一人 - みる会図書館


検索対象: 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 2
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1. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 2

た。吸血鬼ならいざ知らず、人間のあなたは大変だったでしよう」 「戻ったとき : : : あなたは一人だった。記録上は出国も一人でしたから、当然かもしれま おもむ せん。しかし、一人でそんな情勢の不安な国に赴くでしようか ? たとえ出国記録に残っ どうはん ていなくとも : : : 保護者同伴だったのでは ? 」 保護者ーーそう、大分年上の身内がいた。 母であり、姉であり、誰よりも近い身内が。 「なのにーーあなたは、一人で帰国した。そして帰国したとき、出国のときにはなかった Ⅱ 荷物を二つ持ち帰った」 ア 「 : : : やめろ」 ュ きょだい じゅうじか つるぎ ラ「一つは、巨大な十字架。おそらくは、今あなたの家にある、あの剣。も、つ一つはーー・」 と「やめろ " 】」 するど だま 字鋭い声に、えるるはロを噤んだ。いや、黙らされた。 銀そんなーー・そんな声だった。 「そのへんにしておけよ。ストーカーよばわりされたいか ? 「 : : : 失礼。余計なことを言いすぎました。とにかく、この街には何かがある。あなたの つぐ

2. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 2

緋水が部屋の奥を指差す。 人一人を通すスペースを残して、ほば壁一面を覆う、大きな本棚。 ほば容量ギリギリまで本が詰め込まれているが、どれも背表紙が古ほけて変色しており、 破損している物も多い。 へいか 「これは : : : 閉架ですね。基本的に貸し出し不可、許可を取って持ち出すか、図書室内で えつらん の閲覧のみが許された本 : : 確かに、古かったり稀少な本が多いですが、ここに何 「違う違う、大事なのはこの裏」 ア緋水は本棚の後ろに回り込む。壁と接していないこの本棚の裏には、狭く暗いスペース ュが存在している。 「ここは、入るの初めてか ? 」 靴「ええ : : : でも、ほとんど物置き場ですね」 + えるるの言葉どおり、そこは整理がされていない、雑多な物置き場だった。埃が積もり、 のたんさくそうじ 銀探索も掃除も一苦労な場所だ。 「前に、委員長が何か先生から、ここにある古い資料を授業に使うってことで、お使いに 行かされてさ。一人じや大変だから、俺も手伝ったんだよ。で、そのときこのスペースの おお ほんだな せま ほ一」り・

3. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 2

「無駄に思い出すんだよ : : : 鍋だと、な」 よくよ・つ 抑揚のない声で言い、緋水は立ち上がった。 ぞうすい 「 : : : そろそろ、締めの雑炊といくか」 材料を取りに、台所へ向かう緋水。 その背を見ながら、ルシュラは彼の自分と出会う前の食卓に思いを馳せた。 多分ーーー今と、そ、つ変わりはない。 二人きりでーー差し向かいで食べていた。 誰と ? 身内と。 そだてのおや 吸血鬼と。 それが、一人になった。 その孤独を最も痛感する料理は何だろう ? きっとそれは、二人以上で食べることが前提の料理。 たとえば : : : 鍋料理。 新たな一人が、自分が食卓に加わってもーー緋水の孤独は晴れないのか なんじゃくやっ ・ : 軟弱な奴だな」 だれ こどく し

4. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 2

知の山田 ヴォルフォレカ 作品紹 - マ 目覚めたら、なせか魔界の四天王になっていた髙校一年生の 山田。元の世界に帰るためには、人抹殺計画を他の四天王 ( 人問だとバレすに ) と進めるしかない。さっそく人抹穀 寸画の会を進めるも、他の三人はやる気がなく・・・ 気付けば RPG ゲームをやっていたり、モンスターの恋愛相談 にのったりと、いつもグダグダで残念なことに ! ?

5. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 2

第一章魔物会議 にんか : っていうか、そもそもこんな部活、認可した覚えないけど ? 」 とつじよ いつものように、四人が「部室」で思い思いかっ怠府に過ごしていた矢先、突如部室を 訪れた彼女は、そう告げた。 しりめ むじひ キョトンとした表情の四人を尻目に、彼女はさらに無慈悲な言葉を紡ぐ。 わた せんきょ 「というわけで、さっさと明け渡してちょうだい。教室の不法占拠よ、これ ? 」 「何故だ何故我が部活が認可されていない ? まだ名前と何をするかが決まっていな いだけだぞ卩 「いや、その時点で、すでに部活はおろか、同好会ですらないから . 他の三人があえて一言わなかったことを、その少女はあっさり言ってしまった。 かみ ルシュラとはまた別種の威厳を放ち、ゆるやかなウェープのかかった髪をアップに束ね、 校則とファッションを両立させた見事な制服の着こなしのその少女は、校内の者ならば、 誰でも知っている。 生徒会副会長、羽乃希璃華。 おとず なぜ うのきりか

6. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 2

「 : : : 吸血鬼風情に、社会人の在り方を説かれたくありませんね。基本暗所にこもってい る、ひきこもりの元祖でしよ、つ ? 」 じよ、つ 「キャパ嬢からコンビニのバイトまで、夜型の仕事は一通り経験したらしいぞ。一時期、 ちょう 銀座の夜の蝶だったとか , その光景を想像したのか、えるるは言葉に詰まった。 かせ 証言どおりの美貌なら、さぞかし指名を稼いだことだろう。 コンビニのバイトにしても、防犯的にも、もってこいだ。たとえ強盗が銃を持ってきて Ⅱ も、確実に返り討ちにできる。 ア 「どんな吸血鬼ですか : ュ 本当に『真祖』卩あなたの同居人が聞いたら、目を剥き ラますよ」 げいごう 「吸血鬼といえど、生きてくためには資本主義に迎合しなきゃいけないそうだ。ムダに人 架 がんちく 字生経験も豊富だから、たまーに含蓄の深いことも言ってた。仕事に妥協がないことと、自 銀分の限界を知ることは、まったく別だとか」 とたん くさば かげ 「 : : : あなたが一言うと、途端に説得力がなくなりますね。草葉の陰で、身内とやらも嘆い ていますよ、きっと びぼ - っ ご・つとう

7. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 2

気まずそうに、二人は目を伏せた。 本当に、何やってんだろう。 じよ、つきよう びみよう しばらく微妙な空気が流れたが、緋水がルシュラのもっ瓶に気づいたことで、状況は一 変した。 「返せよ : 緋水はルシュラへ歩み寄り、ひったくるようにして瓶を奪う。 ていこ - っ けんまく きよっ その剣幕に、さしものルシュラも虚を突かれ、抵抗できなかった。 「質問を質問で返さないでよ。訊いてるのはこっちょ ? 「そう言われてもな : 考え込む美少女一一人。 すん それを、怪諷な顔で見つめる部屋の主。 というか、えるるを地下に案内し、戻ってきた緋水。 「 : : : 人の部屋で何やってんの、お前ら ? 」 ふ

8. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 2

第五章それはわが血の雫 明け亠刀。 ねしず 未だ人が寝静まるこの時間帯に、起き上がる少女がいた。 ろうか 足音を立てないよう、静かに廊下を進み、階段を上がり 求めるのはーー子作り。 すどうめ 巣道芽依、再び。 うむ ふろば ア風呂場での失敗を踏まえ、今度は有無を言わさず押し倒す。 のうさっ 7 「ふふつ、今度こそ、この勝負服でヒー君を悩殺しなきや D 、 キ ねまき ラそう艷つほく笑う芽依の寝間着は、ピンクのベビード 1 ル。 きよくたん せんじよう A 」 うっすらと下着が透ける扇情的なデザインに加え、下着も、また極端に布地が少ない。 架 よくじよ、つさそ さら しり一 かく 字 + ただでさえ肉づきのいい胸と尻をほば隠すことなく晒し、男の欲情を誘うための仕様。 銀ピンクのレ 1 スのプラとショ 1 ツは、今日のために新調した。 とど 一つ屋根の下で留まる今日こそ、悲願達成を狙う。 静かに、静かに緋水の部屋に近づき、ドアのノブに手をかける。 つや ねら お たお 目指すは緋水の部屋。 ひすい

9. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 2

みわた が、次の瞬間、はっと気がついて周囲を見渡すと : : : クラスの皆は、恥ずかしそうに顔 そむ を背けた。 男子生徒の数人は、何故か若干前かがみ。 女子生徒も、頬に手を当て、顔を赤らめている。 えるるも : : : 例外ではなかった。 芽依は芽依で、どこか感心したように、 ゆず ぜっぎ 「 : : : やるわね。舌戯は一歩譲るかもー つぶや と、呟く。 そして、クラスの良心とも一言える玲奈はーーー顔を真っ赤にして、しどろもどろの口調で ふつう 「え、ええっと : : アレ、だよね。その : : : 海外じゃ、普通だよね、こんなの ? 」 ・ : 多分ー とおえん そっきよう 今さらながら、ルシュラが遠縁の帰国子女という即興でぶちあげた設定が頭をよぎる。 「その、えっと、手当て : : : だもんね。それぐらい、やるよね : 絶対やらないと思う。 うなず だが、緋水は頷くしかなかった。 ほお じゃっかん

10. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 2

しゅんかん す。今この瞬間も出血は続き、じわじわと体力も削られています。彼の命はもってあと 一日かとー 感情を込めずに、結果は伝えられた。 し くじゅうか しかし、えるるの顔は苦渋を噛み締めていた。 芽依も同様だ。 きびす ただ一人、ルシュラだけが無表情のまま、踵を返してエレベーターに向かう。 おろ 「愚かな奴だ。下僕の自覚が足りん」 「ちょっとアンタ、いいかげんにしなさいよ ! 」 かた 駆け寄り、芽依が肩に手をかける。 しかし、ルシュラは振り・回こ、つとしない ふる ただ、肩を震わせるだけ。 ま . っ 「私の世話をり出して死ぬなど、許さぬ。生きて仕えることが、下僕の大前提なのだか らな」 おだま 真意に気づき、芽依は押し黙った。 げんきゅう 代わって、えるるがわずかな可能性に言及する。 やっ