はあく こもん 警視庁非公開部署、捜魔課の特別顧問にして、対吸血鬼戦のエキスパートーーそれが狩 夜えるるなのだ。 くちびるとが あっさりと協力を断られ、唇を尖らせるルシュラをよそに、とりあえず緋水が希璃華へ こ、つしよう 現実的な交渉を始める。 いったん 「え 5 っと、部活の件は一旦置いておいて : : : そもそも、何でここに ? 」 けいこう 「我が校も少子化の煽りで、生徒数が減少傾向だったんだけれど、駅前の再開発の影響で、 ここ数年は生徒数が増えてるの。それ自体は結構なことだけれど、同時に、数年前から続 ふとうめい いている、部活動全体の不透明な運営が浮き彫りになってきたわ。私が今日ここへ来たの も、いわば査察のようなものね」 「・ : : ・とい、つとフ・ 「運動部は特に問題ないけれど、文化系の部活や同好会の数、さらには部員数が、正確に 把握できていないのよ。実質的に休部状態になっているのに、予算が計上されているとか、 同じような活動内容なのに、同好会が乱立していたりだとか。さらには、そもそも正確な かくみの 活動内容や実体が不明なんていうものもあるわ。悪質なものだと、他の部活を隠れ蓑にし て、不当に学校側から部費を得ていたりだとかね、 「 : : : なるほど。それは問題かも あお そ・つまか きゅうけつき えいきよう
やっ」 「あ、何度か・ りくっ 「いわゆるハ 1 プ水ってやつだよ。プーケガルニと同じ理屈で、事前に水にハープを漬け 込んで、さわやかな風味をつける。ジュ 1 スというには、水に近いし、普通に飲めば、単 にうまい水だと思うだろう。この場合、副会長は違和感なく口にすることに力を注いだだ きゅうけつき ろうから、俺もわからなかった。だが、漬け込んであったハ 1 プの調合は、吸血鬼には体 調不良を引き起こす : : : ってね」 「なるほど : がてん かんたん 合点がいき、えるるは感嘆したよ、つに頷く。 ざっきん 。圜会長はあの猫に傷つけられた俺の腕を見て、『雑菌が入らないように』と忠 ュ「それこ、」 ねんざ ラ告した。サポーターをして、隠してたのにな。普通は捻挫とか打ち身を疑うだろ ? わか 靴ってたわけだ : : : 最初から、俺が傷を負ったと 字 + 「認めたくないですが、見事な推理です。物証がなくとも、そこまでわかれば、あとは彼 あせ しかし、どうしてそこまで焦っているん 銀女の身辺を洗えば済む。直接問い質すのもいい。 です ? あとは私達に任せればいいでしよう ? 」 とちゅう しようすい 会話の途中も、緋水の顔には憔悴の色は濃かった。 ただ うで
170 そろ 「あら、二人お揃いなんだ。最近、ペア行動多くない ? 」 ほおづえっ 芽依も参加し、じと 5 っと頬杖を突いて見つめてくるが、緋水は相手にしない。 「仕事だよ、しーごーと。こっちはどうか知らないけど、俺はすぐ戻る。お前達は風呂で も入ってろよ」 「わかったわ。べッドで待ってるから、早く来てね ? 」 ・ : 今日は居間のソファーで寝ようかな」 芽依の艷つほい返しにばやきつつ、緋水はえるるを地下室へと案内した。 しよくだい 階段の時点で、照明が電球から古風な燭台に変わり、えるるも興味深そうに周囲を見回 している。 きゅうけつき 「いかにも : ・ : と言った場所ですね。ようやく、吸血鬼の根城に来た気分になりました 「昔の話だ。今は人間の家」 「今も吸血鬼はいるでしよう ? 彼女もここを ? じゅうじか 「十字架がぶつ刺さった地下に住みたがる吸血鬼が、どこにいる ? 最初は興味示してた けど、それ言ったら引き下がったよ」 くも 緋水の言葉に、えるるは顔を曇らせた。十字架が苦手なのは、彼女も一緒だ。 つや おれ いっしょ ふろ
