透子 - みる会図書館


検索対象: 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5
20件見つかりました。

1. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

278 「うん D 一度きりの人生、楽しまなきゃ損だよ ! 」 「うん、まあ、透子さんは : : : 終わってるけど」 じばくれい 「そんなことないよ、地縛霊だって恋がしたいー じようぶつ 「来世に賭けて。っーか、成仏する気ないっしょ ? 」 「こういうのは、気持ちの問題だもん。どうせそのうち、「楽しかっ : 消えちゃ、つよ、きっと さみ 透子が寂しげに笑う。 考えてみれば、彼女の存在が一番あやふやだ。 存在しているのに、ほとんどの人間には感知されない。 気づいたところで、もう : : : その生は終わっている。 「 : : : 透子さん、家族とか、いないんスか ? その、成仏とかと関係なく、生前きちんと お別れしてないから、何なら捜して、その : : : ちゃんと、会ったりとか、すれば ? 」 かんきよう 「う 5 ん、家庭環境、あんまりよくなかったから。もう引っ越してるみたいだし、今さら むかし って感じ。生前のこと気にしても、しようかないし。前を向いて生きよう ! 」 「うん、まあ、死んでるけどね : さと へタレ 死人に生を諭される生者。 さが ・ : 』とか言って、

2. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

ア ュ 「たそがれてるねえ、緋水君」 キ とう一 ) っ ラ机に突っ伏す緋水の横で、透子がふわふわと宙を舞っている。 架正直、つつとうしいが、今日は何故か落ち着く。 さツ、そう + 彼女だけが、錯綜する事態から、一歩引いた位置にいるからかもしれない。 の 銀「透子さんは元気っスね。死んでるのに」 言ってから、最悪の皮肉だと気づいた。 しかし、透子は気にせず、元気いつばいというふうに、肘を曲げて、カ瘤を作る。 ろ、つ。 だが、えるるは選ばなかった。 おおがみ ついせき 「先に行っていてください。もう大神さんは匂いを覚えたそうですから、追跡も苦ではな いでしよう。彼女と合流してください」 「オッケー。じゃあ、ヒー君によろしく D 」 「待ってるわー ろうか しつもの空き教室に向かった。 二人を見送ってから、えるるは足早に廊下を駆け、 ) にお か ま ひじ ちからこぶ

3. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

「中々有意義な時間だったな。機会があれば、役員とやらも、やってみるか」 「やめてくんない、それはマジでやめてくんない卩」 みんな 「何を心配している ? 安心しろ、私がじっと見つめれば、皆一言うことを聞いてくれる」 まがん 「うん、それ明らかに魔眼使ってるよね ? 明らかに魔眼使う気だよね卩」 立ち上がってツッコむ緋水。 だがミラルカは構わず、空き教室にいる面々を見回している。 ワーウルフ ゅうれい 「人狼族がいないようだが、かわりに幽霊か。私の身内は、とことん魔性に好かれるな」 ふわ 「あ、はい、不破透子です ふだん ただよ あいさっ 普段はふわふわ宙を漂っている透子も、直立不動で挨拶した。 そうさせるだけの威厳が、ミラルカからは漂っている。 しかしーーーそれ以外の三人は、何とも一一一一口えない表情で彼女を見つめていた。 すず 敵意と疑念、両方の視線を涼しげに受けとめ、ミラルカは笑顔で彼女達に語りかける。 「緋水の女友達 : : : でよいのかな ? いつも身内が世話になっている」 けんきょ ごうがんふそん 言葉は謙虚だが、口調は傲岸不遜そのものだった。 小競り合いとはいえ、一度は透子以外の全員と一戦交えた身、にこやかに会話すること かおかしい ましょ・つ

4. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

にご迷惑はかけません」 えるるはノートパソコンを閉じ、椅子から立ち上がった。 「 : : : ルシュラさんがいない以上、私も、この学校を去る時が来たのかもしれませんね。 では、今日はこれで ハソコンをバッグにしまい、、んるるは教室を去った。 残された三人は、振り向きもしないえるるに、肩を竦める。 「あれ : : : つまり、あの吸血鬼が暴走したら、自分だけでケリつけるから心配するなって ことよね ? 」 一 ) うはい 「相変わらず、後輩のくせに一人でしよい込むんだから : 「まったくだよ。ここは人生の先輩の私に任せればいい ( 「「いや、透子さんにはムリだから」」 「何でよ ! 」 ふんがい 憤慨する透子に構わす、芽依と希璃華も家路に就いた。 空き教室にいたところでーーーイマイチ気分が盛り上がらない 部長不在の重みが、部員全員にのしかかっていた。 ふ

5. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

よめしゅうとめ 「何スか、それ ? 嫁姑問題並みに、答えの出ない袋小路なんですけど ? 」 「うーん、だって、どっちを選ぶかとか、誰が一番大事だとか、そんなに考え込むことか な 5 って」 透子は相変わらず、ふわふわと宙を舞っている。 せぞく じゅんすい 世俗のことなどどこ吹く風、ただ純粋に、見守る者として、年長者として一言う。 「だってさ、生きてるんだよ ? 私と違って、生きてるんだよ ? 大事なものなんて、毎 日増えてくよ。それをいちいち順位づけして、下から順番に捨ててくの ? 「もっと欲張って、み 5 んな抱き締めちゃえばフ 透子がにつこり笑った。 緋水も、また。 ああ、そうか もう、わかってたのに。 ちが 「やつばり、年長者は違いますね」 「こう見えて、お姉さんだよ偉大さに気づいた ? 」 「たった今。少なくとも、俺が学校にいる間は、成仏しないでくださいよ ? ふくろこうじ

6. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

「だから、あんな人知りません ! は、早く下ろして : こづか むかしなじ 「遠慮するなと言っている。昔馴染みの子供だしな、そうだ、小遣いでもやろう。それと も、菓子の方がいいか ? えるるを床に下ろし、頭を撫でながらミラルカは言、つ。 それ 完全に、知り合いの子供に対する態度だ。 ・つヤ・くま すみか えるるは顔を真っ赤にして、教室の隅へ駆け出し、そのまま蹲る。 なみだ ちょっと、涙ぐんでいた。 「ねえヒー君 : : : ど、つい、つこと ? 」 父親みたいでさ。で、折り合い悪い 「いや、俺もよくは知らないけど : : : 吸血鬼なのは、、 ア ばくろ と。それをあんなふうに暴露されたらな : ュ かたすく たず ラ芽依に尋ねられ、緋水は同情交じりに肩を竦める。 とダンピールたるえるるにとって、最も触れられたくない部分だろう。 字しかも、希璃華と透子にまでーー知られてしまった。 かりや 銀「狩夜さん、ちょっと変わったところあると思ったけど、ダンピールってこと : 「アレだよね、吸血鬼と人間のハーフだよね ? そうだったんだ : ヒソヒソと語り合う、希璃華と透子。 な

7. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

「 : : : で、どういうことなのかしら、ヒー君 ? アタシ以外の女とイチャイチャ、しかも あの女って、どーゅーこと」 「イチャイチャのくだりはどうでもいいですが、何故彼女がここに ? しかも授業参観な どと、私をコケにしているのですか ? 」 きゅうだん ほのお 炎と氷、対照的な態度で緋水を糾弾する一一人。 後ろでは、直接ミラルカを見ていない希璃華と透子が、心配そうに様子を窺っている。 すどう 「いや、うん、まあ : : : 気持ちはわかるけど。巣道のイチャイチャのくだり以外。とりあ じようきよう えず、座っていースか ? つい最近、似たような状况に置かれたばかりで、まだ心の傷が 癒えてなくて : 「ヒー君 : : : 自分の立場わかってるフ 「脳天に一発ぶち込まれないと、会話ができない体質ですか ? 」 っ せいじゅう えがおっか 芽依は笑顔で掴み、えるるは無表情で聖銃アルゲントウムの銃口を突きつける。 きかん うなず 緋水は青ざめた顔で頷き、ミラルカの帰還について、かいつまんで語り出した。 なや とちゅう ふきげん 話の途中、芽依は終始不機嫌顔、えるるは無表情で何事か思い悩み、希璃華と透子は顔 を見合わせていた。 語り終え、緋水は反応を窺うように女性陣の顔を見るが、特に何も言ってこない。 じん なぜ うかが

8. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

「わかったよ ! 何だよもう、機嫌悪すぎだろ : ぶつくさ言いながら、廊下を走る二人。 その後ろ姿を、透子は楽し気に見送っていた。 「私の心臓 : : : ? 」 ルシュラは自分の左胸を押さえた。 ねら 確かに、ここを狙われていた。 可攵こんなものをフ / 、カイー十ロ 「滅びろ : : : ということか、私が、邪魔だから : 「滅ばすつもりなら、とっくにやっている。私が欲しいのは、純粋にお前の心臓だけだ」 「だから、何で : 「心臓移植という言葉を知っているか ? 私には、ないのだよ」 かたひも ちぶささら ミラルカがインハネスを脱ぎ、さらにドレスの肩紐をずらし、左の乳房を晒した。 だんこん ルシュラをも上回る豊かなボリュームの白い肉には、生々しい弾痕が刻まれていた。 かんつう 穴は深く、肉体を貫通し、向こ、つの風景が見える。 じゃま

9. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

ここでしか会えない 「透子さん : : : ルシュラ、知らないっスか ? 」 「見てないよ、・。何、どうしたの ? 」 : いないんスよ。どこにも : : : 見当たらない 「何、家出とか卩書き置きとか、なかった」 なや ・悩んでます」 「ないから : そうーーー「捜さないでください」、そんなべタな書き置きがあったら、ここまで心配は していない。要するに、「捜せ」ということなんだから。 > 捜さなければ、「捜せよ ! 」と、きっと向こうから姿を現す。 ア だか、書き置きはなかった。 ュ あいさっ キ挨拶すらないことが、無言の決別の意志を感じる。 しょ・つきょ・つ : などとい、つこともないだろう。 状況から考えて、無理矢理連れ去られた : 字十中八九、彼女自身の意志。 十 の夜通し街を駆けすり回って、否が応でもーー理解し始めた。 「あんまり、思いつめちやダメだよ ? 希璃華ちゃん達には、訊いたの ? 」 かりや 「とっくの昔に。狩夜も、捜してくれてるみたいだけど : : : 何の知らせもない

10. 銀の十字架(クロス)とドラキュリア 5

も、つ、笑い話にもならない なや 「で : : : 緋水君、何で悩んでるの ? あの、綺麗な人のこと ? 」 「まあ、そんなことっス。アイツが生きてるのって、多分俺のせいなんですよね。心配で、 すなお 墓場から出てきた的な。スゲーうれしーはずなのに、素直に喜べない自分が、何っーか、 最悪で。死んだままでよかったなんて思わないけど、けど : 「けど ? 」 ルシュラを見殺しにできるかフ そう、ずっと自分に問いかけている。 話し合いで、まだ方法は、なんて、いくらでも = = ロえる。 ア ュでも、それはもうミラルカが何度も考えたことのはすだ。 ラ姿を消していた間、きっと色々動いていた。 A 」 それでも、もう限界が近い 架 十だから。 の いんじゃないかなあ ? 」 銀「あんまり、難しく考えなくて、 呑気に言い、透子は空中でクルンと一回転した。 その能天気さに、緋水は棘のある口調で言い返す。 のんき きれい