日光 - みる会図書館


検索対象: 銀の十字架(クロス)とドラキュリア
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1. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

しようどうおさ 「だろうな。ただ単に、お前の吸血衝動を抑える薬だ」 えるるの顔から表情が消えた。 そ・つはく 蒼白な顔でーーーそれこそ、吸血鬼を思わせる血の気のない顔で、彼女は緋水を見た。 じようだん 「まさか : ・ : 私が吸血鬼とでも卩言っていい冗談と、悪い冗談がありますよ 「そうだな : : : お前は、夕日に照らされても平然としてた」 う のうり はっとえるるの脳裏に、昨日の光景が浮かぶ。 昨日、緋水が自分を訪ねたとき、何故わざわざ外で待っていたのか。 かくにん それは、確かめるため。日光が平気かどうか、ーー確認するため。 ア「疑ってた : 、吸血鬼だと卩」 けんお しやこう ュ「ああ。同族嫌悪って言葉もある。日光が平気なら、遮光クリームを肌に塗ってる可能性 防があるから、そっちも確かめたが : : : 塗ってなかった」 架緋水の言葉に、えるるは思わず自分の頬に触れた。 字 + 昨日 : : : 緋水は自分の頬を摘んだ。 の 銀単なる仕返しであったはずの子供じみた仕草の本当の意味が、今わかった。 しよっかん それは肌の触感を確認するため。 ざわ 日よけの遮光剤を塗り込んでいないか、肌触りで確かめるために。 つま ほお はだ

2. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

放課後、下駄の前で緋水はルシュラに今日の体力測定の結果を責めたてられていた。 緋水の結果はーー・まあごくごく普通、平均レベルだ。 なっとく が、ルシュラは納得いかないらしく、彼をなじり続ける。 、」こよやる気がない。本気を出しておらぬな ? 明らかに手を抜いていた」 「そもそもお前し ( みんな 「皆そんなもんだろう ? 大体。参加してない奴に言われたくない」 日中の屋外で行われた体力測定だけに、ルシュラは魔眼を駆使して見学に回っていた。 教師でもないくせに椅子に腰掛け、日傘を片手に日光を避け、緋水へ檄を飛ばす。 正直、かなりこつばずかしかった。というか、そもそも測定は男女別のはすなのに。 「何で、俺の体力測定にいらっしやるのかな ? 」 「お前は体を張って私を守るのが仕事だ。気にするのは当然だろう ? お前がそのわけの わからぬ体質で我が眷属にならぬ以上、日光の下で働くのは必然だ。私の不得手を補え」 むだ 「無駄な体力は使わない主義なの。体育の授業なんざ、軽く流せばいいの 「もったいぶるな。本気になったところで、それほどのものでもあるまいに」 とつば 「痛いとこ突くなあ : : : 張った予防線が突破された」 たいだ 「もっとシャキッとしろ。『じゅぎよう』の間も、教師の言葉を怠甯に聞き流していただ ろう ? どうしてそうやる気を見せずダラけている」

3. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

「『じむしつ』とやらを訪ねて、お前のいる場所を訊き出したのだ。最初は『こじんじよ 1 ほー』がどうとか、『ぶがいしゃ』がどうとか言っていたが、私が見つめたら全部話し てくれたぞ ? 」 「うん、明らかに魔眼使ったね、それ やっ 「あと、『こーちょーしつ』とかいう、一番エラそうな奴がいる部屋にいって『よきには あっか からえ』と命令したら、何か『てんにゆーせー』とかいう扱いにしてくれた」 「うん、それも明らかに魔眼つかったね。そもそも、よく学校まで来られたな : きゅうけつき 直射日光を弱点とする吸血鬼は、当然昼間はあまり出歩かない。 ひがさじまん たた たずさ だがルシュラはにつこり笑って、左手に携えた折り畳み式の日傘を自漫げに掲げる。 ひかげ 「バカめ、いつまでも我らが日陰に甘んじていると思うか ? この吸血鬼の技術を結集し しやだん た日傘を差せば、日光を完全遮断して行動可能だ。さらにこれは通常の傘としても使用可 能、我らが苦手とする、予期せぬ雨にも対応できる優れ物だ , わんりよく 「俺に腕力があれば、今すぐへし折ってやりたい一品だな : いっしょ 「あ、あと鍵も持ってきたぞ。どうせ帰りは一緒なのだから、お前が持っておけ」 てわた ルシュラは今朝預かった鍵を緋水に手渡す。 反射的に緋水は受け取るが、その行為とルシュラの言葉の意味することに気づき、おそ まがん お き かか

4. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

156 「そういうもんかな ? すぐわかりそうな気がするけど かけら 「あなたのような知性の欠片もない人間にはわからないでしようが、吸血鬼は人間社会へ の順応が非常に高い。あなたでも、奴らが日光に弱いことぐらいは知っているでしようが、 やから しやこうざい ひふ 今の時代は、それすら特殊な遮光剤を皮膚に塗り込むことでカバーする輩もいる」 はだ 「だが、その手の薬剤も完全じゃない。肌のテカりで使用がわかるものが多いし、見た目 うむ わかん に避和感がない高級品でも、触れば使用の有無はますわかる。それに遮光剤の効果はせい ぜいもって一日、塗るのを忘れればアウトだから過信はできない。調達も手間だし、日光 ひか こくふくしよせん の克服は所詮夢だな。日中の外出は控えるか、日傘を差した方が無難」 くわ 「 : : : 詳しいですね , さと えるるの目の色が変わったことで、緋水は失言を悟った。 かんぐ むだ この手の知識だけは無駄に豊富だが、変に勘繰られるのは避けるべきだ。 「ちょっと小耳に択んだだけだよ。けど検査なら、採血程度で充分だろ ? 何だよ、あの べッタベタな古典的なやり方ー かくにん 「それが一番効果的だからです。採血自体は、あくまであなたの健康状態の確認です。吸 血鬼に咬まれた人間は血液の量が減少し、各成分の割合も多少変化が出る」 いちもくりようぜん 「いや、だから、俺と吸血鬼の血を比べれば、一目瞭然じゃないの ? 」 さわ やっ ひがさ じゅうぶん

5. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

なのに、何かが違う。何かがずれている。 きみよう すじよう ルシュラの素性を知っていること、興奮すると浮かび上がるという奇妙な刻印、それら を含めて、何かが根本的におかしい。 ナニモン 「お前 : : : 何者だよ ? 人間か ? 」 「 : : : 失礼ね。人間よ、ごく普通の」 「違うな。お前は普通の人間じゃない れいてつ 緋水は冷徹に言い捨てた。 ぞうお ひとみ そんな彼を見る芽依の瞳には、明白な憎悪が宿っていた。それこそ、殺意に近いほどの。 おこ 「 : : : やつばりな。人間じゃないって言われて、本気で怒るのは、本当に人間じゃない奴 ア 7 だけだ。何なんだ、お前 キ わんりよく きゅうけつき 「日光が平気ってことは、吸血鬼じゃない。だが、腕力がどう考えても女子高生じゃない。 架 字俺の言った型式番号ってのは、図星か ? アンドロイドとか ? 」 だれ ただ : : : 普通に母親のお腹から生まれた 銀「失礼ね、誰がロポットよ。アタシは人間よー わけじゃないけど これ以上の隠し立てを諦めたのか、芽依はどこか吹っ切れた様子で語る。 あきら

6. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

134 不安が消え、外見相応にーー十代相応の表情を彼女は見せた。 それを背中越しで感じながら、緋水は無愛想に言う。 しやこう 「二階の奥の部屋が : : 使いやすいだろ。厚手の遮光カーテンがあるから、朝が来て も安心だ。一番広いし」 「うむ ! 」 さっそく 早速下見と言わんばかりに、ルシュラは部屋を駆け出していく。 くしょ・つ 緋水は苦笑しながら、流しに溜まった食器を洗い始めた。 へ 時を経た深夜ーーー緋水は家の地下にいた。 地下室の間取りは広く、そのまま一つのフロアといっていい。 こ・つしつ しよくだい 硬質な石造りで、書庫とワインセラに食料保管庫、さらに照明は古風な燭台と、どこ か退廃的な中世趣味ーーっまり、吸血鬼らしい場所だ。 わむ すでにルシュラはあてがわれた部屋で眠っているが。本来なら、日光を厭う彼女にはこ の地下を提供するべきだったのかもしれない。 だが、それはできなかった。 か

7. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

228 : いっから私を卩 「あなた : 「最初に会ったときから。体格の割りに力が強すぎた。あとお前、俺が鼻血出したとき顔 を背けたろ ? 吸血鬼退治の専門が、血が苦手つてのが気になった。もしかして、本当は 血が苦手じゃなくて、むしろ好き、ーー目にすると、自分が抑えられなくなるから、避けた んじゃないかってな。ちなみに、あのオッサンも目を背けてたから、ちょっと疑った。駄 あや か めお 目押しに、空気の入れ替えまで : : : そりや怪しむさ」 みま 緋水にとって、玲奈の見舞いはあくまで口実。 みきわ 本当は、えるるの正体を見極めることが真の目的だった。 きゅうけつき むだ じやすい 「食えない、人 : : : ですね。でも、全て無駄な邪推です。私は吸血鬼じゃないー じゅう じゅうじか 「そう、吸血鬼じゃない。日光が平気で、十字架をあしらった銃を使ってるぐらいだ」 あっさり認める緋水。 たが引き下がりはしない 非情とも一言える口調で、えるるの正体を断定する。 ダンピール 「お前、半吸血鬼だろ ? 」 さ だ

8. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

232 「はあ」 えるるの告白に対して、緋水もまた告白を返す。 たんたん が、緋水のそれはえるるとはまったく異なりーーー淡々として、感情の色がない。そのう たいだ え口調は気だるげで、怠惰だった。 「よく覚えてないけど、俺の親、俺を殺そうとしたんだ。無理心中ってやっかな ? 両親 そろ 揃って、物心つくかっかねーかの俺を先に殺して、自分達も死のうとしてたと。で、たま たま通りすがった吸血鬼が、俺の両親殺して俺を助けて、俺を育てたと。この場合、俺は どうすればい 親を殺したその吸血鬼を憎めばいいのか ? それとも、救ってくれた 礼を言えばいいのか ? 人間なら、どうすればいし えるるは答えない。 答えられるわけがない、こんな問いかけ。 「そしてその吸血鬼は、笑えることに最後は俺を助けて死んだ。俺を救って、灰になった」 緋水の目に浮かぶのは、過去の情景。 燦々と降り注ぐ日光に身を灼かれながら、必死に少年を救おうと心臓マッサージをする 吸血鬼の姿。 「ソィッは俺だけじゃない、その場にいた多くの人間を救って死んだ さんさん

9. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

第三章十字架は答えない 緋水が学校を出たとき、もうとつぶり日は暮れていた。 おど 明日は土曜日で、休みに心が躍るはずなのに、緋水の足取りは重かった。 かんしやく きゅうけつき 吸血鬼が、わけのわからない癇癪を起こして去ったーーーそれだけなのに。 「ダールーイ : つぶや 気だるげに呟き、緋水は無為に歩を進める。 かばん ア手には、学生鞄とルシュラが残した日傘が握られていた。 にちぼつむか ュ 日没を迎えた今、ルシュラにとっては必要ない品だろうがーー・・一応、私物には違いない キ 防そのまま捨ててもよかったが、何故かあの空き教室を出るとき、持参していた。 架届けてやろうと思わないでもないか、どこに行ったのかはわからない 字 十しいて心当たりを挙げれば、自宅だろう。 もど 銀あんな別れ方でのこのこ緋水の家に戻るとも思えないが、柩を置いたままだから、一度 は戻るはずだ。 れいてき ねむ しやだん 吸血鬼は必ずしも柩で眠るわけではないが、日光の遮断や心身の霊的な回復のために、 ひすい クロス ひつぎ

10. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア

ルシュラと行動を共にした緋水だが吸血鬼化した素振りは一切感じられなかった。 のろ 当然、その首筋に呪われた刻印も存在しない。 ふつう 「 : : : 見えないところ、咬まれたってこと ? でも普通吸血鬼って : 「首筋から血を吸う。他のところからだと、味が格段に落ちるからな。あと、吸血鬼化の 進行にエラーが生じて、単なる理性のない不死身の化け物を生み出す可能性が高いから、 まず首筋以外からは吸わない」 「じゃあ、まさかもう完全に吸血鬼に : 「なったように見える ? 」 別に人間やめてねーよと不機嫌な緋水。 ア ュ 言われて、芽依も今日一日の彼の行動を思い返す。 キ きひ なりかけの状態でも日光を忌避する傾向は見られるはずだが、そんな様子はなかった。 しかし、ルシュラは彼の血を吸ったと明言した。 架 字 十「 : : : と、つい、つこと ? 」 かかわ の 銀「ソィッはかなりの変わり種だ。私が血を吸ったにも拘らす、私の下僕にならんのだー おそ 腹立たしげなルシュラの言葉を聞き、芽依は腕を絡めたままの緋水を、何か恐ろしいも のを見るような目で見つめる。 ふきげん いっさい