224 くれたんだよ、ね : ・ 訊いても答えてくれないけど : 「助けたのは、お前だけでなく、私もだ。というか、そもそもアレは私をだな : 「え、ルシュラさんも関わってたの : とにかく、アイツは私のだ " 「いや、それは、その : ごういん ついきゅうかわ 何とか強引に押し切り、ルシュラは玲奈の追及を躱した。 くる どうも、彼女といると調子が狂う。 イしししね : 「そ、つ : ないがし 「フン、最近は私を蔑ろにしてばかりだ ! 」 「そう ? ずっと気にしてるけど : 「どうだかな。ところでお前、何故アイツを見ているとき、アイツが振り返ったらすぐ視 そ 線を逸らす ? 」 いや、それはその : : : ええっと : 「見たければ見ればよいし、何か言いたいことがあれば、一一一一口えばいいではないか ? あっさりと心の内側に踏み込まれ、玲奈は目を泳がせた。 きび ひんばん 人の心の機微に疎い吸血鬼は、わりと頻繁に直球を放り込む。 「私も : : : よく、わからないの。こ、つい、つこと、今までなかったし : かか ・そ、つい、つ、」と
162 ミラルカ ミラルカ : って洗濯の前に十回ぐらい心の中で唱えて、さら 身内の下着ったら、身内の下着 : ・ に極力見ないようにして、平静を保ってる俺の気持ちにもなれー 熱く叫ぶ緋水を、芽依はさらに茶化す。 しんぼうづよ 「辛抱強いわねえ。そっか、育ての親のも洗ってたから、多少は耐性があるってこと ? 」 きゅうけつき 「 : : : まあ。アイツの吸血鬼的かつアダルトめな赤や黒のに比べたら、ルシュラはまだ白 やピンク主体のかわいい系 : : 言い終わる前に、半泣きのルシュラに思いっきり殴られた。 あき すく はお 頬を押さえる緋水に対し、芽依とえるるは呆れたように肩を竦める。 : 今のは、完ツツツツ全にヒー君が悪いわよね」 「同感です。デリカシーないのにも、ほどがある」 よめ ・ : もう、お嫁に行けない : おお ダメ押しに、ルシュラがか細い声をあげて顔を両手で覆ったことで、さすがに緋水も非 さと を語った。 ・ : サーセンした」 ほこさきそ 頭を下げたが、女性陣の非難の視線は変わらない。ねめつく三対の視線の矛先を逸らす ばっぽん ため、緋水は抜本的な改革に乗り出す。 じん さんつい たいせい
していないでしようね」 かげひそ : この街にミラルカが来る前は、何かがいた。来て以降は、それは去ったか影を潜め た : : : そんな感じか ? 」 きゅうけつき 「しかしながら、もうその吸血鬼はいない。彼女が姿を消した時期ーーそう、あなたの中 学三年生の夏休みからー 緋水の顔色が変わった。 思い出したくもない光景が、目に浮かぶ。 とこ・つ 「あなたの渡航歴を調べましたが、中学三年の夏までは、ずいぶんと色んなところに行か れていますね。海外旅行というよりは、短期留学を繰り返していたと言ってもいい しか し、あなたは中学三年の夏から、この国を一歩も出ていない」 緋水は答えない。 経歴を調べられていることは、予測していた。えるるなら、それぐらいやるだろう。そ れは別に気にしていない えぐ きおく 問題なのは、彼女の言葉で抉り出されていく記憶だ。 ま , っ一」く 「最後に海外から戻ってきたとき、あなたは某国の大使館に保護され、第三国経由で帰っ とっぜんぼつばっ てきた。当然でしようね、あなたの行った国は、突然勃発した内戦で、混乱の最中にあっ さなか
「それで、何のようだ卩何故、こんなとこにいる 「それ、そっくりそのままお前に返すぞ」 街灯の下、見つめ合う二人。 どちらともなく、ロを開き、互いに同じ言葉を吐こ、つとしたとき かお のうみつ 濃密で甘い香りが周囲に満ちた。 空気までピンクに色づくような、甘ったるく毒々しい香り。 みわた 本能的に危機を察知し、緋水は周囲を見渡した。 ひとかげ 夜道に人影はない。 しようぜんたたず Ⅱ 悄然と佇んでいる。 ただ一人、古風な赤くくすんだロープを着込んだ影が、、 ア 7 右手にはく光る刀身のナイフ、そして左手には香りの元とおばしき瓶を携えている。 ラ「お前 : : : まさかク魔女気とか ? 」 ・ : あの姿とこの香り、覚えがある " 靴「気をつけろ : 字 十影はゆっくりと近づいてきた。 の 銀身構える二人。 きょ 虚を突くよ、つに、ク 魔女クが動いた。 きゅうけつき 吸血鬼とまではいかないが、少なくとも緋水よりは機敏な動きだ。 まじよ なぜ きびん びん
