銀の十字架とドラキュリア クロス クロス 銀の十字架とドラキュリア 十月ユウ ファンタジア文庫 円 26 十月ュウ ファンタジア文庫 1926
136 のろ 「おい : : この家呪われてるんじゃないのか ? 何か、みよ 5 な吸血鬼住み着いたぞ。 お前の嫌がらせか ? お前の部屋で寝てるし クロス 銀の十字架は答えない。 答えるはずがない。 「お前が死んだと思ったら、今度はアイツだ。もう関わりたくないのに、また出会った」 クロス 十字架はなおも答えない。 答えてくれない。 クロス 身を屈め、緋水は銀の十字架にあしらわれた、真紅い宝玉を見つめる。 「何とか言えよ : : ミラルカ」 返事はなかった。 きょぜっ 墓標は、ただ無情に生者を拒絶する「 死者は還らない。 問いかけも、ただ虚空に流れるだけ おどず 無駄と知りつつ訪れても、結局何も変わらなかった。 ものう 物憂げな顔で、緋水は地下を後にした。 カカ かえ かか
今緋水が目にするものが、この地下に吸血鬼が存在することを許さない。 さ ちめいしょ・つ 床に突き刺さるそれは、日光と並ぶ吸血鬼の致命傷足り得る弱点。 クロス すなわち、十字架。 かたむ 人を磔刑にかけられるサイズのそれが、傾いた形で床に突き刺さっているのだ。 かんべき 表面は純銀を思わせる輝きを帯び、傷一つない完璧な外観。 せんたん ふち その十字の縁は全面が刃物のように鋭く研ぎ澄まされており、先端はそれぞれが一部の やじりもり 鏃や銛に見られる「返し」のついた形状だ。 あか 縦と横の交差点には、真紅い宝玉があしらわれ、戒めのように鎖が巻かれている。 まちが ゅ ア 通常教会で見かけるものとは異なる意匠だが、揺るぎない聖性を帯びているのは間違い ュない キ クロス 防単なるマークやファッションにすぎない十字架は、吸血鬼の脅威足り得ない。 しかし今ここに存在するそれは、本物だ。 架 ま めつ 字 + 魔を滅し、世界を浄化する十字の楔。 の 銀そして、この家の、この場所の、本来の主の墓標。 ひとみ 見つめる緋水の瞳には、形容しがたい哀しみが揺れる。 ぐち クロス つぶや しばし十字架と見つめ合った後、緋水は愚痴をこばすように呟く。 たつけい じようか はもの くさび するどと あるじ きようい / 、さり・
クロス第を
S 斗ミ・ C き 7 ) 、ミミ 十月ユウ 7 8 9 8 8 9 銀の十字架とドラキュリア ISBN978-4-8291-5785-7 C0195 \ 580E 定価本体 580 円 ( 税別 ) 富士見書房 1920195005806 銀の十字架とドラキュリア 「馬鹿な・・・・・・私の命を聞かぬだと ! ? 血を吸ったのに何故た ! ? 」 くじようひすい 、、平穏きわまりない日常″を求める少年・紅城緋水は、高校生活 の初日から記憶喪失の吸血鬼の少女に襲われるという災難に見 舞われる。彼女の名はルシュラ = ダーム・ドラキュリア。吸血鬼のカ が効かない緋水に興味を持ったルシュラは、緋水の家へと上が り込んできたあげく、学校にまでついてくる始末 仕方なくルシュラの記憶を取り戻す手伝いをすることになった 緋水たったが、今度はまた、、別の秘密〃を持つ少女・芽依に誘惑 されたり、ルシュラを狙う「捜魔課」の少女に誘拐されたりと、平 穏とは程遠い日々は続く一一。学園妖魔ラブコメ & アクション ! ファンタジア文庫 戒書封殺記その本、持ち出しを禁ず 戒書封殺記その本、触れることなかれ 戒書封殺記その本、禁忌の扉に通ず 戒書封殺記その本、開くことなかれ 覇者の三剣 覇者の三剣 2 覇者の三剣 3 覇者の三剣 4 覇者の三剣 5 ダークロード漆黒の断罪者 ダークロード 2. 戦陣の姫君 ダークロード 3. 純白の死神 ダークロード 4. 黒の君臨者 クロス 銀の十字架とドラキュリア クロス 銀の十字架とドラキュリアⅡ 十月ユウ ・とづきゅう 今回、久しぶりにまとも ( ? ) な主 人公を書きました。が、彼の周りと 体質が普通でないので、イマイチま ともな日常が送れていません。読者 の方々も、「人間以外のモノとの日 常生活」を楽しんで頂ければと思い ます。紅城緋水の日常に幸あれ。 クロス トリスアギオン トリスアギオン トリスアギオン トリスアギオン トリスアギオン ク . ロス / クロス 十月ュウ 4 ファンタジア文庫 庫 タ ア フ イラスト : 八坂ミナト カバーデザイン : アフターグロウ
