紅城 - みる会図書館


検索対象: 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5
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1. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

「まさか : : : その心臓って : 「紅城君の、体に・ 「その通りです。女の臓は、紅城さか移杣もれている。かって海外で重傷を負った ますい 彼は、心臓に大きな損傷を受けた。助けるには、それしかなかった。麻酔なしの手術だっ たようですが、当時の紅城さんには、自分が何をされたか、自覚する余裕はなかった。で きゅうけつき すが、おほろげな記憶はあったそうです。胸に今も残る傷、吸血鬼化を無効化する体質、 あと そして止まった心臓を必死に動かそうとする、彼女の記憶。手術痕と、心臓のエコ 1 から、 わたし まちが 紅城さんが手術を受けたことは間違いない。彼はダンピールとも違う、吸血鬼の力をその ア身に宿した人間なのです、 ちんもく 7 その言葉を最後に、重い沈黙が流れた。 キ 皆、次に言、つべき言葉はわかっている。 と 架体外にある心臓、それが活きているから、本体たるミラルカもまた、かろうじて生きて 字 十いる 銀不死身の吸血鬼だからこそ成し得る、か細い生命維持。 しかし、そんなものが永く続くはずもない。 かく 「今の彼女は、核を抜かれた空つほの体です。まさしく、『真祖』だからこそ、かろうじ みな

2. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

「あの女 : : : ど、つしてくれよ、つかしら卩」 かた 芽依が、肩を押さえながら希璃華達に近づく。骨折や脱臼は免れたが、節々が痛くてし よ、つかないよ、つだ。 「正直、戦闘では勝ち目がなさそうなので、やめた方が無難です。真偽はさておき、能力 が『真祖』級なのは確かでしよう」 「えるるちゃんは、ヒー君の言葉、信用するわけ ? 」 「信用も何も、私達がミラルカなる吸血鬼のことを知らない以上、本物と偽者の区別など、 もはや つけようがありません。紅城さんに見分けられないとすれば、最早真偽を確かめること自 体が無意味です。それに 「それに ? 」 「仮に偽者だとしても、紅城さんにとっては、どうでもいいことなのかもしれません」 「 : : : かも、ね」 しんみりとした、そしてどこかしげに芽依が天井を仰ぐ。 ミラルカといるときの緋水は、ルシュラと同じーーあるいは、それ以上に楽し気だ。 「で、パソコンで何やってんの ? 」 「仕事です。紅城さんにも意見を訊きたかったのですが、今の彼からはバイアスのかかっ せんとう くや てんじようあお だっきゅうまぬか しんぎ にせもの

3. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

しさとい、つわけか」 おおぎよう ミラルカは、 , 人仰に首を振る。 他の者が言えばただのナルシズムの極みだが、彼女が一言うと、まったくもってそのとお タチ りだから性質が悪い となり 押し黙る緋水を見かねたのか、隣にいた参観者の一人が、ロを挟む。 ど、じよ・つ ・ : 紅城さんの : 「ええっと : : : ずいぶんと、お若いのね。あの、え 5 っと : あいそ 断定しかねる相手に、ミラルカは愛想笑いを浮かべ、サングラスを外した。 「母です」 ア ュ ラ「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤ、それはムリ " とさすがに、そこは緋水が大声で否定した。 字母親代わりには違いないが、これ以上話をややこしくされたら困る。 ままはは 銀「待て緋水、継母とかそういう設定ならば、アリだろう ? 「いや、うん、まあ : 「あれ、紅城君 : : : ご両親、亡くなったって :

4. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

こうい ともな 血を吸うという行為には、少なからずリスクが伴う。失血死、血管損傷、そして、体育祭 きゅうけつき のときのような吸血鬼化。吸血鬼と人間が接するというのは、そ、ついうことなんですよ えるるの一 = ロ葉は、自分自身に向けているようでもあった。 彼女とて、吸血鬼の血を引く身だ。 ルシュラへの言葉は、吸血鬼化以外は、そのまま自分にも当てはまる。 「 : : : わかっている。だから : 「離れた、と。ですが、それはそれで迷惑です。どちらにしても迷惑をかけるのなら、せ めて、紅城さんの望む方にしたらいかがですフ 7 「紅城さんの血を吸うのがイヤなら、冷蔵庫に輸血用のものが冷えていますよ ? あなた キ どろみず 防からすれば泥水以下の味でしようが、飲めば当座の危機は凌げます、 架「いらぬ : 字 ルシュラは首を左右に振った。 十 あご 銀えるるは目を細め、芽依と希璃華も、飲んどきなさいよ、と顎で台所の方をしやくる。 しかし、ルシュラは動かない。 駄々をこねているのではなく、彼女なりに自分の体調は自覚していた。 だだ しの

5. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

全に密閉される。 とある一件で、その傾向はさらに強まり、警備もより厳重さを増した。 わた にんしよう しもんも - つまく カードキーに指紋や網膜の照合、幾重にも亘る認証を経て、えるるは警視庁地下の最下 層区画に辿り着く。 、、ナど、一人の方かいいでしょ ? 」 「ここから先は、一人でどうぞ。私が同行してもししー 「 : : : どうも」 かんし 「監視カメラは切ってあるから、何かあったら非常ベルを鳴らして : : : って、言うまでも ないわね」 ア「ずいぶんと、こちらの意向に添ってくれますね。私に『貸し』を作るのは結構ですが、 7 返せるあてはありませんよ ? 」 キ 「最初から期待してないし。大体、私が『貸し』を作るのは、あなたじゃなくて紅城君だ レ」 こわば 字 + えるるの顔が強張る。 銀元より目的の全てを隠し通せるとは思っていないが、やはり相手は人狼族の血を引く者 き 自界か利 / 、 「ど 1 せ、これは紅城君のためなんでしょ ? わざわざ吸血鬼に尋問する辺り、あの生意 0 ワーウルフ

6. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

ふぎよう 「え : : : ホントに ? じゃ、じゃあ、警視庁屈指の焼肉奉行と言われたこの私が、手取り 足取り給仕して : 「ウソです。何をはしゃいでいるんですか ? 、ハカらしい」 たれ 「だ、誰かバカよ ! 」 「高校生に熱を上げている、あなたです 0 何をムダなことに熱を上げているのやら」 「む、ムダかどうかはわからないでしょ卩大体、アンタ人に一一一一口えた義理卩」 りゅうび 蘭月の指摘に、えるるは柳眉を寄せた。 かなり本気でイラついている。 ア「 : : : 一緒にしないでください。誰が、あんな人のこと」 ュ「あら、—私は別に、紅城君がどうこう言った覚えはないけど、—フ キ 「 : : : 私も、紅城さんがどうこう言った覚えはありませんが」 架「じゃあ、誰のこと ? 」 字 + 二人の間で、見えない火花が飛ぶ。 もど の いっしゅん だがそれは一瞬、場所が場所だけに、すぐにいつもの二人に戻り、蘭月はフンと鼻を鳴 らしてそっほを向く。 「とっとと済ませてちょうだい。一応、何かあったときのために、部屋の傍にいるから。 113

7. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

ぐうぜん 「生まれは変えられぬよ、私がそうであるように。しかし、ここで偶然会ったとも思えぬ 「あなたへの容疑が固まりましたので、聴取しに参りました。方々から、大量の血液を集 きゅうけつき めておいでのようですね ? 吸血鬼が飲むにしては、多すぎる。新鮮な血液を好むあなた 方が、一度にそこまでの量をストックするのも考えづらい。何が目的です ? そもそも、 なぜ 何故戻ってきたのですフ しんちょうきより 廩重に距離を測りつつ、えるるが問う。 じゅうだん ちめいしょ - っ 銀の銃弾は、たとえ相手が「真祖」といえど、頭部か心臓を撃ち抜けば致命傷になり得 、避けられれば効力はない。 ぼんびやく けんせい いりよくじゅうぶん 凡百の吸血鬼ならば、足止めや牽制の威力は充分だが、ミラルカ相手では、一発で仕留 めねば、こちらが危うい 「戻るも何も、家に帰って何が悪い ? そして吸血鬼が血を求めることに、何の不思議が ある ? 「私は、紅城さんやあなたの話を鵜呑みにするほど、お人よしではありません。滅びたは ずの吸血鬼が戻ってきた : : なるほど、よくある話です。しかし、あの紅城さんが滅びを る。 よ ち 心、よ つ し ゆ ほろ

8. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

「あのミラルカさんとやらは、結局死んでた : ・ : 偽者だとでも ? 」 希璃華のしし ) こ、えるるは首を左右に振った。 なや しえ、おそらく本物なのでしよう。だから、紅城さんも悩んでいる。彼が聞いたよう しゅうねん に、彼女が全吸血鬼中、最高の再生能力を持ち、執念で永らえたのは事実のはす。ですが 弱体化している。彼女には、時間がない」 「再生が不十分ってこと ? どこか痛めてる様子、あったかしら ? 」 芽依が腕組みしてこれまでのことを思い返すが、特に思い当たる節はない。 あっさりカ負けしたことを思い返せば、むしろ強すぎる。 ア「痛めてはいません。ただ、欠落しています。だから、効かなかった。私も、あのとき不 ュ審に思った。多分、紅城さんも気づいたはすです。私達に言わなかったのは、認めたくな キ くも かったからでしようね。今回ばかりは、彼の目も曇っていた」 彼女には何がないのフ 架「どういうこと ? 外見は、特に何も変わらないじゃない ? りゅうび 字 + 柳眉を寄せる希璃華に、えるるは親指で自身の左胸を指差した。 の 銀「心臓です , 「「はあああつつつ卩」」 芽依と希璃華が目を丸くするが、えるるは構わず続ける。 うでぐ にせもの

9. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

163 銀の十字架とドラキュリア V 「かわい 5 んだから、このこの D ー 「何気に、紅城君のことも考えてるのよね 5 、・。案外最大のライバルかも」 、、まっぺたをこね回さないでー 「だからやめなさし ( 和気藹々と去っていく三人。 あき それを、呆れ顔で蘭月が見つめていた。 ちょうかく ・聞こえてるんですけど。人狼族の聴覚、知らないのかしら ? それともーーわざと かしら ? 」 ′、しょ・つ つぶや 帰ってくるはすもない問いを呟きながら、蘭月は苦笑した。 ワーウルフ

10. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

244 ルシュラの顔が青ざめる。 けもの あの理性を失った獣の散り様を、思い出したのだ。 思い出しただけで、身が凍る。 なりたくない あんなふうに、なりたくない 自分のままでいたい。 、自分のままで、吸血鬼のままでいるためには : : : 血を吸わねばならない あこが 「もしかして : : : 人間に産れでもしましたか ? 」 してき 冷たいえるるの指摘。 ルシュラはロごもって答えない 事あるごとに、「真祖」であることを誇り、人間を見下してきたはすの彼女。 いつもなら、えるるの言葉など真っ先に否定しているはすだ。 なのに、何も言わない 肯定こそしないが、否定もしない。 「人間の方が、緋水は楽かな、とは : : : 思う」 「当たり前でしよう。かなりの変わり種ですが、紅城さんは人間ですから。だからこそ、 こお