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検索対象: 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 3
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1. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 3

大してカはこもっていないが、それだけに、地味にムカついているのがはっきり伝わっ てくる。 「な 5 んで、殴る ? 」 はださら おまえら 「うるさい、黙れ。大体、別に昼に肌を晒せなくても、問題はないのだ。人間は日光を尊 めぐ せま われら ひざ び、太陽の恵みこそが至高と考えているようだが、狭い考えだ。吸血鬼は確かに陽射しの 下を歩けぬし、日光のありがたみを知らぬが、その分ーーー」 「夜の美しさを知っている、か ? 。 ルシュラが振り向いた。 ア何てことのない動作なのに、思わず緋水は立ち止まった。 びぼう ュその月光のスポットライトに照らされる美貌、わずかな布地に覆われるだけの肢体、透 かんべき ラけるような白い肌ーー全てが完璧だ。 架夜がその美しさを引き立てる・ーーというよりは、夜こそが彼女のために存在しているか さつかく 十のような錯覚。 の 銀これが夜の吸血鬼の いや、彼女だからなのか。 夜の吸血鬼も、美しい吸血鬼もその人生で見慣れているはずなのに、だに夜のルシュ ラには、初めて出会ったときからーーー慣れない。 おお したいす

2. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 3

238 おそ 「続けて第二問 : : : 本当に恐ろしい魔物は、何でしよう ? 出題者は、俺じゃなくて、俺 の育ての親ーー「真祖」様だ」 「はあああああ」 れんさ 「食物連鎖の頂点に立ち、不老不死であるはずの吸血鬼ーーーその中でトップの『真柤』。 なのに、、 しつも恐れてた。何をでしよう ? 答えは簡単ーー人間です 遠い目で、解答を口ずさむ。 その深い憂いを込めた瞳に、蘭月も、いや、彼女だけでなく、えるるも悲しげな表情を 浮かべた。 かいぶつ 「変わんないよ、人間も魔物 : : : 怪物だよ、どっちも」 とびら それだけ言うと、緋水はこの部屋に入ってきたときの扉の前に立った。 じゅうこう そうこう 閉鎖区画にふさわしい、重厚な複合装甲。仮に内部で吸血鬼が暴れても、まず破壊でき そんな扉に。 そんな扉を。 なぐ 緋水は無造作にーーー全力で殴りつけたー ボコッと鍛い音がして、強固な扉はその全体にあっさりと罅が入った。 へいさ うれ はかい

3. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 3

のために引き金をひく。わかってて言ってるんでしよう ? 」 ワーウルフ じゅうだん 「そう思うんなら、銃弾より速く動いてみれば ? できるんじゃねーの ? 人狼なら ? それともムリか : : : 人の使いつばしりの警察大に落ちぶれた、大には ? 」 とも 蘭月の瞳の色が変わった。灯る金色の光。 同時に、彼女の衣服が爆ぜる。 むなもとこかん ぜんら 全裸ーーーには違いないが、胸元と股間の体毛は濃さを増し、新たな衣服に似た形で、彼 おお 女の肉体を覆う。 おおかみ アさらに手首から先の変化が著しく、肉球もある狼の腕と化し、爪もさらに伸びる。 7 尖った両耳、赤く長い舌、獣の瞳ーーー人の姿をした狼、あるいは狼の姿をした人、語り キ ラ継がれる伝説の魔物が、そこにいた。 げつれい ・ : あなた、本気で : 確かに、月齢は充分 : 架 十「ガアアツツツ , ほ - っ一っ 銀短い咆哮と共に、蘭月が緋水に襲いかかる。 それこそ、銃弾すら躱す速度で ! 「紅城さん " 【」 かわ いちじる けもの おそ の

4. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 3

もっと考えろ。 これまでのことを、全て。 あぶ 違和感を炙り出せ。 何か、きっと何かを見落としている。 最初から、全てをーー透子との出会いから、全てを。 「ど、どうしたのだフ 心配そうに、ルシュラが顔を覗き込む。 目が合った。 アそして、唇が触れ合うほど近く、緋水は顔を近づける。 ュ 「な、何をする卩 キ 「ーーーそ、つい、つことか = 一一口うや否や、緋水は立ち上がった。 架 十ちょ、つど、ハスが向こ、つからやってくる。 もど の 銀「早く戻った方がいい。手遅れになる前に」 「何か、わかったんですか ? たず ひらめ こういうときの緋水の閃きを、だれよりも知るえるるが、硬い表情で尋ねてくる。 ふ ておく のぞ

5. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 3

「いや : 「その : : : い つばい人の血を吸って、殺したり、下僕を作っていたら、どうする : 「あのファーガスという男と話して、少しわかった。少なくとも、私は十年前には : こんせき の世界にいなかった。痕跡もなかった。本当に、誰も : : : 私のこと知らないんだと、思 「そうとも限らないだろ。知られてないだけかも」 「でも、お前の知っている『真柤』と私は : : : 違うだろう ? 「まあ : 「やつばり、私は・ : 私じゃなかったんだと、思う。前は、違う誰かで、違う何かで : : ・それが全てを忘れて、今の私になった。もしかしたら、顔や体も違ったのかもしれな 霧になれる吸血鬼がいるんだ、それぐらい : : : できるかもしれないだろう ? 」 「かも、な」 緋水は否定できなかった。 自分自身、「真祖」について全てを知っているわけではない。 ミラルカはーーーあまり多くを語らなかった。 きり

6. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 3

232 さあ、下賤な者など放って参りましよう。よい店を見つけました」 ざんぎやく 芽依と希璃華に向ける残虐な表情とは真逆の笑顔。 本来なら、対応は決まっている。 その顔を張り飛ばして、三人で吸血鬼を蹴散らす。 だがーーー・できなかった。 いけないこと、間違っているとわかっているのに、眼前のファーガスなる男の申し出に、 惹かれている自分もいる。 「行けば ? 」 アッサリと芽依が言った。 なや くのう 何悩んでんの ? と、ルシュラの苦悩など、どこ吹く風な目だ。 「お前 「何か、アタシ達が足手まといみたく思ってない ? 話を聞きたいなら、行けば ? その うえで、気に喰わなかったら、ぶっとばしなさいよ もど 「記憶 : : : 取り戻したいんでしょ ? なら好きにすればフ ひ ただし、自分の意志で行った

7. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 3

第四章起き抜けの悪夢 緋水が外に出ると、ルシュラは案外簡単にーーー見つかった。 宿から通りに出て、海沿いの道を歩いている。 きが ただし、服装は湯上がりの浴衣ではなく、どこで着替えたのか、昼の水着姿だ。 ぎわ すなはま 走って追いついたとき、彼女はもう砂浜に出て、波打ち際を歩いていた。 かりや 「そんなカッコで、海水浴でもする気か ? 狩夜みたいなことになるから、やめておけよ ア「・ : ・・・うるさい」 おほ : 溺れたら助けられないぞ。俺も、それほど泳 7 「夜なら、水着でもオッケーだろうけど : ラぎが得意ってわけじゃないし」 だま 靴「 : : : 黙れ」 字 + かすかに響く波の音を聞きながら、何となく : の ・ : その、アレだ」 銀「あ 5 「何だ ? 「その : : : 悪かったよ」 ひすい いっしょ ・一緒に歩き出した。

8. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 3

118 す。 少しでも克服したいから。 まずは、顔をつけるところから。 呼吸を整えて、気分を落ち着けて、リラックスして 「 : : : 一体いつまでやってる気 ? ー ささや 耳元で透子が囁いてきた。 といき さらに、ふうっと吹きかける吐息。 さ ゅうれい 幽霊の吐息は、そのままかすかな冷気となって、緊張の頂点にあるえるるの耳を突き刺 「ひっ : くず ゾクゾクと背筋を冷たいものが駆け抜け、えるるはバランスを崩してしまう。 かくご 覚を決める間もなく、その小さな体は海に投げ出された。 そしてーーー不意に来る、大きな波。 ツツツツツー 声も出せずに、えるるはそのまま波に呑み込まれた。 かんしよく 常人にとっては何てことのない、むしろ波の感触を楽しむ程度の衝撃は、彼女にとって つなみひってき は津波に匹敵する。 こくふく か の きんちょう しようげき

9. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 3

かすかに香る、潮の香り。 もとさら 海から来た柩が、その中身を今白日の下に曝け出す。 いっせい しんちょう 慎重な手つきで蓋が外されーーー職員達は、一斉に距離を取った。 おくびようかぜふ 臆病風に吹かれたのではなく、それは最初からえるるに厳命されていたことだろう。 きょ・つい それは、中にいるモノの脅威から、少しでも犠牲を少なくするために。 「あれ : 中には、何もなかった。 しんじよ ねごこち 確かに吸血鬼の寝所として、寝心地のよいクッションが敷かれているが かない : 空つほだ。 完全に えるるは無表情のまま立ち尽くし、職員達も、顔を見合わせて首を傾げている。 かくにん ただ一人、緋水だけが前に進み出て、柩の中身を確認した。 だれ 誰も止める者はいない。 ヾ、」ヾゝ かお っ ぎせい きより し かんじん 肝心の中身

10. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 3

・ : そんな感じがするのよ」 だ吸血鬼になった : 芽依は、否定はできなかった。 しょ - っこ こうてい もちろん、肯定する確固たる証拠もない。 しかし、眼前の「真祖ーたる吸血鬼は、はしゃぎながらケーキを皿に取っている。 これまで生きてきた人生など感じさせず、その失われた記憶の断片をまったく垣間見せ ほころ ず、ただ年頃の少女がそうするように、甘味に顔を綻ばせている。 硬い表情のまま、希璃華は紅茶を口に運ぶ。 まじよ たゆたう湯気の中で、彼女は目を細め、「魔女」としての鋭い視線でルシュラを見定め 「一体 : : : あなたはどこから来たの ? る。 「ーーーでは開封作業に移りますー 警視庁の地下で、厳かにえるるが宣言した。 それに呼応して、機動隊の防護装備を着込み、工具を手にした職員達が柩を囲んだ。 かいふう おごそ するど だんべん