言ってから、やられたことに気づいた。 さわ 胸を触られて、さらに一番大事な部分を 「貴様アアアア " まくら 顔を真っ赤にしながら、ルシュラは緋水の枕を芽依の顔面目がけて投げる。 いかしんとう 見事にぶち当てられた芽依は、怒り心頭でさらに枕を投げ返す。 きゅうけつき : このエロ吸血鬼ー 「やったわね : ・ だま いんらん 「黙れ、淫乱フランケン ! 」 たが 互いにヒートアップし、部屋か殺気に満ちていく。 まもの ついに始まった、魔物最強決定戦。 げきとっ その激突の余波は、部屋全体を、否、家自体を揺らした。 てんじよう ひびしんどう 天井から響く振動に、緋水は目を覚ました。 じしん 揺れているのは天井だけだから、地震ではないようだが、一体上で何があったのだろう ? まなここす ばんやりした寝ばけ眼を擦っていると、体に毛布がかけられていることに気づいた。 ゅ
「というわけで : : : まあ、許してやって、くれ。謝ってる : 「あ、あなた・ : : ・一体・・ かんちが 「人間だよ、ただの。吸血鬼しゃない。アンタの勘違い。まあ、吸血鬼に首筋いじられた とこ見たら、誤解するか。日光も、それこそ魔女の軟膏的なもの塗ればいいし」 そ、つ。 全ては勘違い 見る者が見れば、自ずと気づくルシュラの正体。 まして、緋水は四六時中彼女と行動を共にし、さらに、希璃華の前では血を吸われる現 さら まもの 場も晒している。呪われた血の洗礼を受けた魔物として見られても、おかしくない。 きゅうけつき 「センパイの性格からしたら、学校にいる吸血鬼は : : : 当然滅ばすよな。まして、魔女な んだから。力も、あるん、だから。でも、どうもおかしい。猫を殺す意味は ? 文集を燃 なぜかだん やす意味は ? マンドラゴラは : : : そもそも何故花壇なんかに埋められてた ? 「それはーー」 ちゅうとはんば まじゅっ 「ルシュラは : : : 関係ない。多分、中途半端な魔術の使い手への警告。センパイは、ずつ じゃあく と前から、学校のために、動いてた。それで、イマイチ、噛み合わなかった。邪悪な魔女 と、思えなかった。おかげで、センパイと断定するのに手間取った : のろ おの まじよ ほろ ねこ
まい、事なきを得た。 このやりとりで体力を削られたルシュラは「結局気分が悪いのだと思われ、玲奈に近く の公園のべンチに座らされた。 ねっちゅうしよう 「大丈夫 ? 日傘差してるし、もしかして、熱中症とか ? 一応スポーッドリンク買って 0 たけ・ど : 「だから、お前がアレをしまえば済んだのだ : ぶつくさ言いつつも、ルシュラは受け取ったスポーッドリンクを口にする。 何気に、飲んだのは初めてだったりする。 「人間はこういうものを飲むのか。私はもっと甘い方がよいな」 つか 「ああ、疲れたときって、甘いものほしくなるものね 「うむ、甘い甘い血がな」 首を傾げる玲奈。 きゅうけつき 吸血鬼と聖女の本来ならありえない組み合わせは、やはりどこか噛み合わない。 / 、じよ、つ いっしょ 「今日は : : : 紅城君、どうしてるの ? 一緒に・ : 暮らしてるんでしょ ? まがものはんばもの 「 : : : 知らぬ。どうせ、あの紛い物や半端者と、デレデレしているのだろう」 かりや そ、ついえば、巣道さんとか、狩夜さんとかとも、仲いいよね。よく、喋っ ひがさ しゃべ