クロス 銀の十字架とドラキュリア 十月ユウ ファンタジア文庫 1926
p5 P13 P55 P109 P139 P177 P240 P268 P281 序章 イスカリオテ 第一章◆血を注がれぬ者 第二章◆被造物は土よりいする クロス 第三章◆十字架は答えない 第四章◆子羊は捧げられた 第五章◆疑惑のロづけ アンチドラグ 第六章◆反吸血鬼 終章 あとかき ゴーレムアタマ
第三章十字架は答えない 緋水が学校を出たとき、もうとつぶり日は暮れていた。 おど 明日は土曜日で、休みに心が躍るはずなのに、緋水の足取りは重かった。 かんしやく きゅうけつき 吸血鬼が、わけのわからない癇癪を起こして去ったーーーそれだけなのに。 「ダールーイ : つぶや 気だるげに呟き、緋水は無為に歩を進める。 かばん ア手には、学生鞄とルシュラが残した日傘が握られていた。 にちぼつむか ュ 日没を迎えた今、ルシュラにとっては必要ない品だろうがーー・・一応、私物には違いない キ 防そのまま捨ててもよかったが、何故かあの空き教室を出るとき、持参していた。 架届けてやろうと思わないでもないか、どこに行ったのかはわからない 字 十しいて心当たりを挙げれば、自宅だろう。 もど 銀あんな別れ方でのこのこ緋水の家に戻るとも思えないが、柩を置いたままだから、一度 は戻るはずだ。 れいてき ねむ しやだん 吸血鬼は必ずしも柩で眠るわけではないが、日光の遮断や心身の霊的な回復のために、 ひすい クロス ひつぎ
「その女、ホントの年齢はさておき、精神年齢はどう考えても十代だ。未成年相手に合意 、ノヨーシキだろ ? でしたは通用しない。、、 「お前、どうして : 喜びを隠せず、ルシュラが叫ぶ。 かたすく たた 緋水は照れ隠し交じりに肩を竦め、軽口を叩く。 「助けてやるから恩に着ろ。で : : : オッサン、忠告に応じる気は ? 「誰が : どうして私に刃向かえる卩貴様は私に血を吸われたのだぞ からだ 「ちょいと変わった体質でね。話し合いに応じないなら、カずくでいく」 くさり たずさ アそのとき、初めてルシュラと男爵は、緋水が携える銀の鎖に気づいた。 きょだい クロス ュそして彼が背負うーー巨大な十字架に , そむ ラ反射的に目を閉じ、顔を背ける吸血鬼二人。 なぐ 架緋水は携えたツアラブレイドの先端を地に突き刺し、全力でそれを殴りつける。 字 十 の 銀「、つるああああああツツツツツツツツツツリ」 おん ゴンという鈍い音の後に、鐘を撞いたような間延びした音が、倉庫内にこだまする。音 かねっ はむ
くちく しんどう 叉の振動を思わせる現象は、瞬く間にその場の吸血鬼を駆逐する。 「ガアアアアアツツツツツー は - っ一 ) ・つ ふさ 咆哮をあげ、男爵は耳を塞いだ。縛られているせいでそれができないルシュラは、苦痛 れいな に顔を歪め、頭を振る。なりかけである玲奈も、耳を押さえうずくまった。 もだ 吸血鬼とそのなりかけが悶える中で、ただ一人、緋水だけが平然と動いた。 ざわ ツアラブレイドを音叉に見立てた振動波は、人間には少々耳障りな鐘に似た音でしかな クロス い。が、聖性を持っ十字架が発する音は、吸血鬼にとっては聖歌の大合唱を聞くに等しい もと 足早に男爵の横をすり抜け、緋水はルシュラの下へ向かう。 むだ 「無駄にエロい格好だな : : 気知か ? 」 「、つ、、つるさい・ : ど、つして、もっと早く : : っていうか、何だこの音 : 吸血鬼的には、黒板を爪で引っ掻いた音、もしくは某ガキ大将のリサイタルを聞いた感 覚だろう。 あえ 緋水は喘ぐルシュラを無視し、固い鎖の縛りを解いていく。 だが解き終わる前に、ゴ後に邪悪な気配を感じた。 じゃま 「ガキが : : どこまでも邪魔を " 「お目覚め、か。悪いが立て込んでる。というわけで : またたま か たの すどう ・ : 頼むわ、巣道」