」 0 ひってき

7. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

たど まだまだ見知らぬ校舎だけに、多少迷いはしたが、 何とか辿り着いた。 戸を開けて中に入ると、雑多に並べられた机と椅子が散乱している。 すみ 現在は完全に使われていないようで、校舎の隅にあるせいか、人の気配もない 窓から差し込む夕日をほんやりと眺めていると、背後から声がした。 「あ、来てくれたんだ ・誘い出しての待ちばうけ、ってパターンじゃないみたいだな。何か用 ? 振り向いた先には、同じクラスの少女が立っていた。 あまいろ 同年代にしてはやや大人びた色つほい顔立ちと、ポリュームのある亜麻色の髪をシュシ しようかい きおく ュでポニーテールに束ねた髪型は、今朝の自己紹介から何となく記憶には残っていた。 しかし、名前が出てこない。 「あ 5 っと : すど・つ 「巣道よ、巣道芽依ー 「あ 5 はいはい・ 思い出したところで、芽依は近づいてきた。いや、抱きつく、と言った方が近いだろう。 うわめづか ルシュラと同レベルの発育のいい胸を緋水に押しつけ、上目遣いに見つめてくる。ボタ むなもと みわく ンを一つ外した胸元からは、魅惑の谷間が覗いている。 さそ なが

8. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

・ : まあ」 授業初日に緋水がテキトーにぶちあげた設定により、ルシュラは海外暮らしが長くて世 情に疎い : : : とい、つことになっている。 きゅうけつき もっとも、ルシュラ本人は出身地の記憶はまったくない。言動の節々に、吸血鬼の原産 のぞ 地たるヨ 1 ロツ。ハを思わせる言葉が覗くが、その程度しかわからない。 「少し変わってるけど、紅城君とは仲いいよね ? お昼も一緒だし : 「まあ、一応 : なかむつ 緋水からすれば見張りも兼ねての行動だが、やはりクラスメイトには仲睦まじく見えて アいるらしい うきよばな 7 「でもルシュラさん、何か浮世離れしてるっていうか、正直声かけづらいよね : ラ確かに、ルシュラはクラスの女子に距離を置かれている。 AJ 怜奈を始めとした、ごく一部の良識ある女子のフォローでうまくやりすごしてはいるが、 架 字 十浮いているのは確かだ。 の まもの 銀その点、同じ魔物であるはずの芽依は、中々うまくやっている。 子作り目的の入学のためか、女子には興味がないようだが、「人間ーになることが至上 命題だけに、人づきあいは意外にうまい きおく きより

9. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

たお 「いくらなんでも、人をいきなり押し倒す女はねえ : : : 完全に俺の体目当てじゃん。体だ ただ けが目的じゃん。爛れた男女関係じゃん。そ、つい、つのはちょっと : 「そ、つか : : ならいい。帰るぞ」 うなが うなず ルシュラは満足げに頷き、緋水に帰宅を促す。 ほどなくして校門を出て、二人は並んで家路に着く。 「そういえば、お前は『ぶかっ』に入らぬのか ? しようかい ルシュラの発言は、今日行われた部活動紹介を見ての発言だろう。上級生が中心となり、 新入生に対し、各部活動の紹介というか、プレゼンが行われた。 ア もっとも緋水は興味ゼロなので、気だるげに答える。 ュ 「ないね。しいて言えば帰宅部」 キ 防「何だそれは ? 今日の紹介とやらにはなかったぞ卩」 おうか 齔「かったるい授業を終えて、放課後という名の青春を謳歌するのが主な内容だ。最も障害 + となるのは、担任の無駄に長いホームルーム。これは担任の性格で八割方決まるが、俺は の 銀運がよかったみたいだな。他のクラスと比べても、早いほうだー 「要は普通に帰るだけであろうが。偉そうに言うな」 「バレたか」 ほか えら

10. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

こうこっ はどこか恍惚とした表情で立ち上がり、ふらふらとした足取りで、樹里がルシュラのため おもむ に指し示した空白の席に赴いて、そのまま腰を下ろした。 みんな とつじよ せきが 突如行われた席替えに、皆が注目するが、ルシュラは気にしたふうもなく、堂々と献 じよう か 上された席に腰掛ける。 「どうした、お前もはやく座らぬか。ここはお前の席なのだろう ? これみよがしに隣を指差し、緋水に席を勧めるルシュラ。 ばうぜん 緋水は茫然としながら席に着き、そのまま机に突っ伏した。 はた 傍から見れば、両手に花の席。 いけにえさいだん せま だがその実態は、日常をぶち壊す女吸血鬼の毒牙が迫る、生贄の祭壇。 せんぼうまなざ クラスの男子は羨望の眼差しを送るが、替われるものなら替わってほしい。 波乱みなんてものじゃない、波乱しかない学校生活が始まろうとしている。 入学式の帰りに吸血鬼に血を吸われ、授業初日で吸血鬼が転入、さらに隣の席。 ぼ - つよ - ってんじよう なみだにじ 視界が涙で滲むのを感じながら、緋水は茫洋と天井を見上げ、叫びたい気持ちを抑えた。 へいおん さようなら、俺の平穏な高校生活。 こわ すす どくが おさ けん