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検索対象: 銀の十字架(クロス)とドラキュリア
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1. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

あんど いつわ ルシュラもまた、自分の記憶が偽りでなかったことに、安堵の表情を見せる。だが、そ かげ の顔はすぐに翳った。 「私が真祖だとして : : : どうする気だ ? いかに私とて、貴様を吸血鬼の宿業から解き放 っことなどできんぞ てっていてき 「どうかな ? その体を徹底的に解明すれば、辿り着けるのではないか ? そもそも、 なぞ 『真祖』自体が謎だらけだ。人間が何らかの方法で転化したものだとすれば、人が咬まれ さる ずして吸血鬼に至る方法は何なのか ? 猿のように、進化の過程で人と枝分かれした種な らば、どこで人と吸血鬼は分かれたのか ? 宇宙人のように、まったく成り立ちの異なる ア異種ならば、吸血鬼とはそもそもどこから来たのか ? いずれにせよ、その体にこそ、ク主 かく ュ人超えクに至る秘密が隠されているはず " ・ あかじゃあく 防男爵の目に危険な光が、真紅く邪悪な光が宿った。 架舌なめずりをする顔に、ルシュラの背筋を冷たいものがはしる。 字 十自分も、自分もーー・血を吸うときは、こんなにおぞましい顔をしているのだろうか ? 銀「色々と考えてきたが : : : やはり、まずはそのカの源たる『血』を頂こうか」 しゅうあく ちなまぐさ くちびる 醜悪に顔を歪め、血腥い息を吐きながら、唇をルシュラの白い首筋に近づける。 「や、やめろ・・ : : 寄るな " 】

2. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

しか がいじゅう 「人の尊厳を奪う、まむべき害獣。それが吸血鬼です。滅ばして然るべき。あなたのため なりかけ にもね。仮にあなたが完全な吸血鬼になりきっていない、灰色の状態であれば、それがあ なたを救、つことにもなる」 「 : : : が、俺が完全に吸血鬼だった場合、アイツを殺せば、俺も滅びる」 れんさ しもべ 吸血鬼の特性その⑤ , ーー「主人」たる吸血鬼が滅びた場合、連鎖的にその「下僕ーも滅 か びる。すなわち、一人の吸血鬼の死は、その者に咬まれて吸血鬼となった者、全ての滅び を意味する。 「それが何か ? 害獣として無様に生きるより、あっさり滅びる方が世のため人のためで くじよ しよう ? 親玉を滅ばせば雑魚も滅びる、駆除がシンプルでいいのが、吸血鬼の唯一の美 点ですね。 えるるの言葉に迷いはない。 そく 緋水が吸血鬼であれば、まず彼からこの場で即処理をしていたことだろう。 人なら生かす。 なりかけなら助ける。 吸血鬼なら滅ほす。 シンプルゆえに、その論理は揺るぎない。 クロ クロ ざこ

3. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

170 「ホントホント」 : いいんだけど」 「なら : むく 思いっきり目を泳がせて言ったのに、玲奈は信じてくれたらしい。純真無垢というか、 すなおこ 素直な娘だ。 帰宅の方向は同じらしく、二人は何となく並んで歩き始めた。 「紅城君、今日は : : : ありがと。その、英語の時間 「何かしたつけ ? 「ほら、私があてられて答えに詰まったとき : : : 横で教えてくれたでしょ ? 「あ 5 はいはい、あったねそんなの , 当の本人が忘れるぐらい些細なことだが、玲奈はちゃんと覚えていた。人の好意は忘れ ず、素直に礼を言うーーーそんな美徳を彼女は備えている。 うらや ・ : 羨ましいよ、あてられたときもスラスラ答えて、 「私、どうも英語だけは苦手で : 発音も何かネイテイプつほいし」 「俺の場合、英語だけが得意って感じだけどな。身内に海外連れ回されたからな : : : 英語 だけは、何か身に着いちゃって」 : 帰国子女 ? あ、ルシュラさんもそうだっけ ? 「へえ・

4. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

クラスの最後の良心と言える存在も、空しく散った。 何かもう午後の授業出たくない。 うわさ 女同士の噂の速度は、それすなわち光速に匹敵する。 さっきさよならした、平穏な高校生活。 みよう そしてこんにちは、妙なレッテル貼られた高校生活。 しんけん そば のんき 真剣に転校まで考え始めた緋水の傍で、ルシュラは呑気にいちご牛乳を啜る。 「ホントに甘いなこれ ! 血の次ぐらいに甘いんじゃないか ? 」 いっそ殺してくれ」 つぶや かげ 血を吐くような呟きが屋上に切々と流れる中、二人を見つめる影があった。 ア 玲奈達とはまた別の女生徒が、塔屋のドアの陰で、二人を、特に緋水に熱つほい視線を ュ ラ向けている い男、見 5 つけ D 」 架 字 十 の 「 : : : 貴様、今日の体たらくは何だっ、だらしないにもほどがある ! 」 「たかだか体力測定ごときで全力出してどうするよ ? 」 0 ひってき

5. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

246 「何故怯える ? 散々人の血を吸ってきた身だろうに」 ちが 違う、と言いたかった。少なくとも、覚えている限りでは緋水の血しか吸っていない でも、本当はもっとーーー吸っているのだろう。 しよくよく こんなふうに食欲とも情欲ともっかぬ顔で目を血走らせて、人を恐れさせて。 うつ きようふ 吸われる側に回って、ようやくその恐怖と忌まわしさに気づく。虚ろな目つきで立ち尽 くしている委員長も、こんな思いだったのだろうか。 といき 情欲の交じった吐息が首筋に当たる。 きばせんたん 長く伸びた牙の先端が、皮膚に喰い込む。 「イヤ : なみだう 目に涙を浮かべ、見た目の年鰤と何一つ変わらぬ小さな悲鳴を零す。 そのとき。 「な、にエロいことしてんだオッサン ? 」 みは がくぜん 愕然と男爵が後ろを振り返り、ルシュラも目を瞠った。 たたず 首に痛々しく包帯を巻いた緋水が不敵に笑い、佇んでいる。 ねんれ

6. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

8 きゅうけつき : そんな、愚か 「 : : : 吸血鬼とはいえ、人に害を為さないならば、処分は保留する : な考えを持つ者もいるということですよ。なまじ相手が人型をしているだけに、そんなこ ま とを考えてしまう。もっとも、そんな輩はすでに吸血鬼に咬まれでもしたか、あるいは魔 がんとりこ 眼の虜にでもなったかもしれませんが , 「タカ派とハト派の争いってやっか。そっちも、一枚岩じゃないと。吸血鬼を滅ばすにも、 罪状の確定と所定の手順が必要なわけだ 緋水は自分自身を指さす。 うなず えるるは、不機嫌そうに頷く。 緋水がわずかでも吸血鬼化していれば、その時点でルシュラの罪状は確定する。 が、緋水は完全なる人間。 本来なら喜ばしいところだが、吸血鬼を討つ大義名分が消えたことは、えるるにとって は不満らしい 「じゃ、もうそろそろ俺を釈放してくれないか ? 俺はアンタらが証明したとおり、正真 正銘ただの人間だ」 「あくまで現時点での話です。人間たるあなたに訊きますが、何故あんな害獣を傍に置い ておくのですフ ふきげん しやくほう き なぜ

7. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

「え、何、月曜からも俺の高校来んの ? 」 そば 「当たり前だ ! そもそもお前は私の下僕なのだから、傍にいて仕えるがよい " 「断固断る " 】何様のつもりだお前ワ 「吸血鬼で、『真祖』様だ " 豊かな胸をどんと突き出して誇るルシュラ。 しりめ 助けなきやよかったと思う緋水を尻目に、彼女は立ち上がって居間を出た。 もど あさぶくろにぎ すぐに戻ってきたその手には、人の頭ほどに膨れた麻袋が握られている。 「何だ、そりや ? ひつぎ ア「柩に入っていた」 ゆか ュ 言うや否や、ルシュラはその中身を床にぶちまける。 キ こんじき 防麻袋かられ落ちたのは、まばゆい金色の光。 架澄んだ金属音をたて、それは床に散らばっていく。 字 + 「これ : 銀拾いあげてまじまじと見てみれば、それは金貨だった。五百円硬貨ほどの大きさの表面 には、人の顔らしきものが刻まれているが、どこの時代、どの国のものかは見当もっかな い。メッキなどではなく、かなり純度の高い金で造られているように思える。

8. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

だえき 唾液の糸が、しばし二人を繋ぐ。 : いいのか、これだけで ? 」 「うん : うなず ルシュラはコクンと頷き、どこか恥すかしそ、つに毛布を引きずりながら、またソファー ま もど に舞い戻る。 かくにん とりあえず多少は回復したことを確認すると、緋水は立ち上がった。 ふろ 「動けるようになったなら、風呂でも入れよ。あったまるぞ」 きが かわ ア「着替えはまだ乾いてないから、俺のでよければテキトーに着ろよ。部屋は、二階の階段 ュ上がったとこを右だ。服はタンスに入ってる」 りんせつ ラそれだけ言うと、緋水は居間と隣接したダイニングキッチンに向かう。 ルシュラはその背をしばらく見つめていたが、やがてよろめきながら立ち上がった。 架 ざたく 字 + 約一時間後、緋水は居間の座卓に皿を並べていた。 と の 銀昨日の夜からロクに食事を摂っていないので、さすがに今日の夕食はきちんと摂りたい。 大皿に盛ったカルボナ 1 ラのパスタと、ボリュームのあるサラダと野菜スープ。 そしてそれらを取り分ける小皿がーー、二人分。 つな

9. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

「さっきの仕返し」 「子供ですか、あなたは ? 」 「一つ質問。お前にとって、吸血鬼とは ? 」 ほろ がいじゅう 滅ばすべき害獣です。言いませんでしたか ? ビュア 「もう一つ、ではその吸血鬼の中でも格が上で高位な《純血》とか、もっと上の : : : 『真 祖』なら ? けいかい 「変わりません。余計に脅威が増すだけです。警戒の度合いを上げて、より徹底的に殲滅 します。もっとも、もうそんなもの、この時代に生き残っていないとは思いますが。 ピュア ア《純血》の正統血統も、せいぜい一つか二つ、『真祖』など現存するはずがない」 ュ「そう、か。わかった、じゃ、これ」 わた ラ緋水はえるるに歯型を投げ渡した。 かんてい 架「それは結構。これの鑑定結果はすぐに出ます。あなたも身の振り方を考えなさい ぎようし 字 + 緋水は答えす、今し方えるるの頬を摘んだ、自分の指先を凝視している。 の しよせん 銀「少しはわかったでしよう、あなたの傍にいる吸血鬼も、所詮人の血を吸うただの化け物。 すぐに離れなさい。どのみち、私が処理しますけれど」 「それはそれは。じゃ、また道案内お願いできますか ? 一人じや出られないし」 きょ - つい ほお てっていてきせんめつ

10. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

たお 「いくらなんでも、人をいきなり押し倒す女はねえ : : : 完全に俺の体目当てじゃん。体だ ただ けが目的じゃん。爛れた男女関係じゃん。そ、つい、つのはちょっと : 「そ、つか : : ならいい。帰るぞ」 うなが うなず ルシュラは満足げに頷き、緋水に帰宅を促す。 ほどなくして校門を出て、二人は並んで家路に着く。 「そういえば、お前は『ぶかっ』に入らぬのか ? しようかい ルシュラの発言は、今日行われた部活動紹介を見ての発言だろう。上級生が中心となり、 新入生に対し、各部活動の紹介というか、プレゼンが行われた。 ア もっとも緋水は興味ゼロなので、気だるげに答える。 ュ 「ないね。しいて言えば帰宅部」 キ 防「何だそれは ? 今日の紹介とやらにはなかったぞ卩」 おうか 齔「かったるい授業を終えて、放課後という名の青春を謳歌するのが主な内容だ。最も障害 + となるのは、担任の無駄に長いホームルーム。これは担任の性格で八割方決まるが、俺は の 銀運がよかったみたいだな。他のクラスと比べても、早いほうだー 「要は普通に帰るだけであろうが。偉そうに言うな」 「バレたか」 ほか えら