きゅうけつき - みる会図書館


検索対象: 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 2
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1. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 2

252 ・ : もう時間がない、彼女達の努力を、無にする気ですか ? 「何を馬鹿な : 「そう思うなら、病院に戻れ。忘れ物した」 「はあ ? 」 「取ってきてくれ。多分使うことになる」 さと その言葉に、えるるは緋水の意図することを屠った。 うなすきびす 小さく頷き、踵を返して階段に向かう。 「無茶は : : : しないでください 「もう、してる」 えるるを送り出し、緋水は再び集中した。 全神経で思い出せ。 にんしき 集めた全ての情報を認識しろ。 もさく 全ての可能性を模索しろ。 他がどうなっても構わんーー使える血液は脳に行けー しっそう 体内を疾走する血液。 こどう 心臓は限界ギリギリまで鼓動し、ビートを刻む。 いな いっしゅん しばしの時間ーー実際には一瞬にも満たないごくわずかな時間の思考の果て、脳内を稲 ほか ばか

2. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 2

あぶらぶん 灰汁と余分な脂分を取り除く。さらにこまめにメインの鶏肉と鶏団子、そして野菜を投下 していく。 「いい鍋奉行っぷりね、ヒー君。ホント、今すぐでもお嫁にもらいたいくらい D 」 「それは男に一言うセリフじゃないと思うぞ」 「あらあ、アタシは本気よ ? 今すぐ食べちゃいたい D. つや 艶やかに濡れた唇で、芽依が舌なめずりをする。 本気で言っているのがわかるから、緋水は無言で目を逸らした。ルシュラの言葉どおり、 彼女を家にあげたのは早計だったかもしれない。 「ふん : : : まあ、味はよいな。お前、やはり今日は気合を入れていないか ? まんえっ きげん 鍋の味にはご満悦のルシュラだが、機嫌はよろしくなく、ぶすっとした口調で言う。 ふだん せんたく 「だから入れてねーよ。普段どおり、適度に手も抜いている。そもそも鍋という選択をし た時点で、ある意味では手抜きなのだ」 「ウソつけ ! それでこのような味が出せるかー 「ついてないって。しいて言うなら、鍋だからだ」 「でもって、人数が多いからな」

3. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 2

しんけん 方もそれなりに真剣に取り組んでいた。 : 一人を除いて。 「うむ、皆、気合いを入れて作るがよい ! 」 : ってい、つか、アンタも手伝いなさいよー ふうどうどう 威風堂々と指示を下すルシュラに、芽依が噛みついた。 もくもく さと むだ 言っても無駄と悟っている緋水は黙々とジャガイモの皮を剥き、良識ある学級委員長、 くりよ 世羅玲奈は対応に苦慮して目を泳がせている。 「そもそもアンタ、この班じゃないでしょ卩班分けは男女混合かつ出席番号順で決めた のに、何でいるのよ 「こころよく、替わってもらったのだ。何か問題があるか ? まがん 「うん、明らかに魔眼使ったよな、それ」 うつ 緋水の視線の先には、まだ少々虚ろな瞳のままの男子生徒がいた。 本来は緋水と同じ班だったのだが、ルシュラに見つめられ、そのまま他の班へ移籍して しまった。 ) の、好きにさせて ? 」 「つたく、いし 緋水に近づき、芽依が周囲に聞こえないように囁く。 ささや む せき

4. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 2

256 「そうだ。物証はないけど 「巣道さんからの報告は、私も訊きました。彼女は魔眼にかかっていた。そして、魔女で 、と。それが : 「向こうは魔眼が効かない。お前が調べたとおり、それなりに用意してる。ルシュラの方 は、気づかなかったようだがな」 「 : : : なるほど。かかったふりをして、ウソをついたと ? 」 「そのとおり。魔眼は便利だが、相手がかかったふりをしていた場合、見抜くのは中々難 まちが しい。が、委員長と先生の場合は、ますかかったとみて間違いない なぜ 「何故断言できるんです ? 」 むだ 「委員長の場合は、ルシュラの言葉どおりさ。犯人ならやることが無駄かっ不自然すぎる。 まあ、マンドラゴラの件は、よくわかんないけど」 「それは、巣道さんも言わなかったんですね : : : 何で入れたか , はいり・よ れいな この非常時でも、芽依は玲奈への配慮を忘れなかったらしい きび きづか 男女の機微を知る、彼女ならではの気遣いだ。 「何だよ、俺の知らないところで何かあるのか ? 」 : いえ、続けてください。先生については ?

5. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 2

「魔女は誰だ : : : お前ではないのか」 周囲の目も気にせず、樹里に掴みかかるルシュラ。 続きを切望する芽依も、止めようとしない。 おとず かわりに、同じく職員室を訪れていた生徒が、その役目を担った。 「ちょっとあなた達、先生に何してるの きりか 割って入ったのは、希璃華だった。 生徒会の副会長だけに、職員室との関わりは深い。 手にしていた書類の束を机に置き、ルシュラに挑む。 えじき が、当然魔眼の餌食になった。 「 : : : お前も、あの調理実習に関わっていたかもしれぬそうだな。答えろ、お前は魔女か ? 」 「違う、何それ : ぼうぜん ふだん 普段の勝ち気さが失せ、茫然とした顔で首を左右にふる希璃華。 ルシュラは舌打ちし、顎でしやくる。 「ならば去れ。用はないー そのままふらふらと、職員室を出る希璃華。 じんもん それを確認し、ルシュラはまた樹里の尋問に移るがーーさすがに、周囲に人が集まって あご つか かか

6. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 2

せいどう 翌日ーー清堂病院の一室。 緋水は、事件現場から最も近く、かっえるるの所属するク捜魔課クとも関わりの深い総 合病院に運び込まれていた。 かっ そく 彳を担いで急いで家に戻ったルシュラが状況をえるる達に伝え、即救急車が呼ばれた。 びよ - っとう れいな はんそう かくり 現在は絶対安静のうえ、かって玲奈も搬送された地下病棟の一室に隔離されている。 それすなわち、通常の病状ではないということ。 れっしよう 実際、緋水が負ったのは単なる浅い裂傷ーー通常ならば、即座に完治するはずなのだ。 なのに、目覚めない。 「大体、お前、一一 = ロうことあるんじゃねーの : れだけで、いい、から : こんとう かろうじて言い切り、緋水は昏倒した。 : ど、つした ? しつかりしろ " こ ぜっきよう 絶叫に近い声で、ルシュラは緋水の体を揺する。 、、こが、皮は目覚めなかった。 ちゃん、と、一一一一口え、よ : そ・つまか かか

7. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 2

「朴き拠小、本物か偽物かはっきりします。仮に本物だとしたら、あんな危険物を放置 しておくわけにはいきません 「いや、そのとおりなんだけど : : : え 5 っと、多分全員知ってるよね、マンドラゴラ引き 抜いたらどーなるか ? 古より伝わる超メジャーな毒草ーーその伝説の真価は、薬効よりも、むしろ植物本体に あった。 人と酷似した根ーーーいわばマンドラゴラの本体とも言えるそれを引き抜くとき、その くもん おそ ク根クは聞く者を死に至らしめる、恐るべき苦悶の声をあげる。 さして毒草の知識がない緋水でも、それぐらいは知っていた。 えるるやルシュラは言わずもがな、芽依もまず知っているはずだ。 それなのに 「抜けってどゅこと ? 「いいじゃないですか、あなたの見立てでは、どうせ偽物なのでしよう ? 「いや、そうだけどさ : ・・ : ほら、万が一つてことも : : : ねフ きより つらぬ 同意を求めるが、女性陣三人は無表情を貫き、さらに緋水から距離を取る。 「いやいや、おかしいってこれ ! 何、こーゅーときだけカ仕事は男に任せる的な い - 一しえ にせもの じん

8. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 2

よう。が、あなたの場合、警告するまでもなく、もう完全に四方斜めどこからどう見ても、 だれ しもべ 完全に下僕ですから。校内でも、幾度か血を吸われてるでしよう ? その現場を、誰にも 見られていない自信がありますか ? 「これつほっちもありません」 これまでのことを思い返し、緋水はしみじみと首を横に振る。 すでに授業初日、玲奈を始めとした女子数人に、吸血未遂の現場を見られている。実際 うわさ に目撃していなくとも、他の学年にも噂は広まっているかもしれない そくねら : ってことは何、俺は警告無しで即狙われる たいほ はっぽう ア「私もあなたが相手なら、ミランダ警告抜きで逮捕して、ついでに発砲するかもしれませ ュん。気をつけてください」 防「うん、ごめん、人権って言葉知ってる ? あのスイマセン、人間だったんですか ? + 真顔で訊かれ、緋水はそれ以上何も一一 = ロえなかった。 の 銀月の無い夜には気をつけよう、マジで。 まゆっぱ 「でも : : : ク魔女クなんて、実在するわけ ? 魔法とか、正直眉唾ものって感じなんだケ いくど なな

9. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 2

ルシュラに聞こえないようにほゃいたところで、緋水はおそるおそる希璃華を見た。 けんお ひとみ 言うまでもなく : : : 嫌悪感むき出し、生ゴミでも見るような瞳で、こちらを見ている。 なっとく 「 : : : お互い、納得ずくと。何、部活ってのは、つまり校内でもそういうことをしたいの かしら ? 」 むしよう きが 「うむ、確かに、時々無性に吸いたくなるからな。部室があれば、気兼ねなく : ヾ、 ノ サラッと正体に直結する発言をするルシュラ。 あわ ふさ 緋水は荒てて彼女のロを塞ぐが、もう希璃華はこちらに背を向けていた。 さか 「悪いけれど、あなた達に割り当てる予算も部室もないわ。盛りたいなら、校外でしてち ようだい」 そのまま振り向きもせず、彼女は去っていった。 ためいき 残された緋水は、溜息交じりに頭を掻く。 しんせい みずぎわ 「何か : : : ダメ押しした気がする。もうムリなんじゃねーか : : : 正式に申請しても、水際 とど で押し留められそうな気がする」 ふほふほふふな 「くよくよするな」 「いや、完全にお前のせい たが : って、さりげに血を吸ってんじゃねーか ! ちょっ、イテ

10. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 2

「 : : : 吸血鬼風情に、社会人の在り方を説かれたくありませんね。基本暗所にこもってい る、ひきこもりの元祖でしよ、つ ? 」 じよ、つ 「キャパ嬢からコンビニのバイトまで、夜型の仕事は一通り経験したらしいぞ。一時期、 ちょう 銀座の夜の蝶だったとか , その光景を想像したのか、えるるは言葉に詰まった。 かせ 証言どおりの美貌なら、さぞかし指名を稼いだことだろう。 コンビニのバイトにしても、防犯的にも、もってこいだ。たとえ強盗が銃を持ってきて Ⅱ も、確実に返り討ちにできる。 ア 「どんな吸血鬼ですか : ュ 本当に『真祖』卩あなたの同居人が聞いたら、目を剥き ラますよ」 げいごう 「吸血鬼といえど、生きてくためには資本主義に迎合しなきゃいけないそうだ。ムダに人 架 がんちく 字生経験も豊富だから、たまーに含蓄の深いことも言ってた。仕事に妥協がないことと、自 銀分の限界を知ることは、まったく別だとか」 とたん くさば かげ 「 : : : あなたが一言うと、途端に説得力がなくなりますね。草葉の陰で、身内とやらも嘆い ていますよ、きっと びぼ - っ ご・つとう