蘭 - みる会図書館


検索対象: 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5
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1. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

そして、手を振る希璃華。 引っ込みがっかなくなった蘭月は、ト声で訊く。 「 : : : 止めないの ? 」 「いや、言いだしつべそっちだし はかど 「競争意識があれば、捗りそうだし 「そもそも、呼んでいないし」 ア容赦のない三人。 ュ とっとと行けよ、そ、つ視線で土ロげている。 キ 行き場をなくした蘭月が、所在なさげに立ち尽くしていると、えるるが助け舟を出した。 みな かん 架「まあ待ちなさい、皆さん。遺憾ながら、彼女には私達にはないスキルがあります。ここ たよ おおがみ 字 + はむしろ、それを頼るべきでしよう。どうでしよう大神さん、一つ、それを役立ててもら 銀えませんか ? 」 ていちょう いつになく、丁重な口調のえるる。 蘭月も気をよくしたのか、胸を反らして頷く。 ぶね

2. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

きようじんきやくりよく 人狼族の強靭な脚力だけに、当たれば吸血鬼とてダメージは免れない だが、今のファーガスは、吸血鬼ですらないバケモノだ。 どんつうちくせき 相手を蹴り上げるたびに、蘭月の足に重い鈍痛が蓄積されていく。 追い込まれているのは彼女ーー一度振り回される腕が当たれば、その部位の肉は根こそ ぎ奪い取られる。 対照的に、ファーガスは余裕そのものーー蹴られた部位も、むず痒そうに撫でるだけだ。 ほ・つかい そして、崩壊の時は来た。 きようい てったい 接触と撤退、驚異的なスピードで間合いを保っていた蘭月の足が止まる。 ひろう しゅうれい ア秀麗な顔は、疲労と苦痛で歪んでいた。 こしやく ていたい ュ 小癪な敵の停滞に、ファーガスがにんまりと笑った。 キ 防勝利を確信した、肉食獣の笑み。 ま・つ ) ・つ と 哮をあげ、剛腕を蘭月の頭上へ振り下ろす ! 架 せつな 字 十那、蘭月の姿が消えた。 の 銀ファーガスの爪が切り裂いたのはーー虚空に残された、彼女のジャケットだけ。 ためいき がくぜん 愕然とする彼の背後で、溜息交じりの声がした。 : これしかないようね 「やつばり : ワーウルフ まぬか

3. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

150 きばやわはだふ だが、牙が柔肌に触れる寸前で、一陣の疾風が獣の脇腹を薙いだ。 「離れなさいリ」 きようれつ そのまま腹の肉を抉り取るような、背後からの強烈な中段回し蹴り。 ボコオ、と分厚いタイヤを蹴り上げたような音と共に、ファーガスの体は希璃華から引 き離された。 「 : : : 大神、さん ? 」 きようふ 恐布の中で、希璃華は救い主に気づいた。 かた しっそう 全力疾走で救出に来たらしく、蘭月は肩で息をしている。 もうげき 逃げろ、と彼女は言いたかったのだろうが、一一一一口う前にファーガスの猛撃がきた。 「ギイイイ : 舌打ちし、蘭月はファーガスとの肉弾戦に応じた。 ごうわん 戦術もなく、ただその剛腕で肉を裂かんとするファーガスに対し、蘭月は適切な距離を あしわざたいこう 保ちつつ、華麗な足技で対抗する。 床を蹴り、しなやかなステップを刻みつつ、ファーガスの頭、腹、足に蹴りを打ち込ん でいく。 ゆか かれい えぐ いちじんしつぶう わきばらな

4. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

163 銀の十字架とドラキュリア V 「かわい 5 んだから、このこの D ー 「何気に、紅城君のことも考えてるのよね 5 、・。案外最大のライバルかも」 、、まっぺたをこね回さないでー 「だからやめなさし ( 和気藹々と去っていく三人。 あき それを、呆れ顔で蘭月が見つめていた。 ちょうかく ・聞こえてるんですけど。人狼族の聴覚、知らないのかしら ? それともーーわざと かしら ? 」 ′、しょ・つ つぶや 帰ってくるはすもない問いを呟きながら、蘭月は苦笑した。 ワーウルフ

5. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

しみじみ語りながら、緋水達は蘭月の跡を追い続ける。 しっそう たど 彼女の疾走は続き、やがて人気のない区画に辿り着く。 かげ 人通りは少なく、ビルの谷間で、陰も多い 先入観がそう感じさせるのかもしれないが、吸血鬼向きの場所と、一一一一口えなくもない。 彷徨の果て、蘭月の足は、ある廃墟の前で止まっていた。 おもかげ いしよう あまり面影は感じられないが、建物の意匠で、何となく想像はつく。 おそらくはーー教会跡。 : この周辺に、匂いが散乱しているわ。少なくとも、ごく最近、この近辺に長い時間 アいたのは確か。さすがに、教会はないだろうから、その辺のネットカフェでも : ュ 「いや、まずここから行くよ。そもそも、日本に吸血鬼が嫌がるレベルの教会なんて、そ ラ、つはないし」 靴「あの娘の性格からして、べタに逆を突いて、逆にべタってことはありそうね」 わたし + 「ダンピールでも、特に建物からは何も感じません。ほば無害ですね の 銀「じゃあ、行きましよ、つ」 ハツの悪そうな蘭月を無視し、建物の奥へ進む。 すべてつきょ 中は教会らしい品が全て撤去されており、何の聖性も感じさせない。

6. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

第三章真紅の暴走 「お仲間まで、尋問を許可した覚えはないんだけど ? きりか えるる、そしてその背後にいる芽依と希璃華を見て、大神蘭月は不機嫌そうに鼻を鳴ら した。 かすみせき 霞が関ーー・警視庁本庁舎。 しんおう その深奥に位置する地下の捜魔課本部で、えるると蘭月は向かい合っていた。 こ - つりゆ・つ めずら ア土曜日の午後、イマイチ気の合わない同僚が、珍しく自分に頭を下げて、勾留中の容疑 じんもん ュ者への、尋問の交替を申し出てきた。 キ しょぐ・つ すでにえるるは必要な尋問を行い、容疑者の処遇は蘭月達に任されている。 と そこをまげてとの申し出に興味を覚え、一応許可は出したもののーーー余計な部外者まで 架 字 十ついてくるのは予想外だ。 すどう 銀「巣道さんはまだしも、そこの女子高生は関係ないでしよう ? 社会科見学なら、他を当 1 たってちょうだい 「羽乃さんとは、この後他の用事で話があります。彼の尋問は、私だけで行います」 おおがみらんげつふきげん

7. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

152 振り向くことも許さず、蘭月はファーガスの両脇に手を滑り込ませ、羽交い締めにした。 元より肉弾戦は不利、速さで多少勝っても、いずれはジリ貧で押し負ける。 だから、確実に仕留めるには、これしかない かりや 「狩夜さん、早く しった 叱咤に近い声に、希璃華がえるるの存在に気づいた。 かたうで せいじゅう 蘭月より遅れてかけつけたえるるは、弱々しく片腕を上げ、聖銃アルゲントウムを構え ていた。 狙うは心臓、ただ一点。 だんがん きゅうけつき 元より吸血鬼に対し、銀の弾丸が必殺の効力を放つには、そこを狙うしかない。 しろうとめ しやげきあや だが、希璃華の素人目にも、その射撃が危ういことは容易にわかった。 ひじ あおむらさきいろは えるるの両腕の肘から先は、青紫色に腫れあがり、生々しい打撲の痕に彩られていた。 だつごく 希璃華は知らぬことだが、ファーガスの脱獄の際に痛めつけられた両腕は、骨折こそ免 れたものの、物を持ち上げること自体がほば不可能な状況だ。 まして、今は標的のすぐ傍に蘭月がいる。 こうど かんつうこうりよ ファーガスの硬度を増した筋肉を考えれば、弾丸の貫通は考慮しなくても ) おく まさ だぼくあと はが しいかもしれ

8. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

112 「ならいいけれど、変なことは考えないようにね ? 」 「意味がわかりませんね。私が彼の尋問をすることに、何の問題が ? 」 「 : : : そうね。ところで、紅城君はお元気 ? 」 単なる世間話ではなく、カマかけだ。 ひすいもと すでに、ルシュラが去ったこと、そして緋水の許に新たな吸血鬼が現れた かん 還した情報は得ている。 それを踏まえたうえで、えるるかどう反応するか見たかった。 だが、彼女は無表情を崩さない。 「さあ、最近は血を吸われていないようですから、元気かもしれませんね。何なら、デー さそ トにでも誘ったらいかかです ? 」 「な、何言ってんのよ卩」 否定はしたが、 蘭月の顔は紅い。 くちびるゆが えるるは唇を歪め、さらに続ける。 「そういえば、焼肉が食べたいとか言っていました。あなたなら、おいしいお店をご存じ では ? 」 ろこっそうこう 得意分野に踏み込まれ、蘭月は露骨に相好を崩した。 くしよう あか や ーヨき

9. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

「いいわよ、別に。そう下手に出られちゃあ、ね。でも、何するのよ ? スキルって、何 だっけ ? 」 えるるは、無言で手持ちのバッグから、ビニールに包まれた衣類を取り出す。 中にあるのは、どう見てもーーー緋水の学校の制服だ。しかも女子用。 「何、これ : 「見ての通り、制服です」 「いや、それはわかるけども。こんなもの、どうするの ? そもそも、誰のよ 「ルシュラさんの、いわゆる遺留品です。私服は持ち出したようですが、これや体操服は、 そのままでした。もう必要ないと判断したようですね , たんたん 淡々とした口調のえるる。 おもわく 蘭月にも、そして緋水達にもーー段々と、えるるの思惑が読めてきた。 「で : : : これ、ど、つするの ? にお 「匂いを覚えて、ルシュラさんの行方を嗅ぎ分けてください」 「何、人を警察大扱いしてんのよ " 】」 たた そのまま制服を地面に叩きつける蘭月。 色んな意味で、尊厳を否定された格好だ。

10. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

202 うわめづか 両手をもじもじさせ、上目遣いで近づいてくる蘭月。 かわい はっきり言って、キャラに合わないので可愛くない。 緋水は露骨に距離を取り、三人もそれに続く。 「ちょっと、何で離れるわけ卩」 むだ 「いや、何か無駄に目立ちそうだし。声大きいし」 「学生グループの中で、独りだけ浮いてるしね 「・ : ・ : とし、つカ・ 1 卩 . 。 中司こ入れてほしいんですか ? 」 すなお 「素直に言えばいいのに」 つぶや 最後に、希璃華が同情を交えて呟く。 年下にコケにされ、蘭月は顔を真っ赤にして、吠える。 いいわよリそんなに一一一一口うんだったら、独りで捜して、確保してやるから " 】覚え てらっしゃい " 】」 「いいよ別に。お互い、ベストを尽くそう」 「邪魔だけはしないでね、・」 「お元気で」 無表情で送り出す、緋水と芽依。 じゃま さカ