「 : : : 何でお前がいるフ 夜、ダイニングテープルで向かい合う二人。 ルシュラと芽依。 緋水とえるるが去り、授業が終わった後ーー芽依はそのままルシュラに同行し、家に上 かった。 特に会話もないまま、芽依は夕食の支度に移り、今テープルには、焼きあがったビーフ ステーキと付け合わせの温野菜、そしてサラダとコンソメスープが載せられている。 ちなみに、ちゃんと二人分だ。 「アタシだって、ヒー君もいないのに、好きで来てるわけじゃないわよ。言ってみれば、 かんし アンタの監視。アンタ、自分の立場自覚しなさいよね。人の血を吸って吸血鬼化させた以 上、アンタは人間で言うところの、犯罪者なワケ。留置所にぶち込まれるかわりに、これ 「 : : : ど、つする ? つぶや いに、芽依がルシュラを見つつ、無愛想に呟いた。 希璃華の尸 「とりあえず : : : アタシが引き受けるわ
反論され、芽依も考え込む。 まじめ やがて、真面目な顔で彼女は切り出した。 : ェアセッ〇ス ? 」 「お前、女じゃなかったら腹にグーパンかましてるぞ : 顔を引きつらせる緋水。 しかし、芽依はやれるもんならやってみろ、と腹部を曝け出す。 、リこ ? 壊れるのはヒー君の拳だから。アタシが本気で腹筋を固めたら、木 「いーわよ号。 よゅ・つ 製バットぐらいなら、余裕でヘし折れるけど ? 」 だいたん プラジャーが見える寸前まで制服のプラウスをたくし上げ、大胆に腹部をあらわにする。 はだ 腹筋のラインは見えないなめらかな肌だが、芽依の言葉どおり、本気を出したときにそ の硬度がどうなるかは、容易に想像がついた。 「 : : : ですよね 5 ) 青ざめる緋水。 忘れていた。 けんか 喧嘩を売ったところで、勝てないどころか、そのまま押し倒されて、べッドに引きずり 込まれて、大切な何かを失うのが関の山だ。 こ、つど こわ さら たお
228 「アンタさあ : 「何だ ? 夕食の準備をする芽依を横目に、ルシュラはダイニングテープルに突っ伏している。 芽依の作業はまったく手伝わないが、ヒマを持て余しているのか、近くにはいる。 「血 : : : 飲まないでいいワケ ? ヒー君の : : : とってあるんでしょ ? 芽依が、冷蔵庫の横にある、もう一つの小型の冷蔵庫を指差す。 ひつじゅひん 吸血鬼、もしくはダンピールのいる家庭の必需品ーー輸血用血液の保管用冷蔵庫。 : っていうかさ、吸血鬼って、輸血用の血液で満足できるんなら、人襲わなくてよく なし ? 面倒ないし」 かわ すさ 「一応渇きは癒えるが、凄まじくマズイのだ ! 一度味見をしたら、吐きそうになったー 緋水のとて、それは変わらん。私が求めるのは、直接吸う生き血だ。それも首からのなー 他のところから吸うと、まあ輸血のやつよりはマシだが、やはり満足せん ! 」 「 : : : 勝手な言い草。美食家のエゴにしか聞こえないけど ? 」 「人間とて、生命維持に必要な分だけでなく、美食に走るではないか ! その気になれば、 『さぶりめんと』だけでもどうにかなるのではないか卩」 めんどう おそ
「何がよ ? 「こんなのは、イヤ、だ : ・ : あんな緋水は、イヤ、だ : さみ 寂しげに、ルシュラは目を伏せた その普段の勝気な表情とは真逆の顔に、それ以上芽依も追及しない。 「吸う前に気づきなさいよね。やつばり、ヒー君はうちで引き取ろうかしら ? 」 「今のアイツは、なりかけなのだぞ ? というか、お前は、その : : : 人間と、子作りがし たいのであろう ? 今のアイツとじゃ : いや、いつものアイツも、どう考えても普通の 人間じゃない。なのに : ・いいの , 刀フ・ ア一転して攻めに転じるルシュラ。 っ くちびるとが ュ 芽依も痛いところを突かれたのか、唇を尖らせる。 キ 防「まあ : : : そう言われると、ね。本人はただの高校生 5 とか言ってるけど、どう考えても 靴それはないわ , 字 + 「 : : : だったら」 の おどろ 銀「けど : : な 5 んか、それでもいいっていう自分がいるのよね。アタシも驚いてるんだけ ど。けど : : : それが、ホントの恋ってャツなんじゃない ? 理屈じゃなくて、不合理で不 条理で : ・ : それでも、彼の子を産みたい D 的な ? せ ついきゅう りくっ
以上余計なことしないよーに、アタシが看ててあげてんのよ。感謝なさい 「誰が : プイツとそっほを向くルシュラ。 芽依は鼻を鳴らし、食事に入る。 ひろう うでまえ 「せつかく作ってあげたんだから、食べたら ? ヒー君に披露するはずの腕前を、何でア ンタなんかに、とは田 5 、つけどね」 「別に、頼んでない ぶつくさ言いつつも、ルシュラは食事に手をつけ始めた。 Ⅳ が、肉を一切れ口にしたところで、彼女は顔をしかめる。 ア にくじゅうに ュ 「 : : : 焼きすぎだ。肉汁が逃げているー キ ラ「黙んなさい、私はこれぐらいがちょーどいーの 靴「サラダも、イマイチだ。緋水の方が美味しい」 字 + 「その美味しい料理を食べられなくしたのは、どこの誰よ ? 」 の 銀痛切な皮肉に、ルシュラが口を噤む。 たた 芽依はさらに畳み込む。 : っていうかさ、血を吸うとき、いつものヒー君じゃないって、気づかなかったワ たの つぐ み
ウエレフィカが静かに問、つ。 きおく へんぼう この場で唯一ミラルカと面識があるだけに、余計に記憶の中にいる、彼女の変貌が気に なる。 「情が移ったのだろう。ただ、それだけだ。取るに足らない人間に、心を奪われた。それ だけだ。大きなことをほざいたわりに、つまらぬ女だな」 おとし しんらっ 言葉は辛辣だが、貶めるような口調ではなかった。 あいせつ むしろ、哀切と共感が宿っている。 「情が移ったのは : : : 彼女だけ ? ヒー君も : : : じゃ、ないの ? 」 きび さと ア男女の機微に聡い芽依が、無表情でばやく。 うすうす ュ ライバルは、ルシュラではなく、むしろミラルカーーー薄々感じ取ってはいたが、どうも キ ラそ、つらし、 架「かもな。だらしない奴だ、死んだ相手のことを、いつまでも引きずって。アレだ、『み 字 + れんたらたら』なのだ ! の ていない 銀明るく締め、ルシュラは邸内へ向け、歩き出した。 芽依とえるるも、ウエレフィカに一礼し、後に続く。 「また、いつでもいらっしゃ い。いつまでお相手できるかはわからないけれど、命が続く し
「じゃあ、そっちは私が行くわよ。アンタは他あたってー 「命令するな ! 」 たんさく ぶつくさ言いつつも、ルシュラは指示に従い、家の中の探索に努めた。 芽依もまた、地下に下りてもう一人の緋水を捜し求めたが : : : 当然というか、見当たら しいて異変を挙げれば、見つからない。 「あの剣 : : どこ行っちゃったのよ ? 」 めぐ 書斎らしきスペース、広い書庫、保管庫にワインセラー、地下を巡っても、緋水が時折 ア持ち出す十字聖剣ツアラブレイドは、どこにも存在しなかった。 ュ床を注意深く見れば、おそらく突き刺さっていたであろう位置は見当がついたが、それ 一フ、よ」亠丿、、、」 0 架当の剣本体は、どこにもない。 だれ 字 + 「持ち出した : : : 誰が ? やつばり、ヒー君 : の 銀答えは出ぬまま、芽依は地下を後にした。 夜も更け、向かうのは : : : 緋水の部屋。 本人はおらずとも、彼の家に来たからには、眠るのはここしかない。 しよさい ゆか ふ ねむ
かんき 起こさないように、そっとべッドから脱け出し、窓を開けて換気する。 しんせん 飛び込んできた新鮮な空気に、ようやく体調も正常になってきた。下半身の疼きも落ち 着いてきた気がする。 おおごと このまま大事にならないうちに、バックレたいところだが、 さすがに大分乱れた格好の 希璃華を放っておく気にはならなかった。 ちゃんと、寝かせておくぐらいはしないと、バチが当たる。 「 : : : セクハラじゃないので。あしからず」 かみ いいわけするように呟き、希璃華の乱れた髪を整え、そっと体に毛布をかぶせる。 Ⅳ ア こうしてみると、ある意味周囲の女性で一番色つばい気がする。 つや ュ年上、ということもあるが、ルシュラや芽依にはない、艶のようなものを感じる。 ラ正直、先ほどはマジで危なかった。 架「 : : : もったいないよ、俺には 字 十しみじみと言ったところで、部屋のドアが、ノックもなしに開いた。 の そろそろ帰る : : って、何をしている」 部屋に入ってきたルシュラが、ビシッとこちらを指差す。 後ろには、芽依とえるるもいた。 うず
なのに : : : 体に力が入らない たお せま 迫ってくる希璃華に押し倒される形で、ドスン、と体がべッドに投げ出される。 日常的にルシュラや芽依に押し倒されているだけに、今置かれている現状が、いつもと 違うことは理解できた。 うん、コレはガチだ。 「せ、センパイ : うすむないた ムニュッと希璃華の胸が、自分の薄い胸板に当たる。ルシュラや芽依には及ばないとは しえ、ポリュームは申し分ない。 あわむらさき Ⅳ 胸元から覗く品のいい淡い紫の下着が、よく似合った。 ア から 細い脚が、体に絡まる。 ュ かみ ラそして、きちんと束ねた髪が、解かれる。 とゆるやかなウェープのかかった髪から、シャンプーの匂いがした。 ただよ 字 だが、もっと濃厚な香りが部屋には漂っている。 十 こわく 銀甘くて、蠱惑的でーー理性を失わせる香り。 よくよく見れば、希璃華の表情がおかしい しようてん のばせたように真っ赤で、目も焦点が定まっていない。 のぞ のうこう およ
一部本当だから、性質が悪い。 う、ウソよ紅城君 : : : あなたは、私と付き合ってたわ ! 」 「ちょ、ちょっと待ちなさいー 芽依とは反対の腕に、自分の腕を絡ませる希璃華。 芽依をたしなめるものの、やってることは変わりない。 ふたまた 「え、何、どゅこと : : : 一一股 ? 」 「ち、違うわ ! この間なんて、私の家にも来たんだから ! そして、私の部屋で : : : 」 「え、何 : : : 部屋で何があったの卩 答えを求め、尋ねるが、希璃華は顔を赤らめるだけで、答えようとしない。 Ⅳ 也の面々も、事実ではあるため、否定しない。 ア 7 「ちょっとどうなってんだよ俺の高校生活 : : : 特段波風立てず、ごく普通に生きてるつも ラりなんですけど : レ」 「あ、実は私と付き合ってるんだよ ? 」 架 字 + 混乱に乗じて、透子も加わった。 銀両手を黐われている緋水に対し、背後から抱きついて、首に両腕を絡ませる。 俺は、死人にまで手を : しいじゃない、恋に生死の差なんて。幽霊でも恋がした 「あ、傷つくなあその表現 !