ちゅうかく おぼ ゆくえ かってのオカルト研究会の中核メンバーと思しき生徒達は、全てが行方不明となってい きょひ かくにん しっそう る。失踪、転校、登校拒否ーー全ての事例を確認したわけではないが、透子の言葉を信じ るならば、おそらくーー皆、咬まれた。 じよじよ のっと 「現代の吸血鬼にとって、古式の礼に則って、一人ずつ、数日の間を置いて徐々に血を吸 けんぞく 、つとい、つのは、非宀吊にハ ードルが高い。周囲に気づかれる危険も高いですし、眷属に加え いん。へい ず吸い殺せば、死体が残る。その隠蔽も、それなりに骨の折れる仕事です。ですが、高位 から な吸血鬼ほど、それに固執する。おそらく、魔眼による精神操作を絡め、徐々に彼女達が あや そとぼりう 失踪しても怪しまれぬよう、外堀を埋めていったのでしよう」 調べた中核メンバーのデータ、そして自身の知識から、えるるが吸血鬼の所業を推理し ていく。 こうてい うなず 透子は頷き、えるるの言葉を肯定した。 : なんだと、思う。気がついたら、あのとき浜辺で彼と出会った中で残ってたの 「そ、つ : うめぼ は、私一人だけだった。自れじゃなくて、気に入られてた : : : みたい。だから、最後に とっておいた : : 私の血を吸おうとしたとき、そう言ってたわ」 部室に重い空気が満ちていく。 むご しゅんかん たず 死者に命を失うその瞬間のことを尋ねるーーーこれ以上惨い仕打ちが、あるだろうか ? こしゅ・つ
中から芽依を吐き出した。 「ええつつつつ卩お前、いっからいたの シチュエーションがシチュエーションだけに、夜這いを 「この娘が来るちょっと前よー ねら 狙ってたんだけど、うつかり寝過ごしちゃって、朝這いになっちゃいました D みたい な ? 「みたいなじゃねーし ! 何考えてんだ、お前卩」 「あらあ、そんなの決まってるじゃない ? 子・作・り D 」 艶つほく笑い、芽依が密着する二人に割って入る。 す Ⅲ こちらは浴衣姿ではなく、持参したベビードール姿だ。うっすらと透けて見える下着は、 ア せんじよう ュいつものように布地が少ない、扇情的なもの。 ラ「 : : : というわけで、アンタどいてくれるフ だれ 靴「誰がどくか ! コイツは私のモノだ " 【」 めぐ げきとっ きゅうけつき 字 + 緋水の体を巡り、激突する吸血鬼と人造人間。 の だきよう 銀だが対決がなされる前に、 今日は芽依から妥協案が出た。 「どうかしら、お互い求めるものも違うわけだし、分け合うということで。あなたは首か らヒー君の血をおいしく頂いて、私はヒー君の下半身を、おいしく頂くということで つや たが
がいなくなって、おかしいって、気づいてた。それで、必死に自分を保とうとしてたから、 ていこう 抵抗できたんだと思う。相手が吸血鬼だってこともわかってたから、私 : 「あえて誘いに乗って、友達の仇を取ろうとした : : かな ? 」 コクン、と透子が頷く。 友人の仇討ちのため吸血鬼退治に挑む、勇ましい少女ーーしかし、現実は無常だ。 今透子が、こうしてここにいる事実が、その吸血鬼退治の結果を物語っている。 じゅうじか 「色々準備してたわ。白木の杭とか、十字架とか。でも、結局奪われて、海に捨てられて も・つろ・つ ・ : 血を吸われてしまった。意識が朦朧として、抵抗 : : : できなくなった。それでも、そ っ れでも : : : 最後のカで、彼を突き飛ばしたわ ! そしたら、彼は : し 透子が自分自身を抱き締める。 死の寸前、目に焼きついた吸血鬼の顔。 あなど ちょうしよう それは、人間を侮り切った嘲笑だった。 たんせい ぶべっえ 端整な顔に侮蔑の笑みを浮かべ、彼は自分を見ていた。 よゅう 「余裕たつぶりな顔で、突き飛ばされた勢いで : : : 柩に入ったの。あの柩よ。船に運び込 んでたの。ワインを飲んで、多少酔っていたかもしれないけど : : きっと、わざと入った んだと思う。からかうために。こうしたいんだろ ? って、私に見せつけるように : だ かたき よ
「、つう、つう : : : それは・ : あ、そうだ、まだ借りた『でいーぶいでいー』はあるでは ないか ! ロ直しも兼ねて、それを観よ、つ ! そ、つしよ、つ " 「一週間レンタルだから、まだまだ余裕じゃん : : : っーか一人で観ろよ : 「よいではないかー さあ、付き合え " 】」 かんしよう : ・結局、そのまま居間に引きずられ、緋水はルシュラの映画鑑賞に付き合わされる破 目になった。 そうにゆう 新たな Q>Q がプレイヤーに挿入され、画面に映し出される。 しゅうばん ひびわた そしてその終盤ーー再び、居間に悲鳴が響き渡る。 「ひ ツツツツツツツツツツツツツツツツツツツツツツツツ・」 ア 「 : : : またかよ」 ュ ためいきっ ラ腕にしがみついてきたルシュラに、緋水は深く溜息を吐いた。 やしき A 」 「だ、だってアレ : : 一体何なのだ、不気味な屋敷に現れる、あの血まみれの不気味 架 とうとっ 字な女と、唐突に現れる白塗りの子供は卩」 の : カ〇コさんとト〇オくんじゃねーの ? っーか、またホラー何でロ直 しにさらなる恐怖を求める 「だ、だってこんな話だと思ってなくて : か しろぬ よゅう
め 開始直後からの変わらぬペースに、向かいの席に座る芽依と希璃華は辟易していた。 「よっくそんだけ入るわねえ : : : 何、吸血鬼って甘党なわけ ? 」 ちゅうすうこわ 一口いこいけど、吸血鬼ならそれもな 「満腹中枢壊れてるんじゃない ? 太るわよ : いか」 かたすく ていかん どこか諦観を漂わせ、芽依と希璃華は肩を竦めた。 こちらは皿に載るケーキの量も人並みで、ケ 1 キの魅力を感じつつも、体重維持のため に食欲を抑えている。 「何故かは知らぬが、私の体が甘味を求めているのだ。もっとも、一番甘く感じるのは、 のどかわ やはり血だがな。喉も渇いてきたし、できればこのあたりで : くちびる 唇の周りについた生クリームを舐めとりながらの舌なめずり。 ルシュラ 吸血鬼がやると、実に生々しいのでタチが悪い 「ちょっと、こんなとこで本性出さないでよ。飲み物なら、ジュースとか紅茶がいくらで もあるし」 「ケーキとは合わないと思うけど。それとも、吸血鬼の味覚は、やつばり違うのかし ら ? 」 いやみ 嫌味交じりに言う希璃華だったが、ルシュラはまともに受け取った。 おさ ほんしよう な みりよく きりか へきえき
238 おそ 「続けて第二問 : : : 本当に恐ろしい魔物は、何でしよう ? 出題者は、俺じゃなくて、俺 の育ての親ーー「真祖」様だ」 「はあああああ」 れんさ 「食物連鎖の頂点に立ち、不老不死であるはずの吸血鬼ーーーその中でトップの『真柤』。 なのに、、 しつも恐れてた。何をでしよう ? 答えは簡単ーー人間です 遠い目で、解答を口ずさむ。 その深い憂いを込めた瞳に、蘭月も、いや、彼女だけでなく、えるるも悲しげな表情を 浮かべた。 かいぶつ 「変わんないよ、人間も魔物 : : : 怪物だよ、どっちも」 とびら それだけ言うと、緋水はこの部屋に入ってきたときの扉の前に立った。 じゅうこう そうこう 閉鎖区画にふさわしい、重厚な複合装甲。仮に内部で吸血鬼が暴れても、まず破壊でき そんな扉に。 そんな扉を。 なぐ 緋水は無造作にーーー全力で殴りつけたー ボコッと鍛い音がして、強固な扉はその全体にあっさりと罅が入った。 へいさ うれ はかい
第六章最強の魔物 にちぼっ 「 : : : まずいわね、も、つ日没よ」 みわた きりかまゆひそ 希璃華が眉を顰め、周囲を見渡す。 すでに日は落ち、辺りは暗い。 吸血鬼の時間が、来る。 くじよう れんらく 「紅城君達との連絡、取れないの : たんさく ア「ムリつほいわね : : : 電波自体、届いてないかも。で、探索の結果はどうだったのよ ? ュ ・ : 来る」 キ おもも 1 、こ、ルシュラは硬い面持ちで答える。 ラ再度電話をかけていた芽依のしし 今し方、一匹の大が、敵の来訪を告げた。 架 おび 字 + 言葉はわからずとも、怯えきった表情、激しく振られるしつほで、何を伝えたいか想像 の 銀がつく。 「去れ」 しもべ 魔眼を解除し、ルシュラは全ての下僕達を退かせる。 まがん びき め すべ
148 で相談し合う中、透子がまた悪戯つほく笑う。 「ええっと : : : あの、今私がこうしてるってことは、緋水君はもう、自由の身ってこと よ ? そもそも、長時間操るなんてムリだし」 「何卩」 言われてみて、気づいた。 えいきよう 確かに、もう透子は緋水の体から離れているわけだから、緋水の体が影響を受けるはず もない 緋水の左手は、未だルシュラの胸を掴んでいた。 受けるはずもないのに 「あ」 緋水もようやく現状に気づいた。 かくご そして覚語して、目を閉じた。 さよ、つなら、俺。 おおばかもの 「この大馬鹿者 " 【」 すなはまふ たた ようしゃ 容赦ない拳が顔面に叩き込まれ、緋水は無様に砂浜に伏した。
ゅうれいさわ 「 : : : で、その幽霊騒ぎは、週明けでも続いてるの ? 」 Ⅲ 「 : : : うん。日のあるうちはほば気配を感じないそうだが、夜はヤバイとか , ア 月曜の放課後、例によって「部室」でだらける緋水。 ュ かたわ ラ傍らには芽依が腰かけ、ホラー映画の鑑賞から始まる、ルシュラの幽霊騒ぎの順末を聞 といていた。 ゅうれい : アンタ、ホントに『真 字「吸血鬼がホラー映画に法えて、さらに幽霊にビビる、ねえ : 祖』様 ? 」 「黙れ、悪いのはあんなものを作る人間だ ! 本物の幽霊や魔物より、よっほど怖いでは ほろ おそ しし何故人間は自分を滅ばしかねん、恐ろし ないか ! テレビで観た『かくへーき』とゝ ・つていうかやめろ、吸うな " 「いや、それは、さすがに、その : ふふはひ 「、つるさい、黙 ルシュラの吸血は、それからもしばらく続いた。 平日と変わらす、目覚まし代わりに地味な激痛で叩き起こされる、それが紅城緋水の休 日である。 おび なせ た お まもの くじよ・つ てんまっ こわ
「あ、バレた ? 「逆にバレないとでも何コレ : : : どうなってんのフ ひょうい 「いわゆるク憑依クよ。何か試したらできちゃった。女の子達はムリつほいけど、緋水君 だけは知みたい」 「何それ : : : ガチで取り憑かれた もっ 「うーん、でも、せいぜい左半身乗っ取って、片言を喋らせるぐらいが限度みたい。 と練習してみるね D ー 「やめてくれません、かわいく控えめな笑顔でプラックなこと一言うのっーか、何でこ んなことしたんスか」 なぜ あやっ 「そうだ、こやつを操るだけならまだしも、何故私の胸を揉ませる津 おそ はまべ 「見ててじれったいのよあなた達。夜遅くに浜辺で二人きり : ションで、どうしてもっと盛り上がらないかな ? 特に緋水君・ 「いや、俺は単に迎えに来ただけだし : しんけんれんあい 「折角生きてて、体もあるのに、どうしてもっと真剣に恋愛しないかな ? 死んでからじ や遅いのよ ? 」 「いや、はあ、まあ : むか ため しゃべ : こんな素敵なシチュエー